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第1部 四神と結婚しろと言われました
142.狼さんを押さえる方法が知りたいです
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香子はそのまま自分の部屋に戻るものだと思っていたが、残念ながらそうはならなかった。朱雀が自分の室へ通じる廊下を通りすぎたから安心したのにそのまま香子の部屋まで通り過ぎるとは思わなかった。
そしてその足が玄武の室に向かっていると気付いた時、なんだか嫌な予感がして思わず朱雀を仰ぎ見てしまった。それに気がついた朱雀が楽しそうに笑む。香子の背を冷汗が伝った。
そういえば昨夜言質を取られたような気がしないでもない。
『す、朱雀様……』
どうにか思いとどまらせようと声をかけた時には、朱雀はすでに玄武の室の扉を叩いていた。
『入れ』
中からの応えに、後ろに付き従っていた黒月が扉を開く。そして朱雀が中に入ると外から扉を閉めた。
長椅子に寝そべるような格好をしていた玄武が顔を上げた。襟元は少し寛げられており、鎖骨が覗いている。その男の色気が感じられる格好に香子は思わず頬を染めてしまった。
朱雀が玄武に笑んだ。
『着飾るとまた格別でございましょう』
『そうだな。香子なればどのような格好でも愛らしいが、今日はまた一段と綺麗だ』
優しい笑みを浮かべて真正面から言われた科白に香子は真っ赤になった。四神は基本誠実で正直だからそこに社交辞令など存在しない。それがわかっているだけに香子はあまりの恥ずかしさにどうしたらいいのかわからなかった。
褒められるのは嬉しいことだが、ここまで手放しで褒められたことはめったになかったので玄武の顔をまともに見られない。
目をそらし、
『……ええと……ありがとうございます……』
消え入りそうな声でどうにか言葉を紡ぐと玄武が居住まいを正した。
『香子、ここへ』
朱雀が玄武の膝に香子を下ろす。顔がどんどん熱くなってきて、香子は思わず両手を頬に当てて俯いた。
玄武の隣には当然のように朱雀が腰を下ろした。そうして香子の顔を上げさせる。
『恥らうそなたも愛らしい』
香子は顔から火が出そうだった。
(だからなんで玄武様も朱雀様もそんな歯が浮くような科白を普通に言えるわけっっっ!?)
穴があったら入りたい。別の意味で恥ずかしくてたまらない。
『あ、あの……お茶を入れますね……』
眷族が室の外に控えているので、自分でお茶を入れようと立ち上がろうとしたがそれは玄武の腕に阻まれた。
『かまわぬ。それよりもそなたを愛でたい』
(だーかーらーーーーーーーーーー!!)
脳が沸騰しそうだと香子は思った。
『わ、私が飲みたいのです! 淹れさせてください!』
せめてお茶でも飲んで少しでも落ち着きたいというのが香子の本音である。
『ならば我が入れよう』
そう言って朱雀が立ち上がった時、香子は自分の耳を疑った。
(朱雀様がお茶を入れる!?)
四神は自分のことが大体できるようだがお茶を自分で入れる、ということは想像がつかなかった。
朱雀は茶器の置かれたところへ行くと、茶筒を開け、考えるように首を傾げた。そして香子を見る。
『どれぐらい入れればいいのだ?』
『……やっぱり私が淹れます……』
勝手に自分でしないところはポイントが高いと思ったが、茶葉の量は自分の感覚で入れているので人に教えられるようなものでもない。しぶしぶという体で玄武の膝から下ろされ、香子はやっとお茶を淹れた。
長椅子に戻れば当然のように再び玄武の膝に乗せられる。もはや諦めの境地である。
自分で淹れたお茶を一口飲んで、香子はほうっと息を吐いた。
玄武の手は当り前のように香子の身体に触れており、昼ということを無視してことに及ばれそうな雰囲気である。
だが香子としては、それだけは回避したかった。
(いいかげん太陽の光を浴びないと溶けるかも!)
しかし問題はどうやってその気になっている二神を説得するかである。
香子は正直頭が痛くなった。
そしてその足が玄武の室に向かっていると気付いた時、なんだか嫌な予感がして思わず朱雀を仰ぎ見てしまった。それに気がついた朱雀が楽しそうに笑む。香子の背を冷汗が伝った。
そういえば昨夜言質を取られたような気がしないでもない。
『す、朱雀様……』
どうにか思いとどまらせようと声をかけた時には、朱雀はすでに玄武の室の扉を叩いていた。
『入れ』
中からの応えに、後ろに付き従っていた黒月が扉を開く。そして朱雀が中に入ると外から扉を閉めた。
長椅子に寝そべるような格好をしていた玄武が顔を上げた。襟元は少し寛げられており、鎖骨が覗いている。その男の色気が感じられる格好に香子は思わず頬を染めてしまった。
朱雀が玄武に笑んだ。
『着飾るとまた格別でございましょう』
『そうだな。香子なればどのような格好でも愛らしいが、今日はまた一段と綺麗だ』
優しい笑みを浮かべて真正面から言われた科白に香子は真っ赤になった。四神は基本誠実で正直だからそこに社交辞令など存在しない。それがわかっているだけに香子はあまりの恥ずかしさにどうしたらいいのかわからなかった。
褒められるのは嬉しいことだが、ここまで手放しで褒められたことはめったになかったので玄武の顔をまともに見られない。
目をそらし、
『……ええと……ありがとうございます……』
消え入りそうな声でどうにか言葉を紡ぐと玄武が居住まいを正した。
『香子、ここへ』
朱雀が玄武の膝に香子を下ろす。顔がどんどん熱くなってきて、香子は思わず両手を頬に当てて俯いた。
玄武の隣には当然のように朱雀が腰を下ろした。そうして香子の顔を上げさせる。
『恥らうそなたも愛らしい』
香子は顔から火が出そうだった。
(だからなんで玄武様も朱雀様もそんな歯が浮くような科白を普通に言えるわけっっっ!?)
穴があったら入りたい。別の意味で恥ずかしくてたまらない。
『あ、あの……お茶を入れますね……』
眷族が室の外に控えているので、自分でお茶を入れようと立ち上がろうとしたがそれは玄武の腕に阻まれた。
『かまわぬ。それよりもそなたを愛でたい』
(だーかーらーーーーーーーーーー!!)
脳が沸騰しそうだと香子は思った。
『わ、私が飲みたいのです! 淹れさせてください!』
せめてお茶でも飲んで少しでも落ち着きたいというのが香子の本音である。
『ならば我が入れよう』
そう言って朱雀が立ち上がった時、香子は自分の耳を疑った。
(朱雀様がお茶を入れる!?)
四神は自分のことが大体できるようだがお茶を自分で入れる、ということは想像がつかなかった。
朱雀は茶器の置かれたところへ行くと、茶筒を開け、考えるように首を傾げた。そして香子を見る。
『どれぐらい入れればいいのだ?』
『……やっぱり私が淹れます……』
勝手に自分でしないところはポイントが高いと思ったが、茶葉の量は自分の感覚で入れているので人に教えられるようなものでもない。しぶしぶという体で玄武の膝から下ろされ、香子はやっとお茶を淹れた。
長椅子に戻れば当然のように再び玄武の膝に乗せられる。もはや諦めの境地である。
自分で淹れたお茶を一口飲んで、香子はほうっと息を吐いた。
玄武の手は当り前のように香子の身体に触れており、昼ということを無視してことに及ばれそうな雰囲気である。
だが香子としては、それだけは回避したかった。
(いいかげん太陽の光を浴びないと溶けるかも!)
しかし問題はどうやってその気になっている二神を説得するかである。
香子は正直頭が痛くなった。
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