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第4部 四神を愛しなさいと言われました
106.白虎の領地を見てみます
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白虎の館の広間で白虎の眷属たちが平伏する中、香子は眷属たちを見ようとはしなかった。
見たら、気にしないでと言ってしまいそうだったからである。
ここは白虎が声をかけるべきだということぐらい香子もわかっているのだ。
『明日には四神宮へ戻る。そのように手配せよ』
『諾!』(はい)
白虎はひどくいらだった様子だったが、香子の震えが収まったことで一旦は許したようだった。
お茶はおいしかったと香子は思う。
『このお茶はなんという名前なのかしら?』
『普洱茶でございます』
『そう、ありがとう』
そういえば普洱という地方(普洱県がある)で採れたお茶はその製法に関わらず全て普洱茶だったと香子は思い出した。だから緑茶のような見た目と味でも普洱茶には違いないのである。
『とてもおいしいわ』
『もったいないお言葉です』
白風が答えた。
『香子はここでしたいことはあるか?』
『そうですね。できれば街を散策したいです』
『よい場所はあるか』
『手配いたします』
白虎の領地は、元の世界の地図でいうと四川省よりも西のチベット自治区と四川省の下に位置する雲南省の境に位置しているらしい。もちろんこの世界の地図はそうではないので、あくまで香子の理解ではという状態である。
香子としてはもっと西かなと思っていたが、この国の領土はそこが国境であるようだった。雲南省をもっと南に向かえば、元の世界ではミャンマーとの国境がある。その辺りまで香子は行ったことがあった。
(この辺りって……少数民族が多いのかしら)
町を見ればわかるかと、香子は敢えて聞かなかった。
眷属たちの行動は素早かった。香子が二杯目のお茶を飲んでいる間に、
『街へ向かう準備が整いました』
と眷属が伝えにきた。
『そうか。香子、如何する?』
『これを飲んだら向かいましょう』
お茶を残すなんてもったいないと香子は笑んだ。
『見たいものはあるか?』
『街の様子が見たいのです。どのような場所か、少しでも知っていたら親近感が湧くでしょう? どなたの領地に行こうかと迷った際の指標にもなりますから』
香子はそこまで言って眷属たちを眺めた。アンタたちの態度も関係してくるのだと伝えるように。
はっきり言って香子を怯えさせるなど、眷属のしたことはマイナスでしかない。いくら香子をここに留めさせようと考えたにしろ、あれはやりすぎである。下がった株をどう上げさせるのかは眷属たちの行動次第だと香子は示したのだ。
『そういうものか』
『そういうものです』
香子はにんまりした。
お茶を飲み終えて、香子は白虎に抱かれたまま広間から渡り廊下へ出た。庭園が見事である。
『わぁ……』
香子は思わず声を上げた。
『とても広い庭園ですね』
『そうか』
白虎は全く興味がなさそうだった。
『もし……ご興味がおありでしたら後ほどご案内をさせていただきたく……』
白風がおそるおそる声をかけてきた。
『ええ、時間があったらお願いしたいわ』
今日は街の散策をして、あとは夜白虎がどれぐらい香子を離さないかにかかっているだろうと香子は思う。そして、夜のことを思えば身震いした。
(私、白虎様と二人きりで抱き合ったことなんて……)
朱雀の熱を借りて一度きりしかない。けれど今回は頼みの綱の朱雀もいない。朱雀がいなくても玄武が側にいたら香子は安心できるだろう。
どうしようと香子は思った。
せっかく街へ降りたのに、おかげで香子は心ここにあらずというかんじだった。街のメインストリートと呼ばれる場所は通りも短かった。しかし国境が近いせいなのか、いろいろな恰好をした人々を見かけた。
(ここは……国境の街なのね……)
香子はぼんやりと思う。
香子はここでも茶葉を売る店に寄ってもらった。基本取り扱っているのは緑茶らしい。
店主はとても喜んで、いろいろ試飲させてくれた。
『ふむ……同じ緑茶といえど微妙に味が違うのだな』
白虎が感心したように言う。
『そうですね。どれもおいしいです』
舌に微妙な渋みが残る辺りあまりいい茶葉ではないと香子は思った。だがここで扱っているお茶は本来領主が飲む物ではない。味の違いを楽しむにはうってつけと言えた。
店主はお金なんてと固辞したが、眷属たちはしっかりお金を払ったようである。それに香子はほっとした。
領主が来たのだからただにせよなんて横暴は香子としては許せないことだ。領主であるならばむしろ率先して金を払うべきである。
そうやって経済を回すのだ。
他に、道端で手作りの物を売っているのを眺めたりして、有意義だったと香子は思う。建物が並んでいる区画はとても短く、あとは雄大な自然が迫っている。
『……あまり人口は多くないのかしら』
『他の場所と比べれば少ないかと』
白雲が答えた。ここに住んでいる眷属では比べる場所がないから答えられなかっただろう。
『そうなのね』
山がとても近い。地域としては高原というのだろうか、周りを高い山に囲まれたような、そんな場所である。まだ寒い時期というのもあるが、吐く息が白い。
『とても、キレイなところですね』
『気に入ったか』
白虎に問われて頷いた。
だからといって、ここにずっといたいかと問われれば、香子はまだうんとは言えなかった。
見たら、気にしないでと言ってしまいそうだったからである。
ここは白虎が声をかけるべきだということぐらい香子もわかっているのだ。
『明日には四神宮へ戻る。そのように手配せよ』
『諾!』(はい)
白虎はひどくいらだった様子だったが、香子の震えが収まったことで一旦は許したようだった。
お茶はおいしかったと香子は思う。
『このお茶はなんという名前なのかしら?』
『普洱茶でございます』
『そう、ありがとう』
そういえば普洱という地方(普洱県がある)で採れたお茶はその製法に関わらず全て普洱茶だったと香子は思い出した。だから緑茶のような見た目と味でも普洱茶には違いないのである。
『とてもおいしいわ』
『もったいないお言葉です』
白風が答えた。
『香子はここでしたいことはあるか?』
『そうですね。できれば街を散策したいです』
『よい場所はあるか』
『手配いたします』
白虎の領地は、元の世界の地図でいうと四川省よりも西のチベット自治区と四川省の下に位置する雲南省の境に位置しているらしい。もちろんこの世界の地図はそうではないので、あくまで香子の理解ではという状態である。
香子としてはもっと西かなと思っていたが、この国の領土はそこが国境であるようだった。雲南省をもっと南に向かえば、元の世界ではミャンマーとの国境がある。その辺りまで香子は行ったことがあった。
(この辺りって……少数民族が多いのかしら)
町を見ればわかるかと、香子は敢えて聞かなかった。
眷属たちの行動は素早かった。香子が二杯目のお茶を飲んでいる間に、
『街へ向かう準備が整いました』
と眷属が伝えにきた。
『そうか。香子、如何する?』
『これを飲んだら向かいましょう』
お茶を残すなんてもったいないと香子は笑んだ。
『見たいものはあるか?』
『街の様子が見たいのです。どのような場所か、少しでも知っていたら親近感が湧くでしょう? どなたの領地に行こうかと迷った際の指標にもなりますから』
香子はそこまで言って眷属たちを眺めた。アンタたちの態度も関係してくるのだと伝えるように。
はっきり言って香子を怯えさせるなど、眷属のしたことはマイナスでしかない。いくら香子をここに留めさせようと考えたにしろ、あれはやりすぎである。下がった株をどう上げさせるのかは眷属たちの行動次第だと香子は示したのだ。
『そういうものか』
『そういうものです』
香子はにんまりした。
お茶を飲み終えて、香子は白虎に抱かれたまま広間から渡り廊下へ出た。庭園が見事である。
『わぁ……』
香子は思わず声を上げた。
『とても広い庭園ですね』
『そうか』
白虎は全く興味がなさそうだった。
『もし……ご興味がおありでしたら後ほどご案内をさせていただきたく……』
白風がおそるおそる声をかけてきた。
『ええ、時間があったらお願いしたいわ』
今日は街の散策をして、あとは夜白虎がどれぐらい香子を離さないかにかかっているだろうと香子は思う。そして、夜のことを思えば身震いした。
(私、白虎様と二人きりで抱き合ったことなんて……)
朱雀の熱を借りて一度きりしかない。けれど今回は頼みの綱の朱雀もいない。朱雀がいなくても玄武が側にいたら香子は安心できるだろう。
どうしようと香子は思った。
せっかく街へ降りたのに、おかげで香子は心ここにあらずというかんじだった。街のメインストリートと呼ばれる場所は通りも短かった。しかし国境が近いせいなのか、いろいろな恰好をした人々を見かけた。
(ここは……国境の街なのね……)
香子はぼんやりと思う。
香子はここでも茶葉を売る店に寄ってもらった。基本取り扱っているのは緑茶らしい。
店主はとても喜んで、いろいろ試飲させてくれた。
『ふむ……同じ緑茶といえど微妙に味が違うのだな』
白虎が感心したように言う。
『そうですね。どれもおいしいです』
舌に微妙な渋みが残る辺りあまりいい茶葉ではないと香子は思った。だがここで扱っているお茶は本来領主が飲む物ではない。味の違いを楽しむにはうってつけと言えた。
店主はお金なんてと固辞したが、眷属たちはしっかりお金を払ったようである。それに香子はほっとした。
領主が来たのだからただにせよなんて横暴は香子としては許せないことだ。領主であるならばむしろ率先して金を払うべきである。
そうやって経済を回すのだ。
他に、道端で手作りの物を売っているのを眺めたりして、有意義だったと香子は思う。建物が並んでいる区画はとても短く、あとは雄大な自然が迫っている。
『……あまり人口は多くないのかしら』
『他の場所と比べれば少ないかと』
白雲が答えた。ここに住んでいる眷属では比べる場所がないから答えられなかっただろう。
『そうなのね』
山がとても近い。地域としては高原というのだろうか、周りを高い山に囲まれたような、そんな場所である。まだ寒い時期というのもあるが、吐く息が白い。
『とても、キレイなところですね』
『気に入ったか』
白虎に問われて頷いた。
だからといって、ここにずっといたいかと問われれば、香子はまだうんとは言えなかった。
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