507 / 598
第4部 四神を愛しなさいと言われました
55.学習しないと言われてもしかたないのです
しおりを挟む
夕飯は侍女たちが目を剥くほど食べた。
香子としても背に腹は変えられなかったのである。それでも後半は紅炎への怒りであまり味がわからなかったことを悔やんだ。
(言うにことかいて小姑!? 雪紅が紅炎のこと、好きでたまらないとでも言うのじゃなければ手助けなんかしないんだからぁっ!)
香子は怒り狂っていた。
だが、そんなやりとりを見ていた四神もまた嫉妬をつのらせていたことを、香子は気づいていなかった。
それでも食休みを終えるまでは四神も耐えていた。そろそろよかろうと玄武がスッと立ち上がり、何事かと香子が玄武を見た時には、香子はもう玄武の腕の中にいた。
『?』
え? なんで? と香子の頭の中は?でいっぱいである。
『そなたは我らを煽るのがうまい』
『え?』
香子の耳を震わすバリトンと、色を含んだ壮絶な流し目が香子の全身を真っ赤に染め上げた。
『青龍、先に湯殿へ向かう。じっくりと愛そう』
『承知しました』
『……え? え?』
香子は玄武に抱かれたまま、浴室に運ばれる。浴室はどちらでも入れるように常に湯が満たされているので、そのまま向かっても全く問題はなかった。
そうして、玄武、朱雀、青龍によって香子はひどく甘い一日を過ごすことととなった。
『ううう……おなかすいたよぉ……』
あんなに沢山食べたのに、と香子は涙をぼろぼろこぼした。
目が覚めた時はもう辺りが暗くなっている。夜から昼近くまで抱かれ、気を失うように眠りについて起きたらもう夕飯の時間のようだった。寝る時間も込みとはいえ、丸一日食べていなかったようである。(香子の主観として)
玄武と朱雀は自分たちの室に戻ったようだ。
『香子……湯を飲め』
青龍に優しく身体を抱き起されて、白湯の入った茶杯を渡された。香子はそれをこくこくと飲む。
『……ふぅ……』
空腹には白湯さえも甘露であったが、それよりも食べる物がほしい。途中で果物を食べたりしていたことを香子は思い出した。水分はしっかり摂らせてもらっていたが、食べ物は全く入ってないと思えるぐらいおなかが鳴った。
『しばし待て』
『……しすぎです……』
香子は力なく青龍に抗議した。
『すまぬ。そなたが愛しすぎてな……玄武兄も朱雀兄も耐えられなかったのだろう』
青龍が何やら不穏なことを言っている気がしたが、香子はあまりの空腹によくわかっていなかった。
そうして、どうにか青龍の室で夕飯を食べ終えて落ち着いた。
それもまたすごい量だったが、もう厨房の方も侍女たちも何も考えないことにしたらしい。次から次へと料理を運び、香子も遠慮なく食べたのだった。
『……やっぱり春巻が好き……おいしい』
普通の春巻も、馬が作る焦げ焦げの春巻も、海老春巻も全て好きだと香子は思った。もちろん他の料理も全ておいしい。
満腹になれば満足である。やっと香子の機嫌が直り、香子は少し頭が働き出すのを感じた。
(……今回のえっち、すごくねちっこかった気がするけど……)
青龍に抱かれるのはどちらにせよねちっこいのだが、途中で記憶が曖昧模糊としてきたのはいつも通りである。毎回朱雀の熱を受けて全身を狂おしい熱でいっぱいにされてから抱かれるのだ。
抱かれている間はただもう気持ちいいとしか思えなくて、いつまでも抱いていてほしいと香子が思うのはいつも通りである。実際には甘すぎてもうムリ状態になっているのだが、それを思い出すのは決まってひと眠りした後なので気持ちよかったということを中心に覚えているのだった。
『青龍様、あのぅ……』
『如何した?』
長椅子の、青龍の膝の上で香子はお茶を一口飲んでから切り出した。
内容的に改めて聞くのは恥ずかしいのだが、疑問に思ったことはその場で聞かないとのちのちたいへんなことになる。それを香子はもうわかっているので考えながら口を開いた。
『あの……いつもならここまで抱かれないと思うのですが、何かありましたか……?』
時間もそうだし、本当にねちっこく愛されていた記憶がよみがえってきて、香子は真っ赤になった。
『……そなたは鈍感だな』
青龍がため息混じりに呟く。香子はきょとんとした。
『鈍感……でしょうか』
『ああ。趙の話まではまだ耐えられたのだが、な……』
『あ』
そういえば、と香子はやっと思い出した。四神は香子が人間を気にすればするほど嫉妬するのである。それは人間の男だけでなく女性に対してもそうであった。
『……部屋付きの侍女のことですね。申し訳ありません』
『そなたが謝ることではない。我らの堪え性がきかないだけだ。それに……朱雀の眷属もそなたを煽るようなことを言った』
『ええまぁ……』
香子は自分の部屋付の侍女である。林雪紅のことを思い浮かべた。きっとこういうのもダメなのだろうということも香子はわかっている。だが相手は香子より若いし、紅炎に押し倒されでもしたら強制的に娶られてしまうに違いない。いくらこの国で女性の結婚が誰かに決められることだと知っていても、香子は望まないまま四神の眷属に娶られるということはできるだけ回避させてあげたかった。
余計なお世話といえばそうなのだが、四神の眷属と共になるということはありえない程に長い時を過ごすのである。
そう簡単に攫っていいとは、香子はとても言えない。
『……また考えているのか』
『申し訳ありません。雪紅の意志ならばいいのです。ですが、強制的にというのはどうしても納得がいきません。だって……』
青龍は香子の頬を撫でた。
『四神の眷属の番になるということは……とても長い時を共に過ごさないといけないのでしょう?』
『……そう言われてみればそうだな』
青龍もさすがに気づいたらしい。
『……そんな覚悟を、まだ二十年も生きていない少女に背負わせてはいけないと思います』
『そうであったな』
いくらなんでも眷属の成人年齢である五十歳まで待てとは言わない。だが香子の中では、二十歳未満は子どもなのだ。
『……話してみよう』
『青龍様、ありがとうございます』
『そなたの為ならば』
青龍の秀麗な面が近づいてくる。香子はそれにそっと身を委ねたのだった。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございますー!
香子としても背に腹は変えられなかったのである。それでも後半は紅炎への怒りであまり味がわからなかったことを悔やんだ。
(言うにことかいて小姑!? 雪紅が紅炎のこと、好きでたまらないとでも言うのじゃなければ手助けなんかしないんだからぁっ!)
香子は怒り狂っていた。
だが、そんなやりとりを見ていた四神もまた嫉妬をつのらせていたことを、香子は気づいていなかった。
それでも食休みを終えるまでは四神も耐えていた。そろそろよかろうと玄武がスッと立ち上がり、何事かと香子が玄武を見た時には、香子はもう玄武の腕の中にいた。
『?』
え? なんで? と香子の頭の中は?でいっぱいである。
『そなたは我らを煽るのがうまい』
『え?』
香子の耳を震わすバリトンと、色を含んだ壮絶な流し目が香子の全身を真っ赤に染め上げた。
『青龍、先に湯殿へ向かう。じっくりと愛そう』
『承知しました』
『……え? え?』
香子は玄武に抱かれたまま、浴室に運ばれる。浴室はどちらでも入れるように常に湯が満たされているので、そのまま向かっても全く問題はなかった。
そうして、玄武、朱雀、青龍によって香子はひどく甘い一日を過ごすことととなった。
『ううう……おなかすいたよぉ……』
あんなに沢山食べたのに、と香子は涙をぼろぼろこぼした。
目が覚めた時はもう辺りが暗くなっている。夜から昼近くまで抱かれ、気を失うように眠りについて起きたらもう夕飯の時間のようだった。寝る時間も込みとはいえ、丸一日食べていなかったようである。(香子の主観として)
玄武と朱雀は自分たちの室に戻ったようだ。
『香子……湯を飲め』
青龍に優しく身体を抱き起されて、白湯の入った茶杯を渡された。香子はそれをこくこくと飲む。
『……ふぅ……』
空腹には白湯さえも甘露であったが、それよりも食べる物がほしい。途中で果物を食べたりしていたことを香子は思い出した。水分はしっかり摂らせてもらっていたが、食べ物は全く入ってないと思えるぐらいおなかが鳴った。
『しばし待て』
『……しすぎです……』
