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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
12.そばにいたい(玄武視点)
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一度抱いたことで、こんなに感情が流れ込んでくるとは思っていなかった。
玄武は香子が呼んでいるのを感じ、起き上がった。まっすぐこちらに向かってくるのをとらえ、長袍を羽織る。室の扉を開けると、泣きそうな顔で走ってくる香子が見えた。
『玄武様ぁっ!!』
胸に飛び込んできた存在を受け止める。
『玄武様、どうしよう、私どうしよう、私、白虎様に、とても、とても失礼なことを……!!』
香子はひどく動揺しているようだった。背中をとんとんと軽く叩き少し落ち着くように促す。
『入りなさい』
そう言って己の室内に香子を案内する。そして軽く抱き上げ、寝室に運んだ。
『玄武様、玄武様……私白虎様に口づけをされたんです。私、私、玄武様と朱雀様にはそうされてもいいぐらい好きだけど、白虎様はまだそれほど好きなわけじゃないから口づけされたら嫌なんじゃないかなって思っていたんです。だけど、嫌じゃなかったんです……私おかしいんじゃないでしょうか、もしかしたら淫乱なんじゃないでしょうか、私、私……玄武様、どうしよう、私どうしよう……』
玄武の首にぎゅうぎゅう抱きつきながら香子は思ったことを全て口にしているようだった。その背を玄武は優しくとんとんと叩く。まるで頑是ない子供をなだめるようなその仕草に香子はいつしか涙をこぼしていた。
『玄武様どうしよう、私どうしたらいいの……』
『香子、そなたが我らを嫌がらぬのはかえって喜ばしいことだ』
バリトンが優しく香子の耳に届く。
正直玄武は香子が取り乱している理由がわからなかった。香子が四神全てを受け入れられるというのは玄武にとって喜ばしいことである。もちろん今回選ばれなかったらそれはそれで切ないし、今度は嫁いだ先に日参して口説いてしまうかもしれないが、香子が己のことを『淫乱』と言うのが理解できなかった。
『……わからない、わかりません、玄武様……』
香子はとても不安だというように玄武の顔に頭を擦りつけた。
実際香子の不安とかもろもろの複雑な感情は玄武にも届いている。だがどう声をかけていいのかわからないというのが本音ではあった。
(ふむ……)
まず香子の言葉の意味を考えてみる。
香子が気にしているのは、四神全てを受け入れるのに己が本当の意味で嫌がっていないことらしい。そしてそれは香子の中で『淫乱』という言葉に繋がるらしいのだ。
そこから解いていくとなると、嫌な名前も口に出さなければいけなのだが……。
『……香子、そなたは趙や王も受け入れられると思うか?』
「はいぃっ!?」
香子は今まで玄武の首に伏せていた顔をばっと上げた。
『何言っちゃってるんですか玄武様! 冗談じゃないですよ、そりゃあ趙さんも王さんもそれなりに格好いいとは思いますけど玄武様たちにかなうわけないじゃないですか! 口づけとかもう想像もできません!!』
なんだかどさくさに紛れて放ってはおけないことを香子が言っているが、それは後で追及することにする。
『ならば、そなたは我ら四神は受け入れられるが人間は受け入れられぬと言うのだな?』
香子は眉をひそめた。
『ええ……まぁ端的に言えばそうです』
玄武はそれに笑む。
『それならそなたは『淫乱』ではないだろう。そなたは四神の花嫁、四神を受け入れるのは当然のこと』
香子は少し複雑そうな顔をした。
『……そうなんですけど……でもなんか、その、倫理観というかですね……』
まだもじょもじょ何か言っている香子に、玄武は一番関心のあることを聞いてみた。
『香子、我のところに来たということは今宵は我と過ごすのか?』
それに香子ははっとした。
『……あ、白虎様……』
そう言って再び玄武にぎゅううううっと抱きつく。それはどのぐらいかわからないが、それほど短い時間ではなかった。
やがて香子が顔を上げる。その表情は少しはにかんでいた。
『ありがとうございます玄武様、今夜はやっぱり白虎様と青龍様と過ごします』
玄武はそれにはんなりと笑んだ。
香子はなんとも謎が多い。
本当は引きとめたかったが、玄武は香子を白虎の室まで送って行った。
玄武は香子が呼んでいるのを感じ、起き上がった。まっすぐこちらに向かってくるのをとらえ、長袍を羽織る。室の扉を開けると、泣きそうな顔で走ってくる香子が見えた。
『玄武様ぁっ!!』
胸に飛び込んできた存在を受け止める。
『玄武様、どうしよう、私どうしよう、私、白虎様に、とても、とても失礼なことを……!!』
香子はひどく動揺しているようだった。背中をとんとんと軽く叩き少し落ち着くように促す。
『入りなさい』
そう言って己の室内に香子を案内する。そして軽く抱き上げ、寝室に運んだ。
『玄武様、玄武様……私白虎様に口づけをされたんです。私、私、玄武様と朱雀様にはそうされてもいいぐらい好きだけど、白虎様はまだそれほど好きなわけじゃないから口づけされたら嫌なんじゃないかなって思っていたんです。だけど、嫌じゃなかったんです……私おかしいんじゃないでしょうか、もしかしたら淫乱なんじゃないでしょうか、私、私……玄武様、どうしよう、私どうしよう……』
玄武の首にぎゅうぎゅう抱きつきながら香子は思ったことを全て口にしているようだった。その背を玄武は優しくとんとんと叩く。まるで頑是ない子供をなだめるようなその仕草に香子はいつしか涙をこぼしていた。
『玄武様どうしよう、私どうしたらいいの……』
『香子、そなたが我らを嫌がらぬのはかえって喜ばしいことだ』
バリトンが優しく香子の耳に届く。
正直玄武は香子が取り乱している理由がわからなかった。香子が四神全てを受け入れられるというのは玄武にとって喜ばしいことである。もちろん今回選ばれなかったらそれはそれで切ないし、今度は嫁いだ先に日参して口説いてしまうかもしれないが、香子が己のことを『淫乱』と言うのが理解できなかった。
『……わからない、わかりません、玄武様……』
香子はとても不安だというように玄武の顔に頭を擦りつけた。
実際香子の不安とかもろもろの複雑な感情は玄武にも届いている。だがどう声をかけていいのかわからないというのが本音ではあった。
(ふむ……)
まず香子の言葉の意味を考えてみる。
香子が気にしているのは、四神全てを受け入れるのに己が本当の意味で嫌がっていないことらしい。そしてそれは香子の中で『淫乱』という言葉に繋がるらしいのだ。
そこから解いていくとなると、嫌な名前も口に出さなければいけなのだが……。
『……香子、そなたは趙や王も受け入れられると思うか?』
「はいぃっ!?」
香子は今まで玄武の首に伏せていた顔をばっと上げた。
『何言っちゃってるんですか玄武様! 冗談じゃないですよ、そりゃあ趙さんも王さんもそれなりに格好いいとは思いますけど玄武様たちにかなうわけないじゃないですか! 口づけとかもう想像もできません!!』
なんだかどさくさに紛れて放ってはおけないことを香子が言っているが、それは後で追及することにする。
『ならば、そなたは我ら四神は受け入れられるが人間は受け入れられぬと言うのだな?』
香子は眉をひそめた。
『ええ……まぁ端的に言えばそうです』
玄武はそれに笑む。
『それならそなたは『淫乱』ではないだろう。そなたは四神の花嫁、四神を受け入れるのは当然のこと』
香子は少し複雑そうな顔をした。
『……そうなんですけど……でもなんか、その、倫理観というかですね……』
まだもじょもじょ何か言っている香子に、玄武は一番関心のあることを聞いてみた。
『香子、我のところに来たということは今宵は我と過ごすのか?』
それに香子ははっとした。
『……あ、白虎様……』
そう言って再び玄武にぎゅううううっと抱きつく。それはどのぐらいかわからないが、それほど短い時間ではなかった。
やがて香子が顔を上げる。その表情は少しはにかんでいた。
『ありがとうございます玄武様、今夜はやっぱり白虎様と青龍様と過ごします』
玄武はそれにはんなりと笑んだ。
香子はなんとも謎が多い。
本当は引きとめたかったが、玄武は香子を白虎の室まで送って行った。
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