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第1部 四神と結婚しろと言われました
65.約束を思い出しました
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仕方ないので自分の国の経済の仕組みを大まかに説明することにした。
そうは言ってもそれほど香子も詳しいわけではない。大学では経済貿易学部だったが、これはあくまで中国の経済について学んだだけだし、それも近現代の経済の歴史や交渉に使われる専門的な言葉を習っていただけである。
『私の国では仕事をすればお金がもらえていました。それはこの国でも同じだと思うのですが、その普段の給金の他に、時間外労働や特別な仕事をしたりすると更に給金を上乗せしてもらえるのです』
残業代とかボーナスとかもちろん他にもいろいろある。
『ふむ……』
玄武がなるほどというような表情をする。
『四神宮に仕える人は普通なら一年に三日だけ四神の世話をすればいいですけど、今回は私も加わって、更に一年間世話をしなければいけないでしょう? その分給金を上乗せするのは当然だと思うんですけど……』
自分の常識は間違っているのだろうかと科白が尻すぼみになる。
『そなたの言うことは正しい』
玄武が応え、それに残りの三神も頷いた。
『ただそういう考えは今までこの国にはなかったように思う。……直接関わっているわけではないので断定はできぬが』
それには香子も頷く。
王政を敷いている国家では皇帝や王の言うことが法律である。つまり余程皇帝やその周りが賢明でなければ民の立場に立って物を考えるのは難しい。
(あの皇帝威厳はあるけど、なーんか部下に恵まれていない気もするのよね)
どうしてもバッグのことで納得がいかない香子である。
ただ、宮廷は広い故に仕える人間も多い。その全てに皇帝が目を光らせられるかと言えば答えは否だ。
(でも、監察官であるはずの御史大夫があれじゃあ……って私が考えてもしょうがないよねー)
ということでもう香子は考えないことにした。基本的に考えても無駄なことをぐだぐだ考えるのは性に合わない。
それよりも白虎にお願いしたいことがある。
『この国の経済の仕組みなんか私が論じても仕方ないのでやめときます。それより……白虎様、これからいいですか?』
香子の科白にみなの視線が白虎に集まった。
『……どうか?』
『えーと、二人きりというのは勇気が持てないのでどなたか付き添いを……』
『では我が共に参ろう』
立候補してくれたのは玄武だった。香子は無意識のうちに口元に笑みを浮かべた。
なんだかんだいって玄武が側にいてくれると安心するようだ。
白虎は心当たりがないというような表情をしている。それに香子はむっとした。
『触らせてくれる約束、守ってください!』
そう言うとやっと思い出したらしい。白虎は苦笑した。
『香子にはかなわぬな』
仕方ないというように立ち上がる。玄武もそれに従って香子を抱き上げた。そうして茶室を出ていく二神の後姿を眺めながら朱雀は茶を啜った。
『昨日あれからあんな話になったのか?』
『はい、白虎兄のことで我が口を滑らせまして』
青龍が苦笑しながら答える。
『……玄武兄もついているなら大丈夫だとは思うが……』
朱雀は考えるように言う。
香子は知らない。
何故四神が常に人型をとっているのか。
元の姿に戻るということの意味はどういうことなのか。
『……一応室の外で待機していた方がいいかもしれぬな』
それに青龍も頷く。
万が一ということもないとはいえない。
二神が立ち上がり、眷族もそれに続いた。
何事もなければそれに越したことはない。
四神が元の姿に戻ること。それは理性をかなぐり捨てることと同義なのである。
そうは言ってもそれほど香子も詳しいわけではない。大学では経済貿易学部だったが、これはあくまで中国の経済について学んだだけだし、それも近現代の経済の歴史や交渉に使われる専門的な言葉を習っていただけである。
『私の国では仕事をすればお金がもらえていました。それはこの国でも同じだと思うのですが、その普段の給金の他に、時間外労働や特別な仕事をしたりすると更に給金を上乗せしてもらえるのです』
残業代とかボーナスとかもちろん他にもいろいろある。
『ふむ……』
玄武がなるほどというような表情をする。
『四神宮に仕える人は普通なら一年に三日だけ四神の世話をすればいいですけど、今回は私も加わって、更に一年間世話をしなければいけないでしょう? その分給金を上乗せするのは当然だと思うんですけど……』
自分の常識は間違っているのだろうかと科白が尻すぼみになる。
『そなたの言うことは正しい』
玄武が応え、それに残りの三神も頷いた。
『ただそういう考えは今までこの国にはなかったように思う。……直接関わっているわけではないので断定はできぬが』
それには香子も頷く。
王政を敷いている国家では皇帝や王の言うことが法律である。つまり余程皇帝やその周りが賢明でなければ民の立場に立って物を考えるのは難しい。
(あの皇帝威厳はあるけど、なーんか部下に恵まれていない気もするのよね)
どうしてもバッグのことで納得がいかない香子である。
ただ、宮廷は広い故に仕える人間も多い。その全てに皇帝が目を光らせられるかと言えば答えは否だ。
(でも、監察官であるはずの御史大夫があれじゃあ……って私が考えてもしょうがないよねー)
ということでもう香子は考えないことにした。基本的に考えても無駄なことをぐだぐだ考えるのは性に合わない。
それよりも白虎にお願いしたいことがある。
『この国の経済の仕組みなんか私が論じても仕方ないのでやめときます。それより……白虎様、これからいいですか?』
香子の科白にみなの視線が白虎に集まった。
『……どうか?』
『えーと、二人きりというのは勇気が持てないのでどなたか付き添いを……』
『では我が共に参ろう』
立候補してくれたのは玄武だった。香子は無意識のうちに口元に笑みを浮かべた。
なんだかんだいって玄武が側にいてくれると安心するようだ。
白虎は心当たりがないというような表情をしている。それに香子はむっとした。
『触らせてくれる約束、守ってください!』
そう言うとやっと思い出したらしい。白虎は苦笑した。
『香子にはかなわぬな』
仕方ないというように立ち上がる。玄武もそれに従って香子を抱き上げた。そうして茶室を出ていく二神の後姿を眺めながら朱雀は茶を啜った。
『昨日あれからあんな話になったのか?』
『はい、白虎兄のことで我が口を滑らせまして』
青龍が苦笑しながら答える。
『……玄武兄もついているなら大丈夫だとは思うが……』
朱雀は考えるように言う。
香子は知らない。
何故四神が常に人型をとっているのか。
元の姿に戻るということの意味はどういうことなのか。
『……一応室の外で待機していた方がいいかもしれぬな』
それに青龍も頷く。
万が一ということもないとはいえない。
二神が立ち上がり、眷族もそれに続いた。
何事もなければそれに越したことはない。
四神が元の姿に戻ること。それは理性をかなぐり捨てることと同義なのである。
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