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第1部 四神と結婚しろと言われました

114.出入り禁止になりました(趙、白雲視点)

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 香子と黒月が入浴していた頃、やっと趙文英と王英明は四神宮の表で白雲と話すことができた。

『申し訳ないのですが現在花嫁様は非常に不安定な状態にあります。しばらく貴方がたの前には姿を見せることはかないません』
『それは……いつ頃までなのでしょうか?』

 白雲の言葉に趙は戸惑った。

『さぁ……今のところは我々にもわからないのです。ただ一つ言えることは、決して男性をこちらには近づけないようにしてください。下男や調理人といえど、落ち着くまでは一切の出入りを禁止します』

 いつになく厳しい言い渡しに、趙と王は顔を見合わせた。ただそれが四神の意志であるというのなら逆らうすべはない。

『では……贈り物の確認等は後日していただくようになりますね。景山へもしばらくは延期ですか』
『贈られてきた物に関しましては腐るものでもないでしょうからそちらで保管をお願いします。景山へも、残念ですが……』

 白雲は一瞬眉をひそめた。

『落ち着きましたら声をかけますので、それまでは侍女を介して我らにお声掛けいただけるようお願いします』
『かしこまりました』

 不要品の販売ルートや寄付先などは一朝一夕で準備ができるわけでもないのでそれはかまわないのだが、香子宛の贈り物の保管先が問題である。白雲が言う通り腐るものではないのだがなにせ今のところは数が多すぎる。

『せめて大体何日ぐらいかということがわかれば対処もできるのだが……』

 王もまた困惑しているようだった。

『急ぎ中書令に知らせてこよう』

 そう言って王は慌ただしく戻っていった。

(やはり体調がかんばしくないのだろうか……)

 趙は香子が心配だった。
 黒月は心配ないと言っていたが姿を見ないと安心できない。けれど姿を見せるなと言われた手前どうすることもできない。
 仕方なく侍女に香子の様子を尋ねる。

『香子様はお元気でいらっしゃいます。ただ、やはり男性に会うのは憚られるかと……』

 侍女はほんのりと頬を染めて言いづらそうに言った。
 とりあえず元気らしいということがわかって趙はほっとした。それならいい。
 そして謁見の間の隣に設置された詰め所に戻った。
 中書令や皇帝は四神や花嫁の意向を第一義と考えるよう言ってくれているので、おそらく趙よりはるかにそこらへんの事情には詳しいのだろう。
 まだ何日も経っていないというのに、ちらほらと面会を求める声も上がっていると王は言っていた。今のところは中書省で全て断ってくれているらしいが、いずれどこの馬鹿者が直接四神宮に乗り込んで来ないとも限らない。そこらへんも含めて眷族とは連携をとる必要があった。

(まだしばらくは大丈夫だろう)

 香子の顔を一日でも早く見られることを願いながら、趙は贈り物の目録の整理をした。


(厄介な……)

 眷族にはわからない香子の色香のせいなのか、趙はどうやら香子に懸想しているらしいということが白雲には見てとれた。
 ただ趙は真面目すぎるほど真面目であるから間違いはないだろうと判断する。

『せめて朱雀様の精を受けられれば少しは落ち着くのだろうか……』

 好奇心の塊のような花嫁をいつまでも閉じ込めておくことは難しい。
 趙のことはしばらく置いておくことにし、白雲は玄武と朱雀に報告に行くことにした。
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