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第4部 四神を愛しなさいと言われました
60.頭の中が相変わらずヒマなようです
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香子は白虎の腕に抱かれたまま足をぶらぶらさせた。
ここのところ食堂へ移動するとか、四神の室から己の部屋に移動するだけでも四神のうちの誰かが香子を運ぶのである。
(……自分の足で歩けなくなりそう)
それは香子がここに来てからずっと思っていることである。
香子の身体はもう人とは違う物に作り替えられているから、全く動かなくても太ることもない。ただ白虎に愛されているせいか胸がたわわになって自分でもすごいなぁと思っているぐらいである。肌の色も透き通るように白くなっている。
(でも筋肉は使わないと落ちるのでは……?)
疑問はあるが、四神に下ろしてもらうすべは香子にはない。
香子が己の腕の中にいるせいか、白虎は機嫌がよさそうである。
『もう着いてしまったか……』
白虎は名残惜しそうに呟いた。
四神宮の中は、一室一室は大きめに作られてはいるがそれを渡り廊下で繋げているだけである。だからすぐに着いてしまう。
香子は胸がきゅうっと甘くなるのを感じた。
白虎は香子を少しだけ強く抱きしめると、香子の部屋に入ってそっと彼女を長椅子に下ろした。
『またあとでな』
『……はい』
白虎が部屋を去ってから、香子は顔を両手で覆った。
「あーーーーー、もうっ……! なんであんなにステキなのよカッコイイのよもうもうもうっっ!」
メンクイな己が憎いと香子は思う。日本語で叫んでいるから侍女たちも聞いてて意味はわからないが、だいたいニュアンスは伝わるものだ。おそらくこのようなことを叫んでいるのだろうなと部屋付の侍女である紅児と林雪紅は思い、延夕玲は呆れていた。
部屋の外で控えている黒月は内心ため息をついたが、そんなことは香子には関係ないのである。
やっと衣裳を着替え、髪型などを整えてから香子は落ち着いた。
どれほど抱かれても、香子は慣れないようである。
興奮して疲れたので、香子は少しのんびりすることにした。青龍が顔を出したらしかたないが、そうでなければ部屋で過ごすことにしたのである。
そうなってくると気になるのは黒月のことだ。
(デバガメはよくないって知ってるけど……)
黒月に直接聞いても答えてはくれないだろう。
でも、と香子は思い出した。
黒月は玄武に恋を抱いていたはずである。今は敬愛に近いものを抱いているような話は黒月に聞いていたが、最初ここに来た時は確かに恋をしていたはずだ。
(なんで忘れてたんだろ……)
ということは、四神の眷属は未成年でも恋はするのではないか。
「うーん……」
黒月には聞けない。そして趙文英に聞くことはもっと難しい。周りの侍女たちから、とも香子は思ったが、よく考えたら趙はそれなりに整った顔をしている。侍女が趙に恋をしていてもおかしくはない。
「難しい……」
香子は長椅子の上で身もだえた。
『青龍様がいらっしゃいました』
表から声がかかって、香子ははっと居住まいを正した。青龍はともかく青藍ならば少しは知っているだろうかと香子は考えてしまった。
『青龍様』
青龍が青藍を伴って部屋に入ってきた。
相変わらず涼やかな雰囲気である。青藍も共に来るとその雰囲気が倍増するような気が、香子はした。なんというか、爽やかなのだ。
香子は長椅子から立とうとしたが、それは青龍に制された。
『香子』
青龍は香子をふわりと抱き上げた。香子はその胸にこてんと頭をもたせかける。
もうなんというか、青龍も香子にとっては素敵すぎてどうしようもないのだ。
『我の室へ向かうぞ』
『……はい』
香子に逆らうすべはないし、逆らう気もない。四神は甘すぎて、香子はとてもかないそうになかった。
香子は無意識で青龍の胸に頬をすり寄せる。
