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第1部 四神と結婚しろと言われました
78.対決です!
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黒月としても不満が溜っていたのだろう、素直に香子に従った。茶室、とは言ってみたものの改めてどこがいいかと考えて香子はまだ準備されていないだろう食堂に足を伸ばした。
戸惑う侍女に扉を開けさせ黒月と共に中に入る。そして香子はまっすぐ黒月に向き直った。
『単刀直入に聞きますが、黒月さんは何故いつも私を睨んでいるんですか?』
そう尋ねると黒月は更にきつい眼差しを向けてきた。
『……貴女が気に食わないからだ』
『何故気に食わないのです?』
香子も負けじと視線を返す。
『貴女は……あんなに玄武様に想われているというのに何故応えようとしないのだっ!?』
香子は嘆息した。やはり黒月は玄武に想いを寄せているらしい。
『……私が玄武様と一緒になってもいいんですか?』
そう言うと黒月は悔しそうに唇を噛んだ。
そんな顔をするぐらいなら言わなければいいのに。
『……仕方ないだろう。貴女は四神の花嫁なのだから……』
苦しそうに言う黒月に香子はだんだんいらいらしてきた。
『そうじゃなくてっ! 黒月さんは玄武様が好きなんでしょう!? だったら当たって砕ける覚悟でとっとと告白でもなんでもすればいいじゃないですか!』
『なっ……!?』
『眷族が神を想うこと自体なんかおかしいってことは私にだってわかります。でも貴女はまだ成人してないんでしょう? だったらとっとと告白でも、抱きついてキスでもなんでもしちゃえばいいと思います』
黒月は香子の言葉に顔を赤くして絶句した。
まさかそんなことを言われるとは全く思ってもみなかったようである。
ちなみに黒月が未成年だということを香子が知ったのは先ほどの会話による。
『それではっきり断られれば黒月さんだっていつまでもうだうだしてないでしょう? 私は別に誰とでも仲良くなれるとは思っていません。でも最低一年は一緒に過ごすんです。少なくとも私は貴女と険悪な関係でいたいとは思いません』
黒月の顔が呆気にとられたような表情になった。そして今にも泣きそうな顔をする。
『……貴女は、もし玄武様が我を受け入れたらどうするつもりだ……?』
『そしたら私も玄武様に告白します。私以外を見ちゃ嫌ですって。そしたら黒月さんとは恋敵ですね』
そう笑って言った途端、食堂の扉が勢いよく開かれた。何事かと香子と黒月が扉の方に視線を向けた瞬間、香子は黒い袍をまとった腕に抱き上げられていた。
『……はっ?』
いきなり嵐のように食堂に入ってきたのは玄武だった。
『我がそなた以外を見るはずはないだろう。香子、愛している……』
そう甘いバリトンが耳に届き、香子は唇を塞がれた。
(だからなんでこうなるのーーーーーーーーーーっっっ!?)
黒月の視線が痛い。これでは火に油を注ぐようなものではないか。
「んんんーーーーーーっっ!」
香子は玄武の胸を両手で押しのけようとばんばん叩く。けれどその力強い腕はがっちりと香子を捕えていてそう簡単に外れそうもない。香子はどうにかして玄武の腕の中から逃れようと思いっきり暴れた。
そしてやっと玄武の唇が離される。
『……玄武様、いったいなにするんですかっっ!?』
『我に告白してくれると聞いてつい嬉しくなってな……』
『ちょっ! 仮定の話です仮定の! 大体今私は黒月さんと話をしているんです。邪魔しないでください!』
『だが……』
『だが、じゃありません! せっかく少しでも仲良くなろうとしているのに玄武様が出てきたらぶち壊しじゃないですかっ!』
黒月は香子と玄武の会話を聞きながら茫然としていた。
香子に怒られながらも玄武はとても嬉しそうだった。
一方的に香子が怒っているだけだが、なんだかじゃれているようにも見える。もしなにかまかり間違って黒月が受け入れてもらえたとしても、こんなにぽんぽん言い合えることはないだろう。
黒月は一瞬目を伏せ、そして笑った。
完敗だった。
戸惑う侍女に扉を開けさせ黒月と共に中に入る。そして香子はまっすぐ黒月に向き直った。
『単刀直入に聞きますが、黒月さんは何故いつも私を睨んでいるんですか?』
そう尋ねると黒月は更にきつい眼差しを向けてきた。
『……貴女が気に食わないからだ』
『何故気に食わないのです?』
香子も負けじと視線を返す。
『貴女は……あんなに玄武様に想われているというのに何故応えようとしないのだっ!?』
香子は嘆息した。やはり黒月は玄武に想いを寄せているらしい。
『……私が玄武様と一緒になってもいいんですか?』
そう言うと黒月は悔しそうに唇を噛んだ。
そんな顔をするぐらいなら言わなければいいのに。
『……仕方ないだろう。貴女は四神の花嫁なのだから……』
苦しそうに言う黒月に香子はだんだんいらいらしてきた。
『そうじゃなくてっ! 黒月さんは玄武様が好きなんでしょう!? だったら当たって砕ける覚悟でとっとと告白でもなんでもすればいいじゃないですか!』
『なっ……!?』
『眷族が神を想うこと自体なんかおかしいってことは私にだってわかります。でも貴女はまだ成人してないんでしょう? だったらとっとと告白でも、抱きついてキスでもなんでもしちゃえばいいと思います』
黒月は香子の言葉に顔を赤くして絶句した。
まさかそんなことを言われるとは全く思ってもみなかったようである。
ちなみに黒月が未成年だということを香子が知ったのは先ほどの会話による。
『それではっきり断られれば黒月さんだっていつまでもうだうだしてないでしょう? 私は別に誰とでも仲良くなれるとは思っていません。でも最低一年は一緒に過ごすんです。少なくとも私は貴女と険悪な関係でいたいとは思いません』
黒月の顔が呆気にとられたような表情になった。そして今にも泣きそうな顔をする。
『……貴女は、もし玄武様が我を受け入れたらどうするつもりだ……?』
『そしたら私も玄武様に告白します。私以外を見ちゃ嫌ですって。そしたら黒月さんとは恋敵ですね』
そう笑って言った途端、食堂の扉が勢いよく開かれた。何事かと香子と黒月が扉の方に視線を向けた瞬間、香子は黒い袍をまとった腕に抱き上げられていた。
『……はっ?』
いきなり嵐のように食堂に入ってきたのは玄武だった。
『我がそなた以外を見るはずはないだろう。香子、愛している……』
そう甘いバリトンが耳に届き、香子は唇を塞がれた。
(だからなんでこうなるのーーーーーーーーーーっっっ!?)
黒月の視線が痛い。これでは火に油を注ぐようなものではないか。
「んんんーーーーーーっっ!」
香子は玄武の胸を両手で押しのけようとばんばん叩く。けれどその力強い腕はがっちりと香子を捕えていてそう簡単に外れそうもない。香子はどうにかして玄武の腕の中から逃れようと思いっきり暴れた。
そしてやっと玄武の唇が離される。
『……玄武様、いったいなにするんですかっっ!?』
『我に告白してくれると聞いてつい嬉しくなってな……』
『ちょっ! 仮定の話です仮定の! 大体今私は黒月さんと話をしているんです。邪魔しないでください!』
『だが……』
『だが、じゃありません! せっかく少しでも仲良くなろうとしているのに玄武様が出てきたらぶち壊しじゃないですかっ!』
黒月は香子と玄武の会話を聞きながら茫然としていた。
香子に怒られながらも玄武はとても嬉しそうだった。
一方的に香子が怒っているだけだが、なんだかじゃれているようにも見える。もしなにかまかり間違って黒月が受け入れてもらえたとしても、こんなにぽんぽん言い合えることはないだろう。
黒月は一瞬目を伏せ、そして笑った。
完敗だった。
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