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地の魔将 参戦す
父の過去と自分の過去
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なんだか、負けた気がする。
部屋で勝手にくつろぎだした二人、モルフィなんてなんの違和感もなく、ベッドでボムボム跳ねてからゴロゴロしまくって、そのままお風呂に入りにいってしまう。
アマイモンは、どこから取り出しのかわからないが、本を虚ろな瞳で読んでおり、なんでそこまで憂いを持とうとするのか理解できない。
「まぁ、仕方がないな」
俺は居心地の悪い部屋を抜け出すと、ポケットに入っている鍵で隣の部屋の鍵穴を開けると、なんの違和感もなく開いてしまう。
「おいおい、不用心っていうか、鍵の意味ないだろ」
もしかすると、なんて思ったが、やはりあの亭主は手元に乱雑に散らばった鍵の中から、これだけを迷いもなく取り出していた。
つまり、どこの部屋の鍵も同じという可能性を俺は考えてはいたものの、こうもすんなりだと面白くない。
「ん? 待てよ?」
これは、これで面白いかもしれない。
急遽、脳内で描いていた計画とは違うことを練り始めていく。
すると、薄い壁の向こうから娘がお風呂から上がった音が聞こえてきた。
「よっし、やるか」
俺は部屋に戻るなり、作戦を二人に伝えていく。
当初はモルフィだけで十分だと思っていたが、予想外の戦力増強により作戦を変更する。
「いいか? 今回は敵を徹底的にこらしめるつもりだったが、作戦が変わるとこうなる」
「どうなるのですか?」
アマイモンがのぞき込んでくる。
その蒼い瞳が、俺をじっと見つめてきた。
「完膚なきまで、徹底的に根絶やしにする」
モルフィが気合をいれ、アマイモンも力を入れ始めた。
まぁ、相手が動き出すのはもう少し先だろうから、今はゆっくりとしようではないか。
娘が部屋の鍵が共通だということを知って、探検してくると告げるなり、部屋を飛び出していく。
「たく、興奮するのはわかるが」
彼女はいままで、こういった環境で暮らしていない。
珍しく楽しいだろう、だから、俺は別に止めないし、注意もしなかった。
そんなことを考えていると、アマイモンが俺の隣にくるなり、腰を下ろしてきた。
「ど、どうかしたのか?」
「いいえ、少しだけ聞きたいことがございまして、父はどういった方でしたか? 戦場での姿を私は知らないので」
なるほど、そういうことか。
「お父さんは、勇気に優れていた。とにかく、一番槍はアマイモン! そういう感じを戦場に植え付けたのはお父さんだったよ。野戦といえば彼しかいなかったし、部下にも優しく慕われていたよ」
俺の一言一言を聞き逃さないようにと、彼女は真剣に聞いていく。
「優しい父は想像できません、私がここに来てからもずっと厳しい方でした。愛されていたのは実感しておりましたが」
まて、今何か違和感があったぞ?
言葉に何か含みがある。
「ん? ここに来て?」
俺の聞き間違いでなければ、違和感のある言葉であるのは間違いない。
「え? えっと、父から聞いていないのですか? 私は父の本当の子ではなりません」
「そ、そうなのか?」
軽く返した感じになっているが、内心はかなり焦っている。
確かに、アマイモン自身から娘の存在などは一切聞いたこと無かった。
隠していたのか?
「私はそもそも、魔族の中でもかなり低俗な種族なようでして、ハッキリ言って本当の父と母の姿も名前もわかりません、ただ、気がついたら街のスラムにいたんです。その日を生きることで精一杯な毎日でした」
そんなある時に、アマイモンがスラムに兵を引き連れてやってきた。
「びっくりしましたよね、いきなり数体に囲まれて逃げようと暴れていたら、優しく抱きしめられたのです。凄く、凄く優しく」
何があったんだ? 元々、アマイモンは彼女が目的でスラムに出かけたのか?
あまりにも、急激に情報が入ってきたので、混乱している。
「本当に厳しかったです。養子になってから、私はずっと朝から晩まで訓練と勉強の日々でした。生きることに関しては、何も心配は無くなりましたが、とにかく厳しかったですね、でも辛くはありませんでした」
自分は愛されていたと実感しているようで、どこかで何かを感じ取っていたのかもしれない。
「ある晩に、私が中々寝付けなかったのですが、父がこっそりと部屋に入ってくると、私の隣に座り、寝ていると思っているのか、優しく頭ぉ撫ででくれたのです。もう、ずっとあの感触はわすれません」
「なるほど、厳しくもあったが、愛は感じていたんだな」
「はい、本当に感謝しております。父のおかげで今の私があります。だから! 私はこの地を父が護り、愛しんだ国を守りたいのです!」
素晴らしい、アマイモン、お前の娘さんは立派だ……何も心配いらない。
ただ、疑問は残る、なんだか、モヤモヤが残っているので、何か質問をしようとしたとき、彼女はいきなり外を警戒しだした。
「来たのか?」
俺の問いかけに頷いて応えてくれる。
モルフィも、気配を感じて急いで戻ってきた。
「よっし、それじゃぁ作戦開始といこうか、作戦名は『飛んで火にいる夏の虫』」
部屋で勝手にくつろぎだした二人、モルフィなんてなんの違和感もなく、ベッドでボムボム跳ねてからゴロゴロしまくって、そのままお風呂に入りにいってしまう。
アマイモンは、どこから取り出しのかわからないが、本を虚ろな瞳で読んでおり、なんでそこまで憂いを持とうとするのか理解できない。
「まぁ、仕方がないな」
俺は居心地の悪い部屋を抜け出すと、ポケットに入っている鍵で隣の部屋の鍵穴を開けると、なんの違和感もなく開いてしまう。
「おいおい、不用心っていうか、鍵の意味ないだろ」
もしかすると、なんて思ったが、やはりあの亭主は手元に乱雑に散らばった鍵の中から、これだけを迷いもなく取り出していた。
つまり、どこの部屋の鍵も同じという可能性を俺は考えてはいたものの、こうもすんなりだと面白くない。
「ん? 待てよ?」
これは、これで面白いかもしれない。
急遽、脳内で描いていた計画とは違うことを練り始めていく。
すると、薄い壁の向こうから娘がお風呂から上がった音が聞こえてきた。
「よっし、やるか」
俺は部屋に戻るなり、作戦を二人に伝えていく。
当初はモルフィだけで十分だと思っていたが、予想外の戦力増強により作戦を変更する。
「いいか? 今回は敵を徹底的にこらしめるつもりだったが、作戦が変わるとこうなる」
「どうなるのですか?」
アマイモンがのぞき込んでくる。
その蒼い瞳が、俺をじっと見つめてきた。
「完膚なきまで、徹底的に根絶やしにする」
モルフィが気合をいれ、アマイモンも力を入れ始めた。
まぁ、相手が動き出すのはもう少し先だろうから、今はゆっくりとしようではないか。
娘が部屋の鍵が共通だということを知って、探検してくると告げるなり、部屋を飛び出していく。
「たく、興奮するのはわかるが」
彼女はいままで、こういった環境で暮らしていない。
珍しく楽しいだろう、だから、俺は別に止めないし、注意もしなかった。
そんなことを考えていると、アマイモンが俺の隣にくるなり、腰を下ろしてきた。
「ど、どうかしたのか?」
「いいえ、少しだけ聞きたいことがございまして、父はどういった方でしたか? 戦場での姿を私は知らないので」
なるほど、そういうことか。
「お父さんは、勇気に優れていた。とにかく、一番槍はアマイモン! そういう感じを戦場に植え付けたのはお父さんだったよ。野戦といえば彼しかいなかったし、部下にも優しく慕われていたよ」
俺の一言一言を聞き逃さないようにと、彼女は真剣に聞いていく。
「優しい父は想像できません、私がここに来てからもずっと厳しい方でした。愛されていたのは実感しておりましたが」
まて、今何か違和感があったぞ?
言葉に何か含みがある。
「ん? ここに来て?」
俺の聞き間違いでなければ、違和感のある言葉であるのは間違いない。
「え? えっと、父から聞いていないのですか? 私は父の本当の子ではなりません」
「そ、そうなのか?」
軽く返した感じになっているが、内心はかなり焦っている。
確かに、アマイモン自身から娘の存在などは一切聞いたこと無かった。
隠していたのか?
「私はそもそも、魔族の中でもかなり低俗な種族なようでして、ハッキリ言って本当の父と母の姿も名前もわかりません、ただ、気がついたら街のスラムにいたんです。その日を生きることで精一杯な毎日でした」
そんなある時に、アマイモンがスラムに兵を引き連れてやってきた。
「びっくりしましたよね、いきなり数体に囲まれて逃げようと暴れていたら、優しく抱きしめられたのです。凄く、凄く優しく」
何があったんだ? 元々、アマイモンは彼女が目的でスラムに出かけたのか?
あまりにも、急激に情報が入ってきたので、混乱している。
「本当に厳しかったです。養子になってから、私はずっと朝から晩まで訓練と勉強の日々でした。生きることに関しては、何も心配は無くなりましたが、とにかく厳しかったですね、でも辛くはありませんでした」
自分は愛されていたと実感しているようで、どこかで何かを感じ取っていたのかもしれない。
「ある晩に、私が中々寝付けなかったのですが、父がこっそりと部屋に入ってくると、私の隣に座り、寝ていると思っているのか、優しく頭ぉ撫ででくれたのです。もう、ずっとあの感触はわすれません」
「なるほど、厳しくもあったが、愛は感じていたんだな」
「はい、本当に感謝しております。父のおかげで今の私があります。だから! 私はこの地を父が護り、愛しんだ国を守りたいのです!」
素晴らしい、アマイモン、お前の娘さんは立派だ……何も心配いらない。
ただ、疑問は残る、なんだか、モヤモヤが残っているので、何か質問をしようとしたとき、彼女はいきなり外を警戒しだした。
「来たのか?」
俺の問いかけに頷いて応えてくれる。
モルフィも、気配を感じて急いで戻ってきた。
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