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③二人の家

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 「啓介さん、ただいまー♡」

 先に帰ってきているはずの啓介に声をかけながら、家の玄関を開けた。

 純也は、レストランで降りた際に私物の他に、出入りの業者に個人的に頼んでおいた食料を車に積んで帰ってきていた。
 職場の場所柄、仕事の後、家に帰る前にちょっと買い物して、というわけにもいかないため、普段の食材は業者に注文してレストランに届けて貰っている。

 確認しながら、積み込んでいたら少し時間がかかってしまった。

 「おかえり、純也。」

 帰宅後にシャワーを浴びて部屋着に着替えた啓介が出迎えてくれる。
 室内も、暖房で丁度よく温かい。

 「良い匂い♡♡ちゅっ♡」

 啓介からふわりと石鹸の香りがして、純也は思いっきり吸い込んだ。

 まだ少し湿った髪や額に幾つもキスを落とす。

 「こらっ、純也!!お前もシャワーを浴びて着替えてこい!!」

 二人は一緒に住んでいるので、シャワー後の啓介など毎日見ているのに、純也はいまだにデレデレしてキスしてくる。

 純也は照れて少しツンツンしている啓介が、めちゃくちゃ可愛くて好きなのだ。
 同棲して一年経つのに、慣れることなくツンツンしてるのが、すごく良い。
 ずっと可愛いくツンツンしてほしい。

 あくまでも、少しのツンツンだから可愛いのであって、激しいレベルでツンツンされると傷付く。
 啓介のツンツンは純也にとって絶妙だ。
 
 「シャワー浴びたら、すぐご飯作るから、啓介さんはビール飲んで待ってて♡」

 できる限り食事は、純也が作っている。
ゴルフコースもレストランも宿泊施設も完全会員制の完全予約制なので、ものすごく忙しいということもなくディナーの予約が入っていない日は夕方には終わっている。

 時間のある時に常備菜やソースを作り置きしたり、野菜を使いやすいよう切って冷凍したり料理を時短で作れるよう工夫し、常に啓介の胃袋を掴んで離さないよう努力しているのだ。

 二人が住んでいるのは、会社が用意している社宅だ。山の低い位置に転々と10部屋あるアパートが二棟とコテージ風の小さな一軒家が五つ建っている。

 アパート方は、シーズン中の繁忙期に短期で雇うアルバイトが住み込みになるため、常に数部屋は空いている。
 ちなみに繁忙期は夏であることと、アルバイトはコテージとレストランの手伝いになるため、ご祈祷なしでも働けている。
 人のテリトリーから出ず、山の奥へ入っていかなければ、何とかなる。
 夏は夜明けが早く日が落ちるのが遅いため、怪異が活動的になる夜の時間が短い。

 五つある一軒家のうちの一つに啓介と純也は一緒に住んでいる。
 もともと、純也はアパートの方を借りていたが付き合って程なく、少し強引めに啓介が借りていた一軒家の社宅に転がり込んだ。



 「ねぇ啓介さん♡明日休みでしょ?」

 夕食後、リビングでテレビを見ていた啓介に後片付けを終えた純也が機嫌良さげに近付いてくる。
 
 二人がけソファーに座った啓介の隣りに座ると、純也は甘えるように啓介に擦り寄った。

 「・・・っあ!」

 そのまま柔らかな肘掛けに押し倒され、啓介は耳元で甘く囁かれる。

 「啓介さん、いい?」

 返事をするより早く純也の唇が啓介の耳をかすめ、舌が縁をなぞり耳たぶを甘噛みする。

 「っんぁん♡」

 啓介は受け入れる側で仕事も肉体労働なので、二人の夜の営みは啓介の休みの前日と決めている。

 「啓介さんの口からいいって聞きたい・・・啓介さん♡今日、していい?」

 「・・・ぃぃ・・・。」

 小さな声だが、確かに許可をくれた。日に焼けた肌でも分かるぐらいに赤くなっている。

 可愛い♡♡

 何度、抱き合っても毎回、恥ずかしそうにするのがたまらない。
 そんな啓介に、純也も毎回、心を鷲掴みにされるのだ。

 うつ伏せに押し倒されたままの啓介の部屋着のスウェットの裾から、純也の大きな手が素肌を這うように入ってくる。

 「あっ♡」

 啓介の体がびくりと跳ねる。

 「純也っ!!ここではしたくないっ!!」 

 啓介が慌てて、純也の手を止めようと上から抑える。啓介は寝室以外で行為に及ぶのを嫌がるが、その理由が恥ずかしいからだと分かった今では、そこにもときめく。

 「少しだけ、お風呂が準備できるまでの間触らせて?」

 「風呂?準備してるのか?」

 「はい♡今、お湯ためてるからもう少し待ってくださいね♡」

 啓介は帰宅後、シャワーを浴びても寝る前には必ずお風呂にも入る。
 なぜなら、お風呂が好きだから。

 帰宅後のシャワーで汚れを落とし、寝る前のお風呂ではひたすらお湯に浸かっている。
 
 もともと一人暮らしなのに一軒家を借りているのはアパートの方はユニットバスだからだ。

 純也本人は、寝る前のお風呂はどっちでもいい。
 ただ愛する相手の好きなことや大切にしていることをないがしろにしたくないのだ。

 それに、二人でイチャイチャしながらお湯に浸かるのは最高に健康に良い。

 「・・・純也、お前の・・・そういう・・・嫌な顔せず俺に合わせてくれるの・・・嬉しい・・・」

 仕事中の啓介はストイックで他人にも自分にも厳しい。そんな人が、顔を赤くして目を伏せ、思いを伝えてくれるのに、きゅんとこない男がいるだろうか?

 いるわけない!!!俺、ベッドに行くまで我慢しなきゃいけないのにっっ!!

 「かわいいっっ!!」

 上から覆いかぶさり、狭いソファーの上で啓介を自分の下に閉じ込めた。

 「んっ♡ちゅっぢゅっ♡♡」

 啓介の顔を捕まえると唇を合わせ、熱い口内で舌を絡め合わせる。
 純也の手が啓介の割れた腹筋を撫でると、それに反応して小さく体が揺れた。
  
 40前だというのに、ハリのある滑らかな肌と筋肉は日頃の肉体労働の賜物なのか。
 純也は、うっとりと腹筋の凸凹を楽しむように何度も撫でる。
 自分の作る食事もこの体に貢献していると思うと嬉しい。

 「っ♡ん、純也、お湯っ・・・もうたまったかも・・・」

 深いキスの合間に、啓介は息継ぎをするように大きく息を吸った。
 少し乱れた息がいやらしい。
 
 服も息も乱れて、こんなにいやらしいのに啓介の意識は今や完全にお風呂に向いている。

 あっという間に純也の腕の中から抜け出してしまった。

 「お前も一緒に入るだろ?」

 タオル用意するの素早すぎなとこまで、愛おしい。

 「はい♡もちろん♡♡」 

 
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