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第4部 四神を愛しなさいと言われました
94.今度はまた胸の大きさが気になります
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ちょうどその日は白虎と過ごす日であったということもあり、白虎の室に移動してから香子は聞いてみた。
さすがに寝室ではなく、居間の長椅子でお茶を飲みながらである。
『白虎様』
『如何か』
『私の……この胸ってどこまで大きくなるものなのですか?』
白虎はすぐに返事はしなかった。
『……我にもわからぬ。しばし待て』
『はい』
白虎は香子を膝に乗せたまま、目を閉じた。四神はそうして先代の記憶を辿ることができるのだと香子は聞かされていたので、お茶を啜りながらおとなしく待つことにした。
白虎が目を閉じていた時間は、香子が考えていたよりも少し長かった。
『……香子、その胸はどこまで大きくなってもいいものなのか』
『ええっ?』
聞くことそこ? という思いを込めて、香子は白虎をまじまじと見つめた。その言い方だと白虎はもっと香子の胸が大きくなってもよさそうである。
『ええと……できればもうこれぐらいで大きくなるのは止まってくれた方がいいとは、思ってます……』
胸が小さくなるのは嫌だが、これ以上大きくなるのもちょっと困る。
『……我としてはもう少し大きくてもいいのだが……胸が大きいことで生活に支障はあるのか?』
白虎が不思議そうに聞く。確かにここのところ香子の移動はほぼ四神が担っているから、思ったより胸が揺れて痛みを感じるということはない。香子だってこっそり自分の胸を両腕に挟んで「だっちゅーの!」ができる、と身もだえたぐらいである。その姿をこっそり湯殿に浸かりながらやっているのを見たのは侍女ぐらいである。侍女たちが、花嫁さまかわいいと身もだえたのはただの余談である。
話を戻そう。
『うーん……これ以上胸が大きくなると足元が見えなくて危ないかなって思うんですよね。そんなに歩くこともないんですけど』
『ふむ……』
『あと、単純に胸が重いです』
胸にコンプレックスを抱えていた過去が遠い昔のようである。
『そうか。では定着させる必要があるな。香子、抱かせよ』
『えっ?』
白虎が一瞬視線を虚空に向ける。もしかしたら四神のうちの誰かに連絡をしたのかもしれないと香子は気づいた。
『白虎様?』
頼むから説明をしてほしいと、香子は白虎の腕を軽く叩いた。
『説明してください』
とにかく四神は言葉が足りない。自分たちの常識だけでいろいろ決めるのは止めてほしいと香子は思うのだ。
『ああ……香子の髪の色は朱雀兄に丸一日抱かれることで定着したであろう?』
『そう、ですね……』
髪の色の定着に丸一日とか意味がわからないが、そういうものなのだからしかたない。おかげでもういちいち髪を染める必要がなく、常に暗紫紅色の髪を保っているのだから香子としては万々歳である。いずれ黒髪に戻したいと思う日が来るのかどうかは、まだ香子にもわからない。
それはともかく、今はたわわな胸のことである。
『それとこの胸になんの関係が?』
『どうもその胸の大きさを定着させるには我が抱いて決めなければならないようだ』
『……どれぐらいの時間、ですか?』
なんだかとても嫌な予感がして、香子は背中に冷や汗が流れるのを感じた。白虎の腕の中から逃げ出せるものなら今すぐにでも逃げ出してしまいたい。運よく白虎の膝から降りられたとしても、そのまま逃げることはかなわないだろうけれど。
『そうさな……三日というところだろうか』
『ええええ!?』
三日も白虎に抱かれ続けなければいけないとはいったいどこのエロ同人の話だろうか。髪色を定着させる期間よりもはるかに長いではないか。
『食べ物は運ばせる故、定着をはかるとするか』
『まっ、待って、待ってください!』
これからいきなり三日間白虎に抱かれ続けるなど勘弁してもらいたいと香子は止める。
『まだ慈寧宮に行かなければいけない日もあります。丸々三日間も抱かれ続けるわけにはいきません!』
それに白虎の本性を現した姿で、三日間も抱かれ続けたらどうなってしまうかわからないと香子は思う。香子はまだ虎の姿が怖いのだ。
もふもふさせてくれるだけならいいが、やはり抱かれる時は無意識で身体が震えるのである。
実際、抱かれてしまえばすぐにそんなことは考えられなくなるのだけれど。
『そうか……では今は愛でるだけにしよう』
白虎は口端をクッと上げた。あ、これ絶対逃げられないやつだと香子も悟った。元より、香子を抱きたくてしかたがない四神から逃れるすべなどなかった。
だが昼間から抱かれるのだけは勘弁である。四神に抱かれると気持ちがよすぎて何も考えられなくなってしまうし、それでごはんを食いっぱぐれるなど香子にはとても耐えられない。
『さ、最後まではなしですよ?』
『善処しよう』
それ絶対考える気ないやつ! と香子は青ざめた。
『せめて夜にしてください!』
『それも兄に確認しておかねばならぬな』
白虎はとても楽しそうだ。香子にとってそれはなかなかに憎い。
『白虎、参ったぞ』
表から声がかかった。その耳に心地いいバリトンは玄武のもので。
香子は、とんでもないことを言ってしまったと己の頭を抱えたのだった。
ーーーーー
だっちゅーの お笑い芸人パイレーツのネタ。90年代とかかなり遠い。
年内更新はここまでです。今年もたくさん読んでいただきありがとうございました!
