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第1部 四神と結婚しろと言われました
127.眷族も規格外らしいです
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黒羽は一通りお祝いの言葉を述べるとすぐにその場を辞した。黒月がその背中に付き従い茶室を出ていく。その後姿を見送ってから、香子はやっと口を開いた。
『……黒羽さんはこれからどうされるのですか?』
『このまま領地へ戻るだろう』
玄武の当り前のような言葉に香子は目を見開いた。もう夕方で、そろそろ夜の帳が訪れようとしている。
『……せめて今夜ぐらい泊っていかれないのですか?』
それに四神が笑んだ。
『そなたは優しいな』
(それは問いの答えになってなーい!)
香子の困ったような表情に、白雲が答えてくれた。
『花嫁様、我らの身体能力は人のそれとは違います。玄武様の領地はここから比較的近いので、遅くとも夜中には領地に着くでしょう』
四神のように瞬間移動はできないようだがとんでもないスピードで移動ができるらしい。
(武侠小説とかで出てくる『軽功』みたいなものかな……)
とりあえずイメージとしてはそんなかんじかもしれない。
『そうですか、それならいいのですが……』
しかし比較的近いと言われても位置がさっぱりである。まだ吹雪があると考えるともしかしたら黒竜江省辺りなのかもしれない。
(唐代の地図ってどうだったっけ……)
それとも同じだけ時が経っていると考えて清代以降の地図を思い浮かべるべきなのだろうか。
『香子、どうかしたのか?』
考え込んでいる香子に玄武が声をかけた。
『あ、いえ。玄武様の領地ってどの辺りなのかなと思いまして……』
その応えに玄武はなんだか嬉しそうな顔をした。
(……もしかして、しまったかも……)
香子は冷汗をかいた。下手すると玄武の領地に行きたいと思われたのかもしれない。
『その……白雲さんが玄武様の領地は比較的近いと言われたので……』
しどろもどろに言い訳をする。玄武のことは好きだがまだ領地にお持ち帰りされたいとは思えない。
『そうだな。位置で言えばここから北東の方角、黒竜江というところだ』
『というと国境付近ということですか』
『そういうことになるな』
(ってことはー……清代の版図ぐらい広いのかな……)
国名が唐だけに混乱してしまうが、どうも時間は香子の世界と同じだけ動いているらしいのでいろいろ記憶と照合すればなんとかなりそうだった。
『地理も大体頭に入っているのか?』
朱雀の問いに、『おおざっぱですけどね』と答える。
歴史は好きだが、香子は地理が苦手だった。
(でも日本地図の方があやしいかも……)
中国国内はそれなりに旅行しているのでこの土地がどの辺りというのは自分で調べたが、日本国内の旅行は親まかせだったので~県がどこにあるとかもさっぱりだった。実は大陸に行くまで東京の位置すら曖昧だったのはないしょである。
そんなことを話しているうちに夕食の時間になったらしい。
呼びにきた侍女に連れられて部屋に戻りまた着替えをさせられる。
(だからどれだけ着替えをさせれば気が済むんだっていうの!)
香子は憂鬱だったが侍女たちはいつも楽しそうなので何も言えない。侍女たちとしてはやっとお世話させてくれる主人が現れて嬉しいのだ。それに主人には毎日のように贈り物が来るのでその中から似合いそうな衣装を選ぶのも楽しい。昨日今日と香子が選んでいない分は、改めて害のあるものがないかどうか眷族たちが確認をし、衣装などは侍女たちが先に選ばせてもらっていた。あとは残りの物品を見てもらうぐらいである。赤い髪に似合う衣装という制約はあるものの、侍女たちはとても楽しんでいた。
そうしてようやく食堂に向かうと、いつもと違っていかにも屋台で出されるような料理が運ばれてきて香子は目を丸くした。
運んできた侍女たちも少し困ったような顔をしていたが、煎餅らしきものが乗った皿を見つけて香子は目を輝かせた。
『……黒羽さんはこれからどうされるのですか?』
『このまま領地へ戻るだろう』
玄武の当り前のような言葉に香子は目を見開いた。もう夕方で、そろそろ夜の帳が訪れようとしている。
『……せめて今夜ぐらい泊っていかれないのですか?』
それに四神が笑んだ。
『そなたは優しいな』
(それは問いの答えになってなーい!)
香子の困ったような表情に、白雲が答えてくれた。
『花嫁様、我らの身体能力は人のそれとは違います。玄武様の領地はここから比較的近いので、遅くとも夜中には領地に着くでしょう』
四神のように瞬間移動はできないようだがとんでもないスピードで移動ができるらしい。
(武侠小説とかで出てくる『軽功』みたいなものかな……)
とりあえずイメージとしてはそんなかんじかもしれない。
『そうですか、それならいいのですが……』
しかし比較的近いと言われても位置がさっぱりである。まだ吹雪があると考えるともしかしたら黒竜江省辺りなのかもしれない。
(唐代の地図ってどうだったっけ……)
それとも同じだけ時が経っていると考えて清代以降の地図を思い浮かべるべきなのだろうか。
『香子、どうかしたのか?』
考え込んでいる香子に玄武が声をかけた。
『あ、いえ。玄武様の領地ってどの辺りなのかなと思いまして……』
その応えに玄武はなんだか嬉しそうな顔をした。
(……もしかして、しまったかも……)
香子は冷汗をかいた。下手すると玄武の領地に行きたいと思われたのかもしれない。
『その……白雲さんが玄武様の領地は比較的近いと言われたので……』
しどろもどろに言い訳をする。玄武のことは好きだがまだ領地にお持ち帰りされたいとは思えない。
『そうだな。位置で言えばここから北東の方角、黒竜江というところだ』
『というと国境付近ということですか』
『そういうことになるな』
(ってことはー……清代の版図ぐらい広いのかな……)
国名が唐だけに混乱してしまうが、どうも時間は香子の世界と同じだけ動いているらしいのでいろいろ記憶と照合すればなんとかなりそうだった。
『地理も大体頭に入っているのか?』
朱雀の問いに、『おおざっぱですけどね』と答える。
歴史は好きだが、香子は地理が苦手だった。
(でも日本地図の方があやしいかも……)
中国国内はそれなりに旅行しているのでこの土地がどの辺りというのは自分で調べたが、日本国内の旅行は親まかせだったので~県がどこにあるとかもさっぱりだった。実は大陸に行くまで東京の位置すら曖昧だったのはないしょである。
そんなことを話しているうちに夕食の時間になったらしい。
呼びにきた侍女に連れられて部屋に戻りまた着替えをさせられる。
(だからどれだけ着替えをさせれば気が済むんだっていうの!)
香子は憂鬱だったが侍女たちはいつも楽しそうなので何も言えない。侍女たちとしてはやっとお世話させてくれる主人が現れて嬉しいのだ。それに主人には毎日のように贈り物が来るのでその中から似合いそうな衣装を選ぶのも楽しい。昨日今日と香子が選んでいない分は、改めて害のあるものがないかどうか眷族たちが確認をし、衣装などは侍女たちが先に選ばせてもらっていた。あとは残りの物品を見てもらうぐらいである。赤い髪に似合う衣装という制約はあるものの、侍女たちはとても楽しんでいた。
そうしてようやく食堂に向かうと、いつもと違っていかにも屋台で出されるような料理が運ばれてきて香子は目を丸くした。
運んできた侍女たちも少し困ったような顔をしていたが、煎餅らしきものが乗った皿を見つけて香子は目を輝かせた。
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