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第4部 四神を愛しなさいと言われました
108.そんなこと、すっかり忘れていました ※R15
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白虎の領地の、館の渡り廊下で香子は庭園をぼうっと眺めていた。
ようやく梅が咲き始めた頃合いだろうか。ところどころに白やピンク、赤の花が見えて、香子はキレイだなと思った。
ここは標高が高く、まだ寒い時期である。だから梅や桃の花が咲くのも遅い。
当然ながら、香子は白虎の腕の中である。
『白虎様、花嫁様の身支度をさせてください』
白風がたまらないというように白虎に声をかけた。香子は真っ赤になった。そういえば白虎にかろうじて衣裳は整えてもらったとはいえ、いろいろ乱れていることに変わりはなかった。
『ああ、そうか。では参ろう』
白風は慌てたようだった。
『白虎様のお手を煩わせるわけには……』
白虎は白風を見据えた。
『黙れ。香子の足を地に付けることはまかりならぬ。花嫁は我の唯一無二だ』
白風は顔を青くして平伏した。
『ま、まことに申し訳ありません!』
『白雲、物がわかる者はおらぬのか』
白虎は静かだが激高しているようだ。香子は内心ハラハラした。でもここで香子が口を挟むのはおかしいので、香子は白虎の胸に顔を伏せ、聞かなかったことにした。
『……白虎様、眷属は己の神が第一でございます。花嫁様はとても寛大な御方です。花嫁様への対応はこれから学んでいけばよろしいかと』
白雲がしれっと言った。
(寛大とか言われたら怒るに怒れないよね。怒るつもりもないけどー)
香子は内心笑いたくなった。
『白風』
『はっ』
『花嫁様は白虎様同様大切な御方だ。四神は四柱いらっしゃるが、花嫁様はこの世界にたった一人しかいらっしゃらない。それを肝に銘じよ』
『諾!』(はい)
といったようなやりとりはあったが、香子はどうにか無事に髪と衣裳を整えてもらい夕飯を食べることができた。
白虎の館での食事は山の幸が主だった。
山菜についてはあく抜きされていない物も多く、それを香子はもったいないと思った。
白雲を手招きする。
『……もしかして、眷属って食にこだわりはないの?』
『そうですね。どの世代で生まれたかによりますが、食が必要な者でもそれほどのこだわりはないかと。お口に合いませんでしたか?』
『うん……下処理がしっかりされていないイノシシはちょっと……』
ヤマイモを炒めたものはおいしかったので、香子は食べられるだけ食べた。精いっぱいのもてなしだとは思うが、明日もこういう料理だったら困るなと香子は思う。できれば普通の炒め物が食べたかった。
白虎は豪快に肉を噛みちぎって食べていた。その食べっぷりを見ているだけで、香子は楽しかった。
夕飯の後、白虎の室に運ばれるとそこで玄武と朱雀が待っていた。
『香子』
『待ちくたびれたぞ』
玄武と朱雀が少し口角を上げている。機嫌はとてもよさそうだった。
香子は二神を見て、「あ」と思った。
あまり考えたくなかったせいか、二神が来ることを香子は忘れていたのである。白虎と二人きりにされても困るが、玄武と朱雀に来られても困ってしまう。
『あ、あの……どうして……』
『そなたはまだ白虎に抱かれることに慣れてはおらぬだろう』
『熱を与えに来ただけだ。我はすぐに戻る故、そんな顔をするな』
朱雀はすぐに帰るつもりのようだが、玄武は朝までいるようだ。香子は胸が熱くなるのを感じた。
恐れが全くないとは言わないが、香子は玄武と朱雀のことも好きなのだ。
(こんなに私を好きにさせてどうしたいんだろう)
答えがわかっている問いではあるが、そんなことを香子は考えてしまった。
もう白雲も白風もいない。香子はそっと白虎の胸に顔を寄せた。どうしても、いちいち照れてしまう。
『香子はいつになったら慣れるのか』
『いつまでも初々しいのも美徳ではありませぬか』
玄武と朱雀が笑う。
『だが、香子から大胆に誘ってくれてもいいのだぞ?』
朱雀にそんなことを言われて、香子は朱雀を睨んだ。
『……私が誘わずとも、いつだって求めてくださるではありませんか……』
香子は頬が熱くなるのを感じた。
『それもそうだ。我らはいつでもそなたを抱きたくてたまらぬのだから……』
香子は逆らうつもりもなかった。天蓋付の大きな床に横たえられて、白虎の口づけを受ける。噛みつくような、奪うような口づけに、白虎も我慢しているのだなということが香子にはわかった。その首に腕を回し、何度も舌を吸われた。
「んっ、んっ……」
四神の口づけは巧みだ。香子はすぐにとろんとしてしまう。
『香子、我もよいか?』
「んっ……」
白虎が離れると、代わりに玄武がのしかかってきた。そして口づけを受ける。優しい、あやすような口づけに胸が熱くなった。
玄武の後は朱雀にも口づけられて、香子は身の内からとろとろと何かが流れてくるのを感じた。
朱雀の口づけは身体を溶かすような官能的なものだった。香子に求めさせようとしているみたいで、香子はふるりと震えた。
(四神に抱かれるって、なんて贅沢……)
香子はうっとりと、朱雀から熱をもらった。へその下辺りから熱が一気に全身に広がる。
そうなったらもう、何がなんだかよくわからなくなった。
朱雀が四神宮に戻ったのかも、白虎が本性を現わして香子をむさぼったのかも、玄武がそれを眺めていたのかも。