その仕草に青龍が内心デレデレしているのを香子は知らなかった。四神は感情が表情に出にくいのでわかりづらいのである。
部屋の表へ出ると、冷たい風が吹いた。
それに香子はハッとした。
青藍に聞きたいと、香子は思った。
『青龍様、少しだけ青藍に聞きたいことがあります』
『青藍に?』
『はい。ですから居間でお茶をしましょう』
青龍は苦笑した。
『……そなたにはかなわぬな』
青藍の表情もまた動かないが、不機嫌そうだということはわかった。
香子が青龍の室にいる間に夕玲の元へ向かうつもりだったのだろう。だが香子から言わせれば今は夕玲の就業時間である。働いている人にプライベートでちょっかいをかけてはいけない。
四神宮に女官は一人しかいないから夕玲の仕事は多いのだ。
『あ』
そういえば女官を増やすなんて話もあったことを香子は思い出した。
あれもこれもと思考が飛んで困ったものである。
青龍の室に移動する。長椅子に腰掛けた青龍の膝に横抱きにされたまま、青藍が淹れたお茶を香子は啜った。
『……花嫁様、我に聞きたいこととはなんでしょう?』
声は涼やかなのだがイライラしているのは丸わかりである。眷属は現金だなぁと香子は感心した。
『黒月と趙の様子って最近どう? 青藍から見てどっちかがどっちかに興味持ってそうな雰囲気ってある?』
青藍は少し視線を左に動かした。
『……趙は黒月を想っているでしょう』
『黒月は?』
『……わかりかねます』
『そう、ありがとう……』
今のところは趙が一方的に黒月を想っているような状態らしいということを知って、香子は内心がっかりした。
そして反省した。
(勝手に自分の想いとか恋とかが娯楽の対象にされてたらやだよね。悪いことしちゃったなぁ……)
『……黒月は我々にとってわかりにくいです』
青藍が補足した。
香子はむむむと青藍を睨んだ。そうやって人を煽るようなことを言うのはどうかと思った。
ーーーーー
悪いのは香子ちゃん(笑)
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
ここのところ食堂へ移動するとか、四神の室から己の部屋に移動するだけでも四神のうちの誰かが香子を運ぶのである。
(……自分の足で歩けなくなりそう)
それは香子がここに来てからずっと思っていることである。
香子の身体はもう人とは違う物に作り替えられているから、全く動かなくても太ることもない。ただ白虎に愛されているせいか胸がたわわになって自分でもすごいなぁと思っているぐらいである。肌の色も透き通るように白くなっている。
(でも筋肉は使わないと落ちるのでは……?)
疑問はあるが、四神に下ろしてもらうすべは香子にはない。
香子が己の腕の中にいるせいか、白虎は機嫌がよさそうである。
『もう着いてしまったか……』
白虎は名残惜しそうに呟いた。
四神宮の中は、一室一室は大きめに作られてはいるがそれを渡り廊下で繋げているだけである。だからすぐに着いてしまう。
香子は胸がきゅうっと甘くなるのを感じた。
白虎は香子を少しだけ強く抱きしめると、香子の部屋に入ってそっと彼女を長椅子に下ろした。
『またあとでな』
『……はい』
白虎が部屋を去ってから、香子は顔を両手で覆った。
「あーーーーー、もうっ……! なんであんなにステキなのよカッコイイのよもうもうもうっっ!」
メンクイな己が憎いと香子は思う。日本語で叫んでいるから侍女たちも聞いてて意味はわからないが、だいたいニュアンスは伝わるものだ。おそらくこのようなことを叫んでいるのだろうなと部屋付の侍女である紅児と林雪紅は思い、延夕玲は呆れていた。
部屋の外で控えている黒月は内心ため息をついたが、そんなことは香子には関係ないのである。
やっと衣裳を着替え、髪型などを整えてから香子は落ち着いた。
どれほど抱かれても、香子は慣れないようである。
