ラブラブ・コロン

れなれな

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愛はどこでしゅか!?

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 はくいきがしろくなる、まだはるになりたてのころのことでした。

 ロンロンは、せなかに愛のようせいコロンをのせて、アスファルトでできたどうろを、あしばやにかけぬけていました。

 このあたりは、じゅうたくがい。

 とても、しずかです。

 ところが……どうやら、おとこのこのどなりごえがします。

「もっと、かねもってこいっていってんだよ!」
「ムリだよ……。おとうさんも、おかあさんも、でかけてて、あしたまでかえってこない」
「かねをおいてあるばしょくらい、わかるだろう! とってこい」
「そ……」

 ていこうしようとすると、そのこはおなかをグーでなぐられて、たおれてしまいました。

「いいか、おまえんちはしっているんだからな。かどのところのマンションだろ。みはってるからな。すぐこいよ」

 なぐられたおとこのこは、おいおいないて、よろめきながらたちあがると、あるきはじめました。

『みはっているからな』

 そのことばは、ほんとうでした。

 らんぼうをはたらいたおとこのこは、くろいキャップぼうしをふかくかぶり、どうろのむかいから、さんかいのベランダを、みつめています。

「もう、だめだ……」


『愛は、愛はどこでしゅか!? ロンロン』
「愛はときに、かなしいなみだのにおいがする。こっちだ!」

 さきほど、どうろでみかけた、おとこのこが、ちのなみだをながして、ベランダのさくのうえにたっています。

 ゆらゆらっと、そのあしがゆれました。

 くろいキャップぼうしのおとこのこは、あせったように、にげていきました。

「あぶない! どうしよう、コロン!」

 ぽうん! とコロンのシッポが、おおきくふくらみ、かんいっぱつ、まにあいました。

 おとこのこは、コロンのまっしろなシッポにくるまれ、ぶじでした。

 おとこのこは、ぼんやりとするいしきのしたで、いいました。

「ボクは、しんだの……?」

 コロンは、あえてそうだとも、ちがうとも、いいませんでした。

『さいごの、ねがいをいうでしゅ』
「キミは、だれ?」
『コロンは愛のようせい。愛をさがしに、はくりゅうのさとから、きたでしゅ』
「ボクはケイスケ。けっこんきねんびの、おかあさんと、おとうさんに、あんしんして、おでかけにいってほしかった……」
『ケイスケの愛、うけとったでしゅ。だからねがいをひとつ、かなえるでしゅ』

 ケイスケは、なみだでほほをぬらしながら、ぽつりぽつりとはなしはじめました。

「ボクのこと、しょうがくせいのときから、いじめてくるヤツがいて……ちかごろは、おもちゃやまんがじゃなく、おかねとかを、とっていくんだ。もう、おかあさんたちに、だまってるなんて、できない」
『いいのこすことは、それだけでしゅか?』

 コロンのことばは、やわらかく、けれどそっけなくひびきます。

『ケイスケは、これからおおきくなって、あたらしいしごとや、かていをもって、おおくのかぞくに、かこまれてすごす、みらいがまっていたでしゅ』
「はは、そうなんだ。しんじられないけど、いきていたらよかったなあ」
『ケイスケのおかあさんも、おとうさんも、きっとうちあけてほしかったと、おもうでしゅ』

 じぶんが、しんでしまったとおもいこんだ、ケイスケはむねがいたくなるほど、なきました。

「ごめん、なさい。いじめられたくらいで、しんだりして。ごめんなさい、おかあさん……!」

 すると、コロンのまっしろなシッポのけだまが、ふんわりほどけて、はるのそらがみえました。

「きれいなそら」
『そうでしゅね』
「ボク、ひょっとして、いきてる……?」
『そうでしゅね』

 ショックでうごけないケイスケをおいて、コロンはふわりとさくをとびこえ、ロンロンのまつどうろへと、まいおりました。

『ロンロン……ふくしゅうはいけないことだと、おもうでしゅか?』
「おもわんよ。コロンがしたいなら、すればいい」
『ケイスケのいのちをおびやかし、愛をうばおうとしたつみ……コロンはとってもゆるせないでしゅ!』

 コロンのめは、まっかにもえていました。


 ロンロンがかぎつけたこうえんのさきに、くろいキャップぼうしのおとこのこが、いました。

 なんだか、おおきなおとこのこに、かこまれています。

「ほんとうだよ! あいつ、マンションのベランダから、こう、のりだして!」
「うそつくんじゃねえ、あいつがそんなどきょう、あるはずねえだろう。かねがないなら、おまえんちのおやから、とってこい」
「そ、そんなあ!」

 そのとき、コロンのめが、もとのあおいろにもどりました。

「なかまだと、おもっていたのに……」

 くろいキャップぼうしのおとこのこは、なかまにうらぎられたのです。

 せいのおおきな、おとこのこたちにこづきまわされて、いたそうにかおをゆがめています。

『そんななかま、いないほうがマシでしゅ』
「えっ?」

 くろいキャップぼうしのおとこのこは、これからはじまるいじめのよかんに、びくびくして、あたりをきょろきょろしましたが、コロンのすがたを、みつけることはできませんでした。

「ちっ、なんだよ。いぬか。おどかしやがって」

 くろいキャップぼうしのおとこのこは、ロンロンに、あしですなをかけていきました。

『じぶんだけがたすかりたいとおもうひとに、コロンはみつけられないでしゅ』 

 コロンは、ちょっぴりうえをむいたはなを、そらにむけました。


 そのころ、マンションのいっかいでは、さわぎになっていました。

 ケイスケが、さんかいのベランダから、おちたのをみかけたじゅうみんが、かけつけてきたのです。

 さいわい、けがはありませんでしたが、ケイスケはショックからか、おちたときのきおくを、うしなっていました。

 じゅうみんがよんだ、きゅうきゅうしゃが、サイレンをならして、マンションのまえにとまります。

「こんかいは、なんだか、コロンのきもちがわかる」
『しかえしは、ひつようなかったでしゅ。さっ、愛をさがしにいくでしゅ』

 ケイスケの、ちのなみだで、あかくそまった、シッポをゆらしながら、コロンはたびをつづけます。
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