上 下
163 / 598
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

9.もふもふは至福なのです

しおりを挟む
 食後のお茶を飲み、これからどうしようかと香子は思う。午前中にお茶はしてしまったので午後もお茶、というのはおなかががぽがぽになりそうだ。そうは言っても他に行けるところもないし、と考えたところでここのところしていなかったことを思い出した。

『……白雲さん、贈物ってどうなってます?』
『目録は届いております』

 香子は嘆息した。だから自分に贈物などしてどうするというのだ。

『確認したいので運んでもらうよう言ってください』
『承知しました』

 目録を見ても香子はよくわからない為、今回はそのまま品物を持ってきてくれたらしい。
 そうして謁見の間に広がった惨状を見て、香子は大きなため息をついた。
 きっと後宮の女性たちが見たら目の色を変えて喜びそうな光景ではあるが香子にとっては惨状と言いたくなるような状況でしかない。広げられた品物を黒月と見て回り、キャッツアイの混じった装飾品だけは全て回収する。こればっかりは好きなのだから仕方がない。
 中には豪華なカバーのついたメモ帳のような品物もあって、紙も貴重品なのだということが伺えた。メモ帳なども助かるので全て回収した。そうして残りはまた侍女たちに選ばせることにして、とりあえず茶室に移動した。
 今日はため息をついてばかりだと香子は思う。

(誰のせいよ!?)

 一部は朱雀のせいだと思う。今日香子の斜め隣に座るのは白虎と青龍だ。嫉妬してほしいわけではないが少しは気にしてほしいような……そんなもやもやした気持ちがあった。女心はいつだって複雑なのである。

(白虎様と一緒にいるのも生殺しだよね……だってあのもふもふ……)

 香子の中で白虎は大きな猫みたいな物だった。けれど元の姿に戻ると本能が出てしまうと聞くし、そう思うと元の姿に戻ってくれとは言えない。でももふもふしたい。でもさすがに獣姦は嫌だ。悩ましいところである。
 手が無意識のうちにわきわきしていたらしい。白虎が苦笑した。

香子シャンズ、そなに我に触れたいか』
『え、えええええっ!!?』

 聞きようによってはとんでもない科白なのだが白虎は香子の狼狽に目を丸くした。

『……違ったか?』
『い、いえいえいえいいえ! あーと、うーと、えーと……白虎様の毛皮をなでなでしたいです!!』

 正直な答えに白虎は笑んだ。

『まだ昼ではあるし……青龍と共であれば少しはよいぞ』
(も、もふもふーーーー!!!)

 キラーン! と香子の目の色が変わる。その様子に四神は苦笑した。どうしてそんなに白虎に触りたいのかわからないが、一つ言えることは香子の目が獲物を狙うようなそれに変わったということである。
 お茶をある程度飲み終えたところで白虎に抱きあげられ、香子はうきうきしながら白虎の室に入った。もちろん青龍も共にである。

(もふもふ、もふもふ……)

 先日のように寝室に連れていかれ、優しく寝台の上に下ろされた。

「?」

 先日は寝室に入ったところでその瞬間を待っていたはずである。なのに今日は寝台の上で元の姿に戻るというのだろうか。

『香子、目を閉じなさい』

 威厳のある声で言われ、香子は反射的に目を閉じた。この間のようにぶわっと一瞬風が吹く。それがおさまると常より低い声で『目を開けてもよいぞ』と言われた。
 寝台に立派な白い虎が悠然と横たわっていた。
 それに香子はうっとりと見惚れる。

(なんて……キレイなの……)

 そっと近寄り、『触ってもいいですか?』と聞く。白虎がぐるる……と喉を鳴らす。不快なかんじは受けなかったかので、香子は目の前に座ってその毛を撫でた。

(動物って目を合わせちゃいけないんだっけ?)

 人型の時にはよく目が合った気がするが、元の姿だと本能が出るというぐらいだから目を合わせてはいけないのだろう。首の辺りから背中までの間を撫でていると、前足が崩して座っている香子の足に置かれた。

(ま、前足ーーーー!!!)

 肉球を触らせてもらいたかったがいきなり触るのはダメだろうと、そっとその前足も撫でる。ぐるぐると心地よさそうに喉を鳴らされて香子は嬉しくなった。

『はーーーー! 幸せーーーー!!』

 思わず本音が口から飛び出して二神に笑われたが、ようは香子が満足しているかどうかが問題なのだから無視することにした。
しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた

いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。 一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!? 「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」 ##### r15は保険です。 2024年12月12日 私生活に余裕が出たため、投稿再開します。 それにあたって一部を再編集します。 設定や話の流れに変更はありません。

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~

ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。 ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。 一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。 目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!? 「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

処理中です...