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第1部 四神と結婚しろと言われました
90.気になります
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ここで、
(自覚って何の?)
と聞き返したらブッ飛ばされそうな気がする。香子としても話すことに夢中になっていて皇帝との距離が近すぎたかもしれないという自覚はある。ただ皇帝はどう考えても香子を女とは認識していないだろうから油断していた。
四神のやきもちは、相手が香子に全く女性としての魅力を感じていなくても関係ない。人間の男性が香子のそばにいるということ自体が耐えがたいのだ。
『はい、ごめんなさい……』
黒月の言いたいことはわかるので香子は素直に謝った。
『玄武様、眷族である我が口を出していいことではないということもわかっております。ですが、花嫁様が今朝言われていた通り、焦らず心を通わせるようお考えください』
『そうだな』
玄武も素直に黒月に応えた。黒月が平伏する。
『差し出た口を聞きまして誠に申し訳ございません』
『よい。そなたのおかげで香子を奪わなくて済んだ』
香子の背筋を冷汗が伝う。
(やっぱりあのままいってたら最後までされちゃったってことー!?)
やはり人間の男性の側にいるのは危険らしい。しかしそうなると次に皇帝に声をかけられた時はどうすればいいのだろうか。
(まぁそんなに頻繁には呼ばれないだろうけど)
皇帝というのは多忙なものだ。
『そういえば、なんであんな質の悪いお茶が出てきたんでしょう』
思い出して口に出すと、黒月が呆れたような顔をした。
『皇帝の余興とか?』
思いついたことをまんま言うとなんだか可哀想な子を見るような目をされる。
(そんなにあほなこと言った?)
『……言いたくはないですが、おそらくあの場にいた侍女の独断でしょう』
ため息混じりに言われて首を傾げる。
ということは。
『私が気に食わないってこと?』
『でしょうね』
ばかばかしい、と思う。
『なにそれ。勝手に皇帝に呼びつけられて行ったのに、気に食わないからって質の悪いお茶を出すわけ? 頭悪すぎ』
『花嫁様を侮っていたのでしょうね』
『確かに、あの茶葉はそなたのすぐ横に置かれた茶器にしか入っていなかったな』
つまりピンポイントで狙われたということである。
他の人に配られた茶器には上質の祁門紅が入っていたに違いない。
(くやしーい!)
それでも四神が反応しなかったのは中に毒や害のあるものが入っていなかったからだろう。
『我の物と替えてやればよかったか……』
すまなさそうに玄武が言う。それに香子は首を振った。
『いいです、後で自分でお茶入れて飲みますし!』
上質の茶葉をふんだんに使ってやると思う。それにあの場で香子が言った意味に皇帝は気付いたに違いない。
『でも、仮にも皇帝の客に対して侍女が独断で質の悪いお茶を出すなんて……』
『皇帝自身が蔑ろにされている感はありますね』
黒月の答えに香子はうんうんと頷いた。
『あの皇帝、別に頭悪そうには見えないんだけどな……』
もしかしたら即位の際になにかすったもんだあったのだろうか。それともこれまでずっと頭の悪そうな君主を演じてきていたとか?
そんなことを考えていたら、くい、と顎を持ち上げられた。いつのまにか切なそうな玄武の顔が近付いてきている。
『香子、我は随分と嫉妬深いらしい……』
(わー! ごめんなさいーーーーーー!)
黒月が急いで室を出ていく。おそらく三神のうちの誰かを呼びにいってくれたに違いない。
『玄武様! 皇帝なんか私はなんとも思ってませんから! むしろあんな奴気に食わないですーー!』
(つーかあんな奴に迫られると思っただけで鳥肌が立つわー!)
皇帝が美丈夫であることは認めるが、好みの顔ではないし性格も第一印象も悪すぎる。
玄武はそれにふっと笑って香子の髪に口づけた。
『それはまことか?』
『当り前です! いくら金積まれたって皇帝なんかの相手はごめんです!』
そう叫ぶように言うと玄武は如何にも面白くてたまらないというように声を上げて笑い出した。
(自覚って何の?)
