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第4部 四神を愛しなさいと言われました
111.雪山の景色は最高です
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白虎の領地が四川省と雲南省の境辺りにあるということは前述した通りである。
香子の地理感覚でいうと、雲南省の麗江市に近い位置にあるようだった。
ということは、白虎の館から見えた雪山はもしかしたら玉龍雪山ではないかと香子は当たりをつけた。
山が高いから近くに見えただけで、実際にはそれほど近くはなかった。
香子は白虎の背の上に乗せられて、雪山に向かっている。かなりのスピードなので普通なら風の影響をものすごく受けそうなのだが、香子はとても快適だった。
(四神効果、だよね。本当にチート……)
小さな集落の上をいくつも越え、白虎は山を登った。
『う、わぁ……』
少し平らな場所に着いて、白虎はようやく足を止めた。
雪、雪、雪、そして周りに高い山が聳え立っているその間の山の中腹で、香子は周りを見た。
『すごい……』
ここは山の頂上ではないだろう。山脈の一部の場所だということは香子にもわかっている。
『白虎様、降りちゃだめですか?』
『ならぬ』
『そんなー……』
『足を付けるのならば、もう帰さぬ』
『……わかりました』
そう言われてしまってはしかたないと香子は諦めた。香子が地に足を付けない条件で視察に来ているのだ。ここで降りてしまっては、もう四神宮には戻れないだろう。それはまだ、香子は嫌だった。
白虎がククク……と笑う。
『もしそなたが、我に聞かず降りたなら逃がしはせぬものを』
『……聞いてよかったです』
時折吹く風はとても冷たい。けれど白虎の毛に包まれているような状態なので、香子はそれほど寒さを感じなかった。四神の側にいると快適すぎて堕落してしまいそうだと香子は思う。けれど香子は四神の花嫁だから四神の側にいることは確定で、後は誰の領地に行くかを決めるだけである。
『とても、素敵ですね』
雪と雪山に囲まれる景色をこんな間近に見られるなんて、元の世界にいた時玉龍雪山に行って以来だった。
(あの時はすぐに息が苦しくなってロープウェイで降りたのよね)
だが今は息苦しさは特にない。それはここがそこまで標高が高い位置ではないのか、それとも白虎の周りの空気が平地と変わらないのか、はたまた香子の存在が人ではなくなっているからなのか、香子にはわからなかった。
『白虎様、ここの位置って地上から何mとかってわかります?』
『知らぬな』
『ですよねー……』
おそらくか、その近くの山なのだろうと香子は思うが、そうなるとここは4500mぐらいの高さがあるのかもしれない。富士山の頂上より高い位置にいるというだけで興奮してしまう。
『あれって……川、ですかね……』
少し下がったような場所があり、斜めに真っ白い雪が山の下の方へ続いているのが見えた。氷河は氷の河と書くが、必ずしも透明な氷が見えるわけではないらしい。
『氷河? というのか。そういうものだな』
白虎はあっさりと答えた。
「はー……」
香子はため息を吐いた。こんなに間近で氷河が見られるなんて感激である。とはいえ氷の河なので流れているところが見られるわけではない。一年かけて何mか進む、というのが氷河である。しかも場所によって流れ方も違ったりする。それにこの位置では氷河に雪が被って真っ白な状態なので、香子はあまり実感がわかなかった。
『満足か?』
白虎に聞かれて頷いた。
『はい、とても素敵です。連れてきていただいて、ありがとうございます!』
素直に香子が礼を言えば、白虎はクククとまた喉の奥で笑った。
『かような光景など、玄武兄の領地でも見られるであろうに』
『見られるかどうかはわかりませんよね?』
玄武の領地は黒竜江省にある。黒竜江省の地理は香子にはわからない。
あ、でもと香子は思い出した。
山ではないが、美しい氷の湖を見に連れて行ったもらったことはあったのだ。
(あれは……反則ではないのかしら?)
玄武の領地に足を付けたわけではないので、ノーカウントだと香子は思いたい。玄武の領地に向かうのが嫌なわけではない。勝手に決められてしまうのが嫌なのだ。
『例えば、なんですけど……』
『如何か』
『もし私がどなたかの領地に住むことになったとして……ここにまた連れてきていただくことは可能なのでしょうか?』
『……そなたは残酷だな』
言っていることがひどいという自覚は香子にもある。これでは白虎の元には来ないと言っているようなものだ。だが言ったことは取り戻せないと、香子は言い訳をしそうになる己の口をどうにかつぐんだ。
『だが、そなたを愛しく思う気持ちは変わらぬ。そなたが望むならば、いつでも連れてきてやろう』
『ありがとうございます……』
風が強くなってきた。
『白虎様、戻りましょう』
『よいのか?』
『はい』
香子は白虎の毛に埋もれ、頬ずりをした。そして、どうして花嫁は一人なのだろうと改めて考えてしまう。
それはもしかしたら四神の生まれる時期をずらしたいのかもしれないとも思ったが、それならばそれをもっと上の神々が調整すればいいのではないかとも香子は考える。
こんな、争うような真似をする必要がどこにあるのか香子には疑問だった。
白虎の館へ戻ると、白虎はそのまま香子を己の室に運んだ。
そして床に香子を降ろす。
『白虎、さま……?』
『四神宮に戻るまでだ……』
白虎は人形になると、香子に覆いかぶさった。
それを香子も拒むつもりはなかった。
香子の地理感覚でいうと、雲南省の麗江市に近い位置にあるようだった。
ということは、白虎の館から見えた雪山はもしかしたら玉龍雪山ではないかと香子は当たりをつけた。
山が高いから近くに見えただけで、実際にはそれほど近くはなかった。
香子は白虎の背の上に乗せられて、雪山に向かっている。かなりのスピードなので普通なら風の影響をものすごく受けそうなのだが、香子はとても快適だった。
(四神効果、だよね。本当にチート……)
小さな集落の上をいくつも越え、白虎は山を登った。
『う、わぁ……』
少し平らな場所に着いて、白虎はようやく足を止めた。
雪、雪、雪、そして周りに高い山が聳え立っているその間の山の中腹で、香子は周りを見た。
『すごい……』
ここは山の頂上ではないだろう。山脈の一部の場所だということは香子にもわかっている。
『白虎様、降りちゃだめですか?』
『ならぬ』
『そんなー……』
『足を付けるのならば、もう帰さぬ』
『……わかりました』
そう言われてしまってはしかたないと香子は諦めた。香子が地に足を付けない条件で視察に来ているのだ。ここで降りてしまっては、もう四神宮には戻れないだろう。それはまだ、香子は嫌だった。
白虎がククク……と笑う。
『もしそなたが、我に聞かず降りたなら逃がしはせぬものを』
『……聞いてよかったです』
時折吹く風はとても冷たい。けれど白虎の毛に包まれているような状態なので、香子はそれほど寒さを感じなかった。四神の側にいると快適すぎて堕落してしまいそうだと香子は思う。けれど香子は四神の花嫁だから四神の側にいることは確定で、後は誰の領地に行くかを決めるだけである。
『とても、素敵ですね』
雪と雪山に囲まれる景色をこんな間近に見られるなんて、元の世界にいた時玉龍雪山に行って以来だった。
(あの時はすぐに息が苦しくなってロープウェイで降りたのよね)
だが今は息苦しさは特にない。それはここがそこまで標高が高い位置ではないのか、それとも白虎の周りの空気が平地と変わらないのか、はたまた香子の存在が人ではなくなっているからなのか、香子にはわからなかった。
『白虎様、ここの位置って地上から何mとかってわかります?』
『知らぬな』
『ですよねー……』
おそらくか、その近くの山なのだろうと香子は思うが、そうなるとここは4500mぐらいの高さがあるのかもしれない。富士山の頂上より高い位置にいるというだけで興奮してしまう。
『あれって……川、ですかね……』
少し下がったような場所があり、斜めに真っ白い雪が山の下の方へ続いているのが見えた。氷河は氷の河と書くが、必ずしも透明な氷が見えるわけではないらしい。
『氷河? というのか。そういうものだな』
白虎はあっさりと答えた。
「はー……」
香子はため息を吐いた。こんなに間近で氷河が見られるなんて感激である。とはいえ氷の河なので流れているところが見られるわけではない。一年かけて何mか進む、というのが氷河である。しかも場所によって流れ方も違ったりする。それにこの位置では氷河に雪が被って真っ白な状態なので、香子はあまり実感がわかなかった。
『満足か?』
白虎に聞かれて頷いた。
『はい、とても素敵です。連れてきていただいて、ありがとうございます!』
素直に香子が礼を言えば、白虎はクククとまた喉の奥で笑った。
『かような光景など、玄武兄の領地でも見られるであろうに』
『見られるかどうかはわかりませんよね?』
玄武の領地は黒竜江省にある。黒竜江省の地理は香子にはわからない。
あ、でもと香子は思い出した。
山ではないが、美しい氷の湖を見に連れて行ったもらったことはあったのだ。
(あれは……反則ではないのかしら?)
玄武の領地に足を付けたわけではないので、ノーカウントだと香子は思いたい。玄武の領地に向かうのが嫌なわけではない。勝手に決められてしまうのが嫌なのだ。
『例えば、なんですけど……』
『如何か』
『もし私がどなたかの領地に住むことになったとして……ここにまた連れてきていただくことは可能なのでしょうか?』
『……そなたは残酷だな』
言っていることがひどいという自覚は香子にもある。これでは白虎の元には来ないと言っているようなものだ。だが言ったことは取り戻せないと、香子は言い訳をしそうになる己の口をどうにかつぐんだ。
『だが、そなたを愛しく思う気持ちは変わらぬ。そなたが望むならば、いつでも連れてきてやろう』
『ありがとうございます……』
風が強くなってきた。
『白虎様、戻りましょう』
『よいのか?』
『はい』
香子は白虎の毛に埋もれ、頬ずりをした。そして、どうして花嫁は一人なのだろうと改めて考えてしまう。
それはもしかしたら四神の生まれる時期をずらしたいのかもしれないとも思ったが、それならばそれをもっと上の神々が調整すればいいのではないかとも香子は考える。
こんな、争うような真似をする必要がどこにあるのか香子には疑問だった。
白虎の館へ戻ると、白虎はそのまま香子を己の室に運んだ。
そして床に香子を降ろす。
『白虎、さま……?』
『四神宮に戻るまでだ……』
白虎は人形になると、香子に覆いかぶさった。
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