ラブラブ・コロン

れなれな

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きょうだい

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「ばっかやろう! じぶんのしんろくらい、じぶんできめろ!」
「だって、アニキ」
「オレはもう、おまえのアニキじゃあないんだ。そういったろ」

 そのわかものは、コロンのゆくてに、とつぜん、とびだしてきました。

 そのひょうじょうは、とてもかなしそうで、くやしそうでもあります。

『あい! どうしたでしゅか?』

 コロンのよびかけに、わかものはおどろいたように、あたりをきょろきょろしました。

「な、なんだ。いまのこえ!」
『ここでしゅ』

 コロンは、ロンロンのせなかから、りょうてをふって、まっしろなシッポをぶんぶんふって、いいました。

「なんなんだ、おまえ」
『コロンは愛のようせい。はくりゅうのさとからきましゅた! こっちはロンロン。なにか、おなやみでしゅか?』

 わかものは、じぶんのしょうきをうたがいましたが、ちからなく、そばのかいだんにこしかけ、ひとりごとのように、はなしはじめました。

 ふたつとしのはなれた、ユウトとミナトは、なかよしのしんゆうでした。
 
 どちらも、かたおやがなく、きがあいました。

 ところが、あるときユウトのちちおやと、ミナトのははおやがけっこんし、ふたりは、ぎりのきょうだいになりました。

「うーん? それで?」

 ロンロンがこくびをかしげて、きいています。

「ボクはユウトのきょうだいになれてうれしかったんだ。だけど、そのあとおとうさんとおかあさんは、わかれることになって……」

 ふりまわされた、ユウトとミナトは、きずつきました。
 
 そして、そのひからユウトは、ミナトにつめたくなったようなのです。

「もうきょうだいなんかじゃないんだからって、くちもなかなかきいてくれなくなった。それでもユウトはボクのこころのよりどころだった……」

 もういちど、しんゆうだったころに、もどりたいとまではおもわないけれど、ミナトはユウトと、きょうだいでいたかったのでした。

「ようし! ワシとコロンで、ユウトのほんしんを、ききだしてあげるぞい」
『それにミナトからは愛のはどうをかんじるでしゅ。コロンは、きっとうまくいくようにと、ねがっているでしゅ』

 あおいげっこうが、ふりそそぐよるでした。

 にかいだてのいえの、ユウトのへやのまどから、コロンはユウトのようすをみていました。

 ユウトは、おおきなりょこうトランクに、にもつをつめこんで、ひとりベッドのうえで、ためいきしていました。

『ロンロン、こうしていてもしかたがないでしゅ。ほんにんにちょくせつ、ぶつかってみるでしゅ』
「よしきた、きをつけるんだぞい」

 コロンは、ひとりでまどから、ユウトのとなりへ、かけていきました。

『ユウト、どこかとおくへいくでしゅか』

 へんじは、ありませんでした。

『ミナトは、ユウトのきもちを、ききたがっているでしゅ』

 ふっとユウトは、コロンのそんざいに、きづきました。

「なんだおまえは」
『コロンは愛のようせい。はくりゅうのさとからきましゅた! ミナトからのでんごんを、もってきたのでしゅ』
「おまえが?」

 ユウトは、コロンのほうをじろじろみましたが、そうわるいふんいきでもありませんでした。

「そうか……」
『でんごんを、きくでしゅか?』

 ユウトは、しばらくかんがえたのち、くびをたてに、それからよこにふりました。

『じゃあ、はんぶんだけつたえるでしゅ』

 ユウトは、まじまじとコロンをみました。

『ともだちは、はなればなれになったら、もうあうことはなかなかないけれど、きょうだいなら、ずっといっしょにいられる。ボクはユウトときょうだいでいたい』

 は、とユウトはためいきをつきました。

「オレは、アメリカのマサチューセッツこうかだいがくへいくんだ。そして、うちゅうかいはつのしごとにつく。にほんへはかえらないだろう。でも……」

 ユウトは、いったんことばを、きりました。

「でも、ミナトがこうこうをそつぎょうしても、おなじきもちなら……」
 
 コロンはにっこりとして、うなずきました。

「コロン、おはなしはうまくいったのかね?」
『あい。ユウトは、ミナトがおもうよりずっと、ミナトのことをおもっていたでしゅ』

 ユウトののった、ひこうきを、みつめながらなみだするミナトに、ロンロンがちかづきました。

「でんごんだよ」
「でんごん? ユウトから?」
『あい! こうこうをそつぎょうして、まだきもちがかわらないなら、アメリカへこい、といっていたでしゅ』

 あぜんとしていた、ミナトのかおが、ほころんでいきます。

「ユウト! ボクもマサチューセッツにいくよ!」
 
 こころからの、さけびでした。

「コロン、まさちゅーせっつでは、なにをするんだ?」
『さあ。うちゅうがどうとか。でも、もくひょうをもつのは、いいことでしゅ』
「ほんもののきょうだいよりも、きょうだいらしいふたりだったな」
『愛のなせるわざでしゅ』

 コロンは、しろいシッポをふりふり、じょうきげんで、ロンロンのせなかにのりました。

 さわやかなくうきが、ふたりのせなかを、おしてゆきます。
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