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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
61.それは無理だと思うのです
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いろいろ疑問があったが結局消化しきれなかったその夜、香子はいつも通り玄武と朱雀と共に過ごした。
『疲れてるんですけどー……』
当たり前のように玄武の室に連れ込まれたが、一応香子は言うだけ言ってみた。
『だろうな』
と言いながら朱雀によって全身に触れられれば身体的な疲れはなくなった。どちらにせよすでに浴室で侍女たちによって揉み解されている為身体はそれほどでもなかった。
『そういうことじゃなくて……精神的に疲れてるんですー……』
『精神的?』
玄武に顔を覗き込まれ、香子はうっと詰まる。美しい緑の瞳に心配そうな色を認め、なんだか自分が悪いことをしているような気になってくる。
『あ、あんなに態度を変えられるとは思ってなくて……』
思わず声が上ずってしまった。
『それは江緑のことか』
『是。正直老佛爷がまともな方でほっとしたんですけど』
玄武の言葉にそう答えると、何故か朱雀によって夜着の合わせをはだけられた。
『なればよいではないか。懸念もなくなったことだし、愛し合おうぞ』
『もう少し会話がしたいですー……』
言葉だけで抵抗しても意味がないことぐらい香子にもわかっている。きっと香子が本気で暴れたりすれば二神も手を出してこないはずだ。
ついばむような口づけを与えられ、鎖骨に、胸に触れられる。
(でもそんなことできない……)
玄武と朱雀を愛おしく想っているから。
翌日の昼、香子は約束通り白虎と過ごすことになった。
青龍に謝ると、
『しかたないですね。ではまた明日を楽しみにしております』
涼し気な声で応えられた。ごねられるよりはいいのだが女心としては以下略。
白虎に抱き上げられて室に入れば、お茶を飲んだり白虎の治める土地の話を聞いたりする。どちらかといえば西域の、国境に近い場所らしいと聞いていた。
『ってことは周辺の国も四神に影響されるのですか?』
『……わからぬ』
即答する白虎に、香子はしかたなく室の隅に控えている白雲を見やる。
『……恐れながら、実際に確認したことはございませんが他国から御礼の品が届いたりしていたことはありました』
『確認してないのは他国の様子? それとも御礼の品? 両方?』
『……御礼の品については目録で確認したことはあります。実際の品の仕分けは別の者が行っておりましたので』
香子は少し考えるような顔をした。
『それを確認したのはいつ頃? おそらく、大分前よね?』
『そうですね……昔というほどではございませんが、ここ百年程はきていないと思います』
香子は内心遠い目をした。相変わらず単位が普通ではない。
(百年で昔じゃないとか……)
そもそも人は普通百年も生きられない。改めて感覚が違うと再認識する香子であった。
前の花嫁が先代の青龍と共に身罷ってから約百五十年。これは香子の仮説にすぎないが、人々が四神の守護を目に見える形で実感できるのには花嫁も存命している必要があるのではないだろうか。
(でも青龍様にも聞いてみないとかしら)
おそらく答えてくれるのは青藍だろう。今考えてもしかたないので話題を変える。
『そう……。そういえば白虎様から見て、先代の花嫁はどのような方でしたか?』
『母上か』
白虎は少し考えるような顔をした。
『そうさな……何が聞きたい?』
いつになく改まった雰囲気に香子はなんとなく察してしまった。
おそらくだが、花嫁は哀しんでいたのだろう。
『うーん……抽象的かもしれませんが、私と比べて?』
察したことをごまかすように聞く。しかし何故そんな気持ちに思い至ったのか香子にはわからなかった。
難しい顔をし、
『……線の細い方だった』
白虎はそれだけ言うと口をつぐんだ。他に言いようがなかったのかもしれない。それがやけに香子の胸に響いた。
その夜、みなでいる時に白虎は香子と過ごしたいと言いだした。
当然ながら香子は困惑した。
『だめか?』
『え、えーと……具体的にどういうことで……?』
二人で夜通し語り合う、ということだろうか。それともやっぱり大人の関係になろうというお誘いだろうか。小首を傾げて聞くと、白虎は一瞬困ったような顔をした。なんだか今日はいろいろは表情が見れる。
『兄たちに抱かれるそなたが見たい』
香子は思わず持っていた杯を落としそうになった。お茶を口に含んでいたら間違いなく吹いていただろう。
『なっ……!?』
『未だ我はそなたを抱くことはできぬ。だが乱れるそなたを見たいと常々思っている。今宵奪わぬと誓おう。どうか我の願いを叶えてはくれぬだろうか』
いつになく真摯な態度と言われた内容に、香子は顔を真っ赤に染めた。
正確には全身が発火しそうなほどである。
(む、無理無理無理無理無理無理無理無理ぃぃっっっ!!)
『……ご、ごめんなさい……』
二神に抱かれているところを見られるなんて想像しただけで心臓が止まりそうである。
(い、いったいどこのエロマンガッ!?)
『やはりだめか』
寂しそうに言われたが香子は高速で頷いた。どのような理由があろうと、しているところを見られるなど論外である。
(見られて感じるとかないないないッ!! ……でも……なにかあったのかしら?)