けれど朝になれば記憶が戻るものだから、香子は朝から顔を真っ赤にして床単に潜り込むのだった。
ようやく梅が咲き始めた頃合いだろうか。ところどころに白やピンク、赤の花が見えて、香子はキレイだなと思った。
ここは標高が高く、まだ寒い時期である。だから梅や桃の花が咲くのも遅い。
当然ながら、香子は白虎の腕の中である。
『白虎様、花嫁様の身支度をさせてください』
白風がたまらないというように白虎に声をかけた。香子は真っ赤になった。そういえば白虎にかろうじて衣裳は整えてもらったとはいえ、いろいろ乱れていることに変わりはなかった。
『ああ、そうか。では参ろう』
白風は慌てたようだった。
『白虎様のお手を煩わせるわけには……』
白虎は白風を見据えた。
『黙れ。香子の足を地に付けることはまかりならぬ。花嫁は我の唯一無二だ』
白風は顔を青くして平伏した。
『ま、まことに申し訳ありません!』
『白雲、物がわかる者はおらぬのか』
白虎は静かだが激高しているようだ。香子は内心ハラハラした。でもここで香子が口を挟むのはおかしいので、香子は白虎の胸に顔を伏せ、聞かなかったことにした。
『……白虎様、眷属は己の神が第一でございます。花嫁様はとても寛大な御方です。花嫁様への対応はこれから学んでいけばよろしいかと』
白雲がしれっと言った。
(寛大とか言われたら怒るに怒れないよね。怒るつもりもないけどー)
香子は内心笑いたくなった。
『白風』
『はっ』
『花嫁様は白虎様同様大切な御方だ。四神は四柱いらっしゃるが、花嫁様はこの世界にたった一人しかいらっしゃらない。それを肝に銘じよ』
『諾!』(はい)
といったようなやりとりはあったが、香子はどうにか無事に髪と衣裳を整えてもらい夕飯を食べることができた。
白虎の館での食事は山の幸が主だった。
山菜についてはあく抜きされていない物も多く、それを香子はもったいないと思った。
白雲を手招きする。
『……もしかして、眷属って食にこだわりはないの?』
『そうですね。どの世代で生まれたかによりますが、食が必要な者でもそれほどのこだわりはないかと。お口に合いませんでしたか?』
『うん……下処理がしっかりされていないイノシシはちょっと……』
ヤマイモを炒めたものはおいしかったので、香子は食べられるだけ食べた。精いっぱいのもてなしだとは思うが、明日もこういう料理だったら困るなと香子は思う。できれば普通の炒め物が食べたかった。
白虎は豪快に肉を噛みちぎって食べていた。その食べっぷりを見ているだけで、香子は楽しかった。
夕飯の後、白虎の室に運ばれるとそこで玄武と朱雀が待っていた。
『香子』
『待ちくたびれたぞ』
玄武と朱雀が少し口角を上げている。機嫌はとてもよさそうだった。
香子は二神を見て、「あ」と思った。
あまり考えたくなかったせいか、二神が来ることを香子は忘れていたのである。白虎と二人きりにされても困るが、玄武と朱雀に来られても困ってしまう。
『あ、あの……どうして……』
『そなたはまだ白虎に抱かれることに慣れてはおらぬだろう』
『熱を与えに来ただけだ。我はすぐに戻る故、そんな顔をするな』
朱雀はすぐに帰るつもりのようだが、玄武は朝までいるようだ。香子は胸が熱くなるのを感じた。
恐れが全くないとは言わないが、香子は玄武と朱雀のことも好きなのだ。
(こんなに私を好きにさせてどうしたいんだろう)
答えがわかっている問いではあるが、そんなことを香子は考えてしまった。
もう白雲も白風もいない。香子はそっと白虎の胸に顔を寄せた。どうしても、いちいち照れてしまう。
『香子はいつになったら慣れるのか』
『いつまでも初々しいのも美徳ではありませぬか』
玄武と朱雀が笑う。
『だが、香子から大胆に誘ってくれてもいいのだぞ?』
朱雀にそんなことを言われて、香子は朱雀を睨んだ。
『……私が誘わずとも、いつだって求めてくださるではありませんか……』
香子は頬が熱くなるのを感じた。
『それもそうだ。我らはいつでもそなたを抱きたくてたまらぬのだから……』
香子は逆らうつもりもなかった。天蓋付の大きな床に横たえられて、白虎の口づけを受ける。噛みつくような、奪うような口づけに、白虎も我慢しているのだなということが香子にはわかった。その首に腕を回し、何度も舌を吸われた。
「んっ、んっ……」
四神の口づけは巧みだ。香子はすぐにとろんとしてしまう。
『香子、我もよいか?』
「んっ……」
白虎が離れると、代わりに玄武がのしかかってきた。そして口づけを受ける。優しい、あやすような口づけに胸が熱くなった。
玄武の後は朱雀にも口づけられて、香子は身の内からとろとろと何かが流れてくるのを感じた。
朱雀の口づけは身体を溶かすような官能的なものだった。香子に求めさせようとしているみたいで、香子はふるりと震えた。
(四神に抱かれるって、なんて贅沢……)
香子はうっとりと、朱雀から熱をもらった。へその下辺りから熱が一気に全身に広がる。
そうなったらもう、何がなんだかよくわからなくなった。
朱雀が四神宮に戻ったのかも、白虎が本性を現わして香子をむさぼったのかも、玄武がそれを眺めていたのかも。
けれど朝になれば記憶が戻るものだから、香子は朝から顔を真っ赤にして床単に潜り込むのだった。
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