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第4部 四神を愛しなさいと言われました
78.失言が多い自覚はあったとしても、そう簡単にはなくならないものです
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青龍の眷属たちが香子を青龍の領地に留めたいと思っていることはよくわかった。
どうにか言質を取って滞在を伸ばさせようとしているみたいだが、そんなことをしたら強制的に青龍に嫁がされてしまう。青龍が嫌なわけではないが、それならばせめて他の領地も見てからにしたいと香子は思う。
(でもねぇ、青藍が言うように私は失言が多いからなぁ)
香子もさすがに自覚している。
とんでもなく広いお風呂は気に入ったけれど、そのお風呂の為に何百年も添えるかと聞かれれば否だと香子も思うのだ。
気の遠くなるような時を一緒に過ごすことになるのだから、吟味の時間が長くなるのはしかたないと香子は思うのだが、それは香子の気持ちだけなのだろう。
とても広い庭園の四阿でお茶をした。
花心があるとは言えない香子でも、四阿の周りに咲き乱れる花々には目を奪われた。
『花が気になるのか?』
香子は青龍の膝の上である。青龍に声をかけられて、香子は青龍を見た。
(うっ……)
やはり至近距離で見ると心臓に悪いと香子は思う。メンクイだから美しすぎるものを見ると心臓がばくばくしてしまうのだ。
『あ、あまりにもキレイなので……』
花も、青龍も。
『そうか。我にとってはそなたに勝るものはないが……』
青龍は香子の手を取ると、その指に口づけた。
(ああああああ!!)
この、わかっていてこういうことをするのは止めてほしいと香子は思う。香子は口をぱくぱくさせた。
『そなたは変わらぬな』
ククッと傍らにいる朱雀が喉の奥で笑った。そんな朱雀を、香子は憎らしいとも思った。香子は青龍の頬に手を触れさせた。
『……青龍様も、玄武様も朱雀様もすっごく美しいからいけないのです。顔面で誘惑しないでいただけますか?』
青龍が珍しく目を見開いた。それに香子はほんの少しだけ溜飲を下げる。
『そういえばそなたは我らの顔が好きであったな』
玄武が呟くように言う。香子は玄武の方を向いた。
『四神の顔は好きですけど、顔だけじゃないですよ。融通がきかないところはどうかと思いますけど、選べないと思うぐらいには好きですし……』
『香子』
自分でそこまで言ってから、香子は真っ赤になった。でも知られていることだからいいかとも開き直る。
『あっ……!』
手の中の茶器を奪われて、卓に置かれた。そして青龍にきつく抱きしめられる。香子はしまったと思った。
『……そなたを抱きたい』
『だ、だめですよ、ここでは……』
涼やかな声に色が混じる。その声にも誘惑されているようで、香子の頬から熱が去らない。
『……そうであったな。だが、戻ったらよいか?』
『ううう……ごはんをいっぱい食べてからなら……』
そうしないとたいへんなことになるのは香子だ。
『昼食は多めに用意せよ。食べ終えたら戻る』
『……かしこまりました』
青沙は何か言いたそうだったが(表情は動かない)、青龍に従った。眷属は四神の命が第一だというのは香子にもわかる。その割には、四神宮に来ている眷属は四神にぽんぽん言いたいことを言っている印象もあり、香子は首を傾げた。
『香子、如何した?』
『いえ、なんでもないです』
眷属のことは、ここで話すべきではないと思った。
四阿を出て、しばらく庭園を散策する。香子は変わらず青龍の腕の中だ。足を時折ぶらぶらさせて、動けることを確認する。あまり行儀がいいとは言えないが、香子としては足を全く使わないというのも落ち着かなかった。
(誰かのところに嫁いだら、さすがに自分の足で歩けるよねえ)
そうでなければ困ってしまう。
キレイに手入れされている植物を香子は眺めた。
『ここの手入れとかも眷属が行っているの?』
『基本は我らで行っていますが、人の庭師に相談したりもいたします』
『そうなのね』
良い物は取り入れていこうとしているのだろう。雇用の問題もある。ふと気になって聞いてみた。
『……この町で、知り合った人と”つがい”になる眷属っているのかしら』
『おります』
青沙が即答した。
『そうなのね』
それ以上はもう何も言えなかった。やはり、人とつがいになる眷属は一定数いるらしい。
そういえば黒月の両親も、確か母親が元は人だったと聞いたことがあった。そこらへんのロマンスについて黒月は話してくれなかったが、玄武の領地に行った時話が聞ければいいなと香子は思った。
館に戻り、館の中を見て回る。どの建物も広くて香子は圧倒された。
『本当に、どれも大きいですね』
『王宮は広いのではないのですか?』
青沙が意外そうに言う。
『四神宮自体は広いといってもそこまで広くはないわ。王宮全体を見たら広いし大きいけど……こんなに何もかもが大きいかんじじゃないし』
青沙はなるほどと言うように頷いた。
『花嫁様、気に入っていただけましたか?』
さりげなく聞かれて笑んだ。ここはちょっと考えて答える場面だということぐらい、香子にもわかっていた。
『……いいところだと思うわ』
青沙の目が一瞬細められる。青龍のことは好きだが、言質を取られるわけにはいかなかった。
ーーーーー
黒月の両親については、「初恋は草海に抱かれ」を参照してくださいませー。
どうにか言質を取って滞在を伸ばさせようとしているみたいだが、そんなことをしたら強制的に青龍に嫁がされてしまう。青龍が嫌なわけではないが、それならばせめて他の領地も見てからにしたいと香子は思う。
(でもねぇ、青藍が言うように私は失言が多いからなぁ)
香子もさすがに自覚している。
とんでもなく広いお風呂は気に入ったけれど、そのお風呂の為に何百年も添えるかと聞かれれば否だと香子も思うのだ。
気の遠くなるような時を一緒に過ごすことになるのだから、吟味の時間が長くなるのはしかたないと香子は思うのだが、それは香子の気持ちだけなのだろう。
とても広い庭園の四阿でお茶をした。
花心があるとは言えない香子でも、四阿の周りに咲き乱れる花々には目を奪われた。
『花が気になるのか?』
香子は青龍の膝の上である。青龍に声をかけられて、香子は青龍を見た。
(うっ……)
やはり至近距離で見ると心臓に悪いと香子は思う。メンクイだから美しすぎるものを見ると心臓がばくばくしてしまうのだ。
『あ、あまりにもキレイなので……』
花も、青龍も。
『そうか。我にとってはそなたに勝るものはないが……』
青龍は香子の手を取ると、その指に口づけた。
(ああああああ!!)