興奮して疲れたので、香子は少しのんびりすることにした。青龍が顔を出したらしかたないが、そうでなければ部屋で過ごすことにしたのである。
そうなってくると気になるのは黒月のことだ。
(デバガメはよくないって知ってるけど……)
黒月に直接聞いても答えてはくれないだろう。
でも、と香子は思い出した。
黒月は玄武に恋を抱いていたはずである。今は敬愛に近いものを抱いているような話は黒月に聞いていたが、最初ここに来た時は確かに恋をしていたはずだ。
(なんで忘れてたんだろ……)
ということは、四神の眷属は未成年でも恋はするのではないか。
「うーん……」
黒月には聞けない。そして趙文英に聞くことはもっと難しい。周りの侍女たちから、とも香子は思ったが、よく考えたら趙はそれなりに整った顔をしている。侍女が趙に恋をしていてもおかしくはない。
「難しい……」
香子は長椅子の上で身もだえた。
『青龍様がいらっしゃいました』
表から声がかかって、香子ははっと居住まいを正した。青龍はともかく青藍ならば少しは知っているだろうかと香子は考えてしまった。
『青龍様』
青龍が青藍を伴って部屋に入ってきた。
相変わらず涼やかな雰囲気である。青藍も共に来るとその雰囲気が倍増するような気が、香子はした。なんというか、爽やかなのだ。
香子は長椅子から立とうとしたが、それは青龍に制された。
『香子』
青龍は香子をふわりと抱き上げた。香子はその胸にこてんと頭をもたせかける。
もうなんというか、青龍も香子にとっては素敵すぎてどうしようもないのだ。
『我の室へ向かうぞ』
『……はい』
香子に逆らうすべはないし、逆らう気もない。四神は甘すぎて、香子はとてもかないそうになかった。
香子は無意識で青龍の胸に頬をすり寄せる。
その仕草に青龍が内心デレデレしているのを香子は知らなかった。四神は感情が表情に出にくいのでわかりづらいのである。
部屋の表へ出ると、冷たい風が吹いた。
それに香子はハッとした。
青藍に聞きたいと、香子は思った。
『青龍様、少しだけ青藍に聞きたいことがあります』
『青藍に?』
『はい。ですから居間でお茶をしましょう』
青龍は苦笑した。
『……そなたにはかなわぬな』
青藍の表情もまた動かないが、不機嫌そうだということはわかった。
香子が青龍の室にいる間に夕玲の元へ向かうつもりだったのだろう。だが香子から言わせれば今は夕玲の就業時間である。働いている人にプライベートでちょっかいをかけてはいけない。
四神宮に女官は一人しかいないから夕玲の仕事は多いのだ。
『あ』
そういえば女官を増やすなんて話もあったことを香子は思い出した。
あれもこれもと思考が飛んで困ったものである。
青龍の室に移動する。長椅子に腰掛けた青龍の膝に横抱きにされたまま、青藍が淹れたお茶を香子は啜った。
『……花嫁様、我に聞きたいこととはなんでしょう?』
声は涼やかなのだがイライラしているのは丸わかりである。眷属は現金だなぁと香子は感心した。
『黒月と趙の様子って最近どう? 青藍から見てどっちかがどっちかに興味持ってそうな雰囲気ってある?』
青藍は少し視線を左に動かした。
『……趙は黒月を想っているでしょう』
『黒月は?』
『……わかりかねます』
『そう、ありがとう……』
今のところは趙が一方的に黒月を想っているような状態らしいということを知って、香子は内心がっかりした。
そして反省した。
(勝手に自分の想いとか恋とかが娯楽の対象にされてたらやだよね。悪いことしちゃったなぁ……)
『……黒月は我々にとってわかりにくいです』
青藍が補足した。
香子はむむむと青藍を睨んだ。そうやって人を煽るようなことを言うのはどうかと思った。
ーーーーー
悪いのは香子ちゃん(笑)
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
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