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戦いの兆し
総崩れ
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騎士団長様が目の前で倒れるのを見た、周りの兵士たちは二通りの行動を起こし始める。
一つは、ビーラビットたちにおされ、外の魔獣の強襲も相まって、逃げるという選択肢を選ぶ存在。
もう一つは、忠義心なのかよくわからないが、一定数殺された主の仇を討ちたいと突撃してくる存在。
「‼ き、騎士団長ぉぉぉ‼ こ、このぉぉぉ!」
頭部の毛が無く、体躯が立派な兵士が左腕を喰いちぎられながらも、俺を殺すために向かってきた。
「その勢い、実に素晴らしい」
しかし、武力で人間よりも遥かに劣ると自分でも理解している俺にとって、逃げるための手段を用意していないわけがない。
「そら」
ビーラビットたちを入れていた鞄の底を、もう一度強く蹴ると、中でカチカチと火打石どうしがぶつかり、少量の火がぽっと発生した。
そのとき、衝撃緩和剤として使っていた、ウズの草を乾燥させたモノは若干の熱でも発火する危険な植物、普段は群生もしていないので、大きな火災の原因にはなり難いも、ある程度の量が集まると、その威力は発揮される。
「な! なんだ⁉」
一気に鞄は燃え上がり、兵士たちは更に驚く。
それを確認した俺は、クルっと向きを変えると一気に走り始めた。
「逃げるが勝だぁ‼」
「ま、まてぇ! 逃がすな、追え追えぇぇ!」
指令を発するも、周りで即座に動ける兵士は限られていた。
それでも、俺を捕らえるのか殺すのかわからないが、数名が飛びぬけてくる。
「く! やばい、さっきまで全力だったから」
早くも息があがりそうになってくる。
情けない、もう少しで魔獣たちと合流できるのに、足が言うことをきいてくれない。
「ぜぇぜぇ、くっそ、もう少しだったのに」
後は、惰性で走り続けようかと思ったとき、冷たい気配が背後に近寄ってきた。
「に! 逃がさんぞ‼」
殺す勢いで、剣が振り下ろされそうになったとき、彼らの胴体は綺麗に下半身と分離していた。
「ハッ⁉」
ドサドサと、鈍い音をたてながら上半身が地面に落ちると、数秒遅れてから下半身がガチャリと伏していく。
「お、おせぇ! 死ぬかとおもったぞ」
俺の目の前に立っていたのは、最愛の娘で鬼と人間の血を受け継ぐ存在。
「遅くなりましたケトル様」
ニコリと微笑むその姿に、血糊がべっとりと付着した剣が合わさると、なんとも言えない甘い美しさを纏っている。
彼女の背後には、無数の魔獣たちが控えており、モルフィが一歩前に出ると同時に突撃が開始された。
「ガァァァ!」
先頭のベア型が吠えると、陣中で奮闘していた魔獣たちも呼応し、戦局は変わりだした。
「さて、人間の陣も崩れるのは時間の問題かと思われますが、次はどのように?」
ワクワクと瞳を輝かせながら、俺の指示を待っているモルフィ、深呼吸をしながら荒れた心臓の動きを整えていく。
「つ、次は挟み撃ちだ」
魔族の陣はとっくに総崩れとなり、今は機能していない。
つまり杜で戦い、逃げてきても情報が遮断されているので、敵軍はこちらがどう行動するのかを把握できないのだ。
「逃げ出した魔族や人間はどうしますか?」
「殺して構わない……だが、深追いだけはするな、本陣に残っていたのは少数で本命はこれからなんだからな」
「はい、仰せの通りに、適度に逃がして我々の存在を流布していただかなければなりませんし」
そうだ、この規模の軍が壊滅状態になったのならば、そう簡単には手出しはできないだろう。
それに、もし、更に数を増やすにしてもそれなりの時間が必要だ。
だから、あえて逃がして俺たちの強さを誇張表現していただこう、誰しもそうであるが、混乱と逃げた名分が必要なので、全員が間違いなく誇張表現をして報告をしてくれるだろう。
「魔獣を十体ほど残し、魔族の陣に向かう、そろそろヘラオが敵を叩きのめして、こちらに向かってくるころであろう」
一つは、ビーラビットたちにおされ、外の魔獣の強襲も相まって、逃げるという選択肢を選ぶ存在。
もう一つは、忠義心なのかよくわからないが、一定数殺された主の仇を討ちたいと突撃してくる存在。
「‼ き、騎士団長ぉぉぉ‼ こ、このぉぉぉ!」
頭部の毛が無く、体躯が立派な兵士が左腕を喰いちぎられながらも、俺を殺すために向かってきた。
「その勢い、実に素晴らしい」
しかし、武力で人間よりも遥かに劣ると自分でも理解している俺にとって、逃げるための手段を用意していないわけがない。
「そら」
ビーラビットたちを入れていた鞄の底を、もう一度強く蹴ると、中でカチカチと火打石どうしがぶつかり、少量の火がぽっと発生した。
そのとき、衝撃緩和剤として使っていた、ウズの草を乾燥させたモノは若干の熱でも発火する危険な植物、普段は群生もしていないので、大きな火災の原因にはなり難いも、ある程度の量が集まると、その威力は発揮される。
「な! なんだ⁉」
一気に鞄は燃え上がり、兵士たちは更に驚く。
それを確認した俺は、クルっと向きを変えると一気に走り始めた。
「逃げるが勝だぁ‼」
「ま、まてぇ! 逃がすな、追え追えぇぇ!」
指令を発するも、周りで即座に動ける兵士は限られていた。
それでも、俺を捕らえるのか殺すのかわからないが、数名が飛びぬけてくる。
「く! やばい、さっきまで全力だったから」
早くも息があがりそうになってくる。
情けない、もう少しで魔獣たちと合流できるのに、足が言うことをきいてくれない。
「ぜぇぜぇ、くっそ、もう少しだったのに」
後は、惰性で走り続けようかと思ったとき、冷たい気配が背後に近寄ってきた。
「に! 逃がさんぞ‼」
殺す勢いで、剣が振り下ろされそうになったとき、彼らの胴体は綺麗に下半身と分離していた。
「ハッ⁉」
ドサドサと、鈍い音をたてながら上半身が地面に落ちると、数秒遅れてから下半身がガチャリと伏していく。
「お、おせぇ! 死ぬかとおもったぞ」
俺の目の前に立っていたのは、最愛の娘で鬼と人間の血を受け継ぐ存在。
「遅くなりましたケトル様」
ニコリと微笑むその姿に、血糊がべっとりと付着した剣が合わさると、なんとも言えない甘い美しさを纏っている。
彼女の背後には、無数の魔獣たちが控えており、モルフィが一歩前に出ると同時に突撃が開始された。
「ガァァァ!」
先頭のベア型が吠えると、陣中で奮闘していた魔獣たちも呼応し、戦局は変わりだした。
「さて、人間の陣も崩れるのは時間の問題かと思われますが、次はどのように?」
ワクワクと瞳を輝かせながら、俺の指示を待っているモルフィ、深呼吸をしながら荒れた心臓の動きを整えていく。
「つ、次は挟み撃ちだ」
魔族の陣はとっくに総崩れとなり、今は機能していない。
つまり杜で戦い、逃げてきても情報が遮断されているので、敵軍はこちらがどう行動するのかを把握できないのだ。
「逃げ出した魔族や人間はどうしますか?」
「殺して構わない……だが、深追いだけはするな、本陣に残っていたのは少数で本命はこれからなんだからな」
「はい、仰せの通りに、適度に逃がして我々の存在を流布していただかなければなりませんし」
そうだ、この規模の軍が壊滅状態になったのならば、そう簡単には手出しはできないだろう。
それに、もし、更に数を増やすにしてもそれなりの時間が必要だ。
だから、あえて逃がして俺たちの強さを誇張表現していただこう、誰しもそうであるが、混乱と逃げた名分が必要なので、全員が間違いなく誇張表現をして報告をしてくれるだろう。
「魔獣を十体ほど残し、魔族の陣に向かう、そろそろヘラオが敵を叩きのめして、こちらに向かってくるころであろう」
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