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第4部 四神を愛しなさいと言われました
119.やっと胸の大きさが定着しました
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朱雀の熱のせいか、香子は全身が熱くふわふわとした感覚のまま白虎に何度も抱かれた。
本性を現わした白虎は恐ろしい。けれど側に朱雀か玄武がいてくれるというのは香子にとって心強かった。やがて理性を失ってしまえば、後はもう快感の波に飲みこまれた。
時折白湯を与えられ、何かを食べていたように香子は思う。少し休憩したらまた抱かれ……と、とても爛れた日々を香子は四神と共に過ごした。
何度も胸を舐められ、大事な部分も舐められ、朱雀の熱と、白虎のそれを幾度となく受け入れた。
翻弄されること三日。
香子はもう何日経ったかはわからなかったが、ようやく白虎が本性を解いた。
『早いものだ』
白虎が名残惜しそうに呟く。
香子はそれを確認すると、泥のように眠った。
「おなかすいたぁ~……」
空腹で目覚めたと言ってもよかった。香子は、自分のおなかが鳴る音で目覚めた。
色気もなにもあったものではないが、それよりもひどい空腹に襲われていることの方が香子にとっては重要だった。あまりのつらさに香子はぽろぽろと涙をこぼした。
『今用意させる故、しばし待て』
香子は白虎に抱きこまれていたようだった。
「うえええーーん……」
白虎は香子に触れていたので、香子が元の世界の母語で言ったことが理解できた。そうでなくても目が覚めて香子が言うことは大概同じなので、わからなくても朝食を用意させただろう。床の脇にある椅子に腰かけている玄武が厨房に念話で伝えた。厨房の方も心得たもので、すぐに食べられるものを先に急いで運んでくる。
『居間へ向かうぞ』
『その前に衣服を整えよ』
香子はぐったりしたまま、白虎と玄武に衣服を軽く整えられて居間へ運ばれた。あまりの空腹で身体に力が入らず、ぐんりゃりしている。
そこへお茶と前菜が運ばれてきた。
「いただきます……」
香子の目に光が戻ってきた。
そうして香子は何日かぶりのまともな食事を堪能したのだった。
「ふー……」
香子はお茶を啜り、ため息をついた。
そうしてやっと、白虎の膝の上にいることに気付いた。
いつものことなのだが、ここ三日間の己の痴態が思い出されて香子の頬は赤く染まった。
(思い出さないっ!)
香子は自分に言い聞かせる。とにかくもう、恥ずかしくてしかたなかった。
『落ち着いたか?』
後ろから白虎に聞かれて、香子はコクリと頷いた。白虎の低いバスに後ろから囁かれると、香子はどきどきしてしまう。
それは玄武のバリトンでもそうなのだが、四神は顔だけでなく声もよすぎて香子は毎回困ってしまう。
『はい……もうこんなのはごめんです……』
『胸がこれ以上大きくなることはない』
そう言いながら白虎は香子の胸をやわやわと揉んだ。
『ごはん中はやめてください』
『つれないな』
『私のごはんの邪魔をするなら、嫌いになりますよ』
『それは困る』
白虎はクククと喉を鳴らして笑った。そうは言ったが、嫌いになんてなるはずはないと香子は思う。
四神は人ではないからその考え方は独特だ。上位の神々によって思考の制御もされているのではないかと香子は考えてしまう。
ただ、それを言ってしまったら香子の思考だってどこからきたのかわからない。DNAによるものなのか、はたまた四神と同じように神に操作されているのかもわからなかった。
デザートまで食べて、香子はやっと満足した。
『今日は一人でゆっくり過ごしたいです。とても、疲れました』
無理だとは香子も思ったが、一応言ってみた。
『それは、夜もという意味か?』
玄武に聞かれてコクリと頷く。
『共に寝るだけでもだめか?』
『……玄武様は、私が隣にいて手を出さないと約束できますか?』
『できぬな』
玄武は即答した。
そこは嘘でも「約束する」と言うべき場面ではないかと香子は思ったが、その誠実さも香子は好きだった。
「ふふっ……」
四神がとても好きだと香子は改めて思う。
『それならだめです』
『そなたに触れたい』
今度はストレートに言われ、香子はおかしくなった。四神はいつだって、花嫁に対しては必死になる。そんな四神をかわいそうとさえ香子は思うが、香子もまたそんな四神が好きなのだから重症だ。
『そうですね……じゃあ、昼の間だけ部屋で一人にさせていただけますか? そうしたら夜のことは考えます』
『日中、となると青龍か』
玄武の目が真剣だ。
『青龍様を説得してくださいね。白虎様、部屋に送ってください』
『わかった』
部屋で過ごすにしろ、衣服を整えたりはしないといけないだろう。香子としてはもう部屋の床で横になりたいというのが本音だ。
過ぎてしまえばあっというまだったかもしれないが、精神的な疲労は残っていた。
『花嫁様、お帰りなさいませ』
香子が白虎に抱かれて部屋に戻ると、白風が本当に嬉しそうな顔をしていた。それで黒月が少し不機嫌そうだった理由に、香子は思い当たった。
(四神のことはみな、好きなんだけどな……)
けれどずっと四神宮にいるわけにもいかない。
香子は四神の誰かの領地に行かなければいけない理由について聞いた。
それによると、領地にいた方が子を成しやすいという。領地には四神の力が満ちているので、香子も懐妊しやすいと。
それでも一人産まれるまでに最低五十年はかかるようなことを言われたので、少しでも早い方がいいだろうと香子も思った。
『香子、そなに悩むな。我らにとって一年二年は誤差だ』
部屋の長椅子にそっと降ろされて、白虎にそう言われ、香子は余計に考えなければいけないと思ったのだった。
本性を現わした白虎は恐ろしい。けれど側に朱雀か玄武がいてくれるというのは香子にとって心強かった。やがて理性を失ってしまえば、後はもう快感の波に飲みこまれた。
時折白湯を与えられ、何かを食べていたように香子は思う。少し休憩したらまた抱かれ……と、とても爛れた日々を香子は四神と共に過ごした。
何度も胸を舐められ、大事な部分も舐められ、朱雀の熱と、白虎のそれを幾度となく受け入れた。
翻弄されること三日。
香子はもう何日経ったかはわからなかったが、ようやく白虎が本性を解いた。
『早いものだ』
白虎が名残惜しそうに呟く。
香子はそれを確認すると、泥のように眠った。
「おなかすいたぁ~……」
空腹で目覚めたと言ってもよかった。香子は、自分のおなかが鳴る音で目覚めた。
色気もなにもあったものではないが、それよりもひどい空腹に襲われていることの方が香子にとっては重要だった。あまりのつらさに香子はぽろぽろと涙をこぼした。
『今用意させる故、しばし待て』
香子は白虎に抱きこまれていたようだった。
「うえええーーん……」
白虎は香子に触れていたので、香子が元の世界の母語で言ったことが理解できた。そうでなくても目が覚めて香子が言うことは大概同じなので、わからなくても朝食を用意させただろう。床の脇にある椅子に腰かけている玄武が厨房に念話で伝えた。厨房の方も心得たもので、すぐに食べられるものを先に急いで運んでくる。
『居間へ向かうぞ』
『その前に衣服を整えよ』
香子はぐったりしたまま、白虎と玄武に衣服を軽く整えられて居間へ運ばれた。あまりの空腹で身体に力が入らず、ぐんりゃりしている。
そこへお茶と前菜が運ばれてきた。
「いただきます……」
香子の目に光が戻ってきた。
そうして香子は何日かぶりのまともな食事を堪能したのだった。
「ふー……」
香子はお茶を啜り、ため息をついた。
そうしてやっと、白虎の膝の上にいることに気付いた。
いつものことなのだが、ここ三日間の己の痴態が思い出されて香子の頬は赤く染まった。
(思い出さないっ!)
香子は自分に言い聞かせる。とにかくもう、恥ずかしくてしかたなかった。
『落ち着いたか?』
後ろから白虎に聞かれて、香子はコクリと頷いた。白虎の低いバスに後ろから囁かれると、香子はどきどきしてしまう。
それは玄武のバリトンでもそうなのだが、四神は顔だけでなく声もよすぎて香子は毎回困ってしまう。
『はい……もうこんなのはごめんです……』
『胸がこれ以上大きくなることはない』
そう言いながら白虎は香子の胸をやわやわと揉んだ。
『ごはん中はやめてください』
『つれないな』
『私のごはんの邪魔をするなら、嫌いになりますよ』
『それは困る』
白虎はクククと喉を鳴らして笑った。そうは言ったが、嫌いになんてなるはずはないと香子は思う。
四神は人ではないからその考え方は独特だ。上位の神々によって思考の制御もされているのではないかと香子は考えてしまう。
ただ、それを言ってしまったら香子の思考だってどこからきたのかわからない。DNAによるものなのか、はたまた四神と同じように神に操作されているのかもわからなかった。
デザートまで食べて、香子はやっと満足した。
『今日は一人でゆっくり過ごしたいです。とても、疲れました』
無理だとは香子も思ったが、一応言ってみた。
『それは、夜もという意味か?』
玄武に聞かれてコクリと頷く。
『共に寝るだけでもだめか?』
『……玄武様は、私が隣にいて手を出さないと約束できますか?』
『できぬな』
玄武は即答した。
そこは嘘でも「約束する」と言うべき場面ではないかと香子は思ったが、その誠実さも香子は好きだった。
「ふふっ……」
四神がとても好きだと香子は改めて思う。
『それならだめです』
『そなたに触れたい』
今度はストレートに言われ、香子はおかしくなった。四神はいつだって、花嫁に対しては必死になる。そんな四神をかわいそうとさえ香子は思うが、香子もまたそんな四神が好きなのだから重症だ。
『そうですね……じゃあ、昼の間だけ部屋で一人にさせていただけますか? そうしたら夜のことは考えます』
『日中、となると青龍か』
玄武の目が真剣だ。
『青龍様を説得してくださいね。白虎様、部屋に送ってください』
『わかった』
部屋で過ごすにしろ、衣服を整えたりはしないといけないだろう。香子としてはもう部屋の床で横になりたいというのが本音だ。
過ぎてしまえばあっというまだったかもしれないが、精神的な疲労は残っていた。
『花嫁様、お帰りなさいませ』
香子が白虎に抱かれて部屋に戻ると、白風が本当に嬉しそうな顔をしていた。それで黒月が少し不機嫌そうだった理由に、香子は思い当たった。
(四神のことはみな、好きなんだけどな……)
けれどずっと四神宮にいるわけにもいかない。
香子は四神の誰かの領地に行かなければいけない理由について聞いた。
それによると、領地にいた方が子を成しやすいという。領地には四神の力が満ちているので、香子も懐妊しやすいと。
それでも一人産まれるまでに最低五十年はかかるようなことを言われたので、少しでも早い方がいいだろうと香子も思った。
『香子、そなに悩むな。我らにとって一年二年は誤差だ』
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