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第4部 四神を愛しなさいと言われました

145.これからのことを考えなければなりません

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 四神宮に戻るのは一瞬だ。
 いつも、情緒も何もあったものではないと香子は思う。香子の手を握っていた黒月の手が離れた。それが香子には少し寂しく感じられた。

『玄武様、花嫁様、たいへん失礼しました。それでは』

 黒月が拱手してすみやかに室を出て行った。香子は玄武の腕に抱かれたまま周りを見回した。

『……玄武様の室ですか、ここは』
『そうだ』

 香子は嘆息した。それも場所は寝室である。

『香子』

 抱かれたまま香子は床にそっと下ろされる。玄武が香子に覆いかぶさってきた。香子はその首に腕を回す。

『玄武さま……ぁ……』

 四神宮に戻ってきてすぐに触れられてしまうことはわかっていたが、言うことは言っておかなければならない。

『……夕飯は食べたいです』
『……ほんにそなたは食い気だな』

 玄武は苦笑した。けれど香子にとって食事だけは譲れないのも確かだった。
 色気も何もあったものではないが、夫が四人もいるのだから主張しなければ何も通らないと香子も学んでいる。

『そなたの望むように……』

 そうしてしばし、香子は甘く蕩かされた。


 四神が香子を最後まで抱くのは夜だけである。
 そして基本は朱雀が香子に熱を与えた状態で交わるようにしている。そうでないと香子を怯えさせてしまうと四神はわかっているからだ。
 香子はただ、四神に甘く愛されていればいい。
 そう四神は思っている。
 夕飯より少し早めに香子は解放された。

『香子、そなたが愛しくてたまらぬが……そろそろ参ろうか』
『……んっ……』

 最後に蕩けるような口づけを与えられて、香子はとろんとしながら玄武にしがみついた。香子はもう身体の全てが四神のものになっていると自覚している。だから少し触れられただけでも反応してしまうし、身体だけでなく心も喜んでしまうのだとなんとなく感じていた。
 玄武は香子の衣裳を軽く整えると、己の衣裳も直し香子を抱き上げた。
 その首に香子は自然と腕を回す。最初は抱き上げられるのにただただ戸惑っていた香子だったが、今では抱き上げられるのが当たり前になり、そうされることが嬉しいと思えるようになった。

(慣れって怖い……)

 玄武は香子を、香子の部屋に運んだ。

『花嫁様、おかえりなさいませ』

 延夕玲、楊芳芳、そして侍女たちに迎えられ、香子はなんだか気持ちがくすぐったくなるのを感じた。

『ただいま』

 そうしてわらわらと侍女たちに群がられ、髪も衣裳も全て整えられる。玄武は居間で優雅に茶を啜り、香子の支度が整うのを待っていた。そうしている間に香子の部屋の向こうから侍女がやってきた。

『夕飯の準備が整いました』
『わかった』

 玄武が応える。そして支度が整った香子を抱き上げた。

『夕飯ができたそうだ』
『そう、ですか……』

 香子は苦笑した。もう片時も香子は地に足を付けることもできないらしい。靴を履かされた足を、香子はぶらぶら揺らした。行儀が悪いことはわかっていたが、香子は自分の足が少しかわいそうだと思ったのだ。

『香子、如何した?』
『いいえ……』

 こちらの世界では見たことはないが、元の世界のこの国ではかつて纏足の風習があったということを思い出した。足が小さい方が美人とされ、大きくなるはずの足を絞めつけられて骨を変形させられて……それは女子がそう簡単に逃げられないようにする為の風習であったはずだ。
 香子の移動が全て抱き上げられてなされるのならば、香子はいずれ歩き方を忘れてしまうだろう。そうして香子を逃がさないようにしているのだということを香子ははっきりと理解した。

(逃げたりしないんだけど……)

 どちらにせよ逃げる場所なんてない。
 香子はこの世界に囚われて、もう四神に捕まってしまっている。
 だからといって好きに過ごすことを諦めるつもりはなかった。
 夕飯の席について、香子はほっとした。
 さすがに四神宮の食堂では自分の椅子に座ることができる。座ったままではあるが、やっと地に足をつけられた。
 そして食卓には香子の好きな料理ばかりが並ぶ。
 前菜には肉料理もあるが、だいたいは海鮮や野菜の料理も出てくる。
 それらを香子は喜んで食べた。主食はキャベツと豚ひき肉の水餃子と、茄子とひき肉の水餃子だった。香子はそれらにおいしいおいしいと舌鼓を打つ。
 ごはんさえおいしければ、きっとどうにかなると香子は思った。

『……玄武様の領地でのごはんもおいしかったけど……やっぱりここの料理が一番ねえ』

 デザートにはごま団子が出てきた。キレイな丸の形はいつ見ても芸術だと香子は思う。
 夕飯を食べ終えたら、また玄武に抱かれて茶室へ向かった。香子は少し緊張してきた。いろいろな考えが浮かんで、思考がうまく定まらないのを感じた。

(紙に書いて整理しておけばよかった……)

 香子はこの世界の人間ではないから、この世界のルールについては詳しくない。四神はこの国と契約のような形でここにいるし、他の大陸には他の大陸の神がいるから移動はできないとは聞いている。
 だが、それ以外のルールはなんだろうと香子は自分なりに考えてみた。

(花嫁さえいれば、その花嫁が四神と心を通わせて愛し合えば次代の四神が生まれるのよね?)

 そして次代の四神が生まれれば、父親となる四神は身罷ってしまう。けれど次代が生まれるのは、四神が千年近く生きてからだ。
 ならば、四神はそれ以上生きることはないのだろうか?
 香子は四神にお茶を淹れながらそんなことを考えていたのだった。


ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
いいねもありがとうございます!


プチプリの閉鎖に伴いまして、登場人物一覧などはfanboxに移動しました。(20240706更新)
作品情報にurlを載せていますのでご確認ください。
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感想 85

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みんなの感想(85件)

MCEscher68
2024.10.12 MCEscher68

この後滅茶苦茶・・・1,2,3,4,・・・5Pですか!?

浅葱
2024.10.15 浅葱

マテマテマテマテ

解除
きんた
2024.10.05 きんた
ネタバレ含む
浅葱
2024.10.10 浅葱

いちゃらぶ。。。書きたい気もするしそこまで書くと蛇足な気もするしで悩ましいです。
砂を吐くほどに甘々。。。
がんばりまーす!

解除
MCEscher68
2024.08.03 MCEscher68
ネタバレ含む
浅葱
2024.08.04 浅葱

HAHAHAHAHAHAHA☆

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