164 / 598
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
10.どれだけ我慢すればいいのか(白虎視点)
しおりを挟む
香子は面白い、と白虎も青龍も思う。
白虎はまだ香子に伝えていないことを思い出して眉を寄せた。香子はできるだけ白虎の目を見ないようにしていたからそれに気付かない。
『香子、話がある』
そのままの姿で声をかけると、香子は白虎を見た。白虎は青龍が踵を返そうとするのを止める。
『青龍よ、そなたにとっても大事な話だ』
『わかりました』
白虎は元の姿になると声が低くなる。そうするとちょっと気さくなかんじが薄れて威厳が増すのだが、それを白虎自身は知らない。
香子は居住まいを正した。それに白虎は苦笑する。そしてなだめるように前足を香子の膝に置いた。香子の手が無意識に前足を撫でる。
人型でやったら窘められそうだが元の姿のせいか香子は寛容だった。このままきっと口づけても先日のように怒られることはなさそうだと白虎はほくそ笑む。だが目的を忘れてじゃれ、襲いかかってしまっては元も子もない。
白虎は意志の力でどうにか香子から視線を引き剥がした。
『香子、我は他の四神と違って本能が強いことはわかっておるな?』
『はい』
『前にも言った通り、そなたと交わる時はこの姿になってしまうことも覚えておるな』
『はい……』
答えながら香子の頬がうっすらと染まったことに舌打ちしたくなる。そのように可愛い顔をされたら襲ってしまいたくなるではないか。
ここからが本題である。
『そのように、我は他の三神とは違って独占欲も非常に強い。……玄武兄や朱雀兄は我や青龍にも嫉妬することがないと言うが我は違う。そなたはすでに玄武兄、朱雀兄と交わっているから彼らとこれからも交わるのは問題ないのだが、もし我がここでそなたと交わった場合青龍がそなたを抱くことはできなくなる』
『……え』
顔を真っ赤にして白虎の話を聞いていた香子は最後の言葉に首を傾げた。
白虎の説明が下手なのかそれとも香子の理解力が悪いのかそれは判別がつかないが、香子にはピンとこないようだった。
『我はそれでもかまいませぬが』
青龍が涼やかな声で答えるのもまた憎らしい。内心はどうか知らないが、白虎はこんなにも香子を求めてやまないというのに。
『えーと……それはうーん……「マーキング」みたいな……匂いがしない相手はダメとかそういうことですか……』
香子もどう言い表していいのかわからないようで、「マーキング」という言葉を使った。どうも縄張りを主張する時に匂い付けをする行動をその言葉で表すらしい。
『香子の言葉も外れてはいない。香子からは玄武兄、朱雀兄の匂いがする。だが青龍の匂いはせぬ。だから香子が青龍を好ましいと思うならば我よりも先に青龍と交わらねばならぬ。我と先に交わってしまうと青龍と交わることは許せぬのでな……』
香子はまた何やら考えているようだった。
『ええと、それって……今夜白虎様と過ごすにあたってその可能性があるってことですよね……?』
『ないとは言えまい』
『それもそうですね……』
そこまで言って香子は青龍を見た。
『青龍様は私と、その交われなくてもいいんですか?』
青龍は一瞬驚いたような顔をした。
『正直言えば、そなたと交わりたい。だが我はまだ急ぐ立場でもない。白虎兄がそなたを望むならば阻むことはできぬ』
青龍の科白に、香子は嘆息した。
『やっぱり神様って理解できません』
青龍は素直に言ったのだろうがそれが香子としては納得いかないのかもしれない。
『……我の先代の白虎は、張燕が現れた時次代をもっとも必要としていた。それ故に他の四神を敵とみなし昼夜問わず張燕を口説いた。そして半ば強引に口説き落とし一年を待たず領地に連れ帰った。当然のことだが己が消えるまで他の四神を領地には入れなかった。張燕は十年もの間我を育て、そうしてやっと先代の青龍に嫁いだのだ。青龍よりも先に我と交われば、青龍は我が消えるのを待たなくてはならぬ。順当に香子が次代を産んでくれたとしても最低五百年は待たねばならぬであろうな』
『五百年!?』
香子が驚きの声を上げる。そして、
『うーん、でもなー……』
と何やらぶつぶつ呟いている。
『五百年待ったとしても我にはまだ時間はあるかと』
『その前に香子の精神がもたなかった場合は? 張燕のように先に身罷る可能性もないとはいえぬ』
『それは……』
突然香子ががばり、と白虎に覆いかぶさってきた。それと同時に白虎は香子の甘い香りを吸いこんでしまい、あらぬところが反応してしまう。
『香子! そなた我の話を聞いていたのか!?』
『聞いてましたけど……私まだ白虎様のことも青龍様のこともあまり知らないんですよ。それで交わる、交わらないとかの話をされても実感が沸かなくてですね……』
『香子……そなた我らがそなたの香りに反応することを忘れてはいまいか?』
青龍が香子の気だるげな物言いに苦笑して声をかける。香子は体勢を元に戻した。
『ごめんなさい、白虎様。じゃあ今夜は青龍様も一緒に過ごしてください。夜通し話合いましょう』
白虎は大仰にため息をつき、そしてさすがに危険だと人型に姿を変えた。それに香子が少し残念そうな顔をしたのは見なかったことにした。
白虎はまだ香子に伝えていないことを思い出して眉を寄せた。香子はできるだけ白虎の目を見ないようにしていたからそれに気付かない。
『香子、話がある』
そのままの姿で声をかけると、香子は白虎を見た。白虎は青龍が踵を返そうとするのを止める。
『青龍よ、そなたにとっても大事な話だ』
『わかりました』
白虎は元の姿になると声が低くなる。そうするとちょっと気さくなかんじが薄れて威厳が増すのだが、それを白虎自身は知らない。
香子は居住まいを正した。それに白虎は苦笑する。そしてなだめるように前足を香子の膝に置いた。香子の手が無意識に前足を撫でる。
人型でやったら窘められそうだが元の姿のせいか香子は寛容だった。このままきっと口づけても先日のように怒られることはなさそうだと白虎はほくそ笑む。だが目的を忘れてじゃれ、襲いかかってしまっては元も子もない。
白虎は意志の力でどうにか香子から視線を引き剥がした。
『香子、我は他の四神と違って本能が強いことはわかっておるな?』
『はい』
『前にも言った通り、そなたと交わる時はこの姿になってしまうことも覚えておるな』
『はい……』
答えながら香子の頬がうっすらと染まったことに舌打ちしたくなる。そのように可愛い顔をされたら襲ってしまいたくなるではないか。
ここからが本題である。
『そのように、我は他の三神とは違って独占欲も非常に強い。……玄武兄や朱雀兄は我や青龍にも嫉妬することがないと言うが我は違う。そなたはすでに玄武兄、朱雀兄と交わっているから彼らとこれからも交わるのは問題ないのだが、もし我がここでそなたと交わった場合青龍がそなたを抱くことはできなくなる』
『……え』
顔を真っ赤にして白虎の話を聞いていた香子は最後の言葉に首を傾げた。
白虎の説明が下手なのかそれとも香子の理解力が悪いのかそれは判別がつかないが、香子にはピンとこないようだった。
『我はそれでもかまいませぬが』
青龍が涼やかな声で答えるのもまた憎らしい。内心はどうか知らないが、白虎はこんなにも香子を求めてやまないというのに。
『えーと……それはうーん……「マーキング」みたいな……匂いがしない相手はダメとかそういうことですか……』
香子もどう言い表していいのかわからないようで、「マーキング」という言葉を使った。どうも縄張りを主張する時に匂い付けをする行動をその言葉で表すらしい。
『香子の言葉も外れてはいない。香子からは玄武兄、朱雀兄の匂いがする。だが青龍の匂いはせぬ。だから香子が青龍を好ましいと思うならば我よりも先に青龍と交わらねばならぬ。我と先に交わってしまうと青龍と交わることは許せぬのでな……』
香子はまた何やら考えているようだった。
『ええと、それって……今夜白虎様と過ごすにあたってその可能性があるってことですよね……?』
『ないとは言えまい』
『それもそうですね……』
そこまで言って香子は青龍を見た。
『青龍様は私と、その交われなくてもいいんですか?』
青龍は一瞬驚いたような顔をした。
『正直言えば、そなたと交わりたい。だが我はまだ急ぐ立場でもない。白虎兄がそなたを望むならば阻むことはできぬ』
青龍の科白に、香子は嘆息した。
『やっぱり神様って理解できません』
青龍は素直に言ったのだろうがそれが香子としては納得いかないのかもしれない。
『……我の先代の白虎は、張燕が現れた時次代をもっとも必要としていた。それ故に他の四神を敵とみなし昼夜問わず張燕を口説いた。そして半ば強引に口説き落とし一年を待たず領地に連れ帰った。当然のことだが己が消えるまで他の四神を領地には入れなかった。張燕は十年もの間我を育て、そうしてやっと先代の青龍に嫁いだのだ。青龍よりも先に我と交われば、青龍は我が消えるのを待たなくてはならぬ。順当に香子が次代を産んでくれたとしても最低五百年は待たねばならぬであろうな』
『五百年!?』
香子が驚きの声を上げる。そして、
『うーん、でもなー……』
と何やらぶつぶつ呟いている。
『五百年待ったとしても我にはまだ時間はあるかと』
『その前に香子の精神がもたなかった場合は? 張燕のように先に身罷る可能性もないとはいえぬ』
『それは……』
突然香子ががばり、と白虎に覆いかぶさってきた。それと同時に白虎は香子の甘い香りを吸いこんでしまい、あらぬところが反応してしまう。
『香子! そなた我の話を聞いていたのか!?』
『聞いてましたけど……私まだ白虎様のことも青龍様のこともあまり知らないんですよ。それで交わる、交わらないとかの話をされても実感が沸かなくてですね……』
『香子……そなた我らがそなたの香りに反応することを忘れてはいまいか?』
青龍が香子の気だるげな物言いに苦笑して声をかける。香子は体勢を元に戻した。
『ごめんなさい、白虎様。じゃあ今夜は青龍様も一緒に過ごしてください。夜通し話合いましょう』
白虎は大仰にため息をつき、そしてさすがに危険だと人型に姿を変えた。それに香子が少し残念そうな顔をしたのは見なかったことにした。
22
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる