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新しい村で愛されています(続々編)
番外編その4:仕事はできたんだよ? ホントだよ?(7)
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「遅くなりまして申し訳ありません」
まもなくお昼ご飯という頃、エインが戻ってきた。よく考えたら隣村との境ってけっこう遠いんじゃないだろうか。悪いことをしたなと思った。
「エイン、ありがとう。遠かっただろ?」
「……いえ、馬に乗ればそれほど遠い場所ではございません。所属登録をしがてらいろいろ話を聞いて参りました」
馬で片道一時間以上の距離って、それほど遠くないとは言えないよな。最低でも12km以上先にあるのか? よくわからないけど。
エインが聞いてきてくれた話によると、依頼の数は一年を通してそれほどない。あるとしても隣村や近隣の村からで、このセイム村からの依頼はほとんどないそうだ。討伐系の依頼は更に少ない為、そこを拠点とする冒険者の数も少ないらしい。
「……ふうん、ありがとう。それは以前からずっと、なんだよな?」
「はい、そのようです」
「で、この村は元々王領だったから代官がいて、兵士も多少はいたと」
やはり執務棟の統括官と話をしなければならないだろう。ここはもう王領ではないのだから、領民にもそれは理解してもらわなければ困る。
「あー……けっこう面倒くさそう……」
俺は報告を聞いて頭を抱えた。
やらなければいけないことが多すぎて眩暈がしそうだが、インとできるだけ一緒にいる為である。現状を把握した上でできることをどんどんやっていかなければ明るい未来は訪れない。
「ルイ、たいへんそう?」
「……うん、多分たいへんだと思う……」
一年二年で変えられるものではないだろうし。でも、どう考えても現状維持はおかしい。今のところ必要経費などは国庫から出ているようだが、それが永久に続くわけではない。早めに国からの援助をもらわなくてもやっていけるようにならなければダメだと思うのだ。
「僕は難しいことはわからないから応援しかできないけど……いろいろ考えてるルイってやっぱりかっこいいね」
「……え……」
ロイに言われてちょっと照れてしまった。ロイはどちらかといえばかわいいタイプの美少年に見える。普通にしていれば少しキレイな子、ぐらいだけど、色を含むと途端に艶やかになるのだ。なんでこんなにうちのお嫁さんはかわいいんだろうと思ってしまった。
「ルイってば照れてる?」
「……うん」
なんか悔しかったけど、素直に答えた。
「昼ごはんの準備が整いました。今日はインさんも一緒ですよ」
「本当に!?」
いつもではないけど、昼ごはんをインと一緒に食べられる時もある。ちょうど昼で仕事が切りよく終わった時とかなのだろう。
「はい」
「……あー、面倒くせえ」
ケンの後ろからインの顔が覗いた。インの姿を見ただけで胸が高鳴った。
ベッドに腰掛けたままエインの話を聞いていた俺は、インに向かって手を伸ばした。インが笑み、
「ちょっと待ってろ」
と言ってジャケットを脱ぐ。その仕草がカッコよくてまたどきどきしてしまった。ジャケットはエインが受け取った。
「ルイ」
「イン」
当たり前のように抱き上げられる。インの首に腕を回して寄り添った。
「……本当に午後来るつもりか?」
「行く。俺はインの奥さんなんだろ?」
「それはそうだが……」
「この村の現状を把握しないと、インの仕事減らせないだろ?」
「……減るものなのか?」
「減らすんだよ。だってどう考えたって無駄が多いし。お金をかけるなって意味じゃなくて、効率化を図るんだよ」
「全くお前は……」
インが嘆息する。俺にはかなわないって言ってるみたいだった。
居間のソファにインが腰掛け、俺はその上に横抱き状態だ。ごはんは食べづらいけどインにくっついてるのは好きだから幸せだ。
「ルイの顔が蕩けてるねー」
「ルイさま、なんてかわいらしい……」
「くやしいけどかわいい……」
ロイ、エイン、ケンがそれぞれぼそぼそと呟いていたが聞かなかったフリをした。うちの連中は俺のこと好きすぎだと思う。俺もインのことめちゃくちゃ好きだけどさ。
サラダに肉に、と昼ご飯もなかなかに豪勢だ。俺の分はわざわざ食べやすい大きさに切ってあったりと過保護っぷりがひどい。確かに肉の種類によっては噛み切るのがたいへんなのもあるんだけど。あれっていったいなんの肉なんだろうな?
