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第1部 四神と結婚しろと言われました
73.いろいろ気を使うのです
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侍女たちによって動きやすい格好に着替えさせられたが、おそらく香子が歩くことはないだろうと思う。
部屋を出ると待ち構えていたように玄武に抱き上げられた。香子も大分抱き上げられるのに慣れ、そのように玄武に身を任せる。
それを侍女たちが微笑ましそうに見ているのに気づく余裕はまだない。
四神宮を出る頃には大人数になっている。今日も趙文英と王英明が拱手して待っていた。そのまま景山に向かうのに一番近い門に案内される。
『…………?』
四神宮を出てしばらくも進まないうちに、なんだか宮廷内の雰囲気がおかしいことに香子は気づいた。なんだか全体的にせわしないような、慌ただしい何かを感じる。
香子が顔を巡らせたのに『香子、どうか?』と玄武の声がかかる。
『……いえ、なんか、うまく言えないんですけど……』
普段の宮廷の様子を知っているわけではないのでなんともいえないが、少なくとも昨日と違っているということはわかる。
先導する趙と王にもそのやりとりは聞こえていたが、ここで説明することではないので景山のある庭園に入ってから彼らは説明することにした。
昨日は途中で戻ってしまったので今日も昨日と同じ行程で進むことにした。ただし今日は香子も下ろしてほしいとは言わなかった。わざわざ自分の足で歩いて昨日のようなことになるのはごめんだった。
それを王は意外な気がした。香子は積極的にいろいろと自分でしたがるように見えたというのに、今日は玄武の腕に素直に収まっている。とはいえ花嫁である香子に対し気軽に声をかけるわけにはいかない。後で趙にでも尋ねることにした。
香子が素直に腕の中に収まっていることに玄武はご機嫌だった。香子は抱かれながら周りの景色をきょろきょろと見回す。
四神は体格がいいので抱かれたまま移動するのは景色を見るのに最適だった。
(ようは割りきっちゃえばいいんだよね)
自分で歩くのもいいがこうやって抱かれて移動すればいろんなものに目が行く。人工の山と知っていても自然の中にいるというのはやはり気分が違ってくる。何より四神宮に籠っているよりは建設的な気がする。
そうしてすぐに山頂に着き、この間のように万春亭に案内される。趙と王、そして侍女たちが中でお茶の準備を整える。重い荷物は大体趙と王が持っているとはいえここまで付き合わされる侍女たちもお疲れ様である。
(男性はともかく女性はちゃんと水分とってるのかしら?)
玄武は長椅子に腰かけるのにも全く香子を下ろす気はないようだった。人間の男性が近くにいるのだからしかたないのだろう。
侍女がお茶を入れ卓に置いた時香子は彼女の顔を見た。
『あの、貴女たちはちゃんと水分を取ってる? 低い山だけど汗をかくだろうから……』
そう声をかけると侍女はびっくりしたような表情をした。
『ええと、私たちの世話だけじゃなくて貴女たちも楽しめたら、と思ったんだけど……』
そう言いながら何を言ってるんだ私は! と香子は思う。こんな考えは傲慢この上ないと反省する。侍女はそんな香子の様子に困ったような表情を一瞬浮かべ、それから、
『お心遣いありがとうございます。このような素敵な場所に連れてきていただけて感謝しております』
と女性特有の礼をとった。香子はなんだか申し訳ないような気がして顔を俯かせた。
基本的に香子は女性の味方である。友人になってしまえば男も女もないが、仕えてもらって申し訳ないと思うのは女性相手だからだ。
そんな香子の心境を知ってか知らずか、玄武が髪に口づけてくる。なんだかそれに怒る気力もわかない。
乾燥しているようなパサパサとしたお菓子をいただきながら、香子はここに来るまでの王城内の雰囲気を思い出した。
『そういえば、なんだか門を出るまで落ち着かないかんじがしたんですけど、何かあるんですか?』
それに趙と王ははっとしたように顔を上げた。
部屋を出ると待ち構えていたように玄武に抱き上げられた。香子も大分抱き上げられるのに慣れ、そのように玄武に身を任せる。
それを侍女たちが微笑ましそうに見ているのに気づく余裕はまだない。
四神宮を出る頃には大人数になっている。今日も趙文英と王英明が拱手して待っていた。そのまま景山に向かうのに一番近い門に案内される。
『…………?』
四神宮を出てしばらくも進まないうちに、なんだか宮廷内の雰囲気がおかしいことに香子は気づいた。なんだか全体的にせわしないような、慌ただしい何かを感じる。
香子が顔を巡らせたのに『香子、どうか?』と玄武の声がかかる。
『……いえ、なんか、うまく言えないんですけど……』
普段の宮廷の様子を知っているわけではないのでなんともいえないが、少なくとも昨日と違っているということはわかる。
先導する趙と王にもそのやりとりは聞こえていたが、ここで説明することではないので景山のある庭園に入ってから彼らは説明することにした。
昨日は途中で戻ってしまったので今日も昨日と同じ行程で進むことにした。ただし今日は香子も下ろしてほしいとは言わなかった。わざわざ自分の足で歩いて昨日のようなことになるのはごめんだった。
それを王は意外な気がした。香子は積極的にいろいろと自分でしたがるように見えたというのに、今日は玄武の腕に素直に収まっている。とはいえ花嫁である香子に対し気軽に声をかけるわけにはいかない。後で趙にでも尋ねることにした。
香子が素直に腕の中に収まっていることに玄武はご機嫌だった。香子は抱かれながら周りの景色をきょろきょろと見回す。
四神は体格がいいので抱かれたまま移動するのは景色を見るのに最適だった。
(ようは割りきっちゃえばいいんだよね)
自分で歩くのもいいがこうやって抱かれて移動すればいろんなものに目が行く。人工の山と知っていても自然の中にいるというのはやはり気分が違ってくる。何より四神宮に籠っているよりは建設的な気がする。
そうしてすぐに山頂に着き、この間のように万春亭に案内される。趙と王、そして侍女たちが中でお茶の準備を整える。重い荷物は大体趙と王が持っているとはいえここまで付き合わされる侍女たちもお疲れ様である。
(男性はともかく女性はちゃんと水分とってるのかしら?)
玄武は長椅子に腰かけるのにも全く香子を下ろす気はないようだった。人間の男性が近くにいるのだからしかたないのだろう。
侍女がお茶を入れ卓に置いた時香子は彼女の顔を見た。
『あの、貴女たちはちゃんと水分を取ってる? 低い山だけど汗をかくだろうから……』
そう声をかけると侍女はびっくりしたような表情をした。
『ええと、私たちの世話だけじゃなくて貴女たちも楽しめたら、と思ったんだけど……』
そう言いながら何を言ってるんだ私は! と香子は思う。こんな考えは傲慢この上ないと反省する。侍女はそんな香子の様子に困ったような表情を一瞬浮かべ、それから、
『お心遣いありがとうございます。このような素敵な場所に連れてきていただけて感謝しております』
と女性特有の礼をとった。香子はなんだか申し訳ないような気がして顔を俯かせた。
基本的に香子は女性の味方である。友人になってしまえば男も女もないが、仕えてもらって申し訳ないと思うのは女性相手だからだ。
そんな香子の心境を知ってか知らずか、玄武が髪に口づけてくる。なんだかそれに怒る気力もわかない。
乾燥しているようなパサパサとしたお菓子をいただきながら、香子はここに来るまでの王城内の雰囲気を思い出した。
『そういえば、なんだか門を出るまで落ち着かないかんじがしたんですけど、何かあるんですか?』
それに趙と王ははっとしたように顔を上げた。
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