余計なことまで考えたせいか、その夜香子は奇妙な夢を見た。
それは、ひどく胸がしめつけられるような想いだった。
『疲れてるんですけどー……』
当たり前のように玄武の室に連れ込まれたが、一応香子は言うだけ言ってみた。
『だろうな』
と言いながら朱雀によって全身に触れられれば身体的な疲れはなくなった。どちらにせよすでに浴室で侍女たちによって揉み解されている為身体はそれほどでもなかった。
『そういうことじゃなくて……精神的に疲れてるんですー……』
『精神的?』
玄武に顔を覗き込まれ、香子はうっと詰まる。美しい緑の瞳に心配そうな色を認め、なんだか自分が悪いことをしているような気になってくる。
『あ、あんなに態度を変えられるとは思ってなくて……』
思わず声が上ずってしまった。
『それは江緑のことか』
『是。正直老佛爷がまともな方でほっとしたんですけど』
玄武の言葉にそう答えると、何故か朱雀によって夜着の合わせをはだけられた。
『なればよいではないか。懸念もなくなったことだし、愛し合おうぞ』
『もう少し会話がしたいですー……』
言葉だけで抵抗しても意味がないことぐらい香子にもわかっている。きっと香子が本気で暴れたりすれば二神も手を出してこないはずだ。
ついばむような口づけを与えられ、鎖骨に、胸に触れられる。
(でもそんなことできない……)
玄武と朱雀を愛おしく想っているから。
翌日の昼、香子は約束通り白虎と過ごすことになった。
青龍に謝ると、
『しかたないですね。ではまた明日を楽しみにしております』
涼し気な声で応えられた。ごねられるよりはいいのだが女心としては以下略。
白虎に抱き上げられて室に入れば、お茶を飲んだり白虎の治める土地の話を聞いたりする。どちらかといえば西域の、国境に近い場所らしいと聞いていた。
『ってことは周辺の国も四神に影響されるのですか?』
『……わからぬ』
即答する白虎に、香子はしかたなく室の隅に控えている白雲を見やる。
『……恐れながら、実際に確認したことはございませんが他国から御礼の品が届いたりしていたことはありました』
『確認してないのは他国の様子? それとも御礼の品? 両方?』
『……御礼の品については目録で確認したことはあります。実際の品の仕分けは別の者が行っておりましたので』
香子は少し考えるような顔をした。
『それを確認したのはいつ頃? おそらく、大分前よね?』
『そうですね……昔というほどではございませんが、ここ百年程はきていないと思います』
香子は内心遠い目をした。相変わらず単位が普通ではない。
(百年で昔じゃないとか……)
そもそも人は普通百年も生きられない。改めて感覚が違うと再認識する香子であった。
前の花嫁が先代の青龍と共に身罷ってから約百五十年。これは香子の仮説にすぎないが、人々が四神の守護を目に見える形で実感できるのには花嫁も存命している必要があるのではないだろうか。
(でも青龍様にも聞いてみないとかしら)
おそらく答えてくれるのは青藍だろう。今考えてもしかたないので話題を変える。
『そう……。そういえば白虎様から見て、先代の花嫁はどのような方でしたか?』
『母上か』
白虎は少し考えるような顔をした。
『そうさな……何が聞きたい?』
いつになく改まった雰囲気に香子はなんとなく察してしまった。
おそらくだが、花嫁は哀しんでいたのだろう。
『うーん……抽象的かもしれませんが、私と比べて?』
察したことをごまかすように聞く。しかし何故そんな気持ちに思い至ったのか香子にはわからなかった。
難しい顔をし、
『……線の細い方だった』
白虎はそれだけ言うと口をつぐんだ。他に言いようがなかったのかもしれない。それがやけに香子の胸に響いた。
その夜、みなでいる時に白虎は香子と過ごしたいと言いだした。
当然ながら香子は困惑した。
『だめか?』
『え、えーと……具体的にどういうことで……?』
二人で夜通し語り合う、ということだろうか。それともやっぱり大人の関係になろうというお誘いだろうか。小首を傾げて聞くと、白虎は一瞬困ったような顔をした。なんだか今日はいろいろは表情が見れる。
『兄たちに抱かれるそなたが見たい』
香子は思わず持っていた杯を落としそうになった。お茶を口に含んでいたら間違いなく吹いていただろう。
『なっ……!?』
『未だ我はそなたを抱くことはできぬ。だが乱れるそなたを見たいと常々思っている。今宵奪わぬと誓おう。どうか我の願いを叶えてはくれぬだろうか』
いつになく真摯な態度と言われた内容に、香子は顔を真っ赤に染めた。
正確には全身が発火しそうなほどである。
(む、無理無理無理無理無理無理無理無理ぃぃっっっ!!)
『……ご、ごめんなさい……』
二神に抱かれているところを見られるなんて想像しただけで心臓が止まりそうである。
(い、いったいどこのエロマンガッ!?)
『やはりだめか』
寂しそうに言われたが香子は高速で頷いた。どのような理由があろうと、しているところを見られるなど論外である。
(見られて感じるとかないないないッ!! ……でも……なにかあったのかしら?)
余計なことまで考えたせいか、その夜香子は奇妙な夢を見た。
それは、ひどく胸がしめつけられるような想いだった。
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