553 / 597
第4部 四神を愛しなさいと言われました
101.婚礼
しおりを挟む
白虎の室、寝室で甘く触れられながら、香子は考えていたことを全て白虎に白状させれられてしまった。
ククク……と白虎が喉の奥で笑う。
『……初夜のことを何も考えていないとは……香子らしいな』
『んっ……んっ……』
『順番は決める必要があるだろうが、一週間は床から出られるとは思わぬ方がよい』
『……あっ、そん、なぁ……』
床から出さない宣言をされ、香子は甘い予感に震えた。
そしてそのことは白虎によって四神全員に伝わり、それから婚礼まではなんともいえない居心地の悪さを香子は覚えたのだった。
さすがに婚礼の前日はおとなしくするということで、えっちはしないで過ごした。それでも玄武の腕に抱かれれば、香子はときめいた。
(本当に……好きになってしまったのね)
そうして抱きしめられていると、香子の胸がきゅーんと疼くのだ。後ろには朱雀がいて、香子にくっついている。
婚礼を挙げるといっても、ただそういう儀式をするだけだと香子は思っていた。今だってすでに結婚しているようなものなのだからだ。
(婚礼って、節目なんだ……)
香子はなかなか寝付けなかったが、玄武と朱雀に頭を撫でられたり背中を撫でられているうちにいつのまにか眠ってしまった。
翌朝は戦争である。
侍女たちの鬼気迫る迫力に押されながら、紅をさされ、髪を結いあげられて衣裳を着せられた。
『花嫁様、お胸はいかがでしょうか?』
すごく真面目に聞かれて香子は困ってしまった。でもここで恥じらっている時間はない。
『ちょ、ちょうどいいわ……』
白虎が揉むのでどうしても大きくなってしまうのである。抱かれる際に胸にあまり触れないでほしいと白虎に言ったら、余計に愛でられてしまった。しかも、
『香子が煽るのが悪い』
と白虎は言い、香子のせいにされた。とても理不尽だと香子は思った。
衣裳は素晴らしかった。
上は黒で、金糸によって玄武が縫われている。腰帯は金、下は青龍を思わせる緑で、黒糸によって青龍が縫われている。更にその上から着せられた長袍は鮮やかな暗紫紅色であり、金色で朱雀と白虎が縫われていた。白虎の白は葬式を思わせるから使わないことにしたらしい。
そして上が暗紫紅色で、裙子が緑というのは最初どうかと香子は思ったのだが、着てみるととてもしっくりした。配色も随分気を遣ったのだなと香子は思った。
この衣裳で婚礼を挙げ、そのまま四神の背に乗って王都の上を飛び、戻ってきたら着替えて宴会である。
なんとも忙しい一日だと香子は笑んだ。
婚礼は百官に見守られながら、厳かに行われた。
場面としてはラストエンペラーの最初の頃のシーンである。玄武の腕に抱かれながら、香子は身もだえた。あの映画のワンシーンにいる! と中国マニア魂が疼いてしまってた。
『楽しそうだな』
『……楽しいんです』
玄武にそっと声をかけられて、香子は素直に応えた。
本来ならば新郎の一人である玄武が香子を抱いていくということはなく、香子は黒月に手を引かれて敷かれた絨毯の上を歩いていく予定であった。
だが四神がそれを許すはずはなかった。
絨毯を敷いた上を歩く、という時点で地に足を付けないというのはクリアしているものの、どうしても四神は香子を歩かせたくなかった。このまま香子を一歩も歩かせず、香子が歩き方を忘れてしまってもいいと四神は本気で思っているのだ。
そんなわけで、妥協として玄武に抱かれ、香子は婚礼を行う建物まで向かった。
広場には百官が勢ぞろいして平伏している。
そんな中、四神の神官である張錦飛が現れ、四神と香子の婚礼を仕切った。
香子は、なんで言ってくれなかったのかと張をちょっとだけ恨んだ。
四神の衣裳も圧巻であった。
