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大軍くる
準備開始
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自分の体の調子が整いだし、準備を開始したのは、捕虜たちを解放してから、二度闇が明けた。
「ふぅ、しかし、以前に比べて無理はできないな」
「えぇ、ただでさえ貧弱なのに、これ以上は無理でしょう」
「ハッキリと言ってくれるなヘラオは……」
思わず苦笑してしまう。
だが、これは彼なりの俺に対する優しさであろう。
そう、もう二度とあんな危険な真似はするなとかなり遠回しに言ってきている。
「さて、これからどういたしますか?」
朝食ができたとモルフィが教えてくれている。
俺は腰を上げて、ヘラオにそっと話しかけた。
「まずは、腹ごしらえだな」
「そう言うと思いましたよ。まぁ、いつも焦らないのが我が主の良いところでもあり、悪いところでもありますね」
鼻で笑って返事をすると、俺たちは最愛の娘が待つ場所へと向かっていく。
ヘラオは薄々気が付いている。
俺が何かしらの策を持っていると、だが無理には聞き出さない、そんな微妙な距離感が心地よく、それが俺たちの関係をずっと支えていた。
「おぉ、旨そうだな」
「もう! 二人とも遅いんだから!」
今朝、わざわざ獲ってきたのだろう、新鮮な魚と保存していた獣の肉に、香草類を上手にアレンジした食事に、思わず腹が鳴る。
ゆっくりと席につき、食事を始めた。
いつもは、賑やかな席であるが、今日に限ってはそうでもない。
「ん? どうかしたのかモルフィ」
原因の一つである娘が先ほどから、ジッとこちらを見つめてきていた。
「えぇっと、ケトル様……実は、お聞きしたいことがございまして?」
「なんだ? そんな改まって? いつものモルフィらしくないじゃないか」
横目でヘラオを確認してみると、こちらには無関心なのか、ただ黙々と食べている。
「へラオさんやケトル様は落ち着きすぎです。あんな戦いがあった後ですし、これから、もっと多くの敵が来るって仰っているじゃないですか? さすがの私も少しは不安になりますよ。でも、ヘラオさんに聞いても、大丈夫、主に任せなさいの一点張りで」
「あぁ、なるほどね。あんなに楽しそうに初陣を飾ったが、やはり内心は怖かったのか?」
問いかけに対し、全力で首を横に振って否定してくる。
「楽しかったといわれると、よくわかないかも……。ずっと興奮していて、あまり感情的な部分は覚えていないかも」
「そうか、そりゃ凄い、あれだけ一方的に殺したのだから、少しは落ち込んでたりするものなのに、関心だな」
正直、魔族でも初陣で精神を壊すモノは少なくなかった。
それなのに、モルフィは喜々として戦いを楽しんでいるようにも見えていた。
「それで? もし、差し支えなければ、今後の考えを教えてくれない?」
そんな娘でも、やはり、後先が見えない戦いへの不安感があるのか、複雑な表情をしている。
本当は、もっと煮詰めてから話すつもりだったが、娘の不安を取り除くのも親の務めと思い、現段階で思っていることを告げる。
「現状を踏まえると、今度また軍を向けられるとかなり苦戦すると思う。相手も馬鹿じゃない。意味の分からない命令ではなく、俺たちを殺すためを目的とされた軍だ」
ヘラオも食べるのをやめて、俺に耳を傾けた。
「数も多く、練度も増してくる。指揮系統も今回の比じゃないだろう。ハッキリ言ってかなりの確率で負ける」
ごくりとモルフィが唾を飲み込んだ。
「だが、勝てないわけじゃない、むしろ、この状況を如何にして逆転させるかが戦の楽しみであり、醍醐味でもある」
「それで、考えはあるのですか?」
ヘラオが口を拭きながら訪ねてくる。
「無いと言えば嘘になるので、今考えているところまで話す」
二人の表情が真剣になった。
俺は、少しだけ呼吸を整えて言葉を発していく。
「この杜で大舞踏祭を行う」
「ふぅ、しかし、以前に比べて無理はできないな」
「えぇ、ただでさえ貧弱なのに、これ以上は無理でしょう」
「ハッキリと言ってくれるなヘラオは……」
思わず苦笑してしまう。
だが、これは彼なりの俺に対する優しさであろう。
そう、もう二度とあんな危険な真似はするなとかなり遠回しに言ってきている。
「さて、これからどういたしますか?」
朝食ができたとモルフィが教えてくれている。
俺は腰を上げて、ヘラオにそっと話しかけた。
「まずは、腹ごしらえだな」
「そう言うと思いましたよ。まぁ、いつも焦らないのが我が主の良いところでもあり、悪いところでもありますね」
鼻で笑って返事をすると、俺たちは最愛の娘が待つ場所へと向かっていく。
ヘラオは薄々気が付いている。
俺が何かしらの策を持っていると、だが無理には聞き出さない、そんな微妙な距離感が心地よく、それが俺たちの関係をずっと支えていた。
「おぉ、旨そうだな」
「もう! 二人とも遅いんだから!」
今朝、わざわざ獲ってきたのだろう、新鮮な魚と保存していた獣の肉に、香草類を上手にアレンジした食事に、思わず腹が鳴る。
ゆっくりと席につき、食事を始めた。
いつもは、賑やかな席であるが、今日に限ってはそうでもない。
「ん? どうかしたのかモルフィ」
原因の一つである娘が先ほどから、ジッとこちらを見つめてきていた。
「えぇっと、ケトル様……実は、お聞きしたいことがございまして?」
「なんだ? そんな改まって? いつものモルフィらしくないじゃないか」
横目でヘラオを確認してみると、こちらには無関心なのか、ただ黙々と食べている。
「へラオさんやケトル様は落ち着きすぎです。あんな戦いがあった後ですし、これから、もっと多くの敵が来るって仰っているじゃないですか? さすがの私も少しは不安になりますよ。でも、ヘラオさんに聞いても、大丈夫、主に任せなさいの一点張りで」
「あぁ、なるほどね。あんなに楽しそうに初陣を飾ったが、やはり内心は怖かったのか?」
問いかけに対し、全力で首を横に振って否定してくる。
「楽しかったといわれると、よくわかないかも……。ずっと興奮していて、あまり感情的な部分は覚えていないかも」
「そうか、そりゃ凄い、あれだけ一方的に殺したのだから、少しは落ち込んでたりするものなのに、関心だな」
正直、魔族でも初陣で精神を壊すモノは少なくなかった。
それなのに、モルフィは喜々として戦いを楽しんでいるようにも見えていた。
「それで? もし、差し支えなければ、今後の考えを教えてくれない?」
そんな娘でも、やはり、後先が見えない戦いへの不安感があるのか、複雑な表情をしている。
本当は、もっと煮詰めてから話すつもりだったが、娘の不安を取り除くのも親の務めと思い、現段階で思っていることを告げる。
「現状を踏まえると、今度また軍を向けられるとかなり苦戦すると思う。相手も馬鹿じゃない。意味の分からない命令ではなく、俺たちを殺すためを目的とされた軍だ」
ヘラオも食べるのをやめて、俺に耳を傾けた。
「数も多く、練度も増してくる。指揮系統も今回の比じゃないだろう。ハッキリ言ってかなりの確率で負ける」
ごくりとモルフィが唾を飲み込んだ。
「だが、勝てないわけじゃない、むしろ、この状況を如何にして逆転させるかが戦の楽しみであり、醍醐味でもある」
「それで、考えはあるのですか?」
ヘラオが口を拭きながら訪ねてくる。
「無いと言えば嘘になるので、今考えているところまで話す」
二人の表情が真剣になった。
俺は、少しだけ呼吸を整えて言葉を発していく。
「この杜で大舞踏祭を行う」
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