と聞き返したらブッ飛ばされそうな気がする。香子としても話すことに夢中になっていて皇帝との距離が近すぎたかもしれないという自覚はある。ただ皇帝はどう考えても香子を女とは認識していないだろうから油断していた。
四神のやきもちは、相手が香子に全く女性としての魅力を感じていなくても関係ない。人間の男性が香子のそばにいるということ自体が耐えがたいのだ。
『はい、ごめんなさい……』
黒月の言いたいことはわかるので香子は素直に謝った。
『玄武様、眷族である我が口を出していいことではないということもわかっております。ですが、花嫁様が今朝言われていた通り、焦らず心を通わせるようお考えください』
『そうだな』
玄武も素直に黒月に応えた。黒月が平伏する。
『差し出た口を聞きまして誠に申し訳ございません』
『よい。そなたのおかげで香子を奪わなくて済んだ』
香子の背筋を冷汗が伝う。
(やっぱりあのままいってたら最後までされちゃったってことー!?)
やはり人間の男性の側にいるのは危険らしい。しかしそうなると次に皇帝に声をかけられた時はどうすればいいのだろうか。
(まぁそんなに頻繁には呼ばれないだろうけど)
皇帝というのは多忙なものだ。
『そういえば、なんであんな質の悪いお茶が出てきたんでしょう』
思い出して口に出すと、黒月が呆れたような顔をした。
『皇帝の余興とか?』
思いついたことをまんま言うとなんだか可哀想な子を見るような目をされる。
(そんなにあほなこと言った?)
『……言いたくはないですが、おそらくあの場にいた侍女の独断でしょう』
ため息混じりに言われて首を傾げる。
ということは。
『私が気に食わないってこと?』
『でしょうね』
ばかばかしい、と思う。
『なにそれ。勝手に皇帝に呼びつけられて行ったのに、気に食わないからって質の悪いお茶を出すわけ? 頭悪すぎ』
『花嫁様を侮っていたのでしょうね』
『確かに、あの茶葉はそなたのすぐ横に置かれた茶器にしか入っていなかったな』
つまりピンポイントで狙われたということである。
他の人に配られた茶器には上質の祁門紅が入っていたに違いない。
(くやしーい!)
それでも四神が反応しなかったのは中に毒や害のあるものが入っていなかったからだろう。
『我の物と替えてやればよかったか……』
すまなさそうに玄武が言う。それに香子は首を振った。
『いいです、後で自分でお茶入れて飲みますし!』
上質の茶葉をふんだんに使ってやると思う。それにあの場で香子が言った意味に皇帝は気付いたに違いない。
『でも、仮にも皇帝の客に対して侍女が独断で質の悪いお茶を出すなんて……』
『皇帝自身が蔑ろにされている感はありますね』
黒月の答えに香子はうんうんと頷いた。
『あの皇帝、別に頭悪そうには見えないんだけどな……』
もしかしたら即位の際になにかすったもんだあったのだろうか。それともこれまでずっと頭の悪そうな君主を演じてきていたとか?
そんなことを考えていたら、くい、と顎を持ち上げられた。いつのまにか切なそうな玄武の顔が近付いてきている。
『香子、我は随分と嫉妬深いらしい……』
(わー! ごめんなさいーーーーーー!)
黒月が急いで室を出ていく。おそらく三神のうちの誰かを呼びにいってくれたに違いない。
『玄武様! 皇帝なんか私はなんとも思ってませんから! むしろあんな奴気に食わないですーー!』
(つーかあんな奴に迫られると思っただけで鳥肌が立つわー!)
皇帝が美丈夫であることは認めるが、好みの顔ではないし性格も第一印象も悪すぎる。
玄武はそれにふっと笑って香子の髪に口づけた。
『それはまことか?』
『当り前です! いくら金積まれたって皇帝なんかの相手はごめんです!』
そう叫ぶように言うと玄武は如何にも面白くてたまらないというように声を上げて笑い出した。
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