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第1部 四神と結婚しろと言われました

110.四神も男だということらしいです ※下品注意

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 香子は一瞬頭の中が真っ白になった。

(き、聞き間違い、だよね……?)

 なにせ朱雀の科白はあまりにも軽い。

(きっと私の耳がおかしくなったんだ……)

 そう思いたかった。
 香子の背をだらだらと油汗が伝う。

『ええと、すいません朱雀様、もう一度言っていただいてもいいですか?』

 愛想笑いを張りつけて聞くと、朱雀は全く同じ科白を口に乗せた。

『そなた、試しに我ら全てと交わってはみぬか?』

 どうしてそういう話になるのかがわからない。香子は助けを求めるように玄武を見た。
 玄武は優しい眼差しで香子をずっと見ていたようだった。

『嫌なら嫌とはっきり言ってかまわぬのだぞ』

 嫌と言われれば嫌なことは間違いない。なにせ昨夜香子はやっと玄武を受け入れたばかりなのだ。最後の方はもうなにがなんだかわからなかったが、最初のあの痛みを何度も味わうのは今は勘弁してほしい。

『嫌です、けど……そもそもどうしてそういう話になったんですか?』

 今夜は朱雀も受け入れることになるかもしれないと考えたが、まだ白虎と青龍まで受け入れる心の準備はできていない。そんなことは四神がよく知っているはずである。

『そなたから甘い香りがするということは知っておるだろう? どうも玄武兄に抱かれたことで、人間にまでその香りが届いているようでな……』
『へ?』

 香子は眉間にしわを寄せた。
 甘い香り=四神を誘う物。人間にその甘い香りが届いているということは……。

(うーんと……)

 あまり考えたくない事態に遭遇しているような気がする。香子の思考回路が正常なら、玄武に抱かれたことで人をも誘う香りを発してしまうようになったらしい。だとしても何故そこから四神全てと交わることに繋がるのかがわからなかった。

『そうだとして、なんでみなさんと交わることに話が繋がるんですか?』
『そなたは我ら四神の花嫁だ。だから我ら全てと交わっているのが一番安定した状態といえる。さすればそなたの香りも落ち着くはずだ』

 ようは不安定ということか。朱雀の言葉に香子は納得したとして軽く頷く。

(でもなぁ……)

 香子は玄武を見やった。
 確かにここに来る前すでに何人かに抱かれてはいる。でもそれはカレカノという状態で1:1であったし、してもいいと思うぐらい好きだったからできたことだ。
 もちろん白虎も青龍も容姿だけ見れば好みである。だからといってならHしましょう! という風になるはずもない。

『……もしその香りのせいで私が襲われたとしても、守ってくださいますよね?』
『当り前だ』

 玄武が即座に答える。

『って、まず私が襲われるような状況が思い浮かばないんですけど……』

 四神宮の部屋の中でなら香子は一人だが、一歩表に出れば必ず人の目がある。香子が自分の足で四神宮を出ることはないし、常に四神と一緒にいるのに人に襲われるとは考えづらい。

『風呂があるだろう』
『お風呂?』

 一般常識の範囲内として、香子が襲われると思ったのは人間の男性に対してのみである。

『侍女たちに襲われたらなんとする?』

 朱雀の科白に、香子は目をぱちくりさせた。

(侍女たち……?)
『まぁそなたの色香に惑わされて触れるにしても、女同士ではせいぜいお互い喘ぐぐらいしかできようもないだろうが……』

 淡々と朱雀が告げることに香子は真っ赤になった。

(女もか!? 女同士もありなのか!?)

『張型があれば女同士でもできるはできるのでは?』
『そんなものを愛用しているようには見えないが』

 香子が絶句しているのをいいことに白虎までとんでもないことを言う。

(こ、これだから男はああああああああああっっ!!)

 文句を言おうとしたところで、

『朱雀様、白虎様、それ以上はいくら我が四神の眷族であっても容赦はしませぬぞ』

 玄武の後ろに控えていた黒月が地を這うような恐ろしい声を発した。
 それに朱雀と白虎が黙る。今回ばかりは他の眷族も黒月を窘めようとはしなかった。
 香子はそれにひらめいた。

『じゃあ、私の湯あみの時黒月さんも一緒に入ればいいんじゃないですか?』

 いいことを思いついたという風に言うと、黒月は深くため息をついた。

(そんなに嫌がらなくてもいいじゃないのー?)

 とりあえず、湯あみの際は黒月も一緒にということで落ち着いた。あとはおいおい考えていくようである。
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