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雅貴と谷川⑧

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 「夏樹・・・こっち見て・・・」

 「・・・あっう♡」
 
 体の中で僅かでも雅貴が動くと、敏感に感覚を拾ってしまう。
 雅貴の方に視線を合わせても、涙で滲んではっきり見えない。

 「好き、夏樹・・・全部入りたい・・・お前の中に入れて・・・好き・・・」

 全身を包む甘い刺激で、頭も少しぼぉとする。けれど、目の前の自分の全てを捧げた男の声だけは、はっきり分かった。

 こんなふにゃふにゃになった自分なんて、力尽くでどうにでもできるのに、この男は一度もそんな真似しなかった。

 「・・・はやく・・・まさたか・・・おれ、とんじまぅから・・・分かるうちにいれて・・・」

 『今日は特別』、それは谷川も同じ気持ちだった。

 約4ヶ月前のあの日、本当は2年続けた妊活に見切りを付けようと思っていた。
 雅貴のことは愛している。けれど、子供ができない。

 主治医の先生は2年ぐらいは当たり前にかかる期間だし、ほとんどの同性カップルの妊活はもっと長いのが普通だと言ってくれた。
 その言葉を聞いても、自分に原因があるんじゃないかという気持ちが消せず、酒に逃げた。
  
 飲んだ勢いで別れを切り出そうと思っていた。
 でも、全然飲めなくて、罪悪感が増えただけだった。

 「夏樹・・・嬉しい♡♡愛してる♡好き♡」 

 結局、飲酒で捕まって、この男はめちゃくちゃ怒りながら心配して、帰ってこい言ってくれて、もう少しだけ、と甘えた気持ちが出た。

 「あぁぁぁ♡♡」

 大きくて熱いものが体の内側を押し広げるように入ってくる。
 目の前がチカチカする。

 「あっ♡んっ♡」

 根本まで埋め込んだものを馴染ますように、雅貴は大きく息をしながら、一度止まる。

 もう何度も繰り返している行為だが、期間があくと谷川の体はまるで初めての時に戻ってしまったかのようだった。
 雅貴は、その度、面倒臭そうな様子も見せず、時間をかけて谷川の体をじっくり愛するのを楽しんでいる。

 「好き・・・まさたか・・・キスしてほしい・・・」

 「ん♡可愛い♡♡夏樹♡♡」

 普段だったらありえないおねだりに、喜んで答えた。素肌で感じるお互いの体温に安心する。

 服役中、あんな事が起こって、今度こそお前に顔向けできないと思った。
 病室でお前の迎えを待っていた時、本当は別れる覚悟だったけれど、俺のために、わんわん泣いているお前を見て決心が鈍った。
 いつも通り、ホテルの部屋を用意してくれて、全部俺が悪いのに、何も悪くないって慰めてくれた。
 
 俺があの時、飲酒運転しなければ起きなかったことなのに。

 体中についた暴行の痕も、結局、お前が手当してくれて。
 あんまり優しくしてくれるから、俺は結局お前のところに戻ってしまった。
 俺じゃ、お前を幸せにできないんじゃないかって迷いながら。

 でも、俺がウジウジ腐っている間にも、子供は生まて来ようとしてくれてた。
 
 良かった・・・離れなくて。 
 お前と子供を迎えてやれる。
  
 何か一つでも違ったら、きっとどこか途中で俺は子供もお前も諦めてた。

 すっげぇ力技だけど、運命が俺を引き止めてくれたのかもしれない。
 
 俺がお前を幸せにしてやれるなら、こんな嬉しいことない。
 
 「雅貴っ、俺、プロポーズしてくれたの、すげぇ嬉しかった・・・ありがとう・・・。」

 谷川は顔を見られたくなくて、思いっきり雅貴を抱きしめて自分の体に押し付けた。

 「何度もしてただろ・・・毎回、夏樹が、子供ができてからって、断ってただけで。OKしてくれんなら、最初からしてくれよ。」

 雅貴の口調はどこか不貞腐れていたが、腕を伸ばして手探りで谷川の頭を撫でる。

 「でも・・・俺もめちゃくちゃ嬉しい。・・・なぁ、そろそろ動いていいか?」

 「いい・・・けど・・・あんま激しくしねぇで・・・今日のこと、ちゃんと覚えてたい・・・」
 
 「約束する。」

 「あっ・・・あぅっんんんっ♡♡」

 体の中から暑い塊が抜けていく。肉壁を擦られて、抜けきるぎりぎりで、また入ってくる。

 「いぁぁっあっ♡」

 奥にあたって、そのままグリグリ押されると、耐えきれなくて涙がボロボロ溢れた。

 「ひっ、あっ♡」

 「夏樹ん中、すげぇ気持ちいい♡♡」

 奥まで押し込んで、小刻みに抜き差しすると谷川の腰がシーツから浮いて、雅貴を締め付けたまま痙攣している。

 「あっ♡あぁぁぁっ♡♡」

 「夏樹エロくてかわいい♡♡」

 仰け反った胸の色づいた先端から母乳が滲んでいるのが見えた。本人はそれどころではないのか、そのまま肌を伝っていく。

 雅貴は、誘われるようにそれを舐め取り、もっととねだるように舌で突起を転がす。

 「あっん♡あぁっ♡まぁ、たかぁ♡♡」

 軽い絶頂を繰り返す谷川は、既に目がとろんとしている。あまり付き合わせると意識があった時のことも、記憶があいまいになってしまう。

 「んぁ♡あぁぅん♡」

 「夏樹、俺イキそう・・・もう少しだけ付き合って?」

 「っ♡はやくっ、おれ、もぉ、あっ♡♡」

 「うん♡♡」

  無理はさせない約束だったのに、魅力に負けて、ついじっくり味わってしまった。
  
 「ひっ♡あ゛あ゛♡♡♡」

 自身の絶頂に向けて雅貴が腰を動かすと、谷川から悲鳴のような声があがる。
 
 長い手足が縋るように雅貴の体に絡みつく。

 「夏樹っ、なか、いい?」

 顔を覗き込んで、許可を求めると谷川の手足に力が入り二人の体がより密着する。

 「・・・だして、俺んなか・・・」

 吐息混じりの掠れた声を出す唇に、雅貴は余裕のないキスをする。何度か腰をゆすって、最後にぐっと押し付け最奥に子種を放した。

 「あぁあぅっ♡」

 体の中に流れ込む熱に、谷川の体はビクビクと揺れ、くたりと手足を解いた。
 谷川自身は、一度も射精しないままだが、自然に出せない時に出そうとすると辛いらしいので、もう、今日はここまでだ。
  
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