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第4部 四神を愛しなさいと言われました
93.眷属は己の神が一番なのです
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四神宮は静かだった。
正確には、四神宮の中は、である。
趙文英はここのところ毎日朝から大忙しであるらしいと香子は聞いた。
それについては申し訳ないと香子も思うのだが、ことがことだけにどうしようもなかった。
四神の衣装の保管や管理については四神宮で行うこととなった。眷属たちがきちんと保管をすることになっているが、実はすでに四神が一旦領地へ戻しに行った。というのも、四神の衣装は全て四神の領地の者たちが作っているので、何かあってはいけないと領地にいる眷属たちが持って帰ってきてもらうよう四神に訴えたのだった。
(眷属に言われてお使いをする四神とか……)
想像しただけでぷくく……と香子は笑ってしまう。
眷属たちもありえないほどの身体能力を有しているので、四神宮と領地の往復ぐらいなんということはない。ただ丸一日大事な衣装を持って走るというのは眷属たちもやりたくはなかったらしく、一瞬で移動が可能な四神に運ばせたのである。四神も移動自体は一瞬であるからそれ自体は苦ではなかったが、四神はみな一様に眷属たちに文句を言われた。
曰く、
『何故花嫁様を連れていらっしゃらなかったのですか?』
と。
それを食事の席で淡々と告げられて、香子はどんな顔をしたらいいのかわからなかった。
『そ、そうなのですか……』
としか答えようがなかった。
『婚礼を挙げる前にまた衣装を取りに行くが、そなたを伴わなければ衣装を渡さない勢いであったぞ』
朱雀が口元に笑みを浮かべて茶化すように言う。
『それは……』
香子は助けを求めるように白雲の方を見た。白雲はすぐにそれに気づき、口元に笑みをはいた。
『おそれながら……我もそうですが、眷属というものは己の神が第一でございます。故に、己の神の元に花嫁様を迎え入れたいと望むものなのです』
その割に、眷属は己の”つがい”が絡むと香子に対してひどくぞんざいになるということも、香子は知っていた。
『……それなら、花嫁は一人ではなく四人いればよかったのではなくて?』
たった一人で四神の愛を受け止めるのは、香子としてもなかなかに大変なのだ。なのでつい以前から思っていたことが口から出てしまった。
『それはできぬ』
玄武が即答した。
以前も聞いたかもしれないが、香子には到底理解できない。何故花嫁はたった一人なのかと。
『それはたった一人しか召喚できないのか、それともあえて一人しか召喚しないのかどちらなのですか?』
これだけは気になったので、香子は尋ねた。
『……あえて一人であるはずだ。こればかりは天皇のご意志によるもの。我らが知るものではない』
『まぁ……なんとなく一人という理由もわからないではないですが』
四人もいたらある意味収拾がつかなくなるに違いない。一人一人の相手が決まっていて、みながみなその相手を好きになる保証なんてない。すんなりいけばいいが、そうでなければ修羅場が起きそうだ。だからといって香子が一人で受け止めるのも違うような気はする。
『わかりませんよね……』
『天皇に尋ねることはできようが……』
『そもそも返事がありませんよね』
何故召喚されたのが中国の人ではなく香子だったのか。それが香子としては最大の謎である。
(帰国しようとしてたのになぁ……)
それがなんの因果か世界の強制力に捕まって、香子はこちらの世界に連れてこられてしまった。世界レベルの誘拐など、香子としては勘弁してほしいと思うが今となっては遠い昔のようである。
『声はかけているのだがな』
『……無視されてるわけじゃないですよね?』
玄武は苦笑した。
『……元来神というのは気まぐれなものだ。答えたい時に答えるし、答えたくなければ聞いていない。無視とは違う』
白虎が補足した。珍しいこともあるものだと香子は思った。
『……私には到底理解できませんが、長い年月を生きているとそういうものなのかもしれませんね』
そこで話は終わった。
天皇のことをああでもないこうでもない言ってもしかたがないからだった。
それよりも香子にとって頭が痛いのは己の衣装についてである。布はだいたい決まったのだが、次は仮縫いだ。それをまたわざわざ慈寧宮に行ってやらなければならない。
香子はもう体型が変わらないから、前の衣装の型紙を使って作ってくれればそれで十分だと思っていたが違うのだという。
『花嫁様のお胸は、以前に比べてとても豊かにおなりでございますから』
そういえばそうだったと香子は自分の胸を見て思い出した。
白虎に抱かれるようになってから、なんとなく胸が重いのである。以前と比べて身体を動かすとゆさっと胸が揺れるのだ。
できれば胸の下の支えがほしいぐらいである。そういうものはないかと侍女に尋ねたら、香子の言う通りに侍女が手作りした。おかげで下乳を支える物ができて、香子としては満足である。
(結局、この胸なのね……)
確かに香子は自分の胸がコンプレックスではあったが、こんなゆさゆさ揺れるほどの胸は求めていなかった。
(まだ大きくなるのかしら?)
