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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
81.もふもふでなければダメなんです ※R13
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香子はひどく腹を立てていた。あれから朱雀に文字通りかじりついた(物理)が怒りはさっぱり醒めなかった。
『……なんで朱雀様は怒らないんですかっ!?』
朱雀の腕をがじがじしながら叫ぶように香子が言う。朱雀は笑み、後ろからきつく香子を抱きしめた。
『そなたがすでに怒っているだろう。我らの為にそなたが憤ってくれるのは嬉しい。だが、我らにとって譲れぬものは香子、そなただけなのだ』
『……うっ……』
ずるい、と香子は思う。なんというか四神は香子にひどく甘い。花嫁補正だということをその都度思い出さなければぐずぐずと溶けてしまいそうだ。そしてそれは当然言葉だけではなくて。
『……朱雀様、何をしていらっしゃいますか?』
片腕は香子が抱き込んでいるのでそのままだが、もう片方の手の動きがいただけない。さわさわと胸を揉まれるのはいいがそのまま漢服の衿をくつろげようとする動きが気になる。
『こういう時は愛し合うのが一番と聞いたぞ』
『誰からですか……。ちょっ! 手を突っ込まない! 朱雀様っ!!』
あわよくば香子をそのまま押し倒そうとする朱雀。そうはさせじと朱雀の腕に香子ががぶっと容赦なく噛みついたことで攻防は終了した。
もちろん朱雀が痛みなど感じるはずもなく、はあはあと息を荒げている香子に『歯形というのも面白いものだな』とのん気に言って更に怒らせたのは余談である。
さて、押し倒される危険もさることながら怒りがどうしても醒めない状態の為、香子は予定通り白虎に八つ当たりすることにした。朱雀が直接白虎に連絡してくれたのでそう待たされることなく白虎が迎えにきてくれた。四神同士は念話があるのでこういうところは便利だと香子も思う。そうでなければすぐ側の室だというのに先触れを出して……なんて手間がかかるのが普通だ。四神宮の中ぐらい便利でもいいではないかと、四神と一緒の時はそこらへんを省略してもらっている。
だっこされるのも慣れた、というか抱き上げられやすいように自然と体移動しているような気がする。
四神は大体みな体格が似通ってはいるのだが白虎の腕は特に太いという印象だ。筋肉質で太く他の三神より安定感がある。
(虎だもんね。腕っていうより前足?)
『兄から話は聞いたが、そこまで憤ることでもなかろう』
白虎の室に入りなだめるように言われる。香子はむっとした。
『私が、嫌なんです!! 白虎様、元のお姿に戻ってください!』
太い首にぎゅうぎゅう縋りつくと白虎はいたずらっ子のように笑う。
『積極的だな香子。そなに我に抱かれたいとは……』
『ちーがーいーまーすーっ!! 白虎様の毛を堪能したいだけですーっ!!』
『……全く』
白虎は苦笑するとそのまま寝室に移動した。居間もそれなりに広さはあるのだがやはり床の方がいい。香子を床に下ろし、その横に白虎が寝転がる。香子は目を伏せた。
途端パァッと光が生じ、『香子、よいぞ』と唸るような更に低い声に香子は顔を上げた。
(もふもふーーーーー!!)
床に横臥しているのは文字通り美しい大きな白い虎だった。香子は満面の笑みを浮かべ白虎にダイブした。
(はう~はう~もふもふーもふもふーっ!!)
ぎゅうぎゅうと抱きついて白虎の毛皮に顔をぐりぐりとこすりつける。硬そうに見える毛だがそれなりに柔らかいので香子は埋もれながら堪能する。いわゆるアニマルセラピーというやつだろうか、香子はもうご機嫌だった。
白虎はしばらくされるがままでいたが、たまらなくなったのか前足で香子を軽く押さえた。
『香子、我がこの姿になる意味はわかっておるな?』
人型の時よりも低く迫力のあるバス。香子はうっとりとその声にも聞きほれる。しかし香子もそう簡単には流されない。
『だめです。今日の白虎様は私の言いなりになってください。欲情するようなら人型に戻ってくださいね』
『……なんの拷問だ』
『四神相手に拷問なんかできるわけないじゃないですか。今の私には癒しが必要なんですっ!!』
白虎は嘆息した。とんだ災難である。だが怖がられないのは好ましい。
(うーうー……気持ちいいっ!!)
香子はうっとりと白虎に抱きついてその毛皮に何度も口づけした。好きなのだ。この虎の姿でなくても人型の白虎にも触れたいと思うほどに。
それはもう白虎が好きと言っていいのだがまだそのことに香子は気付いていなかった。けれど白虎はそんな香子の心の動きを悟っていた。ただまだ急いではいない為香子の好きにさせている。いずれそのことに香子が気付けば、もう白虎も我慢はしないだろう。
『……なんだかんだ言って、四神は人に寛容ですよね』
『……そう思うか』
香子は内心嘆息する。神様が人間に寛容なのはいいことだ。だがそれを利用しようとする者がいることがいただけない。
(皇帝はまぁ、しかたないとして……)
認めるわけではないが”四神の花嫁”という立場は利用されやすいと香子は考える。今回の大祭や、中秋節、そして来年の春節などのイベントで国の不穏分子は一掃されるに違いない。
(皇后が愚かな人じゃないといいけど……)
そんなことをつらつら考えながら、香子は白虎が音を上げるまで思う存分もふもふしたのだった。
『……なんで朱雀様は怒らないんですかっ!?』
朱雀の腕をがじがじしながら叫ぶように香子が言う。朱雀は笑み、後ろからきつく香子を抱きしめた。
『そなたがすでに怒っているだろう。我らの為にそなたが憤ってくれるのは嬉しい。だが、我らにとって譲れぬものは香子、そなただけなのだ』
『……うっ……』
ずるい、と香子は思う。なんというか四神は香子にひどく甘い。花嫁補正だということをその都度思い出さなければぐずぐずと溶けてしまいそうだ。そしてそれは当然言葉だけではなくて。
『……朱雀様、何をしていらっしゃいますか?』
片腕は香子が抱き込んでいるのでそのままだが、もう片方の手の動きがいただけない。さわさわと胸を揉まれるのはいいがそのまま漢服の衿をくつろげようとする動きが気になる。
『こういう時は愛し合うのが一番と聞いたぞ』
『誰からですか……。ちょっ! 手を突っ込まない! 朱雀様っ!!』
あわよくば香子をそのまま押し倒そうとする朱雀。そうはさせじと朱雀の腕に香子ががぶっと容赦なく噛みついたことで攻防は終了した。
もちろん朱雀が痛みなど感じるはずもなく、はあはあと息を荒げている香子に『歯形というのも面白いものだな』とのん気に言って更に怒らせたのは余談である。
さて、押し倒される危険もさることながら怒りがどうしても醒めない状態の為、香子は予定通り白虎に八つ当たりすることにした。朱雀が直接白虎に連絡してくれたのでそう待たされることなく白虎が迎えにきてくれた。四神同士は念話があるのでこういうところは便利だと香子も思う。そうでなければすぐ側の室だというのに先触れを出して……なんて手間がかかるのが普通だ。四神宮の中ぐらい便利でもいいではないかと、四神と一緒の時はそこらへんを省略してもらっている。
だっこされるのも慣れた、というか抱き上げられやすいように自然と体移動しているような気がする。
四神は大体みな体格が似通ってはいるのだが白虎の腕は特に太いという印象だ。筋肉質で太く他の三神より安定感がある。
(虎だもんね。腕っていうより前足?)
『兄から話は聞いたが、そこまで憤ることでもなかろう』
白虎の室に入りなだめるように言われる。香子はむっとした。
『私が、嫌なんです!! 白虎様、元のお姿に戻ってください!』
太い首にぎゅうぎゅう縋りつくと白虎はいたずらっ子のように笑う。
『積極的だな香子。そなに我に抱かれたいとは……』
『ちーがーいーまーすーっ!! 白虎様の毛を堪能したいだけですーっ!!』
『……全く』
白虎は苦笑するとそのまま寝室に移動した。居間もそれなりに広さはあるのだがやはり床の方がいい。香子を床に下ろし、その横に白虎が寝転がる。香子は目を伏せた。
途端パァッと光が生じ、『香子、よいぞ』と唸るような更に低い声に香子は顔を上げた。
(もふもふーーーーー!!)
床に横臥しているのは文字通り美しい大きな白い虎だった。香子は満面の笑みを浮かべ白虎にダイブした。
(はう~はう~もふもふーもふもふーっ!!)
ぎゅうぎゅうと抱きついて白虎の毛皮に顔をぐりぐりとこすりつける。硬そうに見える毛だがそれなりに柔らかいので香子は埋もれながら堪能する。いわゆるアニマルセラピーというやつだろうか、香子はもうご機嫌だった。
白虎はしばらくされるがままでいたが、たまらなくなったのか前足で香子を軽く押さえた。
『香子、我がこの姿になる意味はわかっておるな?』
人型の時よりも低く迫力のあるバス。香子はうっとりとその声にも聞きほれる。しかし香子もそう簡単には流されない。
『だめです。今日の白虎様は私の言いなりになってください。欲情するようなら人型に戻ってくださいね』
『……なんの拷問だ』
『四神相手に拷問なんかできるわけないじゃないですか。今の私には癒しが必要なんですっ!!』
白虎は嘆息した。とんだ災難である。だが怖がられないのは好ましい。
(うーうー……気持ちいいっ!!)
香子はうっとりと白虎に抱きついてその毛皮に何度も口づけした。好きなのだ。この虎の姿でなくても人型の白虎にも触れたいと思うほどに。
それはもう白虎が好きと言っていいのだがまだそのことに香子は気付いていなかった。けれど白虎はそんな香子の心の動きを悟っていた。ただまだ急いではいない為香子の好きにさせている。いずれそのことに香子が気付けば、もう白虎も我慢はしないだろう。
『……なんだかんだ言って、四神は人に寛容ですよね』
『……そう思うか』
香子は内心嘆息する。神様が人間に寛容なのはいいことだ。だがそれを利用しようとする者がいることがいただけない。
(皇帝はまぁ、しかたないとして……)
認めるわけではないが”四神の花嫁”という立場は利用されやすいと香子は考える。今回の大祭や、中秋節、そして来年の春節などのイベントで国の不穏分子は一掃されるに違いない。
(皇后が愚かな人じゃないといいけど……)
そんなことをつらつら考えながら、香子は白虎が音を上げるまで思う存分もふもふしたのだった。
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