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第1部 四神と結婚しろと言われました
57.贈り物というのも厄介です(趙、白雲視点)
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白雲が食堂から出ると、趙文英が待っていた。
『お食事中に申し訳ありません』
拱手する趙を促して四神宮を出る。謁見の間から少し奥に入ったところで趙は送られてきた物の目録を白雲に渡した。
『すでに贈られてきた物は一旦謁見の間の奥に置いてありますが、それ以外は先に目録をいただくことにしました』
『贈られてきたものを送り返すことは可能ですか?』
白雲の確認に趙はきっぱり答える。
『四神様や花嫁様の意向であれば』
白雲はほんの少しだけ眉をひそめた。つまり贈り物全てを断るとしたらなんらかの方法で知らしめる必要があるということだろう。
『食物に関しては送り返していただけたでしょうか』
『はい、食物、人間、生物の類は全てお断りすることを中書省の方へ通達致しました。すでに贈られてきた物も送り返す手配をいたしました』
その返事に、白雲は満足そうに頷いた。
『ありがとうございます。それではこの目録をお預かりいたします』
趙は白雲の返事にほっとした顔をした。白雲は踵を返そうとして、ふと聞いていなかったことを思い出した。
『趙殿、かなりの数の贈り物が贈られてきているという話でしたが、他の仕事に支障はございませんか?』
趙は意外そうな表情をした。
『……そうですね。これ以上増えるようですと正直厳しいです』
『わかりました。趙殿には連絡や交渉を中心にお願いしたいので、支障をきたすようであればいつでもお声掛けください』
それは四神の眷族が手伝ってくれるということだろうか。趙は少し戸惑ったが、確かに人を増やすよりは現実的である。
『それは……眷族の方々がお手伝いをしてくださると理解してよろしいのでしょうか?』
『そう考えていただいてけっこうです』
願ってもない申し出だった。
『そうしていただけるととても助かります。ですが、眷族の方々は四神のお世話を……』
『四神は基本成人したら己のことは全て己でできるのです。我々は花嫁様と四神の齟齬をできるだけなくすよう務めるもの。あとは領地との連絡のみですがそれも頻繁に行う必要はございません。困ったことがございましたらお声掛けいただけますよう』
それに趙は納得した。
四神は確かに傅かれてはいても世話を人に任すようには見えない。
趙はもう一つ伝えることがあったことを思い出し、顔を上げた。
『ありがとうございます、助かります。……そういえば先ほど同行した王英明のことなのですが、よろしいでしょうか?』
『王殿が何か?』
趙は景山でのことがあったので一瞬口ごもったが、どちらにしろ伝えなければいけないことなのでそのまま続けた。
『実は、四神宮と私の所属する中書省のある楼はとても距離がありまして。その連絡役として王が一日に二回こちらに顔を出すことになりました』
『……そうですか。趙殿の仕事を円滑にする為には致し方ないのでしょうが、できるだけ四神と花嫁様の前には顔を出さないようにしていただくようお願いします』
『承知しました』
そういうことであれば香子を再び景山に案内することは難しそうだ。
『それでは、今後庭園への案内はいかがいたしましょうか』
景山の敷地は広いので入園の許可を一週間分とってあるのだったが無駄になるだろうか。しかし趙の予想に反して白雲の応えは意外なものだった。
『それについては、花嫁様が望むのあればこれからもお願いします』
『……かしこまりました』
白雲は目録を手に四神宮に戻った。後にはいぶかしげな表情をした趙だけが残された。
ちょうどその頃、皇帝は中書令と共に一通の書状を前に難しい顔をしていた。
『これは……』
『厄介事が起こらねばいいが……』
それは西の地に普段住んでいる皇太后からの物だった。書状が届いたということはすでに西の地を皇太后は出発しているのだろう。
皇帝は嫌な予感を覚え大仰に嘆息した。
『お食事中に申し訳ありません』
拱手する趙を促して四神宮を出る。謁見の間から少し奥に入ったところで趙は送られてきた物の目録を白雲に渡した。
『すでに贈られてきた物は一旦謁見の間の奥に置いてありますが、それ以外は先に目録をいただくことにしました』
『贈られてきたものを送り返すことは可能ですか?』
白雲の確認に趙はきっぱり答える。
『四神様や花嫁様の意向であれば』
白雲はほんの少しだけ眉をひそめた。つまり贈り物全てを断るとしたらなんらかの方法で知らしめる必要があるということだろう。
『食物に関しては送り返していただけたでしょうか』
『はい、食物、人間、生物の類は全てお断りすることを中書省の方へ通達致しました。すでに贈られてきた物も送り返す手配をいたしました』
その返事に、白雲は満足そうに頷いた。
『ありがとうございます。それではこの目録をお預かりいたします』
趙は白雲の返事にほっとした顔をした。白雲は踵を返そうとして、ふと聞いていなかったことを思い出した。
『趙殿、かなりの数の贈り物が贈られてきているという話でしたが、他の仕事に支障はございませんか?』
趙は意外そうな表情をした。
『……そうですね。これ以上増えるようですと正直厳しいです』
『わかりました。趙殿には連絡や交渉を中心にお願いしたいので、支障をきたすようであればいつでもお声掛けください』
それは四神の眷族が手伝ってくれるということだろうか。趙は少し戸惑ったが、確かに人を増やすよりは現実的である。
『それは……眷族の方々がお手伝いをしてくださると理解してよろしいのでしょうか?』
『そう考えていただいてけっこうです』
願ってもない申し出だった。
『そうしていただけるととても助かります。ですが、眷族の方々は四神のお世話を……』
『四神は基本成人したら己のことは全て己でできるのです。我々は花嫁様と四神の齟齬をできるだけなくすよう務めるもの。あとは領地との連絡のみですがそれも頻繁に行う必要はございません。困ったことがございましたらお声掛けいただけますよう』
それに趙は納得した。
四神は確かに傅かれてはいても世話を人に任すようには見えない。
趙はもう一つ伝えることがあったことを思い出し、顔を上げた。
『ありがとうございます、助かります。……そういえば先ほど同行した王英明のことなのですが、よろしいでしょうか?』
『王殿が何か?』
趙は景山でのことがあったので一瞬口ごもったが、どちらにしろ伝えなければいけないことなのでそのまま続けた。
『実は、四神宮と私の所属する中書省のある楼はとても距離がありまして。その連絡役として王が一日に二回こちらに顔を出すことになりました』
『……そうですか。趙殿の仕事を円滑にする為には致し方ないのでしょうが、できるだけ四神と花嫁様の前には顔を出さないようにしていただくようお願いします』
『承知しました』
そういうことであれば香子を再び景山に案内することは難しそうだ。
『それでは、今後庭園への案内はいかがいたしましょうか』
景山の敷地は広いので入園の許可を一週間分とってあるのだったが無駄になるだろうか。しかし趙の予想に反して白雲の応えは意外なものだった。
『それについては、花嫁様が望むのあればこれからもお願いします』
『……かしこまりました』
白雲は目録を手に四神宮に戻った。後にはいぶかしげな表情をした趙だけが残された。
ちょうどその頃、皇帝は中書令と共に一通の書状を前に難しい顔をしていた。
『これは……』
『厄介事が起こらねばいいが……』
それは西の地に普段住んでいる皇太后からの物だった。書状が届いたということはすでに西の地を皇太后は出発しているのだろう。
皇帝は嫌な予感を覚え大仰に嘆息した。
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