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第1部 四神と結婚しろと言われました
74.程度がよくわかりません
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王宮内が落ち着かない様子だという件については王英明が答えてくれた。
『実は、老仏爺(皇太后)が1月以内にこちらにいらっしゃいます』
『ああ、それで……』
皇太后というのは王城の奥深くに住んでいるものかと思っていたが、今の皇太后は違うらしい。四神がそれに何の反応もしないことから、自分には関係ないことだというのはわかった。
ただどれぐらいの期間滞在するのだろうかということは気になる。短ければ全く顔を見る機会もないだろうが、長いともしかしたら晩餐会みたいな時に引っ張り出されるかもしれない。
『どれぐらい滞在されるのですか?』
それには王も言葉を濁した。ようは未定、皇太后の気分次第ということなのだろう。
(ま、私には関係ないだろうしいっか)
休憩を終え、その先に見える峰に視線を向ける。
(向こうまでずーっと歩いたらどこまでいけるんだろう?)
香子の好奇心いっぱいの視線に玄武は柔らかく笑んだ。
『この先に案内せよ』
『承知しました』
玄武の科白に趙と王は拱手して再び先導する。
山を下り、また上る。峰への道は緩やかではあったが香子は少し侍女たちが気になった。
『あの……もう少しゆっくり歩いてもらっていいですか?』
先導する二人に声をかけると途端歩みが遅くなった。
『香子?』
玄武が不思議そうに香子の顔を覗き込む。香子はむーっとした。
(これだから男は……)
『男の足に女性が着いてきてるんですよ。平地ならともかく人工とはいえ一応山なんですから少しは気を使うべきです!』
そう言うと玄武は目を丸くした。先導する二人もそれに一瞬足を止めそうになる。
『……それはそなたの国では当然のことか?』
そう聞かれると香子は眉間に皺を寄せた。基本日本の男性はそこまで気が利くとは思えない。そして現代中国の男性はどうかというと、気のある女性には親切といった具合である。
(日本の男性は普通ドア開けてくれたりはしなかったな。彼氏(中国人)はそこらへんすごく気を使ってくれてたなー)
『……当然かどうかは知りません。でも、一般的に女性は身体的に男性より弱い存在なのですから気を使うべきだと思います』
『一理ある』
玄武は面白そうに言った。
『仕える者に優しくするのはいいが、程度というものがある』
『……それは気にしすぎってことですか?』
香子は首を傾げた。
『そこまではそなたが考えることではない』
顔を俯かせる。人に傅かれるなんて今までなかったから、どこまで口を出していいかわからない。玄武はそんな香子を包みこむようにした。
『そなたが一生懸命なのはわかる。その姿は愛おしいが、他の者に向ける気持ちをもう少し我らに向けてはくれまいか』
甘いバリトンが頭の上から降ってきて、香子はその胸に顔を押し付けた。
目の前を歩いている二人には絶対聞こえているだろう。なんだかとても恥ずかしくて仕方なかった。
やがて一つ目の峰を越え二つ目に差しかかる。
適度に休憩を挟みゆっくりと時間をかけて一行は山を下りた。
『明日もいらっしゃるのでしたら、庭園の奥にご案内します』
王の科白に香子は間髪入れず『行きます!』と答えた。なにせ広い庭園である。奥にどんな景色が広がっているのかと思うとわくわくした。そんな香子の様子に四神は苦笑する。
『疲れたであろう。ゆっくり休め』
玄武が香子を部屋に運ぶ。
ずっと抱き上げられたまま移動してどこが疲れるのだと香子としては突っ込みたい気持ちだったが、せっかく一人にしてもらえるのだからとその言葉に甘えることにした。
そのあまりの素早さに、王は声をかける機会を逸してしまった。
実は贈り物関係の香子の発言について詳しく話を聞きたいと中書令に言われていたのだった。ただやはり香子本人に声をかけるのはまずいだろう。
王は趙に耳打ちした。
花嫁本人でなくてもかまわないが渡りをつけてほしいと。
『実は、老仏爺(皇太后)が1月以内にこちらにいらっしゃいます』
『ああ、それで……』
皇太后というのは王城の奥深くに住んでいるものかと思っていたが、今の皇太后は違うらしい。四神がそれに何の反応もしないことから、自分には関係ないことだというのはわかった。
ただどれぐらいの期間滞在するのだろうかということは気になる。短ければ全く顔を見る機会もないだろうが、長いともしかしたら晩餐会みたいな時に引っ張り出されるかもしれない。
『どれぐらい滞在されるのですか?』
それには王も言葉を濁した。ようは未定、皇太后の気分次第ということなのだろう。
(ま、私には関係ないだろうしいっか)
休憩を終え、その先に見える峰に視線を向ける。
(向こうまでずーっと歩いたらどこまでいけるんだろう?)
香子の好奇心いっぱいの視線に玄武は柔らかく笑んだ。
『この先に案内せよ』
『承知しました』
玄武の科白に趙と王は拱手して再び先導する。
山を下り、また上る。峰への道は緩やかではあったが香子は少し侍女たちが気になった。
『あの……もう少しゆっくり歩いてもらっていいですか?』
先導する二人に声をかけると途端歩みが遅くなった。
『香子?』
玄武が不思議そうに香子の顔を覗き込む。香子はむーっとした。
(これだから男は……)
『男の足に女性が着いてきてるんですよ。平地ならともかく人工とはいえ一応山なんですから少しは気を使うべきです!』
そう言うと玄武は目を丸くした。先導する二人もそれに一瞬足を止めそうになる。
『……それはそなたの国では当然のことか?』
そう聞かれると香子は眉間に皺を寄せた。基本日本の男性はそこまで気が利くとは思えない。そして現代中国の男性はどうかというと、気のある女性には親切といった具合である。
(日本の男性は普通ドア開けてくれたりはしなかったな。彼氏(中国人)はそこらへんすごく気を使ってくれてたなー)
『……当然かどうかは知りません。でも、一般的に女性は身体的に男性より弱い存在なのですから気を使うべきだと思います』
『一理ある』
玄武は面白そうに言った。
『仕える者に優しくするのはいいが、程度というものがある』
『……それは気にしすぎってことですか?』
香子は首を傾げた。
『そこまではそなたが考えることではない』
顔を俯かせる。人に傅かれるなんて今までなかったから、どこまで口を出していいかわからない。玄武はそんな香子を包みこむようにした。
『そなたが一生懸命なのはわかる。その姿は愛おしいが、他の者に向ける気持ちをもう少し我らに向けてはくれまいか』
甘いバリトンが頭の上から降ってきて、香子はその胸に顔を押し付けた。
目の前を歩いている二人には絶対聞こえているだろう。なんだかとても恥ずかしくて仕方なかった。
やがて一つ目の峰を越え二つ目に差しかかる。
適度に休憩を挟みゆっくりと時間をかけて一行は山を下りた。
『明日もいらっしゃるのでしたら、庭園の奥にご案内します』
王の科白に香子は間髪入れず『行きます!』と答えた。なにせ広い庭園である。奥にどんな景色が広がっているのかと思うとわくわくした。そんな香子の様子に四神は苦笑する。
『疲れたであろう。ゆっくり休め』
玄武が香子を部屋に運ぶ。
ずっと抱き上げられたまま移動してどこが疲れるのだと香子としては突っ込みたい気持ちだったが、せっかく一人にしてもらえるのだからとその言葉に甘えることにした。
そのあまりの素早さに、王は声をかける機会を逸してしまった。
実は贈り物関係の香子の発言について詳しく話を聞きたいと中書令に言われていたのだった。ただやはり香子本人に声をかけるのはまずいだろう。
王は趙に耳打ちした。
花嫁本人でなくてもかまわないが渡りをつけてほしいと。
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