異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
上 下
513 / 608
第4部 四神を愛しなさいと言われました

61.青龍と過ごしたらとんでもないことを言われました

しおりを挟む
 お茶を一杯飲んでから、香子は青龍によって寝室へ運ばれた。
 いつものことなのだが、香子はどうしても照れてしまう。

『そなたの恥じらいは、心地いい』

 青龍に言われて、香子は頬が熱くなるのを感じた。

『な、なんか恥ずかしいんです……』
『恥じらいがなくなったとしても愛しさは変わらぬ故、香子シャンズはあるがままにいればよい』

 そう言いながら青龍は香子をベッドにそっと横たえた。
 まだ昼間なのに、とどうしても香子は思ってしまう。

『……お昼ご飯は食べたいです……』
『わかっている』

 青龍はそう答えて笑んだ。普段動かない表情が動いたことで香子は動揺した。
 香子の顔は明らかに真っ赤になった。青龍は更に口角を上げる。

『……そなたが我を意識するのはとても嬉しいものだな。触れさせよ』
『も、もう……青龍様は変わりすぎです……』

 香子はそう文句を言うことしかできなかった。
 せっかくキレイに整えてもらった衣裳もはだけられ、香子はそれを少し不満に思ったが、青龍の手に触れられてしまえばもうそんなことを考える余裕もなくなってしまった。

「ぁあっ……」
『香子……愛している』

 涼やかな声に情欲が混じる。香子は諦めて青龍に身を委ねた。


 青龍は約束通り、昼食の時間には香子を放した。

『……我が整えられればいいのだが……脱がすことはできても難しいものだな』

 青龍は香子の衣裳をかろうじて整えながら、そう不満を口にした。そんな青龍を香子は愛しく思う。胸が甘く疼いて、青龍を抱きしめてしまいたくなった。
 しかしそれは悪手である。もし香子が今そんなことをしたら、また床に押し倒されてしまうのは間違いなかった。

(我慢、我慢……)

 香子は自分に言い聞かせる。そういうことをしていいのはせめて昼食後である。そうでないと今度こそ昼食をくいっぱぐれてしまうだろう。
 でも、とも香子も思う。

(何を我慢してるんだろ、私……)
『青龍様、部屋に連れて行ってください』

 そう頼めば、青龍は香子を抱き上げた。そして当たり前のように香子を彼女の部屋に運んだ。それで青龍はお役御免のはずなのだが、

『ここで待つ』

 青龍はそう言って居間の長椅子に腰掛けた。香子は目を丸くした。
 侍女たちも内心戸惑ったが、最近の四神は香子への愛を前面に出しているので顔には出さなかった。
 侍女たちは心得たもので、香子の衣裳を整え、髪型を直し、紅を差す。

『お待たせしました』

 と香子をキレイにして青龍の元へ返した。青龍は香子をいつも通り抱き上げた。どうしても香子に歩かせたくはないらしい。
 香子は胸が疼いてばかりで困ってしまう。このままでは心臓が早めに止まってしまいそうだと香子は思った。

『そなたの衣裳や髪型も全て我が整えられればいいのだが……そうすればそなたを放さずに済む』

 吐息と共にそう青龍が言うのを聞いて、香子は正気かと耳を疑った。

『青、青龍様が、ですか……?』
『そうだ。さすればわざわざここまで戻ってこずともよかろう』

 部屋に戻ってくる前に言っていたことは本気らしい。香子はさすがに眉を寄せた。

『青龍様、それは……もし青龍様ができるようになったとしても困ります……』
『何故?』
『侍女たちの仕事を奪ってはなりません』

 香子は端的に答えた。青龍はああ、と納得したような表情を見せた。
 侍女の仕事を奪ってはいけないのは間違いないが、香子からすればそれだけが理由ではない。衣裳や髪型を整えるのから何から全て四神にやってもらってしまっては、香子の精神を整える時間も失われてしまう。食堂へ向かう際や、四神の誰かと過ごす前に衣裳や髪型を整えてもらうことで香子は気持ちを切り替えているのである。
 だからそんなぐずぐずな状態になるのはごめんだった。

(やっぱメリハリが大事よね)
『……ならば、そなたが我に嫁いできた時は我が全てを担ってもかまわぬか?』
『え?』

 まだその予定はないのだが、香子は疑問に思った。何故青龍に嫁いだら香子の身だしなみなども青龍がするということになるのだろうか?

『……意味がわかりかねます』
『眷属は我やそなたの世話をする為に存在しているが、義務ではない』
『……ああ、はい……』

 確かに義務ではなさそうだと、香子は青藍の不満そうな顔を思い出した。義務ではなくてもあの態度はないだろうと香子は思ったが、それは今論ずることではないので言わなかった。

『我がそなたの全てを担ったとしても、問題はないだろう?』
『そ、それはそうですけど……お返事はできかねます!』

 香子は青龍の胸に顔を伏せた。
 なんと言えばいいのか、青龍の言葉はひどく甘い。全てを担うとはどこからどこまでなのか聞きたいと香子は思ったが、今聞いたらやはり困るだろうということはわかるので聞けない。
 青龍がクックッと笑っているのがわかり、香子はムッとした。

『……青龍様、お昼ご飯が食べたいです』
『そなたはほんに……色気より食い気だな』
『……いけませんか?』
『いや? しっかり食べた方がみな喜ぶだろう。さすがに料理はできぬ故、それは譲ることにしよう』
『……まだ青龍様に嫁ぐとは言っていませんが!』
『そのうちだ』

 そう言う青龍はとても楽しそうで、香子はやっぱり困ってしまったのだった。


ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

処理中です...