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第4部 四神を愛しなさいと言われました

112.再び、やっと四神宮に戻ってきました

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 白虎は香子を怖がらせないようにだろう、人形で香子に触れた。
 口づけを何度も交わし、香子の衣裳の前ははだけられ、その真っ白い肌が白虎の目の前に晒される。白虎は嬉しそうに喉を鳴らすと、恥ずかしさ故かうっすらと桃色に染まっていく香子の肌に口づけた。

「んっ……」

 胸は揉まれても、香子はそれほど感じたりはしない。だが胸をやわやわと揉まれながらその頂も刺激されれば別だった。
 ペロリと舐められれば甘やかな感覚が生まれる。どうしてこんな、言葉に表せないような状態になるのだろうと香子は思う。

「……あっ……」

 けれどそんなことを考えていられるのはそこまでだった。
 甘く触れられて、香子は白虎の頭を抱きしめた。


 ……結局、四神宮に戻るまでむつみ合ってしまった。

『またのお越しをお待ちしております』

 白虎の眷属たちに挨拶をされ、香子はいたたまれなかった。
 白虎とはもう結婚しているが、領地に来るかどうかは別である。ただもう結婚していることには変わりないので、香子がどの領地を選んだとしても会いに行くと白虎は言った。

『独り占めなどさせるものか』

 グルル……と喉の奥で唸る。

『……ちょっと、怖いです』
『すまぬ』

 白雲が白虎の衣裳の端に触れる。それを合図に、香子たちは四神宮へと戻った。

『ん?』

 ポスン、と香子はどこかに押し倒された。覆いかぶさってくる白虎の背後にベッドの天蓋の内側が目に入った。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとぉ~~~!」
『到着を知らせて参ります。昼食の準備が整いましたらお声がけしますので、花嫁様を離せるようにしておいてください』

 白雲の声が聞こえ、香子は絶句した。
 そうして、昼食の準備が整うまで香子はまた白虎に愛でられてしまった。

『ううう……』
(絶対四神は色ボケだと思う!)

 昼食の準備が整ったと聞いた時、香子は助かったと思った。白虎はチッと舌打ちする。どれだけ愛でたいのかと、香子は目を丸くした。

『白虎様、花嫁様の身支度を整えなければなりません』
『……はー……しかたないな』

 寝室の向こうから白雲に声をかけられて、ようやく白虎は身体を起こした。軽く衣裳の前を直し、香子の衣裳も少し直す。

『ずっとむつみ合っていられればよいものを……』

 白虎にそう言われて、香子は内心震え上がった。
 どうしても白虎が香子の室まで運ぶと聞かないので、香子は部屋に着くまで白虎の腕の中だった。自分の部屋の長椅子に降ろされてほっとする。

『では後でな』
『はい』

 白虎が部屋を出て行ってから香子は、はーーっ、と大仰にため息をついた。

『ナニアレナニアレナニアレ!?』
『花嫁様、おかえりなさいませ』
『うん、ただいま! ナニアレ!?』

 延夕玲に返事をしたものの、香子は混乱からなかなか戻ってこられなかった。夕玲はこてんと首を傾げた。

『? 花嫁様への愛しさが抑えきれなくなっていらっしゃるのではないですか?』

 当たり前のように言われて、香子はまた絶句することになった。
 もう一人の女官である楊芳芳だけでなく部屋に控えている侍女たちもうんうんと頷く。そして夕玲に睨まれていた。部屋の隅に控えている侍女たちは、命令がなければ動いてはいけないことになっている。

『……花嫁様は自覚が足りません。もう少し玄武様にも目を向けてください』

 扉の前に控えている黒月にまで言われてしまい、香子は熱くなる頬を両手で覆った。

『……わかってるんだけどぉ……』

 最近四神による溺愛度が増していて、香子にとってはもうキャパオーバーだった。
 侍女たちがいそいそとやってきて香子の髪型や衣裳を整える。そうしてやっと香子は昼食をいただくことができた。

(やっぱり四神宮のごはん、おいしい……)

 香子はしみじみと思った。青龍と朱雀の領地ではおいしいものが当たり前のように食べられたから油断していた。よく考えたら四神も眷属も食にはあまり興味がないのである。そう考えると青龍と朱雀の眷属は花嫁をもてなそうとしっかり考えていたのだろう。

(眷属によって違うものね)

 そしてその眷属の対応もまた香子がどの領地に行きたいかの基準になってしまう。白虎はあまり深く物事を考えていなさそうだから、眷属にもその気質が受け継がれているのかもしれない。
 白雲は繊細かと香子は思っていたが、実際のところはそうでもなかった。
 陳秀美が苦労しないことを祈るばかりである。
 とはいえ香子も他人事ではいられない。次は玄武の領地へ向う予定だし、その後はどこに移動するか決めなければならない。
 それにしても四神宮のごはんはおいしかった。
 厨師たちががんばってくれたのか、いろいろな種類の春巻を作ってくれた。スタンダードなものから、海老春巻、紫蘇とひき肉を入れたもの、ごろごろ野菜が入っているものなどさまざまである。

『おいしすぎる……』

 そう呟ければ侍女たちがこっそり心にメモをしてのちほど厨師に伝える。四神宮のみなが香子を好ましく思っているからこそそれが成り立っている。
 そんなことは全然知らない香子は、今日も美しい四神を眺めながら嬉しそうに昼食をいただくのだった。
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