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その後44.名前を呼ばれると感じるらしい

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「名前なんか教えなくてもいいだろ……今まで必要なかったんだから……」

 今更感がくやしくてそんな女々しいことを言ってしまう。俺って面倒くさいな。

「うーん、確かあっちの天使さまはうちの天使さまのことハヤカワ先輩って言ってたよね? じゃあ名前はハヤカワって言うの?」

 ロイが記憶を辿り、後輩が言っていたことを思い出した。

「うん、そう。でも早川は苗字だよ」
「名前知りたいなー。天使さま抱く時に名前呼びたい」

 ロイが甘えるように言う。そんな風に言われるとしょうがないなって思ってしまう。ロイが俺の初めての人ってこともあるんだろう。
 インがロイをどかし、俺を抱き込むようにした。そうしてまた髪を優しく撫でる。

「もー、インさんひどい!」
「……俺はイン・レータという。このジーゲン村の、前の村長の息子だ」
「……うん?」
「王都では調教師をしていたが、お前をもらい受けることで職は辞した。今はこの村の警備隊長をしている」

 ……なんか自己紹介が始まってしまった。でもインのことが知れてよかったとは思う。

「……お前のことが知りたい。名前だけでもいい。教えてくれないか?」
「……ずるい」

 そんなことを言われたら逆らえないじゃないか。俺は拗ねたように呟いた。あーもうすっごく女々しくてやだ。

「……早川類」
「ルイ?」
「うん、そう……」

 小さい頃女みたいってからかわれたからあまり好きじゃない。でもインが呼んでくれるならいいかもしれない。

「ルイ……」
「うん……」

 髪に口づけられた。なんかこれじゃまるで恋人同士みたいじゃないか。

「ルイ、俺のものだ……」

 吐息と共に耳に届いて、俺は顔が熱くなるのを感じた。
 期待なんかしてない。だって俺はこの世界では、王にひどいことをした悪い奴だから。だからインのものになって監視されているのだ。

「天使さま、ルイって言うんだね。キレイな響き」
「ロイ、お前たちは呼ぶな」
「えー? インさん横暴!」
「ルイは俺のものだ」
「ひどーい!」
「……んっ……」

 そのまま唇を塞がれた。先ほどしたばかりなのにまたするのだろうか。名前を呼んで仕切り直しとか?

「んっ……はぁ……」
「ルイ、抱くぞ」

 また頬が熱くなる。逆らうつもりは全くないので、俺はインの腕の中でコクリと頷いた。途端、インに激しく唇を奪われた。

「……んんっ……!」

 腕の中にきつく囚われてされる口づけは俺を陶然とさせた。身体だけでも求められているのだと安心する。俺はこんな風に俺を奪ったインが好きなのだと改めて自覚した。
 これはきっとストックホルム症候群なのだろう。異世界に召喚されて、天使だから抱かれないと死んでしまうと言われて犯された。日本にいたら一生童貞だったかもしれないが、こんな風に延々男に抱かれ続けるようなことにはならなかったはずだ。どちらがよかったのかはもう俺にはわからない。
 ただインは今俺しか見ていないし、その男を好きなのだからいいと思う。
 唾液を飲まれ、口端から漏れたものも舐められる。首筋を何度も舐められて震えた。

「あーもう天使さまかわいー……でも僕だけの天使さまとか無理だしなー……」

 ロイが何やら言っているが、意味まではさっぱり入ってこない。インが俺の乳首をぺろぺろと舐め、ちゅっちゅっと優しく吸った。

「あっ、あっ……!」
「ルイ、気持ちいいか?」
「あっ……やっ……」

 どうして名前を呼ばれただけで嬉しくなってしまうのだろう。単純すぎて泣けてくる。

「……抱いてなくても乳が出ればいいのだがな……そうしたら、ルイの乳だけ飲んでいられる……」
「あっ、そ、そんなの……やだっ……!」

 ずっと乳首を吸われていたら頭がおかしくなってしまうではないか。そうじゃなくても俺を抱く者は沢山いるのに。

「ルイの乳はうまい」
「……っっ……!」
「ここから出る蜜も」
「やぁっ……!」

 小さい俺自身を握られてしまった。

「おまんこもな」
「やっ、言っちゃ……」
「ルイは全部甘い。俺たちを夢中にさせる……」
「やだぁっ……!」

 インは俺自身を舐めてイカせ、尻穴もまたたっぷり舐めほどいた。そうしてまたインのイチモツを頬張らせられ、俺はしっかり啼かされたのだった。

「やっ、もう無理っ……!」
「ルイ、無理じゃない」
「やああっ! もう呼ばなっ……あああんっっ!」

 なんでだか知らないけど、名を呼ばれながら抱かれたらいつもよりもっと気持ちよかった。俺、名前呼ばれたかったのかな。
 その日はずっとインが放してくれなかった。尻穴にずっとインのイチモツを受け入れさせられて、これ以上ないってぐらい感じさせられてしまったのだった。
 絶倫の相手はたいへんだとしみじみ思った。
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