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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
39.少し探ってみます
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午前中で助かった。
素直な感想である。
いつものように昼食をとり、その際に午後は白虎と過ごすことを香子は伝えた。それに全く動じない三神の様子を観察しながら、香子はやはり少し複雑だった。
四神の花嫁とは、四神全ての花嫁である。
わかってはいるもののピンとこないのが現状だ。
それは香子の常識を鑑みればしかたのないことだろう。いつになったらそれが消化されるのかは彼女自身にもわからない。
玄武のことも朱雀のことも間違いなく愛しているのだと香子は思う。
白虎や青龍と一緒にいる時は守られているという安心感はあるものの、彼らに抱かれる自分の姿がまだ想像できない。
これは何度も確認してきていることなのでいいかげん割愛しよう。ただ毎日のように香子が自問自答しているのもまた事実であった。
昼食後香子は白虎の腕に抱かれて彼の室に運ばれた。白雲が入れてくれたお茶を一口啜り、白虎の眷属を見やる。
白雲は香子の視線に気付いた。
『……白雲さん、さっき夕玲に捕まりませんでした?』
ストレートな問いに白雲は苦笑した。
正確にはあまり表情に動きがない為そうとは見えないが、最近香子にも眷属の表情の動きがわかるようになってきた。それは最初の頃の四神の表情に通じるものがあるからかもしれない。
『はい、声をかけられました』
『彼女はなんと?』
『……こちらから呼びにいったとはいえ、女性には身だしなみを整える時間があるのだからそれぐらいの間を置くのは当然であると』
香子は一瞬目を見開き、そして苦笑した。
確かに言われてみればそうだ。
白虎もまたククッと喉の奥で笑う。
『……なかなか気骨がありそうだ』
香子は頷いた。
『他に何か話しました?』
『いいえ』
あれからすぐ延夕玲は戻ってきたのだろうか。白虎によって寝室に連れ込まれてしまった為香子には確認できていない。
『ええと、彼女がすぐこちらに戻ってきたかどうかわかります?』
『おそらくは。我は用事があったので確認はしておりません』
『そうですか……』
一回や二回で彼女が何を考えているかわかるわけはないのだが、何かが香子の脳裏に引っかかっていた。それは女のカンというやつかもしれない。
うまく言えないのだが、夕玲が白虎を想っているようには見えなかったのだ。
(私の手前隠しているのかもしれないしね)
そうなると誰かに探らせるしかないのだが、急ぐことでもないのでとりあえず保留にすることにした。ただ侍女頭や黒月とは関わることが多くなると思われるので声はかけておいた方がいいかもしれない。
女官は基本香子の部屋にいることが多い。つまり部屋で話をすることはできない。
『白雲さん、黒月と侍女頭を呼んできてもらっていいですか?』
善は急げとばかりに言う香子に白虎が苦笑した。
『……我と共にいるというのにそなたは別のことばかりだな』
冗談めかして言われたが香子は慌てた。そんなつもりは全くない。
『……だって……少しでも早く白虎様と気兼ねなく過ごしたいじゃないですか……』
少し拗ねたように言葉を紡いだ香子に白虎は目を見開いた。そして彼女を抱いたまま立ち上がる。
『……白虎様?』
『……そなたはほんに罪深い』
色を含んだバスに近い低い声が耳元で囁かれる。
(え? えええええ、なんで?)
香子が目を白黒させている間に白虎の足は寝室に向かっていた。
白雲が頭を垂れ、それを見送る。
やっぱり四神のスイッチがよくわかっていない香子だった。
とはいえ、白虎は香子を最後まで奪うことはしなかった。
我を忘れて襲われてしまうのも避けたいが、身体に触れられるだけ触れられて香子だけ翻弄されるというのも微妙ではある。
とかく女心は複雑といえよう。
結局その日侍女頭と黒月に指示することはできなかった。
だが香子は甘かった。
老佛爷とまで呼ばれる皇太后が夕玲を送り込んだだけで満足するはずはなかった。
素直な感想である。
いつものように昼食をとり、その際に午後は白虎と過ごすことを香子は伝えた。それに全く動じない三神の様子を観察しながら、香子はやはり少し複雑だった。
四神の花嫁とは、四神全ての花嫁である。
わかってはいるもののピンとこないのが現状だ。
それは香子の常識を鑑みればしかたのないことだろう。いつになったらそれが消化されるのかは彼女自身にもわからない。
玄武のことも朱雀のことも間違いなく愛しているのだと香子は思う。
白虎や青龍と一緒にいる時は守られているという安心感はあるものの、彼らに抱かれる自分の姿がまだ想像できない。
これは何度も確認してきていることなのでいいかげん割愛しよう。ただ毎日のように香子が自問自答しているのもまた事実であった。
昼食後香子は白虎の腕に抱かれて彼の室に運ばれた。白雲が入れてくれたお茶を一口啜り、白虎の眷属を見やる。
白雲は香子の視線に気付いた。
『……白雲さん、さっき夕玲に捕まりませんでした?』
ストレートな問いに白雲は苦笑した。
正確にはあまり表情に動きがない為そうとは見えないが、最近香子にも眷属の表情の動きがわかるようになってきた。それは最初の頃の四神の表情に通じるものがあるからかもしれない。
『はい、声をかけられました』
『彼女はなんと?』
『……こちらから呼びにいったとはいえ、女性には身だしなみを整える時間があるのだからそれぐらいの間を置くのは当然であると』
香子は一瞬目を見開き、そして苦笑した。
確かに言われてみればそうだ。
白虎もまたククッと喉の奥で笑う。
『……なかなか気骨がありそうだ』
香子は頷いた。
『他に何か話しました?』
『いいえ』
あれからすぐ延夕玲は戻ってきたのだろうか。白虎によって寝室に連れ込まれてしまった為香子には確認できていない。
『ええと、彼女がすぐこちらに戻ってきたかどうかわかります?』
『おそらくは。我は用事があったので確認はしておりません』
『そうですか……』
一回や二回で彼女が何を考えているかわかるわけはないのだが、何かが香子の脳裏に引っかかっていた。それは女のカンというやつかもしれない。
うまく言えないのだが、夕玲が白虎を想っているようには見えなかったのだ。
(私の手前隠しているのかもしれないしね)
そうなると誰かに探らせるしかないのだが、急ぐことでもないのでとりあえず保留にすることにした。ただ侍女頭や黒月とは関わることが多くなると思われるので声はかけておいた方がいいかもしれない。
女官は基本香子の部屋にいることが多い。つまり部屋で話をすることはできない。
『白雲さん、黒月と侍女頭を呼んできてもらっていいですか?』
善は急げとばかりに言う香子に白虎が苦笑した。
『……我と共にいるというのにそなたは別のことばかりだな』
冗談めかして言われたが香子は慌てた。そんなつもりは全くない。
『……だって……少しでも早く白虎様と気兼ねなく過ごしたいじゃないですか……』
少し拗ねたように言葉を紡いだ香子に白虎は目を見開いた。そして彼女を抱いたまま立ち上がる。
『……白虎様?』
『……そなたはほんに罪深い』
色を含んだバスに近い低い声が耳元で囁かれる。
(え? えええええ、なんで?)
香子が目を白黒させている間に白虎の足は寝室に向かっていた。
白雲が頭を垂れ、それを見送る。
やっぱり四神のスイッチがよくわかっていない香子だった。
とはいえ、白虎は香子を最後まで奪うことはしなかった。
我を忘れて襲われてしまうのも避けたいが、身体に触れられるだけ触れられて香子だけ翻弄されるというのも微妙ではある。
とかく女心は複雑といえよう。
結局その日侍女頭と黒月に指示することはできなかった。
だが香子は甘かった。
老佛爷とまで呼ばれる皇太后が夕玲を送り込んだだけで満足するはずはなかった。
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