11 / 34
ホテルの朝
しおりを挟む
翌日、和輝は思ったよりも早く目が覚めてしまった。
一京にしっかりと抱き込まれていたが、自分より体温の低い一京の肌が少し冷たく感じて、掛け布団を肩まであげた。
二人とも下着姿で寝てしまったから、体が冷えてしまったのかもしれない。
風呂から出て後、二人で寝ても余裕なベッドにはふわふわの布団が用意され、二人で倒れ込んだ。
ベッドに転がってぎゅうぎゅう抱きしめあって、キスしたり、一京と次の日の予定なんかの話していたはずだが気がついたら眠っていた。
ふと一京の顔を覗き込むと、しっかり目が開いていてビックリする。
「おはよ、一京。起こしちまったよな?ごめん。」
「おはよう、和輝。いや、むしろ起こしてほしいくらいだ、お前がいるのに一人で寝てたくない。」
「いくらなんでも、まだ早いだろ?」
ベッドの時計は朝の6時半をさしている。塀の中にいた頃と変わらない時間に起きてしまった。
一京が和輝と同じようにベッドの上で、上半身を起こす。
「一京、寒くねぇ?さっき、肩が冷たくなってた・・・」
「和輝が、温かいからいい。」
そう言うと一京は、再び和輝を抱きしめてベッドに倒れ込む。
「うおっっ!!」
「和輝、今日は何がしたい?」
「仕事は?平日だろ、今日。」
まるで、休みのように話をふってくる一京を怪訝に思う。
「昨日、親父達が言ってだろ?ちょっと休めって。」
「一京は、だろ。俺はちげぇよ。」
5年も留守にしておいて、戻ってきていきなり恋人と二人の休暇が許されるわけがない。
ずっと働きっぱなしだったという一京には休みが必要だが、自分はすぐに復帰しなければ周りに迷惑をかけるだけだ。
「親父だって谷川さんだって、俺が一人で休むなんて思っちゃいねぇよ。」
「いや、でも、俺は・・・」
「和輝がいないと、休めない。そんなに気になるなら親父には電話を入れる。」
そういって、一京はサイドボードのスマートフォンに手を伸ばす。
さすがに早すぎないか?と思ったが、一京はあっという間に電話をかけてしまい、あっさり繋がったことにより俺も普通に休みで良かったことが判明した。
簡単に休めるのも何か寂しい・・・
そう言うと
「谷川さんも出所後は親父と一緒に休暇とってたからな。」
谷川さんが、というより親父がさせてたんだけど・・・。
「マジで?谷川さんも?」
「あぁ、しかもあの人は、一回じゃねぇから。」
谷川は若い頃は血の気が多く喧嘩になるとやりすぎてしまうことも多かった。人だけでなく、暴れ方が豪快で、めちゃくちゃ物も壊す。
示談や罰金で済んだこともあれば、服役したこともある。
昔を知る同業者は、随分落ち着いたと口を揃えて言う。
和輝は、落ち着いてからの谷川しか知らないので、あの理想の兄貴分である谷川もそうしていたなら、間違っていないのだと思ってきた。
「じゃあ、こういう休みって普通ってこと?」
「あぁ、当然の権利だ。だから、和輝は心配しなくていい。」
「そっか!!じゃあ、俺、ホテルの朝飯食いたい。」
「分かった。」
一京が朝食の電話をしている間に、和輝はシャワーを浴びにいく。
昨日の夜、シャンプーしなかったので、アメニティのシャンプーを使ってみたかったのだ。
昨日、一京の髪を洗っている時すごく良い匂いがしたし、今朝の一京も良い匂いがした。
いつもの美容院のものも気に入っているけれど、ちょっと浮気心が疼いてしまった。
バスルームに移動すると、一京が追いかけてきた。
「シャワーか?」
そう聞かれたので、理由を話すと
「俺がする!!俺が和輝の髪をシャンプーするから、俺ももう一回、和輝にシャンプーしてほしい!」
と、言い出して二人で一緒にシャワーを浴びることになった。
「前から使っているやつより気に入ったなら変えるか?」
「あのシャンプー、一京と一緒に住み始めた時から、ずっと使ってるから変えたくない。家で使うのは、今のがいい。」
和輝と一京は天神会に入会とほぼ同時に同棲を始めたが、当時の和輝には、ほとんど収入がなく同棲をしたら、経済的に一京に頼りきった生活になることが分かっていたため、最初は、もう少し待ってほしいと断った。
けれど、待てないと言い張る一京が何かと手を回し、会長の雅貴が組が所有してあるマンションを一部屋用意するから、社宅だと思って二人で住めと言ってきて、二人の同棲はスタートした。
「思い出深いっていうか・・・気に入ってるし・・・」
一京にシャンプーしてもらいながら、和輝は懐かしい当時を思い出した。
予想通り経済的に一京に頼りきった生活になったが、同棲を誘ってきた一京は生活能力がまったくなく、そっちは和輝が担当している。
「和輝・・・可愛い♡♡♡」
思い出を大切にしてくれてる!!と感動した一京は、まだシャンプーの泡だらけの和輝を抱きしめた。
和輝、可愛い♡そんな風に思ってくれてたなんて嬉しい!!
泡のせいで目を開けられない和輝は、
「一京っ!!先にシャンプー流してくれよ!!」
と、腕の中でもがいた。
二人でじゃれ合いながらシャワーを浴びていると、そろそろ出ようと和輝が一京を急かす。
一京としては、裸でイチャつくのはすごく幸せを感じるので、まだまだ堪能したい。
抱きしめたまま離さず、少ししぶった態度を見せると
「・・・朝飯食いたい・・・」
と、腕の中の和輝にすまなそうな顔で上目遣いにおねだりされ、シャワーを切り上げた。
「すげぇ美味そうっ!!」
綺麗にセットされた朝食を見て和輝が嬉しそうにはしゃぐ。
可愛い・・・食べ物で喜ぶ和輝、可愛い・・・このホテルにして良かった♡
キラキラ輝く薄茶の瞳を見て、一京も嬉しくなる。
服役中の話を聞いた時は、どうしたら和輝の心の傷を癒せるか、そればかり考えてしまったが、少しでも元気になってくれたら、浮かれ気分で予約したこのホテルも役に立ったというものだ。
昨晩、和輝が寝た後、山本と斎藤に和輝と同室だった人間と関わっていただろう人間を調べるように言っておいた。
起きてしまったことは消せないが、和輝を傷付けた奴らをどうにかしないと、気が収まらない。
一京にしっかりと抱き込まれていたが、自分より体温の低い一京の肌が少し冷たく感じて、掛け布団を肩まであげた。
二人とも下着姿で寝てしまったから、体が冷えてしまったのかもしれない。
風呂から出て後、二人で寝ても余裕なベッドにはふわふわの布団が用意され、二人で倒れ込んだ。
ベッドに転がってぎゅうぎゅう抱きしめあって、キスしたり、一京と次の日の予定なんかの話していたはずだが気がついたら眠っていた。
ふと一京の顔を覗き込むと、しっかり目が開いていてビックリする。
「おはよ、一京。起こしちまったよな?ごめん。」
「おはよう、和輝。いや、むしろ起こしてほしいくらいだ、お前がいるのに一人で寝てたくない。」
「いくらなんでも、まだ早いだろ?」
ベッドの時計は朝の6時半をさしている。塀の中にいた頃と変わらない時間に起きてしまった。
一京が和輝と同じようにベッドの上で、上半身を起こす。
「一京、寒くねぇ?さっき、肩が冷たくなってた・・・」
「和輝が、温かいからいい。」
そう言うと一京は、再び和輝を抱きしめてベッドに倒れ込む。
「うおっっ!!」
「和輝、今日は何がしたい?」
「仕事は?平日だろ、今日。」
まるで、休みのように話をふってくる一京を怪訝に思う。
「昨日、親父達が言ってだろ?ちょっと休めって。」
「一京は、だろ。俺はちげぇよ。」
5年も留守にしておいて、戻ってきていきなり恋人と二人の休暇が許されるわけがない。
ずっと働きっぱなしだったという一京には休みが必要だが、自分はすぐに復帰しなければ周りに迷惑をかけるだけだ。
「親父だって谷川さんだって、俺が一人で休むなんて思っちゃいねぇよ。」
「いや、でも、俺は・・・」
「和輝がいないと、休めない。そんなに気になるなら親父には電話を入れる。」
そういって、一京はサイドボードのスマートフォンに手を伸ばす。
さすがに早すぎないか?と思ったが、一京はあっという間に電話をかけてしまい、あっさり繋がったことにより俺も普通に休みで良かったことが判明した。
簡単に休めるのも何か寂しい・・・
そう言うと
「谷川さんも出所後は親父と一緒に休暇とってたからな。」
谷川さんが、というより親父がさせてたんだけど・・・。
「マジで?谷川さんも?」
「あぁ、しかもあの人は、一回じゃねぇから。」
谷川は若い頃は血の気が多く喧嘩になるとやりすぎてしまうことも多かった。人だけでなく、暴れ方が豪快で、めちゃくちゃ物も壊す。
示談や罰金で済んだこともあれば、服役したこともある。
昔を知る同業者は、随分落ち着いたと口を揃えて言う。
和輝は、落ち着いてからの谷川しか知らないので、あの理想の兄貴分である谷川もそうしていたなら、間違っていないのだと思ってきた。
「じゃあ、こういう休みって普通ってこと?」
「あぁ、当然の権利だ。だから、和輝は心配しなくていい。」
「そっか!!じゃあ、俺、ホテルの朝飯食いたい。」
「分かった。」
一京が朝食の電話をしている間に、和輝はシャワーを浴びにいく。
昨日の夜、シャンプーしなかったので、アメニティのシャンプーを使ってみたかったのだ。
昨日、一京の髪を洗っている時すごく良い匂いがしたし、今朝の一京も良い匂いがした。
いつもの美容院のものも気に入っているけれど、ちょっと浮気心が疼いてしまった。
バスルームに移動すると、一京が追いかけてきた。
「シャワーか?」
そう聞かれたので、理由を話すと
「俺がする!!俺が和輝の髪をシャンプーするから、俺ももう一回、和輝にシャンプーしてほしい!」
と、言い出して二人で一緒にシャワーを浴びることになった。
「前から使っているやつより気に入ったなら変えるか?」
「あのシャンプー、一京と一緒に住み始めた時から、ずっと使ってるから変えたくない。家で使うのは、今のがいい。」
和輝と一京は天神会に入会とほぼ同時に同棲を始めたが、当時の和輝には、ほとんど収入がなく同棲をしたら、経済的に一京に頼りきった生活になることが分かっていたため、最初は、もう少し待ってほしいと断った。
けれど、待てないと言い張る一京が何かと手を回し、会長の雅貴が組が所有してあるマンションを一部屋用意するから、社宅だと思って二人で住めと言ってきて、二人の同棲はスタートした。
「思い出深いっていうか・・・気に入ってるし・・・」
一京にシャンプーしてもらいながら、和輝は懐かしい当時を思い出した。
予想通り経済的に一京に頼りきった生活になったが、同棲を誘ってきた一京は生活能力がまったくなく、そっちは和輝が担当している。
「和輝・・・可愛い♡♡♡」
思い出を大切にしてくれてる!!と感動した一京は、まだシャンプーの泡だらけの和輝を抱きしめた。
和輝、可愛い♡そんな風に思ってくれてたなんて嬉しい!!
泡のせいで目を開けられない和輝は、
「一京っ!!先にシャンプー流してくれよ!!」
と、腕の中でもがいた。
二人でじゃれ合いながらシャワーを浴びていると、そろそろ出ようと和輝が一京を急かす。
一京としては、裸でイチャつくのはすごく幸せを感じるので、まだまだ堪能したい。
抱きしめたまま離さず、少ししぶった態度を見せると
「・・・朝飯食いたい・・・」
と、腕の中の和輝にすまなそうな顔で上目遣いにおねだりされ、シャワーを切り上げた。
「すげぇ美味そうっ!!」
綺麗にセットされた朝食を見て和輝が嬉しそうにはしゃぐ。
可愛い・・・食べ物で喜ぶ和輝、可愛い・・・このホテルにして良かった♡
キラキラ輝く薄茶の瞳を見て、一京も嬉しくなる。
服役中の話を聞いた時は、どうしたら和輝の心の傷を癒せるか、そればかり考えてしまったが、少しでも元気になってくれたら、浮かれ気分で予約したこのホテルも役に立ったというものだ。
昨晩、和輝が寝た後、山本と斎藤に和輝と同室だった人間と関わっていただろう人間を調べるように言っておいた。
起きてしまったことは消せないが、和輝を傷付けた奴らをどうにかしないと、気が収まらない。
10
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる