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第1部 四神と結婚しろと言われました

92.話が相変わらず脱線します

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 爆笑、と言ってもさすがに眷族は必死で笑いをこらえていた。
 ひとしきり笑った後、最初に気を取り直したのは朱雀だった。

香子シャンズの言うことも一理ある。だが、どこからそういう情報を得ているのだ?』
(あ、そっか……)

 この国の国民なら後宮の内情など知る者は少ないだろう。

(TVとかラジオってこの国にはないだろうし。そもそも電気自体が……)

 そこまで考えて香子は何か違和感を覚えた。

(あれ? そういえばこの国の灯りってけっこう明るくない?)

 電気はないと思う。だとすると後はロウソクを使うとか、アルコールランプを使うぐらいしか思いつかない。ただその光源はかなり明るいのでロウソクやアルコールランプとはとても思えないのだ。そう考えたらいてもたってもいられなくなった。

『あのっ! 夜の灯りって何を使ってるんですか!?』

 勢いこんで聞くとみな目を丸くした。

『ロウソクとかだったとしたら灯りが足りないなと思って……』

 どう説明したらいいかわからず聞くと、それには玄武が答えてくれた。

『灯りは主に”光石”を使っている。そなたの世界にはないか?』
『”Guangshi(グワンシー)”?』

 漢字が思い浮かばない。香子が首を傾げていると玄武が手のひらに指先で書いてくれた。

(ああ、”光石”ね……日本語だと”こうせき”とでも読むのかな。飛行石なら知ってるけど)

 ラピ○タかよ! とかいうツッコミはなしで。

『私の世界には多分存在しないと思います。どういうものなのですか?』

 玄武の顔を見る。

『主にランタンの中に入れて使うものだ。昼間一定時間以上太陽に当てておくと夜に光る』
(わー、なーんてクリーンなエネルギー……)
『それって、どこでもとれるものなのですか? 安価で手に入ります?』
『どこでもというわけではない。ただし一つあれば半永久的に使えるものだから、ちまたでは小さい石が比較的手に入りやすい価格で出回ってはいるようだ』
(それって、懐中電灯とかも簡単に作れちゃうよねー。いいなぁ……)

 やはりここは異世界なのだと実感する。
 そこまで考えて、朱雀が質問の答えを待っていることにやっと気がついた。黒月もなんだか呆れたような顔をしている。

(……あ……)
『ええと、ごめんなさい。情報の入手先ですよね……』

 気になることがあるとそちらに完全に意識がいってしまうのは香子の悪い癖である。
 それにしても説明が非常に難しい。

『ええとですね、宮廷の生活とかそういうものって、元の世界ではもう歴史上の出来事という認識なんです。なので娯楽本とか、別の媒体で知ろうと思えばいくらでも調べることができるのです』

 それに朱雀は感心したように頷いた。

『別の媒体とは?』
(う、その説明が難しいー……)

 香子は文系なのでTVやラジオ、インターネットなどの仕組みはさっぱりわからない。特にインターネットは普及しはじめたばかりで、香子も大学に入ってしばらくしてからやっとパソコンを買ってもらった。この際パソコンやインターネットは割愛してTVやラジオの仕組みを考えることにする。

『……すごく説明が難しいのでそれは宿題でいいですか?』
『ということは、この世界には存在しない方法ということか?』

 朱雀の科白に頷く。電話の簡単な原理ぐらいなら糸電話などで説明ができないことはないが、電波というのはお手上げである。

『ならばかえって聞かない方がよいのかもしれぬ』

 その言葉に香子は驚いて顔を上げた。二神は難しい顔をしていた。

『この国の人間がどう考えるかは知らぬが、我らはそれを活用する立場ではない。そなたが人に伝えようとするのは自由だが……』
『……せめてこの国の仕組みとかを勉強してから考えます……』

 今の香子が説明をするにはハードルが高すぎる。そしてこんな時、やっぱり相手は神様なのだなと思う。おそらく皇帝が今の話を聞いたなら何がなんでも説明させようとするに違いない。
 そんなことを話している内に昼ごはんの時間になったらしい。
 侍女が知らせに来てくれたので香子は一旦部屋に戻ることにした。まだ皇帝のところに行った時の格好のままで動きづらいことこの上ない。

(午後はまた景山に連れていってもらえるのかな)

 そう考えるとまたわくわくしてきた。


※香子が大学を卒業したのは2001年頃です。
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