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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
16.この世界のことを勉強してみます
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言質を取ったせいか意外にあっさりと朱雀は引いてくれた。それに香子はほうっと息を吐く。
(あ、危なかった……)
どうにか朱雀の膝から下ろしてもらったら、今度は当り前のように白虎に片腕で抱き上げられた。さすがに危ないので反射的に白虎の首に手を回す。そうしてふと聞きたいことを思いついた。
『あのう……ここにこの世界の説明をできる方っています?』
一応こちらの世界にきた時趙文英に大まかな説明はしてもらったが、なんだか別の世界のことのようであまり真面目に聞いていなかったように思う。
『この世界のことというと?』
白虎に聞き返されて、聞き方が漠然としていたことに気づく。
『うーんと、この大陸にある国とか、他の大陸のこととか……まずは簡単なところからでいいんですけど』
一番いいのは世界地図があることだがそんなものがあるとは思えない。
『そうだな……まず移動するか』
白虎が考えるような顔をしてみなを促す。香子はそれに頷いた。
茶室に移動していつものようにお茶を入れ、聞けることを聞いた。
この唐の国がある大陸には、唐を含め五つの国があるということは前に聞いていた。そしてこの大陸から一番近い大陸まで船で二カ月かかるということも。
この大陸の中では唐が一番大きいらしい。次に西の隣国のシーザン、北の隣国のオロス、シーザンの更に西にバジスタン、シーザンとオロスの間にボースーという国があるらしい。
音だけ聞くとシーザンはチベット、オロスはロシア、バジスタンはパキスタン、ボースーはペルシャのことだからイランのようである。
『この国の周辺に島国などはないのですか?』
四神は一瞬考えるような顔をしたが、軽く首を振った。
『小さい島は点在しているが大陸の国々の領土の一部になっているはずだ』
つまり国家ではないということか。やはり香子のいた世界とは似ているようで異なるものなのだろう。
香子は嘆息した。
しかし他の大陸はどうなのだろうか。
聞いてみるとこの世界には七つの大陸があるという。一番近い大陸は南東にあり、そこはこの大陸と同じぐらいの広さがあるという。だが他の大陸はその土地の神がいるということで四神はあまり関与しないらしい。つまり四神は他の大陸についてほとんど知らない。
となると詳しいことは国の中枢の者に聞かなければわからないだろうと香子は思う。貿易がさかんであればしっかりした地図もあるだろうが、移動手段はどうやら船しかなさそうである。そうなると一番近い大陸はともかく他の大陸の国々については全く国交がないのではなかろうか。
(似たような国があるかどうかは探せないのかも……)
ただでさえ香子の言葉は四神にも発音できないときている。寿命は長そうだからその間に探そうと思えば探せるだろうが、あらゆる場所を探し尽して結局見つからなかった時の落胆を考えると止めた方が賢明な気もしてきた。それよりもこの国の歴史と大陸の地理を学んだ方がいいかもしれない。
『白虎様たちは他の大陸に行かれたことはあるのですか?』
そもそも神というのはそう簡単に大陸間を移動できるものなのだろうかという好奇心にかられて聞いてみると、白虎は考えるように目を閉じた。そして、
『いや、ないな』
と答えた。
白虎は五百年も生きているというからそこらへんの記憶は探らなければでてこないのだろうと香子は勝手に解釈する。実のところ今までの白虎や他の四神の記憶を探っていたのだが、そういったことを香子が本当の意味で知るのはまだ先のことである。
『もしも……四神が他の大陸に行こうと思えば行けるのでしょうか?』
『そうだな……天皇に報告と……他の大陸の神と話すことができれば無理ではないだろう。香子は別の大陸に移りたいのか?』
白虎にふられて、香子は言葉のニュアンスを考えた。
『旅行、とかはもし行けたら行きたいですけど……』
『旅行、か。それは考えてなかったな』
真顔で言われて、やっぱり移住の意味かと冷汗をかく。他の大陸に移住したいとはさすがに考えなかった。
『ふむ……ではできるかどうかお伺いをたててみよう。ただ……返事があるかどうかは……』
『あー……なければないでいいので……』
どうせ聞く相手が相手だから期待はしないでおこうと香子は思う。
ただ、元の世界での自分の存在が最初から消えていればいいと願うばかりである。
(行方不明だなんて、そんな親不孝は勘弁してもらいたい)
天皇の返事が、生きている間にあるとも思えないから。
(あ、危なかった……)
どうにか朱雀の膝から下ろしてもらったら、今度は当り前のように白虎に片腕で抱き上げられた。さすがに危ないので反射的に白虎の首に手を回す。そうしてふと聞きたいことを思いついた。
『あのう……ここにこの世界の説明をできる方っています?』
一応こちらの世界にきた時趙文英に大まかな説明はしてもらったが、なんだか別の世界のことのようであまり真面目に聞いていなかったように思う。
『この世界のことというと?』
白虎に聞き返されて、聞き方が漠然としていたことに気づく。
『うーんと、この大陸にある国とか、他の大陸のこととか……まずは簡単なところからでいいんですけど』
一番いいのは世界地図があることだがそんなものがあるとは思えない。
『そうだな……まず移動するか』
白虎が考えるような顔をしてみなを促す。香子はそれに頷いた。
茶室に移動していつものようにお茶を入れ、聞けることを聞いた。
この唐の国がある大陸には、唐を含め五つの国があるということは前に聞いていた。そしてこの大陸から一番近い大陸まで船で二カ月かかるということも。
この大陸の中では唐が一番大きいらしい。次に西の隣国のシーザン、北の隣国のオロス、シーザンの更に西にバジスタン、シーザンとオロスの間にボースーという国があるらしい。
音だけ聞くとシーザンはチベット、オロスはロシア、バジスタンはパキスタン、ボースーはペルシャのことだからイランのようである。
『この国の周辺に島国などはないのですか?』
四神は一瞬考えるような顔をしたが、軽く首を振った。
『小さい島は点在しているが大陸の国々の領土の一部になっているはずだ』
つまり国家ではないということか。やはり香子のいた世界とは似ているようで異なるものなのだろう。
香子は嘆息した。
しかし他の大陸はどうなのだろうか。
聞いてみるとこの世界には七つの大陸があるという。一番近い大陸は南東にあり、そこはこの大陸と同じぐらいの広さがあるという。だが他の大陸はその土地の神がいるということで四神はあまり関与しないらしい。つまり四神は他の大陸についてほとんど知らない。
となると詳しいことは国の中枢の者に聞かなければわからないだろうと香子は思う。貿易がさかんであればしっかりした地図もあるだろうが、移動手段はどうやら船しかなさそうである。そうなると一番近い大陸はともかく他の大陸の国々については全く国交がないのではなかろうか。
(似たような国があるかどうかは探せないのかも……)
ただでさえ香子の言葉は四神にも発音できないときている。寿命は長そうだからその間に探そうと思えば探せるだろうが、あらゆる場所を探し尽して結局見つからなかった時の落胆を考えると止めた方が賢明な気もしてきた。それよりもこの国の歴史と大陸の地理を学んだ方がいいかもしれない。
『白虎様たちは他の大陸に行かれたことはあるのですか?』
そもそも神というのはそう簡単に大陸間を移動できるものなのだろうかという好奇心にかられて聞いてみると、白虎は考えるように目を閉じた。そして、
『いや、ないな』
と答えた。
白虎は五百年も生きているというからそこらへんの記憶は探らなければでてこないのだろうと香子は勝手に解釈する。実のところ今までの白虎や他の四神の記憶を探っていたのだが、そういったことを香子が本当の意味で知るのはまだ先のことである。
『もしも……四神が他の大陸に行こうと思えば行けるのでしょうか?』
『そうだな……天皇に報告と……他の大陸の神と話すことができれば無理ではないだろう。香子は別の大陸に移りたいのか?』
白虎にふられて、香子は言葉のニュアンスを考えた。
『旅行、とかはもし行けたら行きたいですけど……』
『旅行、か。それは考えてなかったな』
真顔で言われて、やっぱり移住の意味かと冷汗をかく。他の大陸に移住したいとはさすがに考えなかった。
『ふむ……ではできるかどうかお伺いをたててみよう。ただ……返事があるかどうかは……』
『あー……なければないでいいので……』
どうせ聞く相手が相手だから期待はしないでおこうと香子は思う。
ただ、元の世界での自分の存在が最初から消えていればいいと願うばかりである。
(行方不明だなんて、そんな親不孝は勘弁してもらいたい)
天皇の返事が、生きている間にあるとも思えないから。
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