127 / 608
第1部 四神と結婚しろと言われました
127.眷族も規格外らしいです
しおりを挟む
黒羽は一通りお祝いの言葉を述べるとすぐにその場を辞した。黒月がその背中に付き従い茶室を出ていく。その後姿を見送ってから、香子はやっと口を開いた。
『……黒羽さんはこれからどうされるのですか?』
『このまま領地へ戻るだろう』
玄武の当り前のような言葉に香子は目を見開いた。もう夕方で、そろそろ夜の帳が訪れようとしている。
『……せめて今夜ぐらい泊っていかれないのですか?』
それに四神が笑んだ。
『そなたは優しいな』
(それは問いの答えになってなーい!)
香子の困ったような表情に、白雲が答えてくれた。
『花嫁様、我らの身体能力は人のそれとは違います。玄武様の領地はここから比較的近いので、遅くとも夜中には領地に着くでしょう』
四神のように瞬間移動はできないようだがとんでもないスピードで移動ができるらしい。
(武侠小説とかで出てくる『軽功』みたいなものかな……)
とりあえずイメージとしてはそんなかんじかもしれない。
『そうですか、それならいいのですが……』
しかし比較的近いと言われても位置がさっぱりである。まだ吹雪があると考えるともしかしたら黒竜江省辺りなのかもしれない。
(唐代の地図ってどうだったっけ……)
それとも同じだけ時が経っていると考えて清代以降の地図を思い浮かべるべきなのだろうか。
『香子、どうかしたのか?』
考え込んでいる香子に玄武が声をかけた。
『あ、いえ。玄武様の領地ってどの辺りなのかなと思いまして……』
その応えに玄武はなんだか嬉しそうな顔をした。
(……もしかして、しまったかも……)
香子は冷汗をかいた。下手すると玄武の領地に行きたいと思われたのかもしれない。
『その……白雲さんが玄武様の領地は比較的近いと言われたので……』
しどろもどろに言い訳をする。玄武のことは好きだがまだ領地にお持ち帰りされたいとは思えない。
『そうだな。位置で言えばここから北東の方角、黒竜江というところだ』
『というと国境付近ということですか』
『そういうことになるな』
(ってことはー……清代の版図ぐらい広いのかな……)
国名が唐だけに混乱してしまうが、どうも時間は香子の世界と同じだけ動いているらしいのでいろいろ記憶と照合すればなんとかなりそうだった。
『地理も大体頭に入っているのか?』
朱雀の問いに、『おおざっぱですけどね』と答える。
歴史は好きだが、香子は地理が苦手だった。
(でも日本地図の方があやしいかも……)
中国国内はそれなりに旅行しているのでこの土地がどの辺りというのは自分で調べたが、日本国内の旅行は親まかせだったので~県がどこにあるとかもさっぱりだった。実は大陸に行くまで東京の位置すら曖昧だったのはないしょである。
そんなことを話しているうちに夕食の時間になったらしい。
呼びにきた侍女に連れられて部屋に戻りまた着替えをさせられる。
(だからどれだけ着替えをさせれば気が済むんだっていうの!)
香子は憂鬱だったが侍女たちはいつも楽しそうなので何も言えない。侍女たちとしてはやっとお世話させてくれる主人が現れて嬉しいのだ。それに主人には毎日のように贈り物が来るのでその中から似合いそうな衣装を選ぶのも楽しい。昨日今日と香子が選んでいない分は、改めて害のあるものがないかどうか眷族たちが確認をし、衣装などは侍女たちが先に選ばせてもらっていた。あとは残りの物品を見てもらうぐらいである。赤い髪に似合う衣装という制約はあるものの、侍女たちはとても楽しんでいた。
そうしてようやく食堂に向かうと、いつもと違っていかにも屋台で出されるような料理が運ばれてきて香子は目を丸くした。
運んできた侍女たちも少し困ったような顔をしていたが、煎餅らしきものが乗った皿を見つけて香子は目を輝かせた。
『……黒羽さんはこれからどうされるのですか?』
『このまま領地へ戻るだろう』
玄武の当り前のような言葉に香子は目を見開いた。もう夕方で、そろそろ夜の帳が訪れようとしている。
『……せめて今夜ぐらい泊っていかれないのですか?』
それに四神が笑んだ。
『そなたは優しいな』
(それは問いの答えになってなーい!)
香子の困ったような表情に、白雲が答えてくれた。
『花嫁様、我らの身体能力は人のそれとは違います。玄武様の領地はここから比較的近いので、遅くとも夜中には領地に着くでしょう』
四神のように瞬間移動はできないようだがとんでもないスピードで移動ができるらしい。
(武侠小説とかで出てくる『軽功』みたいなものかな……)
とりあえずイメージとしてはそんなかんじかもしれない。
『そうですか、それならいいのですが……』
しかし比較的近いと言われても位置がさっぱりである。まだ吹雪があると考えるともしかしたら黒竜江省辺りなのかもしれない。
(唐代の地図ってどうだったっけ……)
それとも同じだけ時が経っていると考えて清代以降の地図を思い浮かべるべきなのだろうか。
『香子、どうかしたのか?』
考え込んでいる香子に玄武が声をかけた。
『あ、いえ。玄武様の領地ってどの辺りなのかなと思いまして……』
その応えに玄武はなんだか嬉しそうな顔をした。
(……もしかして、しまったかも……)
香子は冷汗をかいた。下手すると玄武の領地に行きたいと思われたのかもしれない。
『その……白雲さんが玄武様の領地は比較的近いと言われたので……』
しどろもどろに言い訳をする。玄武のことは好きだがまだ領地にお持ち帰りされたいとは思えない。
『そうだな。位置で言えばここから北東の方角、黒竜江というところだ』
『というと国境付近ということですか』
『そういうことになるな』
(ってことはー……清代の版図ぐらい広いのかな……)
国名が唐だけに混乱してしまうが、どうも時間は香子の世界と同じだけ動いているらしいのでいろいろ記憶と照合すればなんとかなりそうだった。
『地理も大体頭に入っているのか?』
朱雀の問いに、『おおざっぱですけどね』と答える。
歴史は好きだが、香子は地理が苦手だった。
(でも日本地図の方があやしいかも……)
中国国内はそれなりに旅行しているのでこの土地がどの辺りというのは自分で調べたが、日本国内の旅行は親まかせだったので~県がどこにあるとかもさっぱりだった。実は大陸に行くまで東京の位置すら曖昧だったのはないしょである。
そんなことを話しているうちに夕食の時間になったらしい。
呼びにきた侍女に連れられて部屋に戻りまた着替えをさせられる。
(だからどれだけ着替えをさせれば気が済むんだっていうの!)
香子は憂鬱だったが侍女たちはいつも楽しそうなので何も言えない。侍女たちとしてはやっとお世話させてくれる主人が現れて嬉しいのだ。それに主人には毎日のように贈り物が来るのでその中から似合いそうな衣装を選ぶのも楽しい。昨日今日と香子が選んでいない分は、改めて害のあるものがないかどうか眷族たちが確認をし、衣装などは侍女たちが先に選ばせてもらっていた。あとは残りの物品を見てもらうぐらいである。赤い髪に似合う衣装という制約はあるものの、侍女たちはとても楽しんでいた。
そうしてようやく食堂に向かうと、いつもと違っていかにも屋台で出されるような料理が運ばれてきて香子は目を丸くした。
運んできた侍女たちも少し困ったような顔をしていたが、煎餅らしきものが乗った皿を見つけて香子は目を輝かせた。
23
お気に入りに追加
4,026
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる