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第4部 四神を愛しなさいと言われました
126.花嫁はどうして一人なのでしょう?
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白虎は本性を現わすと理性を保つことが難しいというのは前述した通りだ。
おかげで、香子がその虎のもふもふを愛でられたのはそう長い時間ではなかった。
『もふもふ……』
香子の手が名残惜しそうにわきわきしているのを見て、人形に戻った白虎は苦笑した。
『香子、堪能してもかまわぬが、我もそなたを思う存分堪能するが……よいか?』
『……それは困ります』
そう、香子としてはまだ白虎の本性に抱かれるのは怖い。朱雀に熱を与えられ、せめて玄武か朱雀が側にいないと悲鳴を上げて逃げ出してしまいそうである。こればっかりは本能的な恐怖なのでしかたない。それでも香子はまだ虎を動物園でしか見たことがないからましとは言えた。
実際に見たことはなかったとしても、山に入ると虎に食われるよと言い聞かせられながら育った人からしたらとんでもない恐怖であっただろうと香子は思う。
あんな大きなものにのしかかられたら一瞬で殺されてしまう。
そんな根源的な恐怖だ。
『香子』
白虎の腕の中から、玄武の腕の中に移された。
『玄武兄、しばし居間で待っていていただけるか?』
『かまわぬ。落ち着いたら声をかけよ』
『白虎様……?』
『香子、我と茶を飲もう』
『はい……』
香子は玄武に抱かれたまま居間に移動し、その長椅子に腰かけた。白雲がお茶を淹れる。
『香子』
玄武に声をかけられて、香子は俯かせていた顔を上げた。
『なんでしょう?』
『我の領地にはいつ参ろうか』
『そうですね……もう、暖かくなってきていますか?』
『ああ、さすがにもう雪は降らぬだろう』
『……行きたいです』
以前、一度だけとても綺麗な湖に連れて行ってもらったことを香子は思い出した。雪がまだたくさん残っていて、とても幻想的な光景だった。
中国は広いから、風光明媚な場所がたくさんある。それらを四神と共に巡るのはとても楽しそうだと香子は思っている。
(いっぱい行きたいところはあるけど、連れて行っていただけるかしら)
四神が飛んでくれたら、と香子は考える。瞬間移動は風情がない。できれば飛んで移動してもらいたいと香子は思う。
想像をして、ほう、とため息を吐いた。
お茶を啜る。
『香子、如何した?』
『いろいろなところへ行くことを考えていました。もちろん、玄武様や、朱雀様、青龍様、白虎様も一緒に……』
『そなたは旅が好きなのだな?』
『素敵なところはたくさんありますから。一緒に行けばきっと楽しいですよ?』
『そうだな。そなたと共にであれば、なにもかもが愛おしく思えるに違いない』
『うっ……』
耳元で囁かれるバリトンに、香子は震えた。四神は声がよすぎるのがいけない。玄武はバリトン、朱雀はテナー、青龍は涼やかな声、そして白虎はバスだ。そして彼らは香子がその声に弱いとわかっていて耳元で甘く囁くのだ。
(たちが悪い……)
『玄武兄、ありがとうございます』
『香子、では夜に』
『はい』
白虎が寝室から出てきた。玄武が香子を抱いたまま立ち上がり、白虎に渡す。香子は白虎の胸に頭を擦り寄せた。香子のストレス発散に付き合わせて申し訳ない気持ちである。
だがもふもふは捨てがたい。
玄武は振り返りもせず、すんなり戻っていった。
『……玄武兄はすごいな』
『白虎様?』
香子はその胸にそっと触れた。
『我では、そなたを渡すことは難しい……』
香子はふふっと笑った。四神の中でも白虎は嫉妬深いと香子は聞いている。
もちろん玄武とて簡単に香子を白虎に託しているわけではない。白虎に対して嫉妬という感情はそれほど浮かばないが、やはり腕の中にいた香子を離すのはとてもつらい。それでも、玄武は一番の年長であることを自覚して白虎に戻した。
内心は、香子をずっと腕の中に閉じ込めたいと荒れ狂ってはいたが。
『玄武兄も耐えていることはわかっている……』
『……どうして花嫁は一人なのでしょうね?』
そんな風に四神を苦しめて、天上の神々は何がしたいのだろうかと香子は思う。
『そうさな……我にはわからぬが、必ず守れるようになのだろう』
『必ず、守れるように、ですか……』
確かに1:1では漏れも出てくるかもしれない。四神の花嫁というのは四神の唯一無二であるから、取り入ろうとたくさんの贈り物が届けられるのだ。
もしかしたら四神に言うことを聞かせようと、花嫁を攫おうと考える者もいるかもしれない。
香子は、かつて切り裂かれたバッグを思い出した。侍女たちが綺麗に縫ってくれたが、あのようなことが香子の身に起こらないとは限らないのである。
『そうですね。一柱よりも、四神にとって一人であれば守りやすいかもしれません』
現に香子はこうして守られている。
香子は胸になにかがせり上がってくるのを感じて、白虎の胸に頬を擦り寄せた。
『……そなにかわいいことをすると、襲ってしまうぞ?』
『……だめですよ。でも……白虎様、好き……んっ……』
白虎はそのまま長椅子に腰かけると、香子の唇を塞いだ。
寝室に運ばないだけ耐えているのだが、その手は香子の衣裳の中に入り込む。
『んんっ……』
そうしてやわやわと、たわわになった胸を揉んだ。
『……白虎、さまぁ……』
『愛でさせよ』
『ああっ……』
胸のところをはだけられ、香子は白虎にたくさん胸を愛でられてしまったのだった。
おかげで、香子がその虎のもふもふを愛でられたのはそう長い時間ではなかった。
『もふもふ……』
香子の手が名残惜しそうにわきわきしているのを見て、人形に戻った白虎は苦笑した。
『香子、堪能してもかまわぬが、我もそなたを思う存分堪能するが……よいか?』
『……それは困ります』
そう、香子としてはまだ白虎の本性に抱かれるのは怖い。朱雀に熱を与えられ、せめて玄武か朱雀が側にいないと悲鳴を上げて逃げ出してしまいそうである。こればっかりは本能的な恐怖なのでしかたない。それでも香子はまだ虎を動物園でしか見たことがないからましとは言えた。
実際に見たことはなかったとしても、山に入ると虎に食われるよと言い聞かせられながら育った人からしたらとんでもない恐怖であっただろうと香子は思う。
あんな大きなものにのしかかられたら一瞬で殺されてしまう。
そんな根源的な恐怖だ。
『香子』
白虎の腕の中から、玄武の腕の中に移された。
『玄武兄、しばし居間で待っていていただけるか?』
『かまわぬ。落ち着いたら声をかけよ』
『白虎様……?』
『香子、我と茶を飲もう』
『はい……』
香子は玄武に抱かれたまま居間に移動し、その長椅子に腰かけた。白雲がお茶を淹れる。
『香子』
玄武に声をかけられて、香子は俯かせていた顔を上げた。
『なんでしょう?』
『我の領地にはいつ参ろうか』
『そうですね……もう、暖かくなってきていますか?』
『ああ、さすがにもう雪は降らぬだろう』
『……行きたいです』
以前、一度だけとても綺麗な湖に連れて行ってもらったことを香子は思い出した。雪がまだたくさん残っていて、とても幻想的な光景だった。
中国は広いから、風光明媚な場所がたくさんある。それらを四神と共に巡るのはとても楽しそうだと香子は思っている。
(いっぱい行きたいところはあるけど、連れて行っていただけるかしら)
四神が飛んでくれたら、と香子は考える。瞬間移動は風情がない。できれば飛んで移動してもらいたいと香子は思う。
想像をして、ほう、とため息を吐いた。
お茶を啜る。
『香子、如何した?』
『いろいろなところへ行くことを考えていました。もちろん、玄武様や、朱雀様、青龍様、白虎様も一緒に……』
『そなたは旅が好きなのだな?』
『素敵なところはたくさんありますから。一緒に行けばきっと楽しいですよ?』
『そうだな。そなたと共にであれば、なにもかもが愛おしく思えるに違いない』
『うっ……』
耳元で囁かれるバリトンに、香子は震えた。四神は声がよすぎるのがいけない。玄武はバリトン、朱雀はテナー、青龍は涼やかな声、そして白虎はバスだ。そして彼らは香子がその声に弱いとわかっていて耳元で甘く囁くのだ。
(たちが悪い……)
『玄武兄、ありがとうございます』
『香子、では夜に』
『はい』
白虎が寝室から出てきた。玄武が香子を抱いたまま立ち上がり、白虎に渡す。香子は白虎の胸に頭を擦り寄せた。香子のストレス発散に付き合わせて申し訳ない気持ちである。
だがもふもふは捨てがたい。
玄武は振り返りもせず、すんなり戻っていった。
『……玄武兄はすごいな』
『白虎様?』
香子はその胸にそっと触れた。
『我では、そなたを渡すことは難しい……』
香子はふふっと笑った。四神の中でも白虎は嫉妬深いと香子は聞いている。
もちろん玄武とて簡単に香子を白虎に託しているわけではない。白虎に対して嫉妬という感情はそれほど浮かばないが、やはり腕の中にいた香子を離すのはとてもつらい。それでも、玄武は一番の年長であることを自覚して白虎に戻した。
内心は、香子をずっと腕の中に閉じ込めたいと荒れ狂ってはいたが。
『玄武兄も耐えていることはわかっている……』
『……どうして花嫁は一人なのでしょうね?』
そんな風に四神を苦しめて、天上の神々は何がしたいのだろうかと香子は思う。
『そうさな……我にはわからぬが、必ず守れるようになのだろう』
『必ず、守れるように、ですか……』
確かに1:1では漏れも出てくるかもしれない。四神の花嫁というのは四神の唯一無二であるから、取り入ろうとたくさんの贈り物が届けられるのだ。
もしかしたら四神に言うことを聞かせようと、花嫁を攫おうと考える者もいるかもしれない。
香子は、かつて切り裂かれたバッグを思い出した。侍女たちが綺麗に縫ってくれたが、あのようなことが香子の身に起こらないとは限らないのである。
『そうですね。一柱よりも、四神にとって一人であれば守りやすいかもしれません』
現に香子はこうして守られている。
香子は胸になにかがせり上がってくるのを感じて、白虎の胸に頬を擦り寄せた。
『……そなにかわいいことをすると、襲ってしまうぞ?』
『……だめですよ。でも……白虎様、好き……んっ……』
白虎はそのまま長椅子に腰かけると、香子の唇を塞いだ。
寝室に運ばないだけ耐えているのだが、その手は香子の衣裳の中に入り込む。
『んんっ……』
そうしてやわやわと、たわわになった胸を揉んだ。
『……白虎、さまぁ……』
『愛でさせよ』
『ああっ……』
胸のところをはだけられ、香子は白虎にたくさん胸を愛でられてしまったのだった。
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