そうしたらまた衣装を作る度に香子は付き合わされることになるのだろう。この先はもう婚礼さえ挙げればと香子も考えてはいるが、まだもう少し四神宮にはいることになっている。(白虎と玄武の領地を回る予定)
白虎には聞いてみなければいけないと香子は思ったのだった。
正確には、四神宮の中は、である。
趙文英はここのところ毎日朝から大忙しであるらしいと香子は聞いた。
それについては申し訳ないと香子も思うのだが、ことがことだけにどうしようもなかった。
四神の衣装の保管や管理については四神宮で行うこととなった。眷属たちがきちんと保管をすることになっているが、実はすでに四神が一旦領地へ戻しに行った。というのも、四神の衣装は全て四神の領地の者たちが作っているので、何かあってはいけないと領地にいる眷属たちが持って帰ってきてもらうよう四神に訴えたのだった。
(眷属に言われてお使いをする四神とか……)
想像しただけでぷくく……と香子は笑ってしまう。
眷属たちもありえないほどの身体能力を有しているので、四神宮と領地の往復ぐらいなんということはない。ただ丸一日大事な衣装を持って走るというのは眷属たちもやりたくはなかったらしく、一瞬で移動が可能な四神に運ばせたのである。四神も移動自体は一瞬であるからそれ自体は苦ではなかったが、四神はみな一様に眷属たちに文句を言われた。
曰く、
『何故花嫁様を連れていらっしゃらなかったのですか?』
と。
それを食事の席で淡々と告げられて、香子はどんな顔をしたらいいのかわからなかった。
『そ、そうなのですか……』
としか答えようがなかった。
『婚礼を挙げる前にまた衣装を取りに行くが、そなたを伴わなければ衣装を渡さない勢いであったぞ』
朱雀が口元に笑みを浮かべて茶化すように言う。
『それは……』
香子は助けを求めるように白雲の方を見た。白雲はすぐにそれに気づき、口元に笑みをはいた。
『おそれながら……我もそうですが、眷属というものは己の神が第一でございます。故に、己の神の元に花嫁様を迎え入れたいと望むものなのです』
その割に、眷属は己の”つがい”が絡むと香子に対してひどくぞんざいになるということも、香子は知っていた。
『……それなら、花嫁は一人ではなく四人いればよかったのではなくて?』
たった一人で四神の愛を受け止めるのは、香子としてもなかなかに大変なのだ。なのでつい以前から思っていたことが口から出てしまった。
『それはできぬ』
玄武が即答した。
以前も聞いたかもしれないが、香子には到底理解できない。何故花嫁はたった一人なのかと。
『それはたった一人しか召喚できないのか、それともあえて一人しか召喚しないのかどちらなのですか?』
これだけは気になったので、香子は尋ねた。
『……あえて一人であるはずだ。こればかりは天皇のご意志によるもの。我らが知るものではない』
『まぁ……なんとなく一人という理由もわからないではないですが』
四人もいたらある意味収拾がつかなくなるに違いない。一人一人の相手が決まっていて、みながみなその相手を好きになる保証なんてない。すんなりいけばいいが、そうでなければ修羅場が起きそうだ。だからといって香子が一人で受け止めるのも違うような気はする。
『わかりませんよね……』
『天皇に尋ねることはできようが……』
『そもそも返事がありませんよね』
何故召喚されたのが中国の人ではなく香子だったのか。それが香子としては最大の謎である。
(帰国しようとしてたのになぁ……)
それがなんの因果か世界の強制力に捕まって、香子はこちらの世界に連れてこられてしまった。世界レベルの誘拐など、香子としては勘弁してほしいと思うが今となっては遠い昔のようである。
『声はかけているのだがな』
『……無視されてるわけじゃないですよね?』
玄武は苦笑した。
『……元来神というのは気まぐれなものだ。答えたい時に答えるし、答えたくなければ聞いていない。無視とは違う』
白虎が補足した。珍しいこともあるものだと香子は思った。
『……私には到底理解できませんが、長い年月を生きているとそういうものなのかもしれませんね』
そこで話は終わった。
天皇のことをああでもないこうでもない言ってもしかたがないからだった。
それよりも香子にとって頭が痛いのは己の衣装についてである。布はだいたい決まったのだが、次は仮縫いだ。それをまたわざわざ慈寧宮に行ってやらなければならない。
香子はもう体型が変わらないから、前の衣装の型紙を使って作ってくれればそれで十分だと思っていたが違うのだという。
『花嫁様のお胸は、以前に比べてとても豊かにおなりでございますから』
そういえばそうだったと香子は自分の胸を見て思い出した。
白虎に抱かれるようになってから、なんとなく胸が重いのである。以前と比べて身体を動かすとゆさっと胸が揺れるのだ。
できれば胸の下の支えがほしいぐらいである。そういうものはないかと侍女に尋ねたら、香子の言う通りに侍女が手作りした。おかげで下乳を支える物ができて、香子としては満足である。
(結局、この胸なのね……)
確かに香子は自分の胸がコンプレックスではあったが、こんなゆさゆさ揺れるほどの胸は求めていなかった。
(まだ大きくなるのかしら?)
そうしたらまた衣装を作る度に香子は付き合わされることになるのだろう。この先はもう婚礼さえ挙げればと香子も考えてはいるが、まだもう少し四神宮にはいることになっている。(白虎と玄武の領地を回る予定)
白虎には聞いてみなければいけないと香子は思ったのだった。
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