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斎藤と山本の苦労
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「案外、普通に出来上がってくんだな。」
斎藤は、一京と和輝を迎えに行く道の途中で建設中のマンションに目を向ける。
隣の助手席には山本が座っている。運転手をどちらがするかは決まっていないが、割合的には斎藤が多かった。
「建ててる奴らは何も知らねぇし、そんなもんだろ。」
一京達の住んでいるタワーマンションとまではいかないが、なかなか高級志向のお高めマンションで、庶民には手が出ない賃貸料になっている。買うともれば、更にだ。
ここの土地の買収に天神会がこっそり協力したこともあり、一京から住みたいなら口を聞くと言われたが二人とも断った。
だって、ここ俺らが死体埋めたとこだし。
「でも、やっぱあれさ、どうせなら地鎮祭前に埋めた方がマシだったんじゃね?」
「お前、意外とそういうの信じんのな。てか、真面目に運転しろよ。これ、和輝さんの復帰に合わせて買った新車だぞ。」
斎藤と山本にとっても和輝のいない5年は、なかなかの激務だった。
一京が仕事を詰めれば、部下の二人も必然的に忙しくなる。
一京と違って二人には普通に休日が存在したので、遥かにマシだが、和輝のいない時間を仕事で埋める一京を見ているのは苦しかった。
それに、重労働なのは死体処理だ。いくらマニュアルがあっても細かいところは、その都度違う。
特に一京に特別扱いされた死体は、マニュアルには沿わない。
ここには、鰆目組の組員を何人か埋めた。山に埋めた奴らもいるが、ある日急に一京が
『人柱が欲しいと言われたから、今日の奴らはそっちに埋める。』
と言ってきて、 ここに埋めにきた。
見物客がいたのにはびびった。
下っ端共が使えれば楽だったのに、きっと客がいるから自分達二人だけだったんだと悟った。
重機が使えたので良かった。手掘りだったら、こっちも死んでた。
しかし、世の中には悪趣味な人間がいるもんだと思った。このご時世に人柱だなんて・・・。
山本と斎藤は二人になった時、案外、死体ってそこら中に埋まってんじゃないかって話をした。
「あっ、けどあそこって、もともと建ってたビルがそもそも事故物件だったんだろ?なんかセクハラだか痴漢だかで訴えられた政治家が飛び降り自殺したとかで・・・」
ふいに山本が思い出して斎藤をちらりと見る。斎藤もそれを聞いて、そうだったと思い出した。
「あったな・・・そういう話。事故かなんかで体に後遺症の残った息子も道連れの親子心中の飛び降りだっけ・・・」
二人が生まれる前の事件だが、事務所を構えていたビルの屋上から国会議員が息子と共に飛び降り自殺をしていた。
ビル自体は老朽化で取り壊しになり、そろそろ事件も世間から忘れ去られただろうタイミングで、ビルの周りの土地もいくつか買い取り、今のマンションが建つことになった。
今年中には完成予定だという、このマンションはきっとすぐに満室になるだろう。
もうすでに、半分以上の部屋には予約が入っていると聞いている。
曰く付きの土地の割に問題なく工事が進み部屋が埋まっていくのは、人柱が務めを果たしているからなのかもしれない。
絶対に住みたくないけれど。
「まぁでも、そういうは、また別にお祓いとかしてんじゃねぇの?」
目的地のタワーマンションが近付いて、二人は気を引き締めた。
「一京、俺ら・・・こんなことしてていいのか?」
天神会の事務所には若頭になった一京に与えられた個室がある。当然のように、和輝も一緒に使っている。
「いい。」
一京は、自分のデスクの上に和輝を座らせ、自分は椅子に座って和輝の太腿に頭を乗せていた。
オフィス仕様の膝枕である。
和輝は、少々とまどいながらも一京の頭を撫でてやる。
時折、一京は和輝の太腿に顔を押し付けて、スーツ越しの感触を味わっていた。
「和輝、斎藤と山本が帰ってきたら、今受け持ってる店の巡回に行こう。」
あと一時間は帰って来ないけど。適当に外回りの仕事に行って、3時まで帰ってくんなって言ったから。
だから、巡回も本当は済んでる。
「オシャレな店が増えてたよな!!カフェとか!」
「夜の店ばっかじゃやってけねぇならな。」
資金面で言えば問題ないが、夜の店は面倒くさい。つけがたまって消える客や、突然いなくなる従業員の女、ああいうのは夜ならではだ。
店に定期的に顔を出すのも自分の夜の時間がとられるから嫌だし、何よりああいう店に和輝を連れて行きたくない。
なので、今は健全な飲食店をメインに受け持っている。
一京が和輝の太腿を撫でる。フルオーダーの高級スーツだけあって生地の手触りが良い。
一京にとっては和輝の太腿という中身ありきなので、膝枕の邪魔にならないという点を評価している。
家でも和輝と一緒で、職場でも和輝と一緒・・・すごく良い。これ以上の幸せってきっとない。
~♪♫~♪♫~♪♫~
一京の仕事用のスマホがなる。メッセージだ。
和輝の膝に頭をのせたまま画面を開くと、山本からだった。
頼んでおいたお使いも無事終わったようだ。
「また、死体埋めんの?」
一京が和輝とイチャイチャするために外に追い出された斎藤と山本は、店を巡回しながらそれとは別に頼まれたお使いをこなしていた。
「あれだよ、和輝さんが服役中に同室だったってやつ。」
「主犯のやつ?同業者だったじゃん!!他所の奴に手だしたら、揉めんだろ。」
「そいつ一人を差し出すか、組員全員死ぬかの二択を提示して、身柄をもらえることになってるらしい・・・。」
「マジっ!?」
和輝を傷付け不安にさせたという理由で、あと数日で死ぬ男だ。あと二人、悪乗りしてきた奴らもいたが元凶はこの男なので、とりあえずこいつは殺す。
「埋めるとこが、また建設現場でさ。だから日程に合わせて殺さないと埋めれる期間決まってんだよ。ちょっと身柄引き渡しの日時の確認で、向こうの事務所寄るわ。」
斎藤は、一京と和輝を迎えに行く道の途中で建設中のマンションに目を向ける。
隣の助手席には山本が座っている。運転手をどちらがするかは決まっていないが、割合的には斎藤が多かった。
「建ててる奴らは何も知らねぇし、そんなもんだろ。」
一京達の住んでいるタワーマンションとまではいかないが、なかなか高級志向のお高めマンションで、庶民には手が出ない賃貸料になっている。買うともれば、更にだ。
ここの土地の買収に天神会がこっそり協力したこともあり、一京から住みたいなら口を聞くと言われたが二人とも断った。
だって、ここ俺らが死体埋めたとこだし。
「でも、やっぱあれさ、どうせなら地鎮祭前に埋めた方がマシだったんじゃね?」
「お前、意外とそういうの信じんのな。てか、真面目に運転しろよ。これ、和輝さんの復帰に合わせて買った新車だぞ。」
斎藤と山本にとっても和輝のいない5年は、なかなかの激務だった。
一京が仕事を詰めれば、部下の二人も必然的に忙しくなる。
一京と違って二人には普通に休日が存在したので、遥かにマシだが、和輝のいない時間を仕事で埋める一京を見ているのは苦しかった。
それに、重労働なのは死体処理だ。いくらマニュアルがあっても細かいところは、その都度違う。
特に一京に特別扱いされた死体は、マニュアルには沿わない。
ここには、鰆目組の組員を何人か埋めた。山に埋めた奴らもいるが、ある日急に一京が
『人柱が欲しいと言われたから、今日の奴らはそっちに埋める。』
と言ってきて、 ここに埋めにきた。
見物客がいたのにはびびった。
下っ端共が使えれば楽だったのに、きっと客がいるから自分達二人だけだったんだと悟った。
重機が使えたので良かった。手掘りだったら、こっちも死んでた。
しかし、世の中には悪趣味な人間がいるもんだと思った。このご時世に人柱だなんて・・・。
山本と斎藤は二人になった時、案外、死体ってそこら中に埋まってんじゃないかって話をした。
「あっ、けどあそこって、もともと建ってたビルがそもそも事故物件だったんだろ?なんかセクハラだか痴漢だかで訴えられた政治家が飛び降り自殺したとかで・・・」
ふいに山本が思い出して斎藤をちらりと見る。斎藤もそれを聞いて、そうだったと思い出した。
「あったな・・・そういう話。事故かなんかで体に後遺症の残った息子も道連れの親子心中の飛び降りだっけ・・・」
二人が生まれる前の事件だが、事務所を構えていたビルの屋上から国会議員が息子と共に飛び降り自殺をしていた。
ビル自体は老朽化で取り壊しになり、そろそろ事件も世間から忘れ去られただろうタイミングで、ビルの周りの土地もいくつか買い取り、今のマンションが建つことになった。
今年中には完成予定だという、このマンションはきっとすぐに満室になるだろう。
もうすでに、半分以上の部屋には予約が入っていると聞いている。
曰く付きの土地の割に問題なく工事が進み部屋が埋まっていくのは、人柱が務めを果たしているからなのかもしれない。
絶対に住みたくないけれど。
「まぁでも、そういうは、また別にお祓いとかしてんじゃねぇの?」
目的地のタワーマンションが近付いて、二人は気を引き締めた。
「一京、俺ら・・・こんなことしてていいのか?」
天神会の事務所には若頭になった一京に与えられた個室がある。当然のように、和輝も一緒に使っている。
「いい。」
一京は、自分のデスクの上に和輝を座らせ、自分は椅子に座って和輝の太腿に頭を乗せていた。
オフィス仕様の膝枕である。
和輝は、少々とまどいながらも一京の頭を撫でてやる。
時折、一京は和輝の太腿に顔を押し付けて、スーツ越しの感触を味わっていた。
「和輝、斎藤と山本が帰ってきたら、今受け持ってる店の巡回に行こう。」
あと一時間は帰って来ないけど。適当に外回りの仕事に行って、3時まで帰ってくんなって言ったから。
だから、巡回も本当は済んでる。
「オシャレな店が増えてたよな!!カフェとか!」
「夜の店ばっかじゃやってけねぇならな。」
資金面で言えば問題ないが、夜の店は面倒くさい。つけがたまって消える客や、突然いなくなる従業員の女、ああいうのは夜ならではだ。
店に定期的に顔を出すのも自分の夜の時間がとられるから嫌だし、何よりああいう店に和輝を連れて行きたくない。
なので、今は健全な飲食店をメインに受け持っている。
一京が和輝の太腿を撫でる。フルオーダーの高級スーツだけあって生地の手触りが良い。
一京にとっては和輝の太腿という中身ありきなので、膝枕の邪魔にならないという点を評価している。
家でも和輝と一緒で、職場でも和輝と一緒・・・すごく良い。これ以上の幸せってきっとない。
~♪♫~♪♫~♪♫~
一京の仕事用のスマホがなる。メッセージだ。
和輝の膝に頭をのせたまま画面を開くと、山本からだった。
頼んでおいたお使いも無事終わったようだ。
「また、死体埋めんの?」
一京が和輝とイチャイチャするために外に追い出された斎藤と山本は、店を巡回しながらそれとは別に頼まれたお使いをこなしていた。
「あれだよ、和輝さんが服役中に同室だったってやつ。」
「主犯のやつ?同業者だったじゃん!!他所の奴に手だしたら、揉めんだろ。」
「そいつ一人を差し出すか、組員全員死ぬかの二択を提示して、身柄をもらえることになってるらしい・・・。」
「マジっ!?」
和輝を傷付け不安にさせたという理由で、あと数日で死ぬ男だ。あと二人、悪乗りしてきた奴らもいたが元凶はこの男なので、とりあえずこいつは殺す。
「埋めるとこが、また建設現場でさ。だから日程に合わせて殺さないと埋めれる期間決まってんだよ。ちょっと身柄引き渡しの日時の確認で、向こうの事務所寄るわ。」
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