香子は力なく青龍に抗議した。
『すまぬ。そなたが愛しすぎてな……玄武兄も朱雀兄も耐えられなかったのだろう』
青龍が何やら不穏なことを言っている気がしたが、香子はあまりの空腹によくわかっていなかった。
そうして、どうにか青龍の室で夕飯を食べ終えて落ち着いた。
それもまたすごい量だったが、もう厨房の方も侍女たちも何も考えないことにしたらしい。次から次へと料理を運び、香子も遠慮なく食べたのだった。
『……やっぱり春巻が好き……おいしい』
普通の春巻も、馬が作る焦げ焦げの春巻も、海老春巻も全て好きだと香子は思った。もちろん他の料理も全ておいしい。
満腹になれば満足である。やっと香子の機嫌が直り、香子は少し頭が働き出すのを感じた。
(……今回のえっち、すごくねちっこかった気がするけど……)
青龍に抱かれるのはどちらにせよねちっこいのだが、途中で記憶が曖昧模糊としてきたのはいつも通りである。毎回朱雀の熱を受けて全身を狂おしい熱でいっぱいにされてから抱かれるのだ。
抱かれている間はただもう気持ちいいとしか思えなくて、いつまでも抱いていてほしいと香子が思うのはいつも通りである。実際には甘すぎてもうムリ状態になっているのだが、それを思い出すのは決まってひと眠りした後なので気持ちよかったということを中心に覚えているのだった。
『青龍様、あのぅ……』
『如何した?』
長椅子の、青龍の膝の上で香子はお茶を一口飲んでから切り出した。
内容的に改めて聞くのは恥ずかしいのだが、疑問に思ったことはその場で聞かないとのちのちたいへんなことになる。それを香子はもうわかっているので考えながら口を開いた。
『あの……いつもならここまで抱かれないと思うのですが、何かありましたか……?』
時間もそうだし、本当にねちっこく愛されていた記憶がよみがえってきて、香子は真っ赤になった。
『……そなたは鈍感だな』
青龍がため息混じりに呟く。香子はきょとんとした。
『鈍感……でしょうか』
『ああ。趙の話まではまだ耐えられたのだが、な……』
『あ』
そういえば、と香子はやっと思い出した。四神は香子が人間を気にすればするほど嫉妬するのである。それは人間の男だけでなく女性に対してもそうであった。
『……部屋付きの侍女のことですね。申し訳ありません』
『そなたが謝ることではない。我らの堪え性がきかないだけだ。それに……朱雀の眷属もそなたを煽るようなことを言った』
『ええまぁ……』
香子は自分の部屋付の侍女である。林雪紅のことを思い浮かべた。きっとこういうのもダメなのだろうということも香子はわかっている。だが相手は香子より若いし、紅炎に押し倒されでもしたら強制的に娶られてしまうに違いない。いくらこの国で女性の結婚が誰かに決められることだと知っていても、香子は望まないまま四神の眷属に娶られるということはできるだけ回避させてあげたかった。
余計なお世話といえばそうなのだが、四神の眷属と共になるということはありえない程に長い時を過ごすのである。
そう簡単に攫っていいとは、香子はとても言えない。
『……また考えているのか』
『申し訳ありません。雪紅の意志ならばいいのです。ですが、強制的にというのはどうしても納得がいきません。だって……』
青龍は香子の頬を撫でた。
『四神の眷属の番になるということは……とても長い時を共に過ごさないといけないのでしょう?』
『……そう言われてみればそうだな』
青龍もさすがに気づいたらしい。
『……そんな覚悟を、まだ二十年も生きていない少女に背負わせてはいけないと思います』
『そうであったな』
いくらなんでも眷属の成人年齢である五十歳まで待てとは言わない。だが香子の中では、二十歳未満は子どもなのだ。
『……話してみよう』
『青龍様、ありがとうございます』
『そなたの為ならば』
青龍の秀麗な面が近づいてくる。香子はそれにそっと身を委ねたのだった。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございますー!
24
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる