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第4部 四神を愛しなさいと言われました
101.婚礼
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白虎の室、寝室で甘く触れられながら、香子は考えていたことを全て白虎に白状させれられてしまった。
ククク……と白虎が喉の奥で笑う。
『……初夜のことを何も考えていないとは……香子らしいな』
『んっ……んっ……』
『順番は決める必要があるだろうが、一週間は床から出られるとは思わぬ方がよい』
『……あっ、そん、なぁ……』
床から出さない宣言をされ、香子は甘い予感に震えた。
そしてそのことは白虎によって四神全員に伝わり、それから婚礼まではなんともいえない居心地の悪さを香子は覚えたのだった。
さすがに婚礼の前日はおとなしくするということで、えっちはしないで過ごした。それでも玄武の腕に抱かれれば、香子はときめいた。
(本当に……好きになってしまったのね)
そうして抱きしめられていると、香子の胸がきゅーんと疼くのだ。後ろには朱雀がいて、香子にくっついている。
婚礼を挙げるといっても、ただそういう儀式をするだけだと香子は思っていた。今だってすでに結婚しているようなものなのだからだ。
(婚礼って、節目なんだ……)
香子はなかなか寝付けなかったが、玄武と朱雀に頭を撫でられたり背中を撫でられているうちにいつのまにか眠ってしまった。
翌朝は戦争である。
侍女たちの鬼気迫る迫力に押されながら、紅をさされ、髪を結いあげられて衣裳を着せられた。
『花嫁様、お胸はいかがでしょうか?』
すごく真面目に聞かれて香子は困ってしまった。でもここで恥じらっている時間はない。
『ちょ、ちょうどいいわ……』
白虎が揉むのでどうしても大きくなってしまうのである。抱かれる際に胸にあまり触れないでほしいと白虎に言ったら、余計に愛でられてしまった。しかも、
『香子が煽るのが悪い』
と白虎は言い、香子のせいにされた。とても理不尽だと香子は思った。
衣裳は素晴らしかった。
上は黒で、金糸によって玄武が縫われている。腰帯は金、下は青龍を思わせる緑で、黒糸によって青龍が縫われている。更にその上から着せられた長袍は鮮やかな暗紫紅色であり、金色で朱雀と白虎が縫われていた。白虎の白は葬式を思わせるから使わないことにしたらしい。
そして上が暗紫紅色で、裙子が緑というのは最初どうかと香子は思ったのだが、着てみるととてもしっくりした。配色も随分気を遣ったのだなと香子は思った。
この衣裳で婚礼を挙げ、そのまま四神の背に乗って王都の上を飛び、戻ってきたら着替えて宴会である。
なんとも忙しい一日だと香子は笑んだ。
婚礼は百官に見守られながら、厳かに行われた。
場面としてはラストエンペラーの最初の頃のシーンである。玄武の腕に抱かれながら、香子は身もだえた。あの映画のワンシーンにいる! と中国マニア魂が疼いてしまってた。
『楽しそうだな』
『……楽しいんです』
玄武にそっと声をかけられて、香子は素直に応えた。
本来ならば新郎の一人である玄武が香子を抱いていくということはなく、香子は黒月に手を引かれて敷かれた絨毯の上を歩いていく予定であった。
だが四神がそれを許すはずはなかった。
絨毯を敷いた上を歩く、という時点で地に足を付けないというのはクリアしているものの、どうしても四神は香子を歩かせたくなかった。このまま香子を一歩も歩かせず、香子が歩き方を忘れてしまってもいいと四神は本気で思っているのだ。
そんなわけで、妥協として玄武に抱かれ、香子は婚礼を行う建物まで向かった。
広場には百官が勢ぞろいして平伏している。
そんな中、四神の神官である張錦飛が現れ、四神と香子の婚礼を仕切った。
