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第4部 四神を愛しなさいと言われました
133.なかなか向かうことができません
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夜は約束通り青龍にドナドナされ、玄武と朱雀に見守られながら香子は青龍に抱かれた。
朱雀に熱を与えられなければ、香子は逃げ出したくなってしまう。
青龍が嫌なのではない。あまりの羞恥に耐えられないからだ。
何故こんなに恥ずかしいのかも香子にはわからない。そのうちわかる時が来るのかも知らない。
香子にできるのはただ、青龍の愛を受け止めることだけだった。
途中何度か水分補給であるとか、果物などを食べさせられていたように香子は思う。けれど目覚めた時はあまりの空腹に涙をこぼした。
「ううー……おなかすいたよぅ……」
日本語で呟いたらもっと泣けてきた。
青龍の室にいた玄武と青龍は、香子が目覚めてすぐに念話で厨房や侍女たちに伝えた。いつもだいたいこのぐらいの時間だと待機していた厨師と侍女たちがすぐに動き出す。
『香子』
「んぅ……」
青龍に抱き込まれて、香子は口を塞がれた。
青龍の舌を吸い、その唾液を啜る。気持ちいいのと、甘露で香子は震えた。
『お待たせしました』
居間の方から声がかかり、香子はビクッとした。あまりの飢えに青龍の唾液もおいしいと感じてしまったなんて重症だと香子は思った。
「んんっ……」
『香子、参ろうぞ』
睡衣を着せられ、その上から青龍の長袍を掛けられる。そうして抱き上げられて、居間の長椅子に腰かけた。
目の前の卓には前菜が所狭しと並べられている。すぐに出せる物として用意してあったのがわかり、香子は感謝した。
「いただきます」
そうして香子は料理を堪能した。
『ふぅ……』
散々食べて、ようやく香子の胃は落ち着いたらしい。よく噛んで食べたつもりだったが、周りからは流し込むように食べているように見えたに違いないと、香子は恥ずかしくなった。
実際には青龍と玄武もものすごい量を食べていたので、侍女たちからはやはり四神はすごいと思われているだけだ。
香子はずず……とお茶を啜った。
お茶を啜るのは中国では普通のことだ。口の中で転がし、味を堪能するという意味でむしろ音を立てる人の方が多いかもしれない。
『落ち着いたか?』
青龍に聞かれて、香子はコクリと頷いた。
『海老春巻は食べます』
『ああ、好きなだけ食べるといい。そなたの食べっぷりは見ていて心地いい』
『ええ……』
青龍がことあるごとに歯の浮くような科白を言ってくるのが慣れないと香子は思う。
『だっておなかすきましたから……』
『そうだな。香子のおかげで我も空腹を知った』
青龍はとても機嫌がよさそうだ。香子は海老春巻をもぐもぐ食べる。海老がぷりっぷりでとてもおいしい。それもこれも凍石のおかげだと香子は思った。
ごはんを食べ終え、一度部屋に運ばれて身だしなみを整えた。
『花嫁様、老佛爷から文が届いております』
『えっ?』
延夕玲に言われ、香子は目を見開いた。
そういえばまだ日程までは確定していないが、玄武の領地へ向うことになっている。向かう前に皇太后に直接会うことが必要だと香子は思った。
『読んでもらえる?』
『はい』
内容は明日の午後にお茶をしないかという誘いだった。場所は御花園である。
『そうね。向かいますと返事をしておいてくれる?』
『かしこまりました』
その後香子は茶室に向かい、明日は皇太后とお茶をすると四神に伝えた。
『……そうか』
四神はみな表情があまり動かないのだが、香子には玄武が少し寂しそうに見えた。
『玄武様の領地へ向う前に老佛爷に挨拶をしたいのです。ですから、明後日には黒月と一緒に連れていってください』
『ああ、そうしよう』
『明日の老佛爷とのお茶会も一緒に行ってくださいね?』
『もちろんだ』
玄武の機嫌が上向いたことがわかって、香子はほっとした。
お茶をしたら入浴して、香子は玄武と朱雀に囚われた。
そうなることを香子はわかっていたが、それでも朱雀の熱を受ける際に震えたのだった。
そして、翌朝も何故こんなに腹が減るのだろうと香子は思った。
『食べ溜めって本当にできませんね……』
『食べ溜めとはなんだ?』
床に横になったまま朱雀に聞かれて、香子はけだるそうに答えた。
『そうだな。確かにできぬ。面白いものだな』
朱雀はそう言って口角を上げたが、香子としては少しは食べ溜めができる身体だとありがたい。そこらへんどうにかならないのかと切実に思っている。
その日は白虎と過ごす日だったから、昼食の後のお茶会には白虎も共に出かけることとなった。
今回は玄武の腕に抱かれて香子は移動する。
玄武、白虎、白雲、黒月、延夕玲、楊芳芳と侍女が数名付き従い、御花園に向かった。
『ああ、綺麗ですね』
いろいとりどりの花が咲いているのを見て、香子は笑んだ。四神宮の庭よりもはるかに規模のでかい御花園が香子は好きだ。
とても広いし奇岩などが見られて面白い。
待ち合わせである四阿へ向えば、すでに皇太后と皇后が待っていた。二人ともにこやかに香子を迎えた。
『老佛爷、本日はお招きありがとうございます』
香子は玄武の腕に抱かれたまま挨拶した。
もう今は香子が四神の誰かの腕の中から挨拶をしても誰も気にしない。香子としては一度下ろしてほしいのだが、四神は絶対に下ろしてくれないのでどうしようもなかった。
『花嫁様、お久しゅうございます』
皇太后と皇后に挨拶されて香子はうっと詰まった。
不義理をしていることは否定できない。そんな香子の様子を見て、皇太后は笑んだ。
『ほ、ほ……花嫁様は悠然と構えてくださってよろしいのですよ?』
そう言われて、香子はまいったなと思ったのだった。
朱雀に熱を与えられなければ、香子は逃げ出したくなってしまう。
青龍が嫌なのではない。あまりの羞恥に耐えられないからだ。
何故こんなに恥ずかしいのかも香子にはわからない。そのうちわかる時が来るのかも知らない。
香子にできるのはただ、青龍の愛を受け止めることだけだった。
途中何度か水分補給であるとか、果物などを食べさせられていたように香子は思う。けれど目覚めた時はあまりの空腹に涙をこぼした。
「ううー……おなかすいたよぅ……」
日本語で呟いたらもっと泣けてきた。
青龍の室にいた玄武と青龍は、香子が目覚めてすぐに念話で厨房や侍女たちに伝えた。いつもだいたいこのぐらいの時間だと待機していた厨師と侍女たちがすぐに動き出す。
『香子』
「んぅ……」
青龍に抱き込まれて、香子は口を塞がれた。
青龍の舌を吸い、その唾液を啜る。気持ちいいのと、甘露で香子は震えた。
『お待たせしました』
居間の方から声がかかり、香子はビクッとした。あまりの飢えに青龍の唾液もおいしいと感じてしまったなんて重症だと香子は思った。
「んんっ……」
『香子、参ろうぞ』
睡衣を着せられ、その上から青龍の長袍を掛けられる。そうして抱き上げられて、居間の長椅子に腰かけた。
目の前の卓には前菜が所狭しと並べられている。すぐに出せる物として用意してあったのがわかり、香子は感謝した。
「いただきます」
そうして香子は料理を堪能した。
『ふぅ……』
散々食べて、ようやく香子の胃は落ち着いたらしい。よく噛んで食べたつもりだったが、周りからは流し込むように食べているように見えたに違いないと、香子は恥ずかしくなった。
実際には青龍と玄武もものすごい量を食べていたので、侍女たちからはやはり四神はすごいと思われているだけだ。
香子はずず……とお茶を啜った。
お茶を啜るのは中国では普通のことだ。口の中で転がし、味を堪能するという意味でむしろ音を立てる人の方が多いかもしれない。
『落ち着いたか?』
青龍に聞かれて、香子はコクリと頷いた。
『海老春巻は食べます』
『ああ、好きなだけ食べるといい。そなたの食べっぷりは見ていて心地いい』
『ええ……』
青龍がことあるごとに歯の浮くような科白を言ってくるのが慣れないと香子は思う。
『だっておなかすきましたから……』
『そうだな。香子のおかげで我も空腹を知った』
青龍はとても機嫌がよさそうだ。香子は海老春巻をもぐもぐ食べる。海老がぷりっぷりでとてもおいしい。それもこれも凍石のおかげだと香子は思った。
ごはんを食べ終え、一度部屋に運ばれて身だしなみを整えた。
『花嫁様、老佛爷から文が届いております』
『えっ?』
延夕玲に言われ、香子は目を見開いた。
そういえばまだ日程までは確定していないが、玄武の領地へ向うことになっている。向かう前に皇太后に直接会うことが必要だと香子は思った。
『読んでもらえる?』
『はい』
内容は明日の午後にお茶をしないかという誘いだった。場所は御花園である。
『そうね。向かいますと返事をしておいてくれる?』
『かしこまりました』
その後香子は茶室に向かい、明日は皇太后とお茶をすると四神に伝えた。
『……そうか』
四神はみな表情があまり動かないのだが、香子には玄武が少し寂しそうに見えた。
『玄武様の領地へ向う前に老佛爷に挨拶をしたいのです。ですから、明後日には黒月と一緒に連れていってください』
『ああ、そうしよう』
『明日の老佛爷とのお茶会も一緒に行ってくださいね?』
『もちろんだ』
玄武の機嫌が上向いたことがわかって、香子はほっとした。
お茶をしたら入浴して、香子は玄武と朱雀に囚われた。
そうなることを香子はわかっていたが、それでも朱雀の熱を受ける際に震えたのだった。
そして、翌朝も何故こんなに腹が減るのだろうと香子は思った。
『食べ溜めって本当にできませんね……』
『食べ溜めとはなんだ?』
床に横になったまま朱雀に聞かれて、香子はけだるそうに答えた。
『そうだな。確かにできぬ。面白いものだな』
朱雀はそう言って口角を上げたが、香子としては少しは食べ溜めができる身体だとありがたい。そこらへんどうにかならないのかと切実に思っている。
その日は白虎と過ごす日だったから、昼食の後のお茶会には白虎も共に出かけることとなった。
今回は玄武の腕に抱かれて香子は移動する。
玄武、白虎、白雲、黒月、延夕玲、楊芳芳と侍女が数名付き従い、御花園に向かった。
『ああ、綺麗ですね』
いろいとりどりの花が咲いているのを見て、香子は笑んだ。四神宮の庭よりもはるかに規模のでかい御花園が香子は好きだ。
とても広いし奇岩などが見られて面白い。
待ち合わせである四阿へ向えば、すでに皇太后と皇后が待っていた。二人ともにこやかに香子を迎えた。
『老佛爷、本日はお招きありがとうございます』
香子は玄武の腕に抱かれたまま挨拶した。
もう今は香子が四神の誰かの腕の中から挨拶をしても誰も気にしない。香子としては一度下ろしてほしいのだが、四神は絶対に下ろしてくれないのでどうしようもなかった。
『花嫁様、お久しゅうございます』
皇太后と皇后に挨拶されて香子はうっと詰まった。
不義理をしていることは否定できない。そんな香子の様子を見て、皇太后は笑んだ。
『ほ、ほ……花嫁様は悠然と構えてくださってよろしいのですよ?』
そう言われて、香子はまいったなと思ったのだった。
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