来年中には完結する予定(?)ですので、どうぞ来年もよろしくお願いします。
さすがに寝室ではなく、居間の長椅子でお茶を飲みながらである。
『白虎様』
『如何か』
『私の……この胸ってどこまで大きくなるものなのですか?』
白虎はすぐに返事はしなかった。
『……我にもわからぬ。しばし待て』
『はい』
白虎は香子を膝に乗せたまま、目を閉じた。四神はそうして先代の記憶を辿ることができるのだと香子は聞かされていたので、お茶を啜りながらおとなしく待つことにした。
白虎が目を閉じていた時間は、香子が考えていたよりも少し長かった。
『……香子、その胸はどこまで大きくなってもいいものなのか』
『ええっ?』
聞くことそこ? という思いを込めて、香子は白虎をまじまじと見つめた。その言い方だと白虎はもっと香子の胸が大きくなってもよさそうである。
『ええと……できればもうこれぐらいで大きくなるのは止まってくれた方がいいとは、思ってます……』
胸が小さくなるのは嫌だが、これ以上大きくなるのもちょっと困る。
『……我としてはもう少し大きくてもいいのだが……胸が大きいことで生活に支障はあるのか?』
白虎が不思議そうに聞く。確かにここのところ香子の移動はほぼ四神が担っているから、思ったより胸が揺れて痛みを感じるということはない。香子だってこっそり自分の胸を両腕に挟んで「だっちゅーの!」ができる、と身もだえたぐらいである。その姿をこっそり湯殿に浸かりながらやっているのを見たのは侍女ぐらいである。侍女たちが、花嫁さまかわいいと身もだえたのはただの余談である。
話を戻そう。
『うーん……これ以上胸が大きくなると足元が見えなくて危ないかなって思うんですよね。そんなに歩くこともないんですけど』
『ふむ……』
『あと、単純に胸が重いです』
胸にコンプレックスを抱えていた過去が遠い昔のようである。
『そうか。では定着させる必要があるな。香子、抱かせよ』
『えっ?』
白虎が一瞬視線を虚空に向ける。もしかしたら四神のうちの誰かに連絡をしたのかもしれないと香子は気づいた。
『白虎様?』
頼むから説明をしてほしいと、香子は白虎の腕を軽く叩いた。
『説明してください』
とにかく四神は言葉が足りない。自分たちの常識だけでいろいろ決めるのは止めてほしいと香子は思うのだ。
『ああ……香子の髪の色は朱雀兄に丸一日抱かれることで定着したであろう?』
『そう、ですね……』
髪の色の定着に丸一日とか意味がわからないが、そういうものなのだからしかたない。おかげでもういちいち髪を染める必要がなく、常に暗紫紅色の髪を保っているのだから香子としては万々歳である。いずれ黒髪に戻したいと思う日が来るのかどうかは、まだ香子にもわからない。
それはともかく、今はたわわな胸のことである。
『それとこの胸になんの関係が?』
『どうもその胸の大きさを定着させるには我が抱いて決めなければならないようだ』
『……どれぐらいの時間、ですか?』
なんだかとても嫌な予感がして、香子は背中に冷や汗が流れるのを感じた。白虎の腕の中から逃げ出せるものなら今すぐにでも逃げ出してしまいたい。運よく白虎の膝から降りられたとしても、そのまま逃げることはかなわないだろうけれど。
『そうさな……三日というところだろうか』
『ええええ!?』
三日も白虎に抱かれ続けなければいけないとはいったいどこのエロ同人の話だろうか。髪色を定着させる期間よりもはるかに長いではないか。
『食べ物は運ばせる故、定着をはかるとするか』
『まっ、待って、待ってください!』
これからいきなり三日間白虎に抱かれ続けるなど勘弁してもらいたいと香子は止める。
『まだ慈寧宮に行かなければいけない日もあります。丸々三日間も抱かれ続けるわけにはいきません!』
それに白虎の本性を現した姿で、三日間も抱かれ続けたらどうなってしまうかわからないと香子は思う。香子はまだ虎の姿が怖いのだ。
もふもふさせてくれるだけならいいが、やはり抱かれる時は無意識で身体が震えるのである。
実際、抱かれてしまえばすぐにそんなことは考えられなくなるのだけれど。
『そうか……では今は愛でるだけにしよう』
白虎は口端をクッと上げた。あ、これ絶対逃げられないやつだと香子も悟った。元より、香子を抱きたくてしかたがない四神から逃れるすべなどなかった。
だが昼間から抱かれるのだけは勘弁である。四神に抱かれると気持ちがよすぎて何も考えられなくなってしまうし、それでごはんを食いっぱぐれるなど香子にはとても耐えられない。
『さ、最後まではなしですよ?』
『善処しよう』
それ絶対考える気ないやつ! と香子は青ざめた。
『せめて夜にしてください!』
『それも兄に確認しておかねばならぬな』
白虎はとても楽しそうだ。香子にとってそれはなかなかに憎い。
『白虎、参ったぞ』
表から声がかかった。その耳に心地いいバリトンは玄武のもので。
香子は、とんでもないことを言ってしまったと己の頭を抱えたのだった。
ーーーーー
だっちゅーの お笑い芸人パイレーツのネタ。90年代とかかなり遠い。
年内更新はここまでです。今年もたくさん読んでいただきありがとうございました!
来年中には完結する予定(?)ですので、どうぞ来年もよろしくお願いします。
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