いつもとそれほど衣裳は変わっていないように見えるのだが、それは色だけで、全て繊細な刺繍をされている豪奢なものである。
四神が一堂に会したことで、皇帝の威厳などというものははるか彼方へ吹っ飛んでしまった。
そして中国の婚礼と言えば、「一拜天地」天地に敬意を表し、「二拜高堂」お互いの両親に、「夫妻交拜」お互いにというのが普通なのだが、四神は親というものが存在しないし香子の両親も遠い世界にいるのでそこは省略した。
最後は「送入洞房」と言って新婚夫婦の部屋に向かうのだが、それを言うと本気で四神が四神宮に戻ってしまう危険性があったのであえて言われず、皇帝、皇后、皇太后、百官より祝福の言葉を受け、広場から百官が退避した。
ここで四神が本性を現し、香子を連れて空を飛ぶのだ。
『わぁ……』
四神が全て本性を現すなんて、みな初めて見ただろう。香子は思わず声を上げた。
炎を思わせる羽が美しい。香子は朱雀の側に寄った。
『朱雀様、どうぞよろしくお願いします』
『うむ』
そう言った途端、香子は朱雀の背に乗せられて空を飛び始めていた。
『わぁーーー!』
朱雀と共に玄武、白虎、青龍が飛び始める。そのまま王都の上空を巡るように飛び、北と西にも向かって飛んでいくのだ。
各国に四神の婚礼は通達してある。つまりこれは示威行為だ。
だがそれも大事だと香子は思う。
唐を攻めたら四神が黙っていないぞというのはとんでもないデモンストレーションである。戦争抑止力としてこれほど効果的なものはなかった。
それに、香子は四神の背に乗って飛ぶのはとても好きだった。
(私、本当に結婚したんだ……)
今更ながらじわじわと実感してきて、香子は朱雀の背に埋もれながら全身が熱を持つのを感じた。
ーーーーー
やっとここまできたーーーーーー!!
葬式の色は今は黒ですが、それは西洋から入ってきた風習です。元は日本でも白でした。
ククク……と白虎が喉の奥で笑う。
『……初夜のことを何も考えていないとは……香子らしいな』
『んっ……んっ……』
『順番は決める必要があるだろうが、一週間は床から出られるとは思わぬ方がよい』
『……あっ、そん、なぁ……』
床から出さない宣言をされ、香子は甘い予感に震えた。
そしてそのことは白虎によって四神全員に伝わり、それから婚礼まではなんともいえない居心地の悪さを香子は覚えたのだった。
さすがに婚礼の前日はおとなしくするということで、えっちはしないで過ごした。それでも玄武の腕に抱かれれば、香子はときめいた。
(本当に……好きになってしまったのね)
そうして抱きしめられていると、香子の胸がきゅーんと疼くのだ。後ろには朱雀がいて、香子にくっついている。
婚礼を挙げるといっても、ただそういう儀式をするだけだと香子は思っていた。今だってすでに結婚しているようなものなのだからだ。
(婚礼って、節目なんだ……)
香子はなかなか寝付けなかったが、玄武と朱雀に頭を撫でられたり背中を撫でられているうちにいつのまにか眠ってしまった。
翌朝は戦争である。
侍女たちの鬼気迫る迫力に押されながら、紅をさされ、髪を結いあげられて衣裳を着せられた。
『花嫁様、お胸はいかがでしょうか?』
すごく真面目に聞かれて香子は困ってしまった。でもここで恥じらっている時間はない。
『ちょ、ちょうどいいわ……』
白虎が揉むのでどうしても大きくなってしまうのである。抱かれる際に胸にあまり触れないでほしいと白虎に言ったら、余計に愛でられてしまった。しかも、
『香子が煽るのが悪い』
と白虎は言い、香子のせいにされた。とても理不尽だと香子は思った。
衣裳は素晴らしかった。