香子は、なんで言ってくれなかったのかと張をちょっとだけ恨んだ。
四神の衣裳も圧巻であった。
いつもとそれほど衣裳は変わっていないように見えるのだが、それは色だけで、全て繊細な刺繍をされている豪奢なものである。
四神が一堂に会したことで、皇帝の威厳などというものははるか彼方へ吹っ飛んでしまった。
そして中国の婚礼と言えば、「一拜天地」天地に敬意を表し、「二拜高堂」お互いの両親に、「夫妻交拜」お互いにというのが普通なのだが、四神は親というものが存在しないし香子の両親も遠い世界にいるのでそこは省略した。
最後は「送入洞房」と言って新婚夫婦の部屋に向かうのだが、それを言うと本気で四神が四神宮に戻ってしまう危険性があったのであえて言われず、皇帝、皇后、皇太后、百官より祝福の言葉を受け、広場から百官が退避した。
ここで四神が本性を現し、香子を連れて空を飛ぶのだ。
『わぁ……』
四神が全て本性を現すなんて、みな初めて見ただろう。香子は思わず声を上げた。
炎を思わせる羽が美しい。香子は朱雀の側に寄った。
『朱雀様、どうぞよろしくお願いします』
『うむ』
そう言った途端、香子は朱雀の背に乗せられて空を飛び始めていた。
『わぁーーー!』
朱雀と共に玄武、白虎、青龍が飛び始める。そのまま王都の上空を巡るように飛び、北と西にも向かって飛んでいくのだ。
各国に四神の婚礼は通達してある。つまりこれは示威行為だ。
だがそれも大事だと香子は思う。
唐を攻めたら四神が黙っていないぞというのはとんでもないデモンストレーションである。戦争抑止力としてこれほど効果的なものはなかった。
それに、香子は四神の背に乗って飛ぶのはとても好きだった。
(私、本当に結婚したんだ……)
今更ながらじわじわと実感してきて、香子は朱雀の背に埋もれながら全身が熱を持つのを感じた。
ーーーーー
やっとここまできたーーーーーー!!
葬式の色は今は黒ですが、それは西洋から入ってきた風習です。元は日本でも白でした。
ククク……と白虎が喉の奥で笑う。
『……初夜のことを何も考えていないとは……香子らしいな』
『んっ……んっ……』
『順番は決める必要があるだろうが、一週間は床から出られるとは思わぬ方がよい』
『……あっ、そん、なぁ……』
床から出さない宣言をされ、香子は甘い予感に震えた。
そしてそのことは白虎によって四神全員に伝わり、それから婚礼まではなんともいえない居心地の悪さを香子は覚えたのだった。
さすがに婚礼の前日はおとなしくするということで、えっちはしないで過ごした。それでも玄武の腕に抱かれれば、香子はときめいた。
(本当に……好きになってしまったのね)
そうして抱きしめられていると、香子の胸がきゅーんと疼くのだ。後ろには朱雀がいて、香子にくっついている。
婚礼を挙げるといっても、ただそういう儀式をするだけだと香子は思っていた。今だってすでに結婚しているようなものなのだからだ。
(婚礼って、節目なんだ……)
香子はなかなか寝付けなかったが、玄武と朱雀に頭を撫でられたり背中を撫でられているうちにいつのまにか眠ってしまった。
翌朝は戦争である。
侍女たちの鬼気迫る迫力に押されながら、紅をさされ、髪を結いあげられて衣裳を着せられた。
『花嫁様、お胸はいかがでしょうか?』
すごく真面目に聞かれて香子は困ってしまった。でもここで恥じらっている時間はない。
『ちょ、ちょうどいいわ……』
白虎が揉むのでどうしても大きくなってしまうのである。抱かれる際に胸にあまり触れないでほしいと白虎に言ったら、余計に愛でられてしまった。しかも、
『香子が煽るのが悪い』
と白虎は言い、香子のせいにされた。とても理不尽だと香子は思った。
衣裳は素晴らしかった。
上は黒で、金糸によって玄武が縫われている。腰帯は金、下は青龍を思わせる緑で、黒糸によって青龍が縫われている。更にその上から着せられた長袍は鮮やかな暗紫紅色であり、金色で朱雀と白虎が縫われていた。白虎の白は葬式を思わせるから使わないことにしたらしい。
そして上が暗紫紅色で、裙子が緑というのは最初どうかと香子は思ったのだが、着てみるととてもしっくりした。配色も随分気を遣ったのだなと香子は思った。
この衣裳で婚礼を挙げ、そのまま四神の背に乗って王都の上を飛び、戻ってきたら着替えて宴会である。
なんとも忙しい一日だと香子は笑んだ。
婚礼は百官に見守られながら、厳かに行われた。
場面としてはラストエンペラーの最初の頃のシーンである。玄武の腕に抱かれながら、香子は身もだえた。あの映画のワンシーンにいる! と中国マニア魂が疼いてしまってた。
『楽しそうだな』
『……楽しいんです』
玄武にそっと声をかけられて、香子は素直に応えた。
本来ならば新郎の一人である玄武が香子を抱いていくということはなく、香子は黒月に手を引かれて敷かれた絨毯の上を歩いていく予定であった。
だが四神がそれを許すはずはなかった。
絨毯を敷いた上を歩く、という時点で地に足を付けないというのはクリアしているものの、どうしても四神は香子を歩かせたくなかった。このまま香子を一歩も歩かせず、香子が歩き方を忘れてしまってもいいと四神は本気で思っているのだ。
そんなわけで、妥協として玄武に抱かれ、香子は婚礼を行う建物まで向かった。
広場には百官が勢ぞろいして平伏している。
そんな中、四神の神官である張錦飛が現れ、四神と香子の婚礼を仕切った。
香子は、なんで言ってくれなかったのかと張をちょっとだけ恨んだ。
四神の衣裳も圧巻であった。
いつもとそれほど衣裳は変わっていないように見えるのだが、それは色だけで、全て繊細な刺繍をされている豪奢なものである。
四神が一堂に会したことで、皇帝の威厳などというものははるか彼方へ吹っ飛んでしまった。
そして中国の婚礼と言えば、「一拜天地」天地に敬意を表し、「二拜高堂」お互いの両親に、「夫妻交拜」お互いにというのが普通なのだが、四神は親というものが存在しないし香子の両親も遠い世界にいるのでそこは省略した。
最後は「送入洞房」と言って新婚夫婦の部屋に向かうのだが、それを言うと本気で四神が四神宮に戻ってしまう危険性があったのであえて言われず、皇帝、皇后、皇太后、百官より祝福の言葉を受け、広場から百官が退避した。
ここで四神が本性を現し、香子を連れて空を飛ぶのだ。
『わぁ……』
四神が全て本性を現すなんて、みな初めて見ただろう。香子は思わず声を上げた。
炎を思わせる羽が美しい。香子は朱雀の側に寄った。
『朱雀様、どうぞよろしくお願いします』
『うむ』
そう言った途端、香子は朱雀の背に乗せられて空を飛び始めていた。
『わぁーーー!』
朱雀と共に玄武、白虎、青龍が飛び始める。そのまま王都の上空を巡るように飛び、北と西にも向かって飛んでいくのだ。
各国に四神の婚礼は通達してある。つまりこれは示威行為だ。
だがそれも大事だと香子は思う。
唐を攻めたら四神が黙っていないぞというのはとんでもないデモンストレーションである。戦争抑止力としてこれほど効果的なものはなかった。
それに、香子は四神の背に乗って飛ぶのはとても好きだった。
(私、本当に結婚したんだ……)
今更ながらじわじわと実感してきて、香子は朱雀の背に埋もれながら全身が熱を持つのを感じた。
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やっとここまできたーーーーーー!!
葬式の色は今は黒ですが、それは西洋から入ってきた風習です。元は日本でも白でした。
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