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第1部 四神と結婚しろと言われました
56.ごはんの時はいろいろ考えます
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(あ、危なかった……)
危うく流されてしまうところだった。まだ頭の中がぐちゃぐちゃなのに四神と共にいるのはすごく危険だと思う。だからといって部屋に一人でいれば誰が入ってくるかわからない。
(一人でゆっくり考えられる時間があるといいのになぁ……)
夕食の準備ができたというので青龍に抱き上げられて移動する。この表で抱き上げられるというのも慣れなければいけないし、そこからしてハードルが高いと香子は頭を悩ませる。
食堂にはすでに三神が席に着いてお茶を飲んでいた。今回は青龍と白虎の間の席が空いていて、そこに香子は下ろされた。玄武と朱雀が何事もなかったような顔をしているのが憎たらしいと香子は思う。
けれどやがて侍女たちが給仕を始めると、そんなことはすぐ香子の頭から霧散してしまった。
(うー、この脂っこい料理がたまらん!)
脂っこすぎて夏になると必ず一度は胃をやられたものだが、それにしてもやっぱり中華は最高だと香子は思う。特に北京は乾燥がすごいので脂っこいものを食べないとすぐに肌がかさかさになってしまう。
野菜をにんにくのみじん切りと一緒に炒めたものが香子のお気に入りである。日本に帰国したらしばらくその味は食べられないと思っていただけに今でも食べられるのが幸せだが、沢山大切なものを失ってしまった。
大事なことを思い出して玄武を見る。
『玄武様、天皇に元の世界での私の扱いのことお伝えいただけました?』
『伝えておいてはある。返事があるかまではわからぬが、よいようにはからってくれるだろう』
『ありがとうございます』
相手は天上の神様だから返事はくれないかもしれない。でももしも元の世界での香子の存在を消してくれたと返事があったなら、香子は安心して誰かに身を任せることができる気がした。
食後のお茶を入れてもらい飲もうとした時、扉の向こうから趙文英の声がかかった。そういえば戻ってきたことを伝えていなくて悪いことをしたとは思ったが、人間の男性には嫉妬するという四神の習性を思い出して顔を出すのはやめることにした。
白雲が心得たように食堂を出ていく。
四神があまり食事を必要としないということは聞いたが、眷族はどうなのだろう。
青龍に視線をやると目が合った。
どうやら青龍はずっと香子を見つめていたらしい。思わず顔が熱を持つのを感じた。
『あのー……眷族のみなさんってお食事はどうされているんですか?』
どうにかその視線を振り切って気になったことを尋ねると、青藍が答えてくれた。
『眷族にもいろいろありまして、私のような第一世代は基本食事を必要としないのですが、第二世代以降は人と同じようにいただきます』
『第一世代?』
首を傾げて聞き返すと、青藍は『申し訳ありません』と断った。
『我らと花嫁の間に産まれた眷族のことだ』
朱雀が答える。
それで第一世代というのかと香子は納得した。ということは青藍は前の花嫁の子ということだろう。
『ありがとうございます』
(ってことは、青龍様と青藍さんは兄弟で主従ってことかー)
いろいろ複雑である。第二世代というのは眷族同士で結婚したり、人間と結婚してできた子のことなのだろう。ということは黒月は第二世代以降で食事が必要ということになる。
(いつ食事してるのかな?)
少なくとも香子は黒月が食事しているところを見たことがない。そうは言っても睨まれているだけに聞くこともできそうになかった。
誰かに窘められたのか露骨に睨まれることはなくなったようだが、それでも香子を気に入らないと思っていることは伝わってくる。
(めんどくさい……)
香子としてはほうっておきたいのが本音である。けれど黒月は玄武の眷族。全く関わらないというわけにもいかない。
(クラスメイト程度だったらほっておけるのに……)
いずれきちんと話をする必要がありそうだった。
危うく流されてしまうところだった。まだ頭の中がぐちゃぐちゃなのに四神と共にいるのはすごく危険だと思う。だからといって部屋に一人でいれば誰が入ってくるかわからない。
(一人でゆっくり考えられる時間があるといいのになぁ……)
夕食の準備ができたというので青龍に抱き上げられて移動する。この表で抱き上げられるというのも慣れなければいけないし、そこからしてハードルが高いと香子は頭を悩ませる。
食堂にはすでに三神が席に着いてお茶を飲んでいた。今回は青龍と白虎の間の席が空いていて、そこに香子は下ろされた。玄武と朱雀が何事もなかったような顔をしているのが憎たらしいと香子は思う。
けれどやがて侍女たちが給仕を始めると、そんなことはすぐ香子の頭から霧散してしまった。
(うー、この脂っこい料理がたまらん!)
脂っこすぎて夏になると必ず一度は胃をやられたものだが、それにしてもやっぱり中華は最高だと香子は思う。特に北京は乾燥がすごいので脂っこいものを食べないとすぐに肌がかさかさになってしまう。
野菜をにんにくのみじん切りと一緒に炒めたものが香子のお気に入りである。日本に帰国したらしばらくその味は食べられないと思っていただけに今でも食べられるのが幸せだが、沢山大切なものを失ってしまった。
大事なことを思い出して玄武を見る。
『玄武様、天皇に元の世界での私の扱いのことお伝えいただけました?』
『伝えておいてはある。返事があるかまではわからぬが、よいようにはからってくれるだろう』
『ありがとうございます』
相手は天上の神様だから返事はくれないかもしれない。でももしも元の世界での香子の存在を消してくれたと返事があったなら、香子は安心して誰かに身を任せることができる気がした。
食後のお茶を入れてもらい飲もうとした時、扉の向こうから趙文英の声がかかった。そういえば戻ってきたことを伝えていなくて悪いことをしたとは思ったが、人間の男性には嫉妬するという四神の習性を思い出して顔を出すのはやめることにした。
白雲が心得たように食堂を出ていく。
四神があまり食事を必要としないということは聞いたが、眷族はどうなのだろう。
青龍に視線をやると目が合った。
どうやら青龍はずっと香子を見つめていたらしい。思わず顔が熱を持つのを感じた。
『あのー……眷族のみなさんってお食事はどうされているんですか?』
どうにかその視線を振り切って気になったことを尋ねると、青藍が答えてくれた。
『眷族にもいろいろありまして、私のような第一世代は基本食事を必要としないのですが、第二世代以降は人と同じようにいただきます』
『第一世代?』
首を傾げて聞き返すと、青藍は『申し訳ありません』と断った。
『我らと花嫁の間に産まれた眷族のことだ』
朱雀が答える。
それで第一世代というのかと香子は納得した。ということは青藍は前の花嫁の子ということだろう。
『ありがとうございます』
(ってことは、青龍様と青藍さんは兄弟で主従ってことかー)
いろいろ複雑である。第二世代というのは眷族同士で結婚したり、人間と結婚してできた子のことなのだろう。ということは黒月は第二世代以降で食事が必要ということになる。
(いつ食事してるのかな?)
少なくとも香子は黒月が食事しているところを見たことがない。そうは言っても睨まれているだけに聞くこともできそうになかった。
誰かに窘められたのか露骨に睨まれることはなくなったようだが、それでも香子を気に入らないと思っていることは伝わってくる。
(めんどくさい……)
香子としてはほうっておきたいのが本音である。けれど黒月は玄武の眷族。全く関わらないというわけにもいかない。
(クラスメイト程度だったらほっておけるのに……)
いずれきちんと話をする必要がありそうだった。
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