異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
上 下
80 / 608
第1部 四神と結婚しろと言われました

80.そろそろ試してみようと思います

しおりを挟む
 そんなことを朱雀が考えているとは全く思ってもいない香子は、食後のお茶でひとごこちついていた。
 食事時に出されるお茶は茉莉花ジャスミン茶である。最初のうちは緑茶であったが、中華料理には茉莉花茶が飲みたいようなことを言ったら、それからごはんのお供は茉莉花茶になった。
 だが実際のところ香子は茉莉花茶が好きなわけではない。留学中表でごはんを食べる時はお茶といえば茉莉花茶というぐらい当たり前についてきた。その為中華料理には茉莉花茶というように習慣化してしまったのである。なので今でも茉莉花茶は好きではないが、中華料理と一緒なら飲む。ただその習慣のおかげで茉莉花茶が好きなのだろうという誤解は受けやすい。部屋に持って来られる大きい茶壺の中身まで茉莉花茶に替えられた時は、さすがに他のお茶にしてほしいとお願いした。
 それよりも黒月とやりあっていたこともあり今日は夕食の時間が遅かった。香子としては昼寝もしたことだし、この後またお茶でも飲んでからお風呂かなというところなのだが、侍女たちの仕事の関係もあるのでどうしたものかと首を傾げた。

(先に熱をもらってからお風呂とか?)

 香子は朱雀の熱を受けることを忘れてはいなかった。熱を受けた後は体が熱くなって、それこそ汗を山ほどかくに違いない。だったら先に熱を受けてからお風呂に入った方がすっきりと眠れるように思われた。

『朱雀様、お風呂の前にお願いしてもいいですか?』

 朱雀に目を向けて香子が言うと、朱雀は一瞬驚いたような顔をした。

『かまわぬが……本当によいのか?』

 いいもなにもそういう話になっていたはずと香子が不審そうな顔をすると、

『最低でも一時辰(二時間)は熱に浮かされることになろう。その後に浴室を使ってもよいが、そなた自身が動けるかどうか……』
(……ん?)

 二時間も熱に浮かされ続けるというのもげんなりだが、その際に随分とエネルギー消費をしてしまうことになるようだ。

『なら先に湯を使っておいた方がいいのでしょうか?』
『後がいいというなら我が入れよう』

 そう朱雀に言われてそれはさすがに困ると香子は思う。

『わかりました。先にお風呂へ行ってきます』

 仕方ないが後で濡らした布でももらって体を拭くことにしよう。そう決めて一旦部屋に戻った。
 浴室はいつでも入れるようにしてあるらしいが、女性の支度というのはとにかく時間がかかるものらしい。侍女が準備をしている間香子はぼうっと部屋でまたお茶を飲んでいた。
 やがて用意が整い浴室へ連れていかれる。体を洗われ、湯に香油を垂らされて、浴槽を出れば洗い場で丁寧に体を揉まれる。あまりのいたれりつくせりさ加減に、香子は自分がえらい人になったような勘違いまでしてしまいそうだと思う。

(危険、危険……)

 決して自分はえらくなんかない。ただ異世界に召喚されたというだけである。
 侍女たちは香子に、昨日と同じような薄絹の夜着を着せてガウンのようなものを羽織らせた。部屋に戻ってしばらくもしないうちに朱雀が玄武を伴ってやってきた。
 香子は首を傾げる。
 何故玄武も一緒なのだろう。
 その疑問に気付いたのか、朱雀が嘆息するように言った。

『熱だけ与える、というのはしたことがないのでな。一応何があってもいいように玄武兄に同行してもらった』
(何があってもって、何があるんですかー?)

 やっぱり熱をもらうということを決めたのは間違っていたのだろうか。香子は少し不安になる。

香子シャンズ、我は居間の方にいる。特に何もなければ戻る故気にするな』

 玄武が淡々と告げた。眷族である紅夏と黒月は部屋の外に控えているという。
 一体何があるというのだろうか。
 香子の瞳が少しだけ不安そうに揺らめいたが、朱雀はそれにかまわず香子を抱き上げた。
しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

巻き戻ったから切れてみた

こもろう
恋愛
昔からの恋人を隠していた婚約者に断罪された私。気がついたら巻き戻っていたからブチ切れた! 軽~く読み飛ばし推奨です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...