この、わかっていてこういうことをするのは止めてほしいと香子は思う。香子は口をぱくぱくさせた。
『そなたは変わらぬな』
ククッと傍らにいる朱雀が喉の奥で笑った。そんな朱雀を、香子は憎らしいとも思った。香子は青龍の頬に手を触れさせた。
『……青龍様も、玄武様も朱雀様もすっごく美しいからいけないのです。顔面で誘惑しないでいただけますか?』
青龍が珍しく目を見開いた。それに香子はほんの少しだけ溜飲を下げる。
『そういえばそなたは我らの顔が好きであったな』
玄武が呟くように言う。香子は玄武の方を向いた。
『四神の顔は好きですけど、顔だけじゃないですよ。融通がきかないところはどうかと思いますけど、選べないと思うぐらいには好きですし……』
『香子』
自分でそこまで言ってから、香子は真っ赤になった。でも知られていることだからいいかとも開き直る。
『あっ……!』
手の中の茶器を奪われて、卓に置かれた。そして青龍にきつく抱きしめられる。香子はしまったと思った。
『……そなたを抱きたい』
『だ、だめですよ、ここでは……』
涼やかな声に色が混じる。その声にも誘惑されているようで、香子の頬から熱が去らない。
『……そうであったな。だが、戻ったらよいか?』
『ううう……ごはんをいっぱい食べてからなら……』
そうしないとたいへんなことになるのは香子だ。
『昼食は多めに用意せよ。食べ終えたら戻る』
『……かしこまりました』
青沙は何か言いたそうだったが(表情は動かない)、青龍に従った。眷属は四神の命が第一だというのは香子にもわかる。その割には、四神宮に来ている眷属は四神にぽんぽん言いたいことを言っている印象もあり、香子は首を傾げた。
『香子、如何した?』
『いえ、なんでもないです』
眷属のことは、ここで話すべきではないと思った。
四阿を出て、しばらく庭園を散策する。香子は変わらず青龍の腕の中だ。足を時折ぶらぶらさせて、動けることを確認する。あまり行儀がいいとは言えないが、香子としては足を全く使わないというのも落ち着かなかった。
(誰かのところに嫁いだら、さすがに自分の足で歩けるよねえ)
そうでなければ困ってしまう。
キレイに手入れされている植物を香子は眺めた。
『ここの手入れとかも眷属が行っているの?』
『基本は我らで行っていますが、人の庭師に相談したりもいたします』
『そうなのね』
良い物は取り入れていこうとしているのだろう。雇用の問題もある。ふと気になって聞いてみた。
『……この町で、知り合った人と”つがい”になる眷属っているのかしら』
『おります』
青沙が即答した。
『そうなのね』
それ以上はもう何も言えなかった。やはり、人とつがいになる眷属は一定数いるらしい。
そういえば黒月の両親も、確か母親が元は人だったと聞いたことがあった。そこらへんのロマンスについて黒月は話してくれなかったが、玄武の領地に行った時話が聞ければいいなと香子は思った。
館に戻り、館の中を見て回る。どの建物も広くて香子は圧倒された。
『本当に、どれも大きいですね』
『王宮は広いのではないのですか?』
青沙が意外そうに言う。
『四神宮自体は広いといってもそこまで広くはないわ。王宮全体を見たら広いし大きいけど……こんなに何もかもが大きいかんじじゃないし』
青沙はなるほどと言うように頷いた。
『花嫁様、気に入っていただけましたか?』
さりげなく聞かれて笑んだ。ここはちょっと考えて答える場面だということぐらい、香子にもわかっていた。
『……いいところだと思うわ』
青沙の目が一瞬細められる。青龍のことは好きだが、言質を取られるわけにはいかなかった。
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黒月の両親については、「初恋は草海に抱かれ」を参照してくださいませー。
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