513 / 609
第4部 四神を愛しなさいと言われました
61.青龍と過ごしたらとんでもないことを言われました
しおりを挟む
お茶を一杯飲んでから、香子は青龍によって寝室へ運ばれた。
いつものことなのだが、香子はどうしても照れてしまう。
『そなたの恥じらいは、心地いい』
青龍に言われて、香子は頬が熱くなるのを感じた。
『な、なんか恥ずかしいんです……』
『恥じらいがなくなったとしても愛しさは変わらぬ故、香子はあるがままにいればよい』
そう言いながら青龍は香子を床にそっと横たえた。
まだ昼間なのに、とどうしても香子は思ってしまう。
『……お昼ご飯は食べたいです……』
『わかっている』
青龍はそう答えて笑んだ。普段動かない表情が動いたことで香子は動揺した。
香子の顔は明らかに真っ赤になった。青龍は更に口角を上げる。
『……そなたが我を意識するのはとても嬉しいものだな。触れさせよ』
『も、もう……青龍様は変わりすぎです……』
香子はそう文句を言うことしかできなかった。
せっかくキレイに整えてもらった衣裳もはだけられ、香子はそれを少し不満に思ったが、青龍の手に触れられてしまえばもうそんなことを考える余裕もなくなってしまった。
「ぁあっ……」
『香子……愛している』
涼やかな声に情欲が混じる。香子は諦めて青龍に身を委ねた。
青龍は約束通り、昼食の時間には香子を放した。
『……我が整えられればいいのだが……脱がすことはできても難しいものだな』
青龍は香子の衣裳をかろうじて整えながら、そう不満を口にした。そんな青龍を香子は愛しく思う。胸が甘く疼いて、青龍を抱きしめてしまいたくなった。
しかしそれは悪手である。もし香子が今そんなことをしたら、また床に押し倒されてしまうのは間違いなかった。
(我慢、我慢……)
香子は自分に言い聞かせる。そういうことをしていいのはせめて昼食後である。そうでないと今度こそ昼食をくいっぱぐれてしまうだろう。
でも、とも香子も思う。
(何を我慢してるんだろ、私……)
『青龍様、部屋に連れて行ってください』
そう頼めば、青龍は香子を抱き上げた。そして当たり前のように香子を彼女の部屋に運んだ。それで青龍はお役御免のはずなのだが、
『ここで待つ』
青龍はそう言って居間の長椅子に腰掛けた。香子は目を丸くした。
侍女たちも内心戸惑ったが、最近の四神は香子への愛を前面に出しているので顔には出さなかった。
侍女たちは心得たもので、香子の衣裳を整え、髪型を直し、紅を差す。
『お待たせしました』
と香子をキレイにして青龍の元へ返した。青龍は香子をいつも通り抱き上げた。どうしても香子に歩かせたくはないらしい。
香子は胸が疼いてばかりで困ってしまう。このままでは心臓が早めに止まってしまいそうだと香子は思った。
『そなたの衣裳や髪型も全て我が整えられればいいのだが……そうすればそなたを放さずに済む』
吐息と共にそう青龍が言うのを聞いて、香子は正気かと耳を疑った。
『青、青龍様が、ですか……?』
『そうだ。さすればわざわざここまで戻ってこずともよかろう』
部屋に戻ってくる前に言っていたことは本気らしい。香子はさすがに眉を寄せた。
『青龍様、それは……もし青龍様ができるようになったとしても困ります……』
『何故?』
『侍女たちの仕事を奪ってはなりません』
香子は端的に答えた。青龍はああ、と納得したような表情を見せた。
侍女の仕事を奪ってはいけないのは間違いないが、香子からすればそれだけが理由ではない。衣裳や髪型を整えるのから何から全て四神にやってもらってしまっては、香子の精神を整える時間も失われてしまう。食堂へ向かう際や、四神の誰かと過ごす前に衣裳や髪型を整えてもらうことで香子は気持ちを切り替えているのである。
だからそんなぐずぐずな状態になるのはごめんだった。
(やっぱメリハリが大事よね)
『……ならば、そなたが我に嫁いできた時は我が全てを担ってもかまわぬか?』
『え?』
まだその予定はないのだが、香子は疑問に思った。何故青龍に嫁いだら香子の身だしなみなども青龍がするということになるのだろうか?