上は黒で、金糸によって玄武が縫われている。腰帯は金、下は青龍を思わせる緑で、黒糸によって青龍が縫われている。更にその上から着せられた長袍は鮮やかな暗紫紅色であり、金色で朱雀と白虎が縫われていた。白虎の白は葬式を思わせるから使わないことにしたらしい。
そして上が暗紫紅色で、裙子が緑というのは最初どうかと香子は思ったのだが、着てみるととてもしっくりした。配色も随分気を遣ったのだなと香子は思った。
この衣裳で婚礼を挙げ、そのまま四神の背に乗って王都の上を飛び、戻ってきたら着替えて宴会である。
なんとも忙しい一日だと香子は笑んだ。
婚礼は百官に見守られながら、厳かに行われた。
場面としてはラストエンペラーの最初の頃のシーンである。玄武の腕に抱かれながら、香子は身もだえた。あの映画のワンシーンにいる! と中国マニア魂が疼いてしまってた。
『楽しそうだな』
『……楽しいんです』
玄武にそっと声をかけられて、香子は素直に応えた。
本来ならば新郎の一人である玄武が香子を抱いていくということはなく、香子は黒月に手を引かれて敷かれた絨毯の上を歩いていく予定であった。
だが四神がそれを許すはずはなかった。
絨毯を敷いた上を歩く、という時点で地に足を付けないというのはクリアしているものの、どうしても四神は香子を歩かせたくなかった。このまま香子を一歩も歩かせず、香子が歩き方を忘れてしまってもいいと四神は本気で思っているのだ。
そんなわけで、妥協として玄武に抱かれ、香子は婚礼を行う建物まで向かった。
広場には百官が勢ぞろいして平伏している。
そんな中、四神の神官である張錦飛が現れ、四神と香子の婚礼を仕切った。
香子は、なんで言ってくれなかったのかと張をちょっとだけ恨んだ。
四神の衣裳も圧巻であった。
いつもとそれほど衣裳は変わっていないように見えるのだが、それは色だけで、全て繊細な刺繍をされている豪奢なものである。
四神が一堂に会したことで、皇帝の威厳などというものははるか彼方へ吹っ飛んでしまった。
そして中国の婚礼と言えば、「一拜天地」天地に敬意を表し、「二拜高堂」お互いの両親に、「夫妻交拜」お互いにというのが普通なのだが、四神は親というものが存在しないし香子の両親も遠い世界にいるのでそこは省略した。
最後は「送入洞房」と言って新婚夫婦の部屋に向かうのだが、それを言うと本気で四神が四神宮に戻ってしまう危険性があったのであえて言われず、皇帝、皇后、皇太后、百官より祝福の言葉を受け、広場から百官が退避した。
ここで四神が本性を現し、香子を連れて空を飛ぶのだ。
『わぁ……』
四神が全て本性を現すなんて、みな初めて見ただろう。香子は思わず声を上げた。
炎を思わせる羽が美しい。香子は朱雀の側に寄った。
『朱雀様、どうぞよろしくお願いします』
『うむ』
そう言った途端、香子は朱雀の背に乗せられて空を飛び始めていた。
『わぁーーー!』
朱雀と共に玄武、白虎、青龍が飛び始める。そのまま王都の上空を巡るように飛び、北と西にも向かって飛んでいくのだ。
各国に四神の婚礼は通達してある。つまりこれは示威行為だ。
だがそれも大事だと香子は思う。
唐を攻めたら四神が黙っていないぞというのはとんでもないデモンストレーションである。戦争抑止力としてこれほど効果的なものはなかった。
それに、香子は四神の背に乗って飛ぶのはとても好きだった。
(私、本当に結婚したんだ……)
今更ながらじわじわと実感してきて、香子は朱雀の背に埋もれながら全身が熱を持つのを感じた。
ーーーーー
やっとここまできたーーーーーー!!
葬式の色は今は黒ですが、それは西洋から入ってきた風習です。元は日本でも白でした。
59
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる