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第1部 四神と結婚しろと言われました
109.爆弾発言はご遠慮願います(白雲、香子視点)
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香子が食事を終え四神と茶室へ移動した後、侍女頭はためらいながらも白雲に声をかけた。
四神も眷族もある程度まで成長すると、見た目は二十代後半ぐらいの人間と変わらなくなる為誰に声をかけたものかと思うのだが、さすがに侍女頭は全体を観察しているだけあって眷族の中で誰が一番年長かは察しているようだった。
白雲は青藍に、自分に構わず四神に着いていくように言い、侍女頭に向き直った。
『何か?』
『たいへん申し上げにくいことなのですが……』
と侍女頭が言いにくそうに告げた内容は、白雲をはっとさせるには十分だった。
(困ったことになったな……)
趙文英や王英明には四神宮に足を踏み入れないよう今日のところは伝えてあるという。だが王はともかく趙は四神宮付の官吏である。全く香子の前に顔を見せないというわけにもいくまい。
ここで白雲は四神と香子の状態を正しく理解した。自分たち眷族には全く感じられないが、四神の誰かに抱かれた花嫁というのは人間にとっても魅力的に映るらしい。
人間の男は論外だが、もし花嫁が人間の女に襲われたらどうなのだろう。香子からしたらふざけるな! と言いたくなるような思考だが、本来四神も眷族も性に関しては奔放である。ただこれと決まった相手ができればそれ以外には全く見向きもしないという極端さはあった。
自分であればどうだろうと白雲は想像する。
もし愛しい人ができ、その人が人間の女に甘く啼かされているのを目にしたら。
(それはそれでいいかもしれぬ……)
眷族とて男である。頭の腐ったことを考えて、目の前で困っている侍女頭を見やった。
眷属にとって決まった人、といえば”つがい”である。全身全霊をかけて一生愛し抜く相手が、己の目線より低い位置で困り顔をしている女性と重なった。
『よく知らせてくれた。ところでそなたは決まった相手はおるのか?』
『いえ……は……?』
侍女頭は思いがけない問いに顔を上げた。白銀の髪の金の瞳を持った美丈夫が彼女を見ている。
真正面からその姿を見てしまったことで侍女頭は思わず頬を染めた。
『あ、いえ……特にそういう方はおりませんが……』
『後ほど迎えに行く。相手をせよ』
その科白に彼女は固まった。白雲はそれに構わず茶室へ向かう。
後に残された侍女頭は赤くなったり青くなったりとしばらくその場で百面相をしていた。
遅れてやってきた白雲を見て、香子は軽く会釈する。本当はそんなことはしなくてもいいらしいが自分より遥かに年長であることは間違いないし、いろいろお世話になっているのである。会釈ぐらいしても罰は当たらないと思うのだ。
白雲はまっすぐ白虎の元に戻ると何やら白虎に耳打ちした。
『ほう……それはすっかり忘れていたな……』
そう呟くように言って白虎は頭を掻いた。
『どうしたものかな……』
何か厄介事でも持ちあがったのだろうか。香子は軽く首を傾げる。
白虎は三神を見やり、すっと目を閉じた。それに三神も軽く頷く。どうやら何かあったらしいということは香子にもわかった。
ここで念話を使うということはおそらく相談事が済めば香子にも知らせてくれるに違いないだろうと、彼女はまた何杯目かのお茶を注ぎ、啜った。
やっぱり中国茶はおいしいなと再認識している間に話がまとまったらしい。四神の視線が香子に集中する。
この場合はどうしたものかと香子はまた首を傾げた。
先に口を開いたのは朱雀だった。
だがそれはとんでもない爆弾であった。
朱雀はあろうことか、
『香子、そなた試しに我ら全てと交わってはみぬか?』
と、まるで近所に買い物に行かないかと誘うような口調でのたまったのだった。
四神も眷族もある程度まで成長すると、見た目は二十代後半ぐらいの人間と変わらなくなる為誰に声をかけたものかと思うのだが、さすがに侍女頭は全体を観察しているだけあって眷族の中で誰が一番年長かは察しているようだった。
白雲は青藍に、自分に構わず四神に着いていくように言い、侍女頭に向き直った。
『何か?』
『たいへん申し上げにくいことなのですが……』
と侍女頭が言いにくそうに告げた内容は、白雲をはっとさせるには十分だった。
(困ったことになったな……)
趙文英や王英明には四神宮に足を踏み入れないよう今日のところは伝えてあるという。だが王はともかく趙は四神宮付の官吏である。全く香子の前に顔を見せないというわけにもいくまい。
ここで白雲は四神と香子の状態を正しく理解した。自分たち眷族には全く感じられないが、四神の誰かに抱かれた花嫁というのは人間にとっても魅力的に映るらしい。
人間の男は論外だが、もし花嫁が人間の女に襲われたらどうなのだろう。香子からしたらふざけるな! と言いたくなるような思考だが、本来四神も眷族も性に関しては奔放である。ただこれと決まった相手ができればそれ以外には全く見向きもしないという極端さはあった。
自分であればどうだろうと白雲は想像する。
もし愛しい人ができ、その人が人間の女に甘く啼かされているのを目にしたら。
(それはそれでいいかもしれぬ……)
眷族とて男である。頭の腐ったことを考えて、目の前で困っている侍女頭を見やった。
眷属にとって決まった人、といえば”つがい”である。全身全霊をかけて一生愛し抜く相手が、己の目線より低い位置で困り顔をしている女性と重なった。
『よく知らせてくれた。ところでそなたは決まった相手はおるのか?』
『いえ……は……?』
侍女頭は思いがけない問いに顔を上げた。白銀の髪の金の瞳を持った美丈夫が彼女を見ている。
真正面からその姿を見てしまったことで侍女頭は思わず頬を染めた。
『あ、いえ……特にそういう方はおりませんが……』
『後ほど迎えに行く。相手をせよ』
その科白に彼女は固まった。白雲はそれに構わず茶室へ向かう。
後に残された侍女頭は赤くなったり青くなったりとしばらくその場で百面相をしていた。
遅れてやってきた白雲を見て、香子は軽く会釈する。本当はそんなことはしなくてもいいらしいが自分より遥かに年長であることは間違いないし、いろいろお世話になっているのである。会釈ぐらいしても罰は当たらないと思うのだ。
白雲はまっすぐ白虎の元に戻ると何やら白虎に耳打ちした。
『ほう……それはすっかり忘れていたな……』
そう呟くように言って白虎は頭を掻いた。
『どうしたものかな……』
何か厄介事でも持ちあがったのだろうか。香子は軽く首を傾げる。
白虎は三神を見やり、すっと目を閉じた。それに三神も軽く頷く。どうやら何かあったらしいということは香子にもわかった。
ここで念話を使うということはおそらく相談事が済めば香子にも知らせてくれるに違いないだろうと、彼女はまた何杯目かのお茶を注ぎ、啜った。
やっぱり中国茶はおいしいなと再認識している間に話がまとまったらしい。四神の視線が香子に集中する。
この場合はどうしたものかと香子はまた首を傾げた。
先に口を開いたのは朱雀だった。
だがそれはとんでもない爆弾であった。
朱雀はあろうことか、
『香子、そなた試しに我ら全てと交わってはみぬか?』
と、まるで近所に買い物に行かないかと誘うような口調でのたまったのだった。
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