ラブラブ・コロン

れなれな

文字の大きさ
上 下
4 / 10

リュウノスケのうそ

しおりを挟む
『ロンロン、近くに愛のはどうを、かんじるでしゅ』
 
 コロンが、いいました。

 コロンは、ちいさな愛のようせい。

 ロンロンは、コロンによって、いのちをすくわれた、ぼろぼろのいぬです。

 ふたりは、コロンのこきょうである、はくりゅうのさとへむかうとちゅう。

 みちのりは、はるかとおくまでつづいています。

 そのたびじで、コロンは愛をさがしていました。

 かのじょは、うまれるときに、たいせつな愛をあたえられなかったために、かよわくて、ちからがたりません。

 コロンが、いちにんまえの愛のようせいになるには、たくさんの愛をみつけなければならないのです。


 そのまちでは、おおきなほんやさんが、ありました。

 ロンロンがコロンのいうとおり、ちかくをさがしていると、ほんやさんのじどうドアから、しょうねんがでてきました。

 すると、うしろからエプロンをつけた、ほんやさんがでてきて、しょうねんのうでをとりました。

 しょうねんは、かみぶくろをじてんしゃのにだいにのせると、いってしまおうとします。

 が、ほんやさんは、じてんしゃのにだいをつかみ、ひきもどしました。

 しょうねんは、じてんしゃごところんで、みせのおくまで、つれていかれました。

「キミのしていることは、はんざいなんだよ」

 はいいろのつくえに、ならべられたさんこうしょ。

 しょうねんが、おかねをはらわずに、みせからもちだしたものでした。

「こんどが、はじめてなの? おやにれんらくするよ」

 すると、しょうねんはわっとないて、

「おやは……いません」
「じゃあ、がっこうはどこ? せんせいにきてもらいます」

 しょうねんは、だまりこんで、こたえません。

「どうなの? へんじしだいで、けいさつよぶよ」
「……がっこうは、いってません」

 ほんやさんは、ぬすまれたほんたちをみて、いいました。

「けどこれ、ぜんぶこうこうのものでしょ?」
「おかねならはらいますから、みのがしてください! にどと、しません」

 しょうねんは、ぼろぼろとなきました。


 みせのうらぐちからでてきたしょうねんは、とぼとぼとじてんしゃをおして、どこへともなくさっていきます。

 ロンロンがいいました。

「いぬにルールがあるように、にんげんたちにもルールがあるようだなぁ」

 コロンは、ロンロンにしがみついて、しょうねんのあとをおいました。

『愛のかけらが、きらきらしてるでしゅ』
「へえ」

 ロンロンにはわかりませんでしたが、ほかならぬコロンのいうことですから、だまってついてゆきました。

 ついたのはボロボロのやねと、かべにひびがはいった、ふるいおうちでした。

「えんがわが、ある」

 ロンロンは、かきねからのぞきこみました。

 そのとき、コロンが、せのひくいきのかきねの、すきまをぬって、なかへはいっていってしまいました。

「もう、しかたがないな。コロンのすることだ」

 しかしロンロンにはすこしせまく、とおれませんでした。

 そこで、なかをのぞいていると……。


「おばあちゃん、きょうはがっこうで、すうがくのテストがあったんだ。らくしょうだったよ」

 よくみれば、えんがわにこしかけた、あのしょうねんが、なかへむかって、はなしかけています。

「そうかい」

 おばあさんがでてきて、ゆげのたつゆのみと、おかしをさしだしました。

「あれ? おやつなんてどうしたの?」
「すこし、ひるまにでかけてきたんだよ。きょうはあたたかいから、きんじょのスーパーまでいってね」

 おばあさんはピンクいろのほほをして、ほっこりわらいました。

 すると、しょうねんはにこにこして、おやつをたべおわると、せけんばなしをはじめました。

「きょうは、とうこうちゅうにじょしにあって、こくはくされそうになった。はしってにげたけど、あせったなあ」
「あれまあ。モテモテなんだねえ」
「そんなことないよ。それよりも、このあいだのたいりょくそくていで、きろくがのびちゃって、サッカーぶややきゅうぶ、そのほかにもたくさんのうんどうぶに、さそわれちゃってさ」
「リュウノスケちゃんは、ほんとうにすごいねえ。わたしのむすこはどこでどうしているのかねえ」

 リュウノスケちゃんとよばれたしょうねんは、いっしゅんだけくちをつぐむと、げんきにいいました。

「きっと、いまごろけっこんもして、こどももいて、いつかおばあちゃんをむかえにくるよ。そのためのじゅんびちゅうなんだよ」
「そうかねえ。このごろでは、もうかえってはこないきも、しているんだがねえ」
「そんなことないよ! きっと、しゃかいでバリバリはたらいて、いそがしいんで、おそくなってるだけさ。たよりのないのは、いいたより!」
「そうかねえ。でも、むすこがしあわせにいきていてくれれば、それだけでわたしはいいんだよ」
 
 しょうねんは、おちゃをのみほすと、あかるくほほえんでいいました。

「じゃあ、おばあちゃんまたくるね。おやつとおちゃを、ごちそうさまでした!」
「はい。いつも、にわしごとをてつだってくれて、ありがとうね。リュウノスケちゃん」


 がさがさっと、おとをたてて、コロンがでてきました。

 しょうねんは、おてらにはいっていきます。

「リュウノスケくん、きょうもおまいりかい」

 おてらのひとが、いいました。

 リュウノスケはだまってれいをして、とおりすぎると、おおきなきのねもとにひざをつきました。

 あたりは、きれいにととのえられています。

 リュウノスケがざっそうをとって、ちいさなはなのたねをうえたところに、しかくいプレートがみえました。

『さわづ じゅんいちろうのはか』

 ロンロンが、すぐさましょうねんのところへかけつけると、コロンがさきにしょうねんに、はなしかけていました。

 しょうねんは、おどろいたかおで、コロンをうえからしたまで、じっくりみました。

「かいきげんしょう……」
『コロンは愛のようせいでしゅ。愛をさがしに、はくりゅうのさとから、やってきたでしゅ』
「愛のようせい……? 愛なんて、いきるのにやくにたたないじゃないか」
『そんなことはないでしゅ。リュウノスケのいきるきぼうに、なっているにちがいないでしゅ』
「なんだか、ずっと、みられていたみたいだな」
 
 リュウノスケは、はずかしそうに、うつむきました。

『あい! みてましゅた!』

 コロンはにこにこして、はなしをうながしました。

「しまづのおばあちゃんのむすこさんは、がくせいのころ、じこでなくなっているんだ」

 ロンロンは、きょとんとしてしまいます。

「だけど、おばあちゃんはむすこさんのしを、うけいれられなかったみたいで……」
『だから、しらないふりをして、おはなしをあわせてるんでしゅね』
「ひとりぼっちで、おちこぼれのボクが、こうこうへいきたいといったとき、おばあちゃんがいちばんにおうえんしてくれて、うれしかった。だから、こうこうへいっているふりを、したんだ」
『そうだったでしゅか』

 コロンは、しんみょうにうなづきました。

「ボクはおやもいない。もう、こころのよりどころは、おばあちゃんだけなんだよ」
『リュウノスケの愛をうけとったでしゅ。だからねがいをひとつかなえてあげるでしゅ』

 リュウノスケは、きょとんとしています。

『リュウノスケの、ねがいはなんでしゅか?』
「だいがくへいくことかなあ。あとおばあちゃんと、いつまでもいっしょにいたい」
『それなら、やかんがっこうや、つうしんきょういくかていがあるでしゅよ。がくひローンも、じゅうじつしてるでしゅ』

 リュノスケは、くびをひねっていましたが、やがてあかるいえがおをみせました。

「やってみるか!」
『リュウノスケが、ねがいをかなえれば、おばあさんもまえへすすめるでしゅ! きっと……だから、愛のしゅくふくをあげるでしゅ』
「……うん。まずはせいかつひをかせがなきゃ! でもやとってくれるところなんて、あるかなあ」
『リュウノスケしだいで、みらいはいくらでもかわるでしゅ。コロンの、しゅくふくつきでしゅよ』
「ありがとうコロン。ボク、がんばってみる……」


 きれいなほしぞらのもと、ロンロンのせなかで、コロンはうとうとしながら、いいました。

『ロンロン、うそはいけないとおもいましゅか?』
「さあね。はんざいはいけないけれどね。それにうそは、いつかわかってしまうものだし」
『それでも……リュウノスケがおばあちゃんのためについたうそは、きっとふかいふかい、おもいやりだったでしゅよ』
「コロンがそういうなら……そうだな……」

 コロンはむねがいっぱいになって、おおきくいきをつきました。

『やさしい愛を、みつけたでしゅ』

 ふたりはかわいいシッポをふりふり、なかよくたびを、さいかいしたのでした……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

おしがま!!

りんな
大衆娯楽
タイトルの通りです!たぶん

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...