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第1部 四神と結婚しろと言われました
54.そういえば神様って何をしているんでしょう?
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香子は少し不満だった。
(もふもふ……)
手が如何にも名残惜しそうにわきわきしているのに、青龍は微笑んだ。青龍は自分の室に着くと長椅子にそっと香子を下ろした。
『時間はたっぷりある。明日にでも触れさせてもらえばいいのではないか?』
そう青龍に言われて香子はしぶしぶ頷いた。それにしてもどうして白虎の気が変わったのかわからなくて香子は首を傾げる。そんな、触られたくなくなるようなことを自分は言っただろうか?
香子が納得していないのがわかり、青龍は嘆息した。
『……白虎兄はそなたに拒絶されなくて嬉しかったのだろう。……おそらく、触れられれば襲ってしまうと考えたのではないか』
(お、おそ……?)
香子は白虎に組み敷かれる自分の姿を想像して真っ赤になった。
(い、いくらなんでもそこまではまだ無理ーーーーーーー!)
想像だけで鼻血を噴いてしまいそうだと香子は思う。
香子には兄がおり、兄は思春期の男らしくかなりエロ本を所持していた。それらを兄に隠れてなんとなーく読んでいただけに、あーんな情景やこーんな情景が頭の中ですぐに展開されてしまう。とはいえ幸い獣姦モノはなかったので漠然とはしていたが。
(だめだ、エロい、エロすぎる……)
香子は頭を抱えた。
『……共にいるのは構わぬが、人間というのは何かしなければ退屈なのではないか?』
いつのまにか隣に腰かけている青龍にちろりと目を向ける。相変わらずなんとも鮮やかな緑の髪である。一応気を使ってくれているのがわかって、香子はにっこりした。
『そういえば、みなさん普段は何をしていらっしゃるんですか?』
なんだかただ香子に合わせてくれているようで申し訳ないと思ってしまう。青龍はそれに少し考えるような表情をした。
『特に……これといってないな……』
少し考えた後、青龍は真顔で香子に答えた。
(あーうー、会話が止まってしまった……)
神様の生態が不明なので何を聞いたらいいのかよくわからない。すると横から助け舟が出された。
『王都では四神の仕事というものはございません。これから一年は花嫁様と共にあればよいのです』
青藍だった。この眷族も不思議だと香子は思う。
『では領地では?』
『はい、領地では館に嘆願書が届きます。嘆願書に添って采配をふるうこともあれば、他に天候や気候などを調整し、領地とその周辺の維持につとめられています』
なんとなくそう聞くと四神の領地は住み心地がよさそうな気がしてくる。けれどそんなに住み心地がいいところなら人が流入しそうなものだがそこらへんはどうなっているのだろうか。
そのことについて尋ねると、
『四神の領地は基本人にとって非常に不便な場所にございます。王都へ続く道は一本しかなく、青龍様の領地は川が多いです。氾濫はありませんが、土地が水を多く含んでいるのであまり家を建てるのには向きません』
どうもそこまでうまい話はないらしい。
『ってことは住んでいる人も少ないのですか』
『はい、いくつか村もありますし街もありますが、他の土地より人口は少ないと思われます』
つまり人がそう簡単に入り込めないようなところに神の領地はあるようだ。
『じゃあ嘆願書というのはどこから来るのですか? さすがに領地の人たちからだけではないでしょう?』
『嘆願書は領地の周辺から入ってくる量が多いです。今年は花嫁を迎えたことが公布されるでしょうから、嘆願書の量は更に増えるかと』
香子は眉を寄せた。
自分がいることで一体何が変わるというのだろう。
『でも今年はずっとこちらにいるんですよね』
『はい』
『じゃあ嘆願書はどうするんですか?』
それに青藍はなんでそんなことを聞くのか、というような顔をした。
『領地に戻られてから目を通していただくことになりますが?』
『それじゃ一番古いのは一年経ってしまうのでは?』
『そうですね』
何が問題なのかわからないという様子である。
(あー、そうか……)
神様の時間の概念というのは長い。しかも嘆願書を受け取ったところでそれを叶える義理はない。
結局のところ自分でどうにかしなければならないのである。
神は人間の領主とは違う。
『すいません、なんとなくわかりました』
そんな香子の様子を、青龍は静かに見守っていた。
(もふもふ……)
手が如何にも名残惜しそうにわきわきしているのに、青龍は微笑んだ。青龍は自分の室に着くと長椅子にそっと香子を下ろした。
『時間はたっぷりある。明日にでも触れさせてもらえばいいのではないか?』
そう青龍に言われて香子はしぶしぶ頷いた。それにしてもどうして白虎の気が変わったのかわからなくて香子は首を傾げる。そんな、触られたくなくなるようなことを自分は言っただろうか?
香子が納得していないのがわかり、青龍は嘆息した。
『……白虎兄はそなたに拒絶されなくて嬉しかったのだろう。……おそらく、触れられれば襲ってしまうと考えたのではないか』
(お、おそ……?)
香子は白虎に組み敷かれる自分の姿を想像して真っ赤になった。
(い、いくらなんでもそこまではまだ無理ーーーーーーー!)
想像だけで鼻血を噴いてしまいそうだと香子は思う。
香子には兄がおり、兄は思春期の男らしくかなりエロ本を所持していた。それらを兄に隠れてなんとなーく読んでいただけに、あーんな情景やこーんな情景が頭の中ですぐに展開されてしまう。とはいえ幸い獣姦モノはなかったので漠然とはしていたが。
(だめだ、エロい、エロすぎる……)
香子は頭を抱えた。
『……共にいるのは構わぬが、人間というのは何かしなければ退屈なのではないか?』
いつのまにか隣に腰かけている青龍にちろりと目を向ける。相変わらずなんとも鮮やかな緑の髪である。一応気を使ってくれているのがわかって、香子はにっこりした。
『そういえば、みなさん普段は何をしていらっしゃるんですか?』
なんだかただ香子に合わせてくれているようで申し訳ないと思ってしまう。青龍はそれに少し考えるような表情をした。
『特に……これといってないな……』
少し考えた後、青龍は真顔で香子に答えた。
(あーうー、会話が止まってしまった……)
神様の生態が不明なので何を聞いたらいいのかよくわからない。すると横から助け舟が出された。
『王都では四神の仕事というものはございません。これから一年は花嫁様と共にあればよいのです』
青藍だった。この眷族も不思議だと香子は思う。
『では領地では?』
『はい、領地では館に嘆願書が届きます。嘆願書に添って采配をふるうこともあれば、他に天候や気候などを調整し、領地とその周辺の維持につとめられています』
なんとなくそう聞くと四神の領地は住み心地がよさそうな気がしてくる。けれどそんなに住み心地がいいところなら人が流入しそうなものだがそこらへんはどうなっているのだろうか。
そのことについて尋ねると、
『四神の領地は基本人にとって非常に不便な場所にございます。王都へ続く道は一本しかなく、青龍様の領地は川が多いです。氾濫はありませんが、土地が水を多く含んでいるのであまり家を建てるのには向きません』
どうもそこまでうまい話はないらしい。
『ってことは住んでいる人も少ないのですか』
『はい、いくつか村もありますし街もありますが、他の土地より人口は少ないと思われます』
つまり人がそう簡単に入り込めないようなところに神の領地はあるようだ。
『じゃあ嘆願書というのはどこから来るのですか? さすがに領地の人たちからだけではないでしょう?』
『嘆願書は領地の周辺から入ってくる量が多いです。今年は花嫁を迎えたことが公布されるでしょうから、嘆願書の量は更に増えるかと』
香子は眉を寄せた。
自分がいることで一体何が変わるというのだろう。
『でも今年はずっとこちらにいるんですよね』
『はい』
『じゃあ嘆願書はどうするんですか?』
それに青藍はなんでそんなことを聞くのか、というような顔をした。
『領地に戻られてから目を通していただくことになりますが?』
『それじゃ一番古いのは一年経ってしまうのでは?』
『そうですね』
何が問題なのかわからないという様子である。
(あー、そうか……)
神様の時間の概念というのは長い。しかも嘆願書を受け取ったところでそれを叶える義理はない。
結局のところ自分でどうにかしなければならないのである。
神は人間の領主とは違う。
『すいません、なんとなくわかりました』
そんな香子の様子を、青龍は静かに見守っていた。
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