パンがなんとなくコッペパンっぽかったので、間に切り込みを入れてもらいサラダと肉を挟んで食べた。
「ルイさま、冒険者風ですね」
エインが嬉しそうに言う。確かにサンドイッチだと食べやすいよな。
「うん、これだと食べやすいかなって」
「俺にも作れ」
「え? 俺がやるのか?」
「ああ」
インに頼まれたのでまたパンに切り込みを入れてもらい、サラダとイン用の肉を挟んで渡した。インがとても嬉しそうに笑んだ。そして二人で簡単なサンドイッチを食べた。
「そういうのでいいんだったらベランダとか庭で食べてもよさそうだよねー」
ロイの言葉にそうしてみたいかもと思った。でもそれだったらサンドイッチの種類は多い方がいいかな。
「みんなでピクニック、みたいなの楽しそうだよな」
「ピクニックか……」
インが少し考えるように呟いた。実現できたらいいなと思った。
まもなくお昼ご飯という頃、エインが戻ってきた。よく考えたら隣村との境ってけっこう遠いんじゃないだろうか。悪いことをしたなと思った。
「エイン、ありがとう。遠かっただろ?」
「……いえ、馬に乗ればそれほど遠い場所ではございません。所属登録をしがてらいろいろ話を聞いて参りました」
馬で片道一時間以上の距離って、それほど遠くないとは言えないよな。最低でも12km以上先にあるのか? よくわからないけど。
エインが聞いてきてくれた話によると、依頼の数は一年を通してそれほどない。あるとしても隣村や近隣の村からで、このセイム村からの依頼はほとんどないそうだ。討伐系の依頼は更に少ない為、そこを拠点とする冒険者の数も少ないらしい。
「……ふうん、ありがとう。それは以前からずっと、なんだよな?」
「はい、そのようです」
「で、この村は元々王領だったから代官がいて、兵士も多少はいたと」
やはり執務棟の統括官と話をしなければならないだろう。ここはもう王領ではないのだから、領民にもそれは理解してもらわなければ困る。
「あー……けっこう面倒くさそう……」
俺は報告を聞いて頭を抱えた。
やらなければいけないことが多すぎて眩暈がしそうだが、インとできるだけ一緒にいる為である。現状を把握した上でできることをどんどんやっていかなければ明るい未来は訪れない。
「ルイ、たいへんそう?」
「……うん、多分たいへんだと思う……」
一年二年で変えられるものではないだろうし。でも、どう考えても現状維持はおかしい。今のところ必要経費などは国庫から出ているようだが、それが永久に続くわけではない。早めに国からの援助をもらわなくてもやっていけるようにならなければダメだと思うのだ。
「僕は難しいことはわからないから応援しかできないけど……いろいろ考えてるルイってやっぱりかっこいいね」
「……え……」
ロイに言われてちょっと照れてしまった。ロイはどちらかといえばかわいいタイプの美少年に見える。普通にしていれば少しキレイな子、ぐらいだけど、色を含むと途端に艶やかになるのだ。なんでこんなにうちのお嫁さんはかわいいんだろうと思ってしまった。
「ルイってば照れてる?」
「……うん」
なんか悔しかったけど、素直に答えた。
「昼ごはんの準備が整いました。今日はインさんも一緒ですよ」
「本当に!?」
いつもではないけど、昼ごはんをインと一緒に食べられる時もある。ちょうど昼で仕事が切りよく終わった時とかなのだろう。
「はい」
「……あー、面倒くせえ」
ケンの後ろからインの顔が覗いた。インの姿を見ただけで胸が高鳴った。
ベッドに腰掛けたままエインの話を聞いていた俺は、インに向かって手を伸ばした。インが笑み、
「ちょっと待ってろ」
と言ってジャケットを脱ぐ。その仕草がカッコよくてまたどきどきしてしまった。ジャケットはエインが受け取った。
「ルイ」
「イン」
当たり前のように抱き上げられる。インの首に腕を回して寄り添った。
「……本当に午後来るつもりか?」
「行く。俺はインの奥さんなんだろ?」
「それはそうだが……」
「この村の現状を把握しないと、インの仕事減らせないだろ?」
「……減るものなのか?」
「減らすんだよ。だってどう考えたって無駄が多いし。お金をかけるなって意味じゃなくて、効率化を図るんだよ」
「全くお前は……」
インが嘆息する。俺にはかなわないって言ってるみたいだった。
居間のソファにインが腰掛け、俺はその上に横抱き状態だ。ごはんは食べづらいけどインにくっついてるのは好きだから幸せだ。
「ルイの顔が蕩けてるねー」
「ルイさま、なんてかわいらしい……」
「くやしいけどかわいい……」
ロイ、エイン、ケンがそれぞれぼそぼそと呟いていたが聞かなかったフリをした。うちの連中は俺のこと好きすぎだと思う。俺もインのことめちゃくちゃ好きだけどさ。
サラダに肉に、と昼ご飯もなかなかに豪勢だ。俺の分はわざわざ食べやすい大きさに切ってあったりと過保護っぷりがひどい。確かに肉の種類によっては噛み切るのがたいへんなのもあるんだけど。あれっていったいなんの肉なんだろうな?
パンがなんとなくコッペパンっぽかったので、間に切り込みを入れてもらいサラダと肉を挟んで食べた。
「ルイさま、冒険者風ですね」
エインが嬉しそうに言う。確かにサンドイッチだと食べやすいよな。
「うん、これだと食べやすいかなって」
「俺にも作れ」
「え? 俺がやるのか?」
「ああ」
インに頼まれたのでまたパンに切り込みを入れてもらい、サラダとイン用の肉を挟んで渡した。インがとても嬉しそうに笑んだ。そして二人で簡単なサンドイッチを食べた。
「そういうのでいいんだったらベランダとか庭で食べてもよさそうだよねー」
ロイの言葉にそうしてみたいかもと思った。でもそれだったらサンドイッチの種類は多い方がいいかな。
「みんなでピクニック、みたいなの楽しそうだよな」
「ピクニックか……」
インが少し考えるように呟いた。実現できたらいいなと思った。
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