『……意味がわかりかねます』
『眷属は我やそなたの世話をする為に存在しているが、義務ではない』
『……ああ、はい……』
確かに義務ではなさそうだと、香子は青藍の不満そうな顔を思い出した。義務ではなくてもあの態度はないだろうと香子は思ったが、それは今論ずることではないので言わなかった。
『我がそなたの全てを担ったとしても、問題はないだろう?』
『そ、それはそうですけど……お返事はできかねます!』
香子は青龍の胸に顔を伏せた。
なんと言えばいいのか、青龍の言葉はひどく甘い。全てを担うとはどこからどこまでなのか聞きたいと香子は思ったが、今聞いたらやはり困るだろうということはわかるので聞けない。
青龍がクックッと笑っているのがわかり、香子はムッとした。
『……青龍様、お昼ご飯が食べたいです』
『そなたはほんに……色気より食い気だな』
『……いけませんか?』
『いや? しっかり食べた方がみな喜ぶだろう。さすがに料理はできぬ故、それは譲ることにしよう』
『……まだ青龍様に嫁ぐとは言っていませんが!』
『そのうちだ』
そう言う青龍はとても楽しそうで、香子はやっぱり困ってしまったのだった。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
いつものことなのだが、香子はどうしても照れてしまう。
『そなたの恥じらいは、心地いい』
青龍に言われて、香子は頬が熱くなるのを感じた。
『な、なんか恥ずかしいんです……』
『恥じらいがなくなったとしても愛しさは変わらぬ故、香子はあるがままにいればよい』
そう言いながら青龍は香子を床にそっと横たえた。
まだ昼間なのに、とどうしても香子は思ってしまう。
『……お昼ご飯は食べたいです……』
『わかっている』
青龍はそう答えて笑んだ。普段動かない表情が動いたことで香子は動揺した。
香子の顔は明らかに真っ赤になった。青龍は更に口角を上げる。
『……そなたが我を意識するのはとても嬉しいものだな。触れさせよ』
『も、もう……青龍様は変わりすぎです……』
香子はそう文句を言うことしかできなかった。
せっかくキレイに整えてもらった衣裳もはだけられ、香子はそれを少し不満に思ったが、青龍の手に触れられてしまえばもうそんなことを考える余裕もなくなってしまった。
「ぁあっ……」
『香子……愛している』
涼やかな声に情欲が混じる。香子は諦めて青龍に身を委ねた。
青龍は約束通り、昼食の時間には香子を放した。
『……我が整えられればいいのだが……脱がすことはできても難しいものだな』
青龍は香子の衣裳をかろうじて整えながら、そう不満を口にした。そんな青龍を香子は愛しく思う。胸が甘く疼いて、青龍を抱きしめてしまいたくなった。
しかしそれは悪手である。もし香子が今そんなことをしたら、また床に押し倒されてしまうのは間違いなかった。
(我慢、我慢……)
香子は自分に言い聞かせる。そういうことをしていいのはせめて昼食後である。そうでないと今度こそ昼食をくいっぱぐれてしまうだろう。
でも、とも香子も思う。
(何を我慢してるんだろ、私……)
『青龍様、部屋に連れて行ってください』
そう頼めば、青龍は香子を抱き上げた。そして当たり前のように香子を彼女の部屋に運んだ。それで青龍はお役御免のはずなのだが、
『ここで待つ』
青龍はそう言って居間の長椅子に腰掛けた。香子は目を丸くした。
侍女たちも内心戸惑ったが、最近の四神は香子への愛を前面に出しているので顔には出さなかった。
侍女たちは心得たもので、香子の衣裳を整え、髪型を直し、紅を差す。
『お待たせしました』
と香子をキレイにして青龍の元へ返した。青龍は香子をいつも通り抱き上げた。どうしても香子に歩かせたくはないらしい。
香子は胸が疼いてばかりで困ってしまう。このままでは心臓が早めに止まってしまいそうだと香子は思った。
『そなたの衣裳や髪型も全て我が整えられればいいのだが……そうすればそなたを放さずに済む』
吐息と共にそう青龍が言うのを聞いて、香子は正気かと耳を疑った。
『青、青龍様が、ですか……?』
『そうだ。さすればわざわざここまで戻ってこずともよかろう』
部屋に戻ってくる前に言っていたことは本気らしい。香子はさすがに眉を寄せた。
『青龍様、それは……もし青龍様ができるようになったとしても困ります……』
『何故?』
『侍女たちの仕事を奪ってはなりません』
香子は端的に答えた。青龍はああ、と納得したような表情を見せた。
侍女の仕事を奪ってはいけないのは間違いないが、香子からすればそれだけが理由ではない。衣裳や髪型を整えるのから何から全て四神にやってもらってしまっては、香子の精神を整える時間も失われてしまう。食堂へ向かう際や、四神の誰かと過ごす前に衣裳や髪型を整えてもらうことで香子は気持ちを切り替えているのである。
だからそんなぐずぐずな状態になるのはごめんだった。
(やっぱメリハリが大事よね)
『……ならば、そなたが我に嫁いできた時は我が全てを担ってもかまわぬか?』
『え?』
まだその予定はないのだが、香子は疑問に思った。何故青龍に嫁いだら香子の身だしなみなども青龍がするということになるのだろうか?
『……意味がわかりかねます』
『眷属は我やそなたの世話をする為に存在しているが、義務ではない』
『……ああ、はい……』
確かに義務ではなさそうだと、香子は青藍の不満そうな顔を思い出した。義務ではなくてもあの態度はないだろうと香子は思ったが、それは今論ずることではないので言わなかった。
『我がそなたの全てを担ったとしても、問題はないだろう?』
『そ、それはそうですけど……お返事はできかねます!』
香子は青龍の胸に顔を伏せた。
なんと言えばいいのか、青龍の言葉はひどく甘い。全てを担うとはどこからどこまでなのか聞きたいと香子は思ったが、今聞いたらやはり困るだろうということはわかるので聞けない。
青龍がクックッと笑っているのがわかり、香子はムッとした。
『……青龍様、お昼ご飯が食べたいです』
『そなたはほんに……色気より食い気だな』
『……いけませんか?』
『いや? しっかり食べた方がみな喜ぶだろう。さすがに料理はできぬ故、それは譲ることにしよう』
『……まだ青龍様に嫁ぐとは言っていませんが!』
『そのうちだ』
そう言う青龍はとても楽しそうで、香子はやっぱり困ってしまったのだった。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
34
お気に入りに追加
4,026
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。


わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?


【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる