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第1部 四神と結婚しろと言われました
96.自覚? ※R13
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玄武は不器用なのだろうと香子は思う。神様をつかまえて不器用というのも失礼だろうが、香子に対してどういう風に接したらいいのか考えあぐねているように見えた。
この国の前提条件だと後宮に入るのは女性の憧れらしい。家が貧しいとか、権勢欲が強いとかならありかもしれないが、みながみな憧れているとは思えないのだが。
(一般的なイメージかな?)
皇帝というのは雲の上の人というイメージから出てきたものなのだろう。
だからといって香子まで皇帝に憧れるものと思われているのは不本意この上ない。ぶっちゃけ誰がそう勘違いしていてもいいが、四神にそう思われているのだけは絶対に嫌だった。
(って、あれー?)
自分を優しく包み込むように見つめる玄武を見返しながら、香子は自分の心境を顧みる。
そしてぼんっと音がしたかと思えるぐらい赤くなった。
(……うそ……)
まだ四神と出会って五日ぐらいしか経っていないと言ったのは香子である。
それなのに、それなのに。
『香子?』
声をかけられて香子は思わず玄武の胸に顔を伏せた。玄武の低い体温が火照った頬に心地いい。
きっとこれは吊り橋効果に違いないと香子は思う(ちょっと錯乱中)
好みのイケメンたちに迫られてどきどきしているうちに恋をしてしまったのだと勘違いしているだけ。しかも彼らの目的はただ香子と付き合うだけでなく、”結婚して子供を産ませたい”なのである。
香子の目標は大学卒業と同時に結婚をすることだった。しかし世の中そうそううまくいくはずはない。大学時代に何人かと付き合ってはみたが結婚まで考えた相手は正直一人もいなかった。
これは高校の時に付き合っていた彼氏の影響も無視できないと香子は思う。香子はメンクイで、しかも背の高い男性にしか目がいかなかった。その初めてできた彼氏は香子の理想そのものであったから、「香ちゃんは俺と結婚するんだよ?」という科白が刷り込まれてしまったのかもしれない。高校の時の彼氏は学校の先輩で、卒業からしばらくして自然消滅してしまったが、別に嫌いで別れたとかいうことではないのでなんとなく基準が最初の彼氏になってしまうのは否めないだろう。
だから香子は今時の娘にしては”結婚”という言葉に非常に弱いのだった。
『具合でも悪いのか?』
心配そうに声をかけられて、伏せた顔を大きな手が優しく上向かせる。
(だめだめっ! バレちゃう!)
香子はいやいやするように首を振ろうとしたが、その時にはもう玄武の視線に捕えられていた。玄武がはっとしたような表情で香子を見つめる。
『香子、そなたもしや……』
こういう時は何も聞かないでほしいと香子は思う。女心はなかなかに複雑なのだ。
(玄武様だから……? それとも……)
目の前にいるのが玄武だからこんなにどきどきしてしまうのだろうか。それとも四神なら誰でもいいのか香子にはまだ判別がつかない。
そんな香子の戸惑いを看て取りながら、玄武は鷹揚に笑んだ。
『香子、愛している……』
そう言って潤んだ目尻に、頬に、鼻に口づけをする。
『……あ……』
戸惑って震える口唇に、優しい口づけが降りてくる。玄武の腕は逃がさぬとばかりに力強く香子を抱きしめ、うっすらと開かれた唇をはんだ。
(私は、誰が好きなの……?)
四神の気持ちは嬉しいと思う。欲張りと言われようがその気持ちが他の女性に移るなど耐えられない。それならば全員を受け入れなければいけないと思うのだが、まだ戸惑いの方が強くて想いがまずは誰に向いているのかわからない。
(玄武様か、朱雀様には違いないんだけど……)
するりと入り込んできた舌に、甘く自分の舌を絡め取られながら香子は震えた。
玄武と香子はそれからしばらくの間口づけあっていた。
この国の前提条件だと後宮に入るのは女性の憧れらしい。家が貧しいとか、権勢欲が強いとかならありかもしれないが、みながみな憧れているとは思えないのだが。
(一般的なイメージかな?)
皇帝というのは雲の上の人というイメージから出てきたものなのだろう。
だからといって香子まで皇帝に憧れるものと思われているのは不本意この上ない。ぶっちゃけ誰がそう勘違いしていてもいいが、四神にそう思われているのだけは絶対に嫌だった。
(って、あれー?)
自分を優しく包み込むように見つめる玄武を見返しながら、香子は自分の心境を顧みる。
そしてぼんっと音がしたかと思えるぐらい赤くなった。
(……うそ……)
まだ四神と出会って五日ぐらいしか経っていないと言ったのは香子である。
それなのに、それなのに。
『香子?』
声をかけられて香子は思わず玄武の胸に顔を伏せた。玄武の低い体温が火照った頬に心地いい。
きっとこれは吊り橋効果に違いないと香子は思う(ちょっと錯乱中)
好みのイケメンたちに迫られてどきどきしているうちに恋をしてしまったのだと勘違いしているだけ。しかも彼らの目的はただ香子と付き合うだけでなく、”結婚して子供を産ませたい”なのである。
香子の目標は大学卒業と同時に結婚をすることだった。しかし世の中そうそううまくいくはずはない。大学時代に何人かと付き合ってはみたが結婚まで考えた相手は正直一人もいなかった。
これは高校の時に付き合っていた彼氏の影響も無視できないと香子は思う。香子はメンクイで、しかも背の高い男性にしか目がいかなかった。その初めてできた彼氏は香子の理想そのものであったから、「香ちゃんは俺と結婚するんだよ?」という科白が刷り込まれてしまったのかもしれない。高校の時の彼氏は学校の先輩で、卒業からしばらくして自然消滅してしまったが、別に嫌いで別れたとかいうことではないのでなんとなく基準が最初の彼氏になってしまうのは否めないだろう。
だから香子は今時の娘にしては”結婚”という言葉に非常に弱いのだった。
『具合でも悪いのか?』
心配そうに声をかけられて、伏せた顔を大きな手が優しく上向かせる。
(だめだめっ! バレちゃう!)
香子はいやいやするように首を振ろうとしたが、その時にはもう玄武の視線に捕えられていた。玄武がはっとしたような表情で香子を見つめる。
『香子、そなたもしや……』
こういう時は何も聞かないでほしいと香子は思う。女心はなかなかに複雑なのだ。
(玄武様だから……? それとも……)
目の前にいるのが玄武だからこんなにどきどきしてしまうのだろうか。それとも四神なら誰でもいいのか香子にはまだ判別がつかない。
そんな香子の戸惑いを看て取りながら、玄武は鷹揚に笑んだ。
『香子、愛している……』
そう言って潤んだ目尻に、頬に、鼻に口づけをする。
『……あ……』
戸惑って震える口唇に、優しい口づけが降りてくる。玄武の腕は逃がさぬとばかりに力強く香子を抱きしめ、うっすらと開かれた唇をはんだ。
(私は、誰が好きなの……?)
四神の気持ちは嬉しいと思う。欲張りと言われようがその気持ちが他の女性に移るなど耐えられない。それならば全員を受け入れなければいけないと思うのだが、まだ戸惑いの方が強くて想いがまずは誰に向いているのかわからない。
(玄武様か、朱雀様には違いないんだけど……)
するりと入り込んできた舌に、甘く自分の舌を絡め取られながら香子は震えた。
玄武と香子はそれからしばらくの間口